男女比がおかしい世界に産まれました   作:大気圏突破

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ようやくアンケートのネタが執筆出来ました。投票ありがとうございました


番外編〜銀髪美少女ツクヨミ爆誕〜その7

 2.5次元俳優の鴨志田朔夜の女癖の悪さは業界内でも有名だった。合コンを開催しては女の子をお持ち帰りするのが当たり前だったが、次第に敬遠されるようなり懐具合も寂しくなると参加することも出来なくなっていた。

 

 

「クソがっ!」

 

 今日は合コンではないが事務所の先輩が主催する飲み会に参加した鴨志田は、居酒屋で気になった女性に声を掛けて番号を交換しようと画策したが、なしのつぶてで終わってしまい2次会に参加することなく1人で帰路についていた。タクシー代もなく自宅までの長い道のりを歩きながら女の子と遊べないことに人生を悲観し、空を見上げると

 

 

ガッシャ―ン‼

 

 

 

 突如耳を塞ぎたくなるような轟音が響き彼は反射的に目を閉じてしまう。恐る恐るゆっくりと目を開け耳から手を離すと、少し遠くの場所で2台の車が正面衝突しているのが見えた彼は野次馬根性を出してしまい近づいてしまった。この選択が彼の未来を決定させるとも知らずに

 

 

 

 

 

「そんなに怯えなくても君は何もしなくても」

「だって…私は」

 

 シマカンは助手席に座る女の子を値踏みするような目線で見つめてた。彼女は事務所に売られてしまったのだ!所属する事務所の女優を売り出す為に社長が彼に持ち掛けたが女優の顔が好みでなかったので若い彼女が選ばれてしまった

 

 

「大丈夫君は何も悪くないから」

 

 彼の手が彼女の太ももを鷲掴み握ると

 

ヤメテッ‼

 

 手をどかされ驚いたシマカンは右に切ってしまう。自分を拒絶した彼女に平手打ちの1つでも与えようとした瞬間、自分の目の前に猛スピードの車が突っ込んで来ることを認識し、向こうの運転手と目が合ってしまう

 

「かぶらぎ?」

 

 全ての言葉を紡ぐ前に互いの車は正面衝突してしまった。

 

 

 

「おいおい、人身事故って!マズイマズイまずいよ俺!…どうすれば、おい」

 

 事故発生直後シマカンは無事だったが助手席に座る彼女は頭から血を流し、シートと車体の間に挟まれてしまい身動きがとれない状況だった。また対面の車からは火の手があがり中で運転手が助けを求めてる

 

「どうしようどうしようどうする俺?」

 

 今からしなければいけないこと、これからのことを考えパニックになった彼は、暴挙に走ってしまう

 

 

「じゃあ」

 

 なんと2人を見捨てそのままダッシュで現場から逃げてしまった。突然のことで周囲に集まっていた野次馬たちは口をポカンと開けて呆けてしまう。その中にいた鴨志田も同様だったが彼の目は燃え盛る車に向けていた。普通なら消防や警察が来るはずだが1つ厄介なことが起きていた

 

『誰も通報をしていなかった』

 

 

 傍観者効果という言葉がある。詳しい説明は省くが簡単に言ってしまえば『これだけ人が集まっているから誰かやってるよね?』という他責思考に近いモノで傍観者の数が多ければ多いほど効果は増大してしまう

 

 

 

「誰も来ないのかよ!」

 

 女癖の悪い奴だが最低限の正義感を持ち合わせている鴨志田は車に近づく、普通なら被害の大きい燃えている方から助けようとするが

 

「(可愛い女の子、胸もデカい)」

 

 彼の欲望が鏑木を助ける選択肢を思考の外へ弾き飛ばしてしまった。

 

 

「助け…」

「頑張れ!今助けるから」

 

 助手席側のフロントドアは変形し開けることが出来ない、鴨志田は反対側へ向かい車内へ侵入するとシートベルトを外し、席の下にあるシートスライドのバーを上げてゆっくりと後ろに下げていく

 

「痛いけどちょっと我慢して」

「はぃ」

 

 彼女の返事を聞いてやる気を出した彼は、運転席にあったスマホを手に取ってポケットに入れる。助手席のドアを車内から蹴り飛ばし無理やり開けると、外で待機していた他の野次馬に彼女のことを触れさせずに抱きかかえ救出したことを周囲にアピールした。

 

 

 

「あれ…は、鴨志田く…ん、頼む助けて」

 

 それは彼が女の子を救助している頃だった。燃え盛る車内で鏑木は意識朦朧となりながらも目の前にる鴨志田に助けを求めて声を出そうとしていたが煙で喉が焼けてしまい、掠れた声しか出なかった。彼がこっちに気付いて助けてくれるはずと思っていたが視線がこっちに向くことはなかった。段々と焼けていく自分の体に恐怖する鏑木は動く右手でフロントガラスを叩くが鴨志田の顔は意識が途切れるまで向かなかった

 

 

「遅いだろ流石に」

 

 消防と救急が到着したのは事故発生から50分以上が経過していた。傍観者効果もあるが通報した人が場所を言い間違えたことと道が渋滞で動けなかったことも相まって遅れてしまったのである。車は2台とも全焼してしまった。鴨志田に救助された女性は隊員たちに運ばれ、彼は警察から聴取を受ける為にパトカーへ乗せられた

 

 

 

 

 

「ヤバいなこの事故って」

 

 しばらく経ったある日ララライの本部で姫川は、週刊誌を見ながら目の前にいるアクアに話し掛けていた

 

「鏑木プロデューサーが亡くなって映画監督のシマカンが犯人の」

「まだ捕まってないんだろ?これって海外に逃げたんじゃないのか?」

 

 今回の事故は世間に大々的に報道された!売れっ子の映画監督が交通事故を引き起こし現場から逃亡したニュースは連日朝のワイドショーで流された。更に厄介なことに同乗者が未成年の他人であったことが露呈し、警察が彼の自宅に踏み込み押収したパソコンに保存されていた未成年者との淫行を収めた動画が山のように出て来てしまった

 

 

「しかし女遊び常習犯の鴨志田が車内に残された女の子を救うなんて」

「案外女の子だから助けたんじゃないですか?」

「流石にそれは…否定出来ないな」

「ほら言ってる傍から」

 

 アクアが視線を別方向に向けると渦中のヒーローである鴨志田が歩いていた。稀にララライにやってきては顔の良い面々を集めて合コンに繰り出そうとしている彼だが、あの事故以来そういったことをしなくなった

 

 

「アイツ変わったよな」

「鏑木さんと仲が良かったから、今回のことで思うことがあったんじゃないですか?」

「そうかもな、そういえばお前の妹ってそろそろ…」

 

 

 

 

 それは数日前だった。人命救助で表彰を受けた鴨志田は鏑木の遺族に挨拶を済ませ自宅に向かっていた

 

「(俺は間違っていたのか?でも)」

 

 自分がもし女の子を助けずに鏑木の方へ向かっていたら?悲しむ妻の顔と泣き叫ぶ彼の娘の姿を見ることはなかったはずである。しかし遺族は女性を助けた鴨志田の行動を肯定してくれた。自販機で飲み物を買おうと財布を出した途端

 

 

「鴨志田朔夜さんですね」

「えっ、どちら様?」

 

 某賭博漫画に出て来そうな、黒いサングラスと同じ色のスーツを着た男性に声を掛けられた彼は身構えてしまうが

 

「あなたが助けた女性の親族に仕える者です。お時間宜しいでしょうか?」

「あぁ、えぇぇとはい」

 

 断ってもよかったが何故か口はOKの返事をしてしまい彼は、黒塗りのセダンに乗せられた

 

 

 

 

「済まないね鴨志田君、急なことで」

「いえ別に…なにもなく」

 

 

 輸送された先は大きな武家屋敷であり畳の上で正座する彼の目の前には、ひと昔前のヤクザ映画に出て来そうな和服を着た老人が座っていた。煙管を口から離すと煙をくゆらせ鴨志田を見る

 

 

「君が助けた女の子は私の孫娘でね、あぁ戸籍は弄ってあるから私に辿り着くの不可能だ名探偵でも見つけることは出来ない」

「はぁ」

「直接お礼を言いたくて下の者を使って、ここへ呼んだのさ」

 

 ここに来てから状況を飲み込むことが出来なかった朔夜は、ようやく理解が追いつき周囲を見回した

 

 

「鴨志田朔夜君、きみの勇気ある行動によって大事な孫娘の命を守ることが出来た!組を代表してお礼申し上げる。ありがとう」

 

 

 座った状態であるが深々と頭を下げ、周囲にいた黒服たちと共に彼に感謝の意を伝える

 

 

「いえ、人として当たり前ことを…」

「ほぅ”当たり前か”素晴らしいな、昨今その当たり前が出来ない愚か者が蔓延っておるが、君は違うようだ」

 

 目の前の老人が発する言葉の1つ1つが威圧感の塊であり、彼は脇と背中に冷や汗で作ったシミを広げながら早くこの場から逃げ出したいと思っていた

 

 

「世間では君のことを”遊び人”と呼ぶ者がおるが本質は違うようだ」

「買い被りですって」

「気に入った!」

 

 老人の言葉に顔を向けると皺だらけの顔がニッコリとしていた

 

「実は孫が君に惚れ込んでいての、顔を真っ赤にさせておるのじゃ」

「はぁ…」

「無論これは当人同士で決めることだが、私は孫の伴侶に君が相応しいと思う」

「それってまさか?」

「察しがついたか、まだ未成年だから許嫁という立場になるが時期がきたら君のところへ嫁がせるつもりだ!事後報告になるが君のご両親にも既に話は通してある。喜んでおったぞ」

 

 

 いつの間にか許嫁が誕生し自分の親にも話が伝わり祝福されている。1時間前まで鏑木の死に対して哀悼の意を示していたはずなのに急な展開に思考が追いつかなくなっている。朔夜は1つ気になったことを口にした

 

 

「あのシマン…いえ島監督は?」

 

 その言葉を発した途端、周囲の空気が冷たくなるの感じた

 

「あの不届き者か?すまない私の方でも組員を総動員して探しておるんだが、見つからなくての~どうやら海を渡った可能性があるみたいで」

 

 一瞬だけ険しい表情になるが元の好々爺のように戻り鴨志田のことを見つめ直す

 

「見つからない者を探すより未来に向けて足を運ぶことが重要だと思わないか?」

「そうですね」

「帰りの車を出そう。今度は料亭でゆっくり話そうではないか」

 

 

 黒服に促された彼は老人に礼をして部屋から去っていった。足音が遠くなるのを確認した老人は立ち上がり襖の奥にある隠し部屋へ向かった

 

 

 

「ウグゥ~ん゛ん゛~~」

 

 窓もなくカビ臭い裸電球の部屋で鉄製の椅子に縛り付けられた映画監督の島は全裸で猿ぐつわをされていた。口の端からは汚く唾が滴り落ち椅子を汚している。手足の指は爪を剥がされ全身は鞭で叩かれたのか蚯蚓腫れになり傷口には【伯方の塩】が塗られていた

 

 

「まだ生きていたかしぶといの」

 

 老人が鴨志田に言った”見つからない”は嘘だった。事故後に組員を総動員させ場末のビジネスホテルに身を隠していた彼を見つけ出し、協力者と偽って油断したところを物理的に眠らせた

 

 

「さっき孫を助けてくれた男の子と話したよ。貴様のことを案じていた」

「ん゛ぐぐぐぅん」

「まぁどうでもいいな貴様には知らなくていいことだ」

 

 

 

 鉄製の椅子の上に組員が熱した鉄球を1つずつ乗せていく、段々と熱がシマカンの座っている椅子に伝わり尻や背中を焼いてしまう。逃げ出そうとしても完全に固定されてしまい身動きがとれない。真っ赤に変色してしまった皮膚からは香ばしい匂いがしてくる

 

「貴様は助けを求める孫の声を聞かなかった」

 

 老人の後ろで包丁を研いでいた組員が彼の耳に刃先を合わせると一気に引き下ろした

 

「貴様は助けを求めた孫の手を掴むことをしなかった」

 

 木製の板の上に手のひらを乗せるとネイルガンを持った組員が10本の指に打ち込んだ

 

「おい!もっと温度を上げてやれ、裸だから寒くて震えておる」

 

 熱々の鉄球が追加され悶え苦しむシマカンは股間から粗相をしてしまい椅子の温度を下げてしまった。その光景を見た老人は

 

「こんな汚いモノは必要ないだろ、やれ‼」

「あ゛ぅぅぅんだぁぁん」

 

 枝切りバサミで男のシンボルであるイチモツを強引に切り落とす。出血する股間に限界まで熱した鉄棒を押し込んで出血する傷口を塞ぐ、もうシマカンの意識は完全に壊れてしまい現実を認識することが出来なかった

 

「(なんで…俺が、こんな…オレは映画……かんとくの、天才で…)」

 

 脳内にこれまでのことが走馬灯のように駆け巡った。初めて撮影した映画が酷評され世間を見返してやろうと思った20代の頃、新品のスーツを着こなして授賞式でトロフィーを掲げたあの頃、そして事故を起こす前に声を掛けた元子役の女の子

 

 

「(これは夢なんだ!そうだ次に目を開ければ俺の部屋が…、あれ何で開かないんだ?)」

「貴様に光など必要ない」

 

 瞼を刺繡用の針と糸で縫い合わされ固く締め付けられてしまった。もう二度と彼の目が開くことは無い、次第に心臓の鼓動が弱まるのを感じた彼は早く止まることを祈り悪夢が終わるのを願った

 

 

「組長!」

「海に沈めておけ最期ぐらい役に立ってもらう魚の餌としてな」

 

 

 作中とは関係ないが交通事故が起きてから数年後、鴨志田朔夜は事故の被害者である女性と結婚した。誰もがすぐに女遊びが原因で離婚すると思われていたが彼はきっぱりと足を洗い飲み会にすら参加することなく役者として仕事に打ち込み日本を代表する舞台俳優として活躍するのは別の話である

 

 そしてシマカンは行方不明のまま捜査が打ち切られた。週刊誌では彼の悪行が誇張されるように報道されしまいレンタルDVD店からは作品が撤去されてしまった。また授賞された賞も剥奪されてしまい名前を口にすることも禁じられた。

 

 

「汚い魂魄だな棄てておけ」

 

 輪廻の理から外れた魂は永遠の牢獄で解放されることはなく滅んでいった




作中で描写していませんが鴨志田の妻が所属していた事務所は潰されています。筆者の中でシマカンはカミキヒカル同様に許せない存在だったので作中内で懲らしめました。アンケートが拮抗していたので両方を兼ね備えて執筆するのは大変でした。次話あたりで2部を終わらせて最終章を考えようと思います


感想ありがとうございます。誤字訂正もありがとうございます
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