最後に母と娘の会話を1部修正しました
さて書き忘れた訳ではないがアイの所属する事務所の名前は『
撮影の現場には物々しい雰囲気と空気が漂っていた。メーカーがダメもとでアクアに子供服のモデルをやってほしいと依頼したらOKの返事をもらってしまった。最初は夢かと思い営業担当は隣にいた相方の頬を殴ったら痛がっていたので現実であることを理解した。スタジオには彼のことを拝もうとメーカーの社長と営業部長までやって来ている。現在アクアに接触出来たのはスタイリストだけなので彼女は他のスタッフから質問攻めにされている
「社長、上手くいけばアクア君と独占契約を結ぶチャンスですよ」
「分かってるここから先の選択肢は1つもミスは許されない!」
「大丈夫なんですか?」
隣にいる営業部長は恐る恐る社長に尋ねるが、彼女は不敵な笑みを浮かべて
「大丈夫だ恋愛シミュレーションゲームで鍛えた私に不可能なんて無い‼」
その瞬間彼女は転職しようと決断した。
「(色んな意味で胃が痛い)」
控え室にいるアクアはストレスMAXで胃に穴が開きそうだった。興味本位で今回の仕事にOKを出してしまったことで事務所内は大騒ぎとなってしまい、撮影までの期間は徹底した管理が行われた。カロリーと栄養バランスのとれた食事と運動に睡眠時間も長く取らされ自由な時間が0に等しかった。壱護曰く「世間にお披露目をするのに中途半端な状態を晒すのはNGである」ということらしい
「(今なら上野のパンダの気持ちが分かると思う)」
既に撮影用の衣装に着替えた彼は鏡に写る自分を見て辟易していた。室内は全員集合状態でアイに至っては興奮しながらスマホのカメラを向けながらシャッターボタンを連射しているのを誰も止めることはしない。
「アクア大丈夫?緊張してない?」
「大丈夫、それよりもハイテンションなアイを止めた方が」
「もう名前じゃなくて『ママ』って呼んでよ!」
アクアは彼女のことを『ママ』や『母さん』とは呼ばない。アイがアクアとルビーを産んだことは世間に周知されているので週刊誌が食いつくようなスキャンダルにはならない。しかし世界は違えど自身の推していたアイドルに『母親』の呼び名を口にするのは気持ちの整理がつかなかった。なおルビーは普通にママと呼んでいる。嵐を呼ぶ5歳児が母親のことを『みさえ』と呼ぶから問題無い………はず
「もし嫌になったら言ってね」
「流石に引き受けた仕事を途中で放り出すことはしないよミヤコさん」
「ありがとうアクア!」
その言葉にミヤコは抱き着こうとしたが撮影用の服がシワになるので寸前のところでアクアは椅子を降りて躱した。しばらくすると外に立っていた警備員にスタッフが近づき撮影の準備が整ったことを伝え室内にいる面々はスタジオに向かった
「(どこの要人警護だよ)」
無理もないことである。アクア君のような存在は稀で撮影に応じてくれる子供の男の子なんて10年1人現れるかと言われている。耳ざとい企業は事務所ではなくここでアポなしの接触をしてお近づきになろうと画策してくるので警備が厳重になるのは当然のことだ!しかしどんなに固めても穴や綻びはどこかで生じてしまう
赤髪の少女はキッズモデルの撮影で現場に訪れていた。とは言っても指名されたという訳ではなく数多くいる子供たちの1人に過ぎない。カメラマンが撮影した写真から使えそうなモノをピックアップして雑誌やネットに掲載するので例えカメラにおさめられたとしても1枚も使われない可能性がある。無論ここに来るまでの倍率は高く選ばれた精鋭であることは間違いない
「ねぇ聞いた?別のスタジオで男の子が子供服の撮影やっているんだって」
「知ってるママが車から降りるのを見たんだって」
「どんな子だったの?」
「それが隠されてて、でも大人の男の人もいたよ」
近くでは他のモデルたちが撮影に来ている京プロのことを話していた。少女も彼に興味があったが話の輪に入るタイミングを逸してしまい浮いてしまっている。まだ自分の撮影まで時間はある
「(よし見に行ってみよう)」
子供の好奇心と行動力は恐ろしいものである。大人だと脳内で算盤をはじいてリスクの計算をしてしまうが彼女にそんな恐怖は微塵も無い。なんならカメラで撮影して自慢してやろうの意気込みが垣間見れた
「アクア君、笑ってみようか!お~いいね最高よ」
高速でカメラのフラッシュが焚かれ今日の主役をフレームの中に収めるが、カメラマンは鼻血をドボドボ流しながら興奮し血圧もMAXで急上昇中である。その様子をアイとミヤコは満面の笑みで眺めているがルビーを抱っこしている壱護は苦笑いの表情だ
「(昔の俺よりマシだけど、こうなるよな)」
彼も16~18歳頃にスーツを着用してモデル活動をしていたが、現場にいた女性たちは当時と今も変わらず男の姿をみるとケツを振って近づき懇意な関係になろうとアピールしてくる。しかも彼の頃は警備が不十分なことがあり夜の闇に消えた男も何人かいた
「じゃあ今度はこれに着替えてね」
本来なら控え室戻って着替えるのだが、アクアの面倒くさいという理由で撮影スタジオの隅に簡易で作った個室で衣装チェンジを行う。当人は「1人で着替えれるから誰も入らないで」と口にしていたので全員それを尊重するのであった
「ここならバレないよね?」
赤髪の少女はアクアの撮影が行われているスタジオに潜入することに成功した。近くには段ボールが捨てられいる。しかしスタジオ内に身を隠す場所は余り存在せず少女は隅に建てられた個室の中にいる
「しまった!ここだと男の子が見えない」
個室からは外を覗いたとしても撮影場所の方を拝むことが出来ない。かといって外に出てるのはリスキーすぎるしバレたら母親に特大のカミナリを落とされ激怒される。それだけは避けたい
「どうしよう?」
あれこれ悩んで打開策を考えていると外からドアの開く気配がしたので少女は相棒の段ボールの中に身を隠した
「やれやれ、俺は着せ替え人形かよ」
「(入ってキタ~~~)」
生身で動く同世代の男を見るのが初めてな彼女は興奮を隠すことが出来なかった。母は遺伝子提供で少女を産んだので父親は存在しない
「脱ぎにくいなこれは」
「(まさか、ヘソチラあれって裸?)」
上半身真っ裸のアクアを段ボールの中から直視した少女の心拍数はドンドン上がっていく、アンダーグラウンドなところでは男性ヌードの写真や動画が高額で取引きされることがあるが、一般では中々お目にかかれることは無い。テレビで芸能人水泳大会が行われても男はプールに入ることはなく外からの応援である。そして段ボールの中で悶えている少女にピンチが
「(怪しい、あの段ボール小刻みに震えてないか?)」
もちろんバレていた。どんなに頑張っても子供は子供である。中身が30過ぎのアクアにとって違和感満載のギミックでありニヤリと笑った彼の心の中に少しだけイタズラ心が芽生えた
「どっこいしょ」
「(えっ!ちょっとまっ、うえにつぶれ)」
アクアは少し勢いをつけて段ボールの上に腰を下ろした。子供の体重なので潰れることはないが段々と箱の形が崩れていく、少女は中から手を伸ばして潰れないように耐えている
「(耐えるんだ!ここでバレたら)」
鬼のような形相で頑張っている。この世界の女性は男よりも身体能力は高く同じ生活で同じトレーニングをした場合、圧倒的に女性の方が強く、赤ちゃんの時にアクアがルビーに力負けしたのはこれが関わっている。しかし上から押さえつけられる圧に耐えれるほど少女はまだ強くはない。歯を食いしばっていると
「中にいる奴、あと10秒だけ待ってやる!出なかったら分かるよな」
「(それって)」
「10」
カウントダウンが始まり残り10秒しかない、少女は脳内の細胞たちをフル回転させようとするが
「987654321」
きっちり10秒計る必要なんて無い早口で残りの数字を言われ、少女は彼を退けるように勢いよく飛び出した
「なんでここにいた?」
「君のことを見てみたくて」
「興味本位か、見れて満足したか?」
足を組んで椅子に座るアクアは床で正座する少女を見下ろしていた。誰かを呼んで侵入者を連れ出してもらえば簡単に済むことだが、そうなると撮影は長引くうえに面倒なことが起きて誰かが大きな損害を被る。アクアとしても直接的な被害も無いから無罪放免にするつもりだ
「お前をバレないように外に出す。いいかお前に拒否権は無いからな」
彼の圧に少女は頷くのを見ると携帯を操作して個室内に壱護を呼んだ。少女を見た彼は最初大声を出そうとしたがアクアが人差し指を口の前に立てて静かにするようにジェスチャーした。
「アクアお前はそれでいいのか?」
「大事になって面倒になるのが嫌なんだ」
作戦を聞いた壱護は少し悩んだがアクアのことを尊重し企みに乗った。作戦と言っても段ボールの中に身を隠した少女を壱護が持ち上げて外に脱出させるだけなので簡単である
「あの」
「何だ?」
「写真を…」
「お嬢ちゃん流石にそれは」
眉をひそめた壱護は少女を窘めようとするが
「貸せ!」
アクアは少女の持っていた携帯をひったくりカメラを起動すると肩を抱き寄せて2ショット写真を1枚だけ撮影した
「おいアクア」
「言っておくが二度とこんなことするな!そして俺を巻き込むな」
不機嫌満載の顔で若干イラついているが完全に邪険としている訳ではない。壱護はアクアがこんなことをするとは思わず少し驚いているが
「壱護~、アクア~どうしたの?中に入るわよ」
「背中のファスナーを上げてるからちょっと待って!」
そう言い返した後に彼は首の動きだけで少女に段ボールの中へ入ることを促し、それを確認したアクアは外に出て撮影を再開させた。壱護も段ボールの中をアクアの私物だと言って控え室に預けてくると言ってスタジオの外に出た
そして周囲に誰もいないことを確認すると段ボールを置いて少女を解放した。
「なぁお嬢ちゃん、くれぐれもその写真は外に出すなよ」
「うん」
「よし、約束してくれるならこれをあげよう」
壱護は懐のポケットから1枚のカードを差し出す。
「これは?」
「ブロマイドカードだ!実はアクアが芸能活動を続けたいと言ったら販売する予定のやつなんだけど、これは世間に出さない直筆サイン入りなんだ、もし約束を破ったら分かるよね」
その問い掛けに少女は頷いてカードを受け取り自分の撮影するスタジオに戻っていった
「あっ名前を聞くの忘れた!まぁ今日だけの付き合いだな」
壱護は段ボールを処分してからアクアたちの所へ戻る
「かな、どこ行ってたの?もうすぐ撮影なのよ」
「噂の男の子に会いに行ってきた」
母親はその言葉を聞くと顔色を変えて尋ねてきた
「どんな子だった?可愛い系?カッコイイ系?」
「じゃん」
「これって」
「会えなかったんだけど、近くにいた大人の人がくれたの」
そのブロマイドを見た母親は娘の肩を持つと
「かな、このアクア君と絶対に仲良くなりなさい!そうすれば幸せになれるのよ」
「分かってるよママ」
赤髪の少女『有馬かな』と『星野アクア』の出会いは今後の展開に何を及ぼすのか、それは執筆している作者にも分からない。
有馬母の毒親率を少し下げようと思います。毒親であることはかわりないのですが娘が幸せになるのならOKというスタンスで芸能活動も『自分の娘を見て男が寄ってきますように』という思いで、自身が未婚で子供を産んだので娘には伴侶を得てほしいという想いです。ゆくゆくは孫(男)が産まれて、「おばあちゃん」と呼ばれ「ばあば大好き」といわれるのを夢見てます。
貞操概念逆転モノは難しくて展開を作るのが難しいです。日曜までにもう1本更新出来るか分かりません。
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