なお最古の異世界転生(時間旅行)小説『アーサー王宮廷のヤンキー』も読んでいますが鈍器レベルで重たいです
ー子供服メーカー『シルバーステート』連日のストップ高ー
中堅子供服メーカー『シルバーステート』の株価が連日のストップ高を記録している。要因は男装アイドル星野アイの息子である星野アクア君がモデルを務めたことによる反応が市場にまで及んでいる。京プロの社長の夫である斉藤壱護氏も過去にモデル経験はあるがアクア君は史上最年少であり業界そのものが震撼している。何故彼が『シルバーステート』を選んだのかは不明だが母親と同じく芸能界に興味を持つのであれば台風の目になるのは間違いない
「こちら京プロの斉藤壱護です。アクアに依頼ですか?」
「そうですね。まずはアクアと相談してからでよろしいでしょうか?」
子供服の撮影が終わって数週間後やはりというべきか京プロの電話は鳴りっぱなしだった。二匹目のドジョウを狙うメーカーは多く、子供服や玩具に幼児用の栄養食と学習塾までアクアに手を伸ばしてきた。流石に全てを引き受けることは出来ずミヤコ・壱護・アイの3人で精査しているのが現状である
「ドラマにCM、雑誌の取材って労基署出て来い過労で逝かせる気か?」
「私たち1回死んでるけどね」
「なんでそれに付随してお見合い写真まで送られてきてんだ!」
別室で大きな口を開けるルビーにスプーンで掬ったアイスを放り込んでいる。別にアクアのことを召使い(飯使い)としている訳ではないが当人曰く「男の人に食べさせてもらうと美味しさが3割増しになる」と言っている。どうやら生前にこの世界の雨宮吾郎にも同じように食べさせてもらったみたいだ。なお母のアイも同様に”アーン”を強要してくる
「(俺は介護士か!)」
と心の中でツッコんでいたのは言うまでもない
「なぁルビーもし俺達の血が繋がっていなかったら、こうやって写真を事務所に送ってた?」
「それって私が健康で普通の家庭だった場合?」
ルビーの質問にアクアは頷くと彼女は目を閉じて腕を組んで悩んでいたが
「やるね!100%」
「その意味は?」
「アクアは死ぬ前も男だったから分からないと思うけど、生涯男の肌に触らないどころか会うことすら出来ずに死んでいく女の子って多いの」
鼻息荒く迫ってくる姉の肩を持って、これ以上近づくなというアクションを起こすが猪突猛進ガールのルビーの勢いは止まらない
「学校の先生やっていたんなら生徒達の視線やばかったでしょ?」
「あぁ、何なら同僚や保護者の方からも熱い眼差しを受けていたよ」
高校教師をしながら遺伝子提供者をやっていた偽の経歴を、ルビーの質問から上乗せさせて自身が別世界の雨宮吾郎であることを隠すカモフラージュにしていた
「ミヤコさんのように結婚出来る人なんて極一部なの、ママみたいに遺伝子提供を受けて子供を産むのが大半なんだけど、お金が無くて中には妊娠すら出来ない人もいる」
ルビーの言うように家庭の事情も関わってくる。これはテレビのワイドショーで医療関係者が述べていたことだが、産まれた子供が女の子だと病院に置き去りにしたり都道府県に設置してある赤ちゃんポストに投函される事例が年々増加傾向にあると
「だから小さい可能性に賭けて”私の夫になってください!”って申し込むの」
「なんかそれって男のことをアクセサリーと思ってない?」
「そういう人もいるけど私は『せんせ』のことを心から愛している。アクセサリーなんかじゃない共に歩いて子供たちに囲まれてキャッキャウフフな生活をおくる!」
背景に某映画の冒頭に映る波しぶきが見えたのは幻覚だろうか、力強く握った拳を高くあげる姉を見て、この世界の雨宮吾郎が『さりなちゃん』から愛されていたんだと実感した
「(やってることがシンデレラだな童話と違って主役は女の子ではなく王子様だが、舞踏会に参加する娘の母親や魔法使いのお婆さんまで狙ってきている。しかもガラスの靴は1足じゃなくても構わないか…)」
「YouTubeですか?」
あくる日事務所では来訪者がいてミヤコと壱護が対応していた。相手は世界の誇る検索エンジンの日本支社の営業担当であり、机の上には様々な資料が置かれていた
「ご利用したことは?」
「料理動画や日常生活の裏ワザみたいなやつは目を通しているな」
「それがアクアと関係するのでしょうか?」
ミヤコの質問に営業は”フフン”とでも言いたげそうな表情をして資料を開いていった。
「アクア君に動画投稿をやってほしいんです」
「はい?それって」
「今の世の中、パソコンや携帯で動画を見るのが簡単に出来るようになったじゃないですか」
その言葉に夫婦は頷くと続けて
「でもまだ知名度だとニコニコ動画に劣ってしまって、そこでアクア君には動画投稿を行ってもらい知名度の向上と市場の拡大の広告になってほしいんです」
「でも投稿って何をすれば?」
「最初は自己紹介でいいですが1つお聞きします。メーカーや企業からのオファーが殺到してますよね?」
「えぇ、正直なところ毎日山のように電話が鳴ってますね」
壱護が本体であるグラサンを外して答えると
「それを案件動画として受けるのはどうでしょうか?今のシステムだと決められた日に撮影現場に行って長時間拘束されて動画や写真を撮っていると思いますが、モノさえあれば事務所でも撮影することは可能です」
「つまり好きな時間に働くことが出来るということですか?」
「その通りです。企業側が主体ではなく投稿者側が主役なんです」
「でも撮影や編集のスキルなんて」
若干ミヤコが渋い顔をするが
「無論、我々の方でやり方を教えます。それに『動画編集の仕方』という映像を投稿することが出来れば、興味を持つ人が増えて『私もやってみようかな?』『YouTube面白そうだな』という空気を作り出すことが可能です」
「素人の動画を見て面白いのでしょうか?」
「素人だからいいんです。台本通りでガチガチに固まって演じるよりも視聴する側は、ありのままのアクア君を見たいんです」
顔を真っ赤にして興奮しているが更にもう1つの資料を出してきた
「これは始まったばかりのサービスですがLIVEというのがあります」
「LIVEということは生放送ということですか、でもそれってニコ生と一緒じゃあ」
「確かにパクリかもしれませんが、私はこのLIVEが時代の覇権を握ると思っています」
彼女の意気込みは本気であり熱意は2人に対して十分に伝わっていた
「分かりました。アクアにこのことを伝えます!」
「本当ですか?」
「もちろん彼の意志を尊重します。動画投稿によってプライバシー侵害や個人を攻撃するようなことがあれば撤退させていただきます」
「ありがとうございます」
営業は土下座する勢いで頭を下げて2人に礼を言って事務所を後にした。
「どう思う?」
「時代の開拓者はメリットとデメリットの両方を受けるわ、でも恐れていたら何も始まらない。もちろんアクアが「やりたくない」と言ったら止める。無理強いだけはさせたくない」
「そうだな俺達のワガママばかりを押し付けるのはダメだな、そろそろアクアの散歩の時間になるぞ、ルビーの面倒は俺とアイで見ておくから」
「ありがとう壱護」
時計を見た壱護は妻の上着を持ってくると互いに愛している行為を行い見送った
「今日はどこ歩くの?」
「水辺はどう?お魚さんが沢山いるわよ」
「じゃあそこに行く」
手を繋ぐ2人はまるで親子のように歩いて目的地に向かった。アクアの散歩と銘打っているがいわば屋外運動である。この世界の男児は単独で屋外に出ることはほぼ禁じられている。もちろん誘拐される恐れがあり、男児を持つ家庭はおのずと箱入り息子状態になってしまう。前世が普通の世界だったアクアにとって1日中屋内にいるのはストレスになるので、こうやって屋外に出ることを大人たちに頼み込んだ。交渉により週2~3回の散歩が出来るようになった
「ねぇアクア」
「どうしたのミヤコさん」
「実はアクアに変わった仕事の依頼が来たの」
「どんなの?」
「YouTubeで動画を投稿するの」
ミヤコは散歩前に話していたことをアクアに伝えた
「いったい何の動画を投稿するの?」
「スタジオじゃなくて事務所でメーカーから送られた玩具で遊んだり子供服を着て、世界中の人達に見せるの」
「ふ~~ん」
「あら興味ないの?」
「ううん、そんな動画見る人がいるのかなって」
「そうね、私も分からないけど今より自由な時間は増えると思うわ」
その言葉にアクアは悩んだ。子供服の撮影では終わった時には忍たま乱太郎が終わっている時間だった。無論撮影したカメラマンが興奮したのが原因だが、これが毎回続くなら芸能活動を辞めようというのも考えていた。動画を投稿は未開の境地だが自由な時間が増えるのはありがたい。それならOKの返事をしようとした瞬間
「ミヤコさん誰か倒れている」
「えっ本当!しかも男?アクアそこの自販機まで連れて行くわよ」
彼女は倒れている金髪男性の足を掴むと引きずりながら自販機まで運んだ。しばらくすると目を覚まし手渡されたセンブリ茶を飲んで助けてくれた礼を述べてくれた
「あなたは?」
「カミキヒカルです」
アニメで高校生編をやっているのが24年か25年だったので、逆算すればYouTubeに勢いが出てきた頃になるのでアクア君には広告塔になってもらうつもりで執筆しました。サザエさんと違って時系列で成長してくれる為、リアルの出来事と組み合わせるのが楽になります。
ここで父親登場ですが、足で引きずっているときは顔の方が地面を向いています。
月曜から仕事なので、更新出来るペースは落ちると思います。
お気に入り登録の人数が一気に増えて驚きました。評価や感想を書いていただき誠にありがとうございます。