男女比がおかしい世界に産まれました   作:大気圏突破

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前話に多くの感想を書いていただき誠にありがとうございます。これからがんばって執筆していきます。


北の大地に下水道博物館が出来るフラグが立ちました

 名も知らぬ奇妙なお兄さんとの出会いを経験したアクアは決して天狗にならないと心に誓った。ありがとうお兄さん!貴方のことは3日間ぐらいは忘れないと思う。家族とお幸せに!事務所への帰り道で手を繋ぐミヤコに投稿者になることを承諾した彼はパソコンで似たような動画をザッピングしていった。

 

 

 

「基本的な流れは開封して実機に触れて試すのか、そもそも何で開封するシーンを入れるんだ?最初から出していたら時間を短縮出来るのに、しかもリアクションがいちいちデカすぎる字幕も大きくて商品が隠れているじゃないか」

 

 やはりというべきか前世が医師ということもあり、無駄を嫌い非効率を美徳とする文化にNOを突きつける精神を遺憾無く発揮していた。

 

「やっていることは通販番組と一緒なんだよな、でも通販の場合は購買意欲を高める為に過去のモデルと比較してメリットの提示がメインとなる。いくつか投稿されている動画も過剰なまでに褒めていやがる」

 

 アクアは医師だった頃に製薬会社の営業との会話を思い出していた。彼等も自社製品を売り込む為に必死で美辞麗句を並べて反応の悪い人には袖の下を渡していた。現場の声を伝えても響くことは無く、求めるモノと与えるモノに大幅な乖離があった

 

「う〜〜ん、他人の真似事をしても意味ないし」

 

 与えられた仕事を台本通りに演じるのは容易い、しかしそれではロボットと大差ない!世間は商品ではなく『商品を扱うアクアに注目』している。限定・妥協・満足は成長を阻む、作られた『星野アクア』を演じ続ければチヤホヤされるが行き着く先は大人のオモチャである。椅子の上で腕を組みながら自問自答していると

 

 

「だ~れだ?」

 

 幼い声で表面は少し冷たいけど芯は温かい手のひらに目元を包まれた。無視しても良かったが2日前に同じことをやったら「アクアが反抗期になっちゃった~」と泣き出してしまい、謝罪するとケロッとした表情で「じゃあ今日は一緒に寝ましょうね~」っと、寝室に連行され下着姿のアイに抱き着かれたまま天井の染みを数えていた。なお反対側にはルビーが張り付き『嫐(なぶる)』という漢字が完成していた。

 

「手はアイで声はルビー」

「せいか~い」

 

 アクアが答えると背中にアイが抱き着きルビーは膝の上に乗って来た。

 

「あ~これね!ミヤコさんの言ってたYouTubeの投稿のやつ」

「うん、見本を探してた」

 

 息子の頭の上にアゴを乗せてくる母親は操作していたマウスに自身の手を重ねて、いくつかの動画をザッピングしている。

 

「みんな同じだね!女が男に媚を売るようにお尻を振って褒めてもらおうとしているんだもん」

「吐き気を催すレベルで気持ち悪いね」

 

 結局のところ上っ面の良い言葉を並べて称賛し売り上げが伸びれば次に繋がる。こんなところにYESウーマンを作って何が面白いのか?必要なのは褒めることよりも改善点を指摘することでは?と思うアクアだったが

 

 

 

「この服ってルビーが嫌がっていたやつじゃん。何が着心地抜群よ!」

「肌がチクチクして嫌だった!」

 

 頬を膨らませてプンプンと怒るアイは女児向けの子供服を紹介している動画を再生していた。映像には靴のサイズも合っていないのかモデルウォークをする子供が映っているが表情がぎこちない

 

「アイは服を選ぶ時に何を基準にしてる?」

「アクアやルビーの服ってこと?」

 

 返ってきた母親の質問に頷くと

 

「デザインよりも着心地や色落ちしないことに、あとは耐久性かな!ルビーは私に似てアグレッシブだからね」

 

 そのアグレッシブによって不幸な道を歩んでしまった青年もいるが、子を育てる親目線とメーカー側の目線に大きな溝があることを理解した

 

「(そういえば看護師たちの買い物に付き合ったときも似たようなことを言ってたな、当時は聞き流していたけど市場は女性が作るというのは間違いないな)」

 

 当時のことを振り返り思案にふけっていると

 

「アクアはどんなことをやりたいの?」

「とりあえずは判断材料を与えたいかな」

「判断材料?」

 

 アクアの膝の上で自身の匂いを擦り付けるように抱きついている姉は頭に「?」を浮かべて聞き返してくる

 

「現地で買えない人やネット通販メインの人にとって購入を考えている商品の情報って喉から手が出る程に欲しいモノなんだ。良いところばかりを提示されて買ってみたけど自分には合わないことが起きると、次の1歩が踏めなくなってしまうから」

「アクアもう少し分かりやすく説明して」

 

 割と簡単な説明なんだがアイの口と頭から煙がモクモクと噴き出し脳内のCPUが熱暴走を引き起こす寸前になっていた

 

「良いところも悪いところも見せましょう」

「なるほど!あっそうだアクア宝探しはどう?」

「宝探し?」

「この世界には沢山の会社があるでしょ?規模が小さくても良いモノを作っているところだって」

 

 アイの言っているのは1つの企業における縦の比較ではなく、似たような商品を出す各企業における横の比較である。大企業は資金力を武器に大きく宣伝して売り込むが中小企業にはそれが出来ない。ならアクアがそれを引っ張りあげれば良いというのが彼女の考えである

 

「(大企業ほど驕り昂る。利益を優先してユーザーのことを蔑ろにしてしまうか)」

 

 

 北海道にあるハコモノを思い出してほしい、役人(企業)たちが球団(ユーザー)からの声を無視し使用料を値上げした結果、球団が「自前で作るから」と言って出て行かれてしまい大赤字となったことを、努力を怠り場当たり的なその場しのぎの対応でお茶を濁そうとしているが土台が腐っていたら倒壊するのを待つだけである

 

 

「私この服が好き!」

 

 ルビーは大手通販サイトを開いて、見聞きしたことがないメーカーの女児服を表示していた。評価数自体は少ないがコメント欄には子を持つ女性の意見と感謝の言葉が並んでいる。彼女はそれをカートに入れて購入ボタンを押そうとしたが弟に阻止されると、彼の胸に人差し指をつきつけ「おねが~い」と強請ってくるが無視した

 

 

 

 

「まずはミヤコさんたちに相談してからだ」

「そうね、ところでアクア散歩で汗を流したよね?」

「アイ?なにを…」

「汗臭いままミヤコさんに会うのはエチケット違反だよ」

 

 逃げ出そうとするが膝の上に座っているルビーが子泣き爺のように抱きついて離れない。もう力勝負では姉に勝つことは不可能なアクアは火事場のクソ力を発揮することが出来ず、バスルームに強制連行されてしまった

 

「素数を数えきるまで肩まで浸かる」

「一生終わらないよ」

「じゃあ私が満足するまで」

 

 アイは湯船の中で背中からアクアを包み込むと細い指で息子の体を触り続けていた。鎖骨から胸に脇腹をくすぐるように今度は下の方に伸びていく

 

「アクアも大分成長してきたね」

「ちょっとアイどこを?」

「ねぇアクアはどんな女の子がタイプ?清楚な人?それともセクシー系?」

「私も入れてよ~」

「年上のお姉さんもいいね」

 

 こんな母親でも息子の将来についてはちゃんと考えている。伴侶を得て幸せに暮らして子供が産まれたら、孫の成長を楽しみながら入学式や運動会でカメラを片手する妄想に「フヘへッ」と笑みを零していた。人々を照らす星にもなってほしいが自分のことを蔑ろにはしてほしくないと願うアイであった

 

 

 

 

「面白い試みね」

 

 身を清めてから斉藤夫婦の所へ向かい、アイの考えた骨組みに肉付きを行ってミヤコにプレゼンしたアクアはゲッソリとした表情だったが良い返事をもらえたことに心の中でガッツポーズをした

 

「ただやりすぎるとクレームになるから動画を撮影する前にコメントを伝えて頂戴」

「撮影の方は大丈夫?」

 

 気になっていたことを問いかけると

 

「壱護が張り切っているわよ!カメラも経費で落ちるからってカタログと睨めっこしちゃって、担当の人と熱くなって、子供じゃないんだから」

 

 思い出し笑いをするようにミヤコが頬を緩ませていたがすぐに表情を戻し

 

「アクア今回のことが成功すればアナタの知名度は一気に上がるわ」

「うん」

「でもそれは同時に狙われやすくなると同じことよ、籍を入れる前に壱護が口にしていたけど『有名になると誰かに尾行されているじゃないのか?もしかしたら誘拐してくるかも』って、でも怯えないで私たちはアクアのことを絶対に守るから!」

「ルビーも入れてあげて」

「分かってるわ、血は繋がっていないけど私たちにとっても2人は可愛い娘と息子なんだから」

 

 手を伸ばして彼を膝の上に乗せるとアクアを腕の中に包み込んで、優しく抱きしめる

 

「ミヤコさん苦しいって」

「もう少しだけお願い」

 

 今しか味わうことしか出来ない幼児特有の温かさと柔らかさ、シャンプーと入浴剤の香りを堪能しながらアクアを胸に埋めていく、普段の彼なら逃げ出そうとするが社長業の報酬にこれぐらいことなら体の1つでも貸してやろうと思うのであった

 

 

 

 愛してくれる母がいる。弟に欲情する姉がいる。手を差し伸べてくれる味方がいる。アクアの周りには千差万別多種多様な人がいるが彼のことを第一に考えてくれる。奉公とは違うが彼女たちの期待に応えてあげるのが人の心、失敗を恐れるのではなく挑戦する精神を持ち続けることが何よりも大事である

 

 




動画投稿が切っ掛けで他の原作ヒロインたちとの接点(星野アクアの存在を伝える)に出来ればいいかと

アクアはミヤコさんには割と心を開いています。彼の中身と彼女の年齢が近いというのもあって心を許している感じです

感想を書いていただき誠にありがとうございます。評価を入れていただき誠にありがとうございます。執筆の励みになります
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