ポケモンの世界 その名もテイワット
僕は空。
詳しくは言えないが、宇宙船で妹の蛍と2人でいくつもの世界を巡る旅を、時にはその世界を救ったりしてきた。
…今は、数日前にある世界を発って、今はちょうど暇な時間だった。
蛍が暇すぎると言った結果、この船の積み荷の大部分はゲームや菓子にマンガといった惨状になっている…
「お兄ちゃん!見て見て〜!」
そんな時に蛍が見せてきたのは、ゲーム機の画面。
画面には、蛍のアバターと6匹の生き物の上に、「でんどういり」の文字が躍っている。
「これって、凄いやつだっけ?」
「そうだよ!これでやっとエリアゼロに行けて……」
分かっていない僕に一瞬不満を浮かべた後、蛍は再び画面に目を落としてしまった。
僕も暇なので読んでいた小説の続きでも読もうかとした時、突如衝撃が走る。
空間が丸ごと激しく揺れ、赤いランプが明滅した。
「何!?」
「分からない!」
急いで船首のモニターを見ると、船の外に誰かが浮いていた。
「誰だ!」
画面越しで聞こえていない筈なのに、返事が返って来る。
「余所者、お前達の旅はここまでだ。」
「私達に何する気!?」
蛍も流石に遊んでいる場合では無く、飛んできみたいだ。
「この「天理の調停者」が、人の子の奢りに終焉を。」
天理の調停者と名乗る女がそう言った、次の瞬間。画面が黒い立方体に覆われ、さらなる衝撃と共に僕達の視界は暗転した…
「お兄ちゃん!」
聞き馴染みのある声で目を開けると、もちろん蛍が立っていた。
見回すと変わらず船の中のようだが、何かがおかしい。
「これって…墜落?」
「たぶん…」
違和感の正体は、床の角度がおかしいこと、それにシステムが停止していることだ。
更には、自分達の持っていた筈の力を全く感じない。
「力が…」
「ほんとだ…!光の剣も光の羽も出せない…これじゃスライム程度でも苦戦するんじゃない…?」
「能力を取られた?そんな事在り得るのか…」
考えても仕方がないので取り敢えず船から出ると、船はどこかの崖下の砂浜に斜めに突き刺さっていた。
「そんな……」
「船が…」
「……ねえ、あれは何だろう?」
「何だろう、布かな?」
墜落した船のすぐ近く、蛍が指差した場所には、星空の様に煌めく布状の物が落ちていた。
近付いて見ると大部分が埋まっているようだ。
「埋まってる?…何だろう?」
「えいっ!」
蛍はその物体を躊躇いなく引っこ抜いた。
「ちょっとは躊躇したほうが……」
布はその物体が着けていたマントだったようで、その物体には足と、手と、頭と………
「うぅ…オイラ死ぬかと思ったぞ!」
「喋った!」
驚いて蛍は手を離したが、物体は宙に浮いたままである。
謎の物体はこちらを振り向いた。
「浜辺で釣りをしてたら、急にあれが降ってきたんだ…」
「何だろう、小さくて、言語を解する…」
「それに浮いてる…とても釣りできるとは思えない。」
「見たことのない生き物だ……」
僕達はこれが何の生き物なのか考えたが、よく分からなかった…
「オイラ、そんな変な奴じゃないぞ!?…オイラはパイモンだ!オマエ達こそ見たこと無い格好だな…?」
「変な奴に変って言われた!」
パイモンと名乗る知的生命体と会話をした…
「…じゃあ、オマエ達はさっきのに乗って飛んでいた所を、「天理の調停者」とか名乗った奴に落とされたんだな?」
「そうだね。」
「ここどこ?」
質問攻めをする蛍。
「…え~っと、この世界ならテイワットで…、ここはモンド地方…。とにかく、一旦オイラに着いて来い!まずは「モンド城」を目指そう!」
僕は賛成したが、蛍は反対のようだ…
「こいつ、はっきり言って怪しい。」
「確かに…でも、まずは町のある所に行ったほうが良いと思うけど…」
「……まあ、お兄ちゃんがそう言うなら。いざとなったら倒せばいいし。」
「それに船も直せるかも…」
「待て!?オイラを倒そうとするな~!」
旅立つ前に一度、改めて船を確認してみると、重要なパーツが無くなっているみたいだった。
これでは飛べないだろう。
船を何やかんやのシステムに則ってバッグに収納する。
「よし、行くか。」
「待て!?あんな大きいのが一瞬で…どうなってるんだ…!?」
その後は、結局パイモンとやらについて行く事にした。
蛍も渋々付いてきてくれた。
「見ろ!あれがモンド城だ!」
そう言ったパイモンが待つ丘に登ると、森や小さな町と草原の向こう、湖の上に浮かぶ城の姿が見えた。
「あれがモンド城って所か。」
「すごい…」
城を目指して歩き出そうとした時、近くの茂みから何者かが飛び出してきた。
「偵察騎士見習い、アンバー参上!」
颯爽と現れたのは、アンバーと名乗る赤いリボンの髪飾りを付けた少女。
「こんな所に人が、見慣れない服の2人に変な奴…」
「僕は空。」
「私は蛍。」
「オイラ変な奴じゃないぞ!」
見慣れない服扱いされるのはもとよりこの世界の住民では無いから慣れたことだが、このパイモンとかいうのも変らしい。
それ以前に普通の人がこの世界にいると分かって少しホッとした。
第一村人が変な奴だったならなおさらだ。
「これが何なのかは知らないけど…」
「私は非常食だと思う。」
「知らないの?うーん、ポケモンじゃなさそうだし……」
アンバーの言った言葉に僕は違和感を覚え、蛍は思わず声を上げる。
「ポケモン、いるの…!?」
「蛍だっけ…急にどうしたの!?」
僕の知る限り、ポケモンと言うのはあくまでもキャラクターだった覚えがある。
「えーと、ポケモンって言うのは…その辺にいる生き物、で良かったよね?」
「そうだよ!良かった、流石にそのくらい知ってるね?」
「も、もちろん知ってるよ!バトルもお兄ちゃんより上手いし……」
そういえば、僕も少しはやったが蛍はポケモンのゲームをよく遊んでいた覚えがある。
船が墜落する直前にやっていたのも恐らくそうだ。
「バトル、出来るの?…そうだよね!?じゃあ、1戦やる?」
「えっ……!?」
発言を間違えたことに気づき硬直する蛍。
現実のポケモンバトルは蛍のやったゲームとは違い、ターン制では無いはずだ。
蛍には持ち前のセンスがあるから、問題はないと思うが、そもそも僕達は一匹もポケモンを捕まえていない……
騎士見習いのアンバーが 勝負を仕掛けてきた!
「行けっ!ヤヤコマ!」
アンバーは、お馴染みの赤と白のボールを掲げ、見覚えのある鳥型のポケモンを出してくる。
「行けっ、パイモン!」
「オイラはポケモンじゃないぞ!?」
焦った蛍はパイモンを繰り出した。
本人の言う通り、どちらかと言えばポケモンでは無さそうに見える。
「ひのこ!」
「パイモン、まもる!」
「無茶言うなー!!」
しかし、パイモンの前に現れた膜は、たしかにアンバーの明らかに手加減された一撃を防いだ。
「つばめがえし!」
「えっと…捨て身タックルで強行突破!」
「だからオイラポケモンじゃないぞ〜!」
そう叫んだパイモンとオレンジ色の鳥が衝突し、案の定押し負けたパイモンの目の前は真っ暗になった。
「たぶん、もうポケモン持ってないよね…?私の勝ち、でいいかな?」
「う、うん…」
蛍は負けてしまった…
「そっちの白い子は分からないけど…君の指示は良かったよ!」
そう言って少女アンバーは歩いていこうとする。
「あの、どうすれば…?」
「どうって…そっか〜。君達、やっぱりここ慣れてないね?連いてきて!それならモンド城まで案内するよ!」
こうしてモンド城へ向かう途中、僕たちは小さな町に立ち寄った。
町の中央のドーナツ状の池が有名らしい。
小型の風車が並び、通りにはパンの香りがする。
「オイラもう腹ペコだぞ…何か食べないか?」
「……払うのは僕たちなんだけどな…」
「まずここのお金は持ってない。」
ジャラジャラ音がする財布を見てがっかりする蛍。
少なくとも手持ちの信用ポイントだとかディニーでは払えそうにない。
今回も、大きめの町に行って他の世界で手に入れた宝石類を売る他無いだろう。
とはいえ久しぶりに見たのどかな町の空気に少しだけ安心した。
蛍やアンバーに連れられるまま町中を歩いた。
ポケモンセンターの建物なんかもイメージのままの姿で建っている…
金もないから町を抜け、少し進んだあたりでアンバーは急に立ち止まる。
「……危ない! みんな下がって!」
「なんだ…?」
「えっ…?」
「蛍!」
警告が間に合わずに蛍は石を踏んで転んでしまった。
「いてて…」
「やっぱり。イシツブテ!」
「まずい、出たぞ!?」
地面の石ころが腕を伸ばして起き上がる…
ただの石で転ぶ筈もなく、蛍が踏んだのはイシツブテだった。
アンバーは素早くボールを構える。
「ヤヤコマ、でんこうせっか!」
ボールから勢いよく飛び出した小鳥がイシツブテにぶつかり、相手を弾く。
「お兄ちゃん!向こう!」
何匹もの増援が転がってくるのが見える。
「アンバー…まだいっぱい来てる!」
「分かってる!でも多すぎ!」
その時、弦楽器の音色が聞こえてきた…
「あっ、この音って確か…!」
「知ってるのか?」
突如、上空から一陣の風とともに大きな鳥ポケモンが舞い降りた。
「ムクホーク。ブレイブバード。」
一撃でイシツブテ達は吹き飛び、逃げていく。
僕たちが声のする方を見れば、木の上で一人の青年が楽器を弾いていた。
恐らくライアーという物だろうか。
「次からは、街道沿いでもそのくらいは気を付けてね?」
「なんかこの人怪しい…」
「助けてあげたのに初対面で怪しい扱いは酷いよ~?」
「あの人…いつもモンド城で演奏の代わりとか言って金がないのに酒を飲んでる人だよ!」
「うっ…」
トレーナーとしては強いようだが実状は割とただの酒飲みなのだろうか。
蛍の言葉に肩をすくめる青年。
「ところで、君たちはモンド出身じゃないよね?」
「モンド…か。ここに来たのは確かに初めてだよ。」
「へぇ…」
目を細めてこっちを見つめる青年。
彼は何かを閃いたようにポケットから何かを取り出す。
「大体わかったかも。それなら…、君たちが期待してるのはこれじゃないかな?」
青年は三つの球を並べた。
見慣れた赤と白のツートンカラーに丸いボタン。
「…これって!」
「モンスターボールだ。」
「君たちに丁度いい三匹だよ。さっきみたいなことが無いように持っておくといい。」
ボールから溢れた光に一瞬目を閉じる…すぐに見覚えのある生き物が現れた。
「へへん!ここはオイラが解説しよう…こいつはフシ……」
「フシギダネ、ゼニガメ、ヒトカゲ!!」
パイモンの解説を蛍が遮る。
三匹のポケモン…硬い甲羅のゼニガメ。尾の炎を揺らすヒトカゲ。大きな芽を背負ったフシギダネ。
「どう、お馴染みでしょ?…君たちの心が惹かれた子を選んでみたら?」
蛍は迷わずヒトカゲに手を伸ばした。
僕は少し迷ったが、落ち着いた雰囲気のゼニガメを選んだ。
「勿論返品は不可。ちゃんと可愛がってあげてね?」
「この人、博士には見えないけど…」
ヒトカゲを撫でながらそうこぼす蛍。
「この余った子は…赤いリボンの子が好きらしいよ?」
「それって、私!?」
「う~ん、ちょっとお節介だったかなぁ~?」
「いや、この子は私の!」
「…よし。これで三匹とも旅に出られるね。」
アンバーは青年からフシギダネを受け取った。
「君たちなら大丈夫そうだね…。名乗るほどの者じゃないけど、旅の無事を祈ってるよ。」
そう言った詩人の奏でる音色に耳を傾けていると、音が途切れたころには本人はもういなくなっていた…
「今の人……誰だったんだろう?」
「まあ、悪い気はしないね!」
「消え方とかもすっごい怪しかったけどな…?」
丘を越えて行くと、すぐに湖と城壁が見えてきた。
湖に浮かぶ街、モンド城。ひとまずの旅の目的地はもう目の前だ。
アンバーが門番に事情を話すと、あっさり通してもらえた。
石畳の広い通りが大きな像のある上へ続いている。
風車や露店が並び、人々とポケモンの声が混ざってにぎやかだ。
「王道ファンタジーって感じでいいな。」
「確かに!カフェがあって…レストランも!…あっちはポケモンセンター…」
蛍は今回も見慣れないいろんな物に目移りしている。
「全部見ようとしたら日が暮れるな。ほどほどで蛍は止めないと…」
「…そりゃそうだよ~。モンド最大の町で騎士団本部もあるんだから!」
噴水と、多分ポケモン用のバトルコートのある広場に差し掛かった辺りで、急に横から声が割り込んだ。
「外の顔だね。」
「オマエは誰だ!?」
振り向くと、暗い青の髪と服に眼帯の男が立っていた。
目を細めて笑う仕草が、どうにも油断ならない。
「俺はガイアだ。アンバー、この人達は?」
「えっと…モンドに来たのが初めてらしくて……」
「うん。僕は空。妹の蛍と旅の途中なんだ。」
「オイラは拾われただけだぞ…!」
自己紹介と軽口を交わしたあと、ガイアは僕らに視線を移した。
「旅のトレーナーか。モンドへよく来た。…ただ、あまりのんびり観光はできないかもな。」
「それってどういうこと…!?」
蛍が聞き返す。ガイアは噂を語って聞かせた。
「風魔龍ことトワリン…。モンドを護っていたはずの伝説の龍が、最近は人里を襲っているんだ。」
「ドラゴン!?」
「そんなのが居るのか…」
「奴に関する伝承なんかも多いんだが……それ関連で騎士団の上層部がきな臭い。」
「じゃあな。モンドに居るならどこかでまた会うかもしれない。」
ガイアは軽く会釈して去っていった。
蛍はガイアの話を聞いて目を輝かせている。
「…伝説のポケモンだって!!見たい!捕まえたい!」
「風魔龍を捕まえるなんて…そんな簡単にいくものじゃないから!」
「まあ、蛍は今までに色々とドラゴンとかを倒してるから大丈夫かも…」
「そんな凄い奴だったのか!?」
「…しかも何匹も!?」
その夜、宿に落ち着いた頃。
蛍とロビーでこの世界の新聞でも読んでいると、外からきれいな音色が聞こえてきた。
音のする方を見ると、街灯の下で一人の吟遊詩人がライアーを弾いていた。
「やあ、また会ったね。モンドちほうへようこそ!そういえばモンドの酒はもう飲んだ?オススメはリンゴの…」
「あっ、私達に御三家をくれた怪しい人!」
「だから怪しくないって~。…そうそう、僕はウェンティだよ。」
蛍に言葉を遮られ、今更ながら名前を名乗る青年。
この辺りはモンドという所らしい。
「君達、とくに君は、トレーナーとしての腕を磨きたいんじゃない?」
「もちろん!」
蛍はほぼ初対面のウェンティにも分かるほどやる気のようだ。
「ジムを巡ってバッチを集めるリーグ制度って知ってる?」
そう言って、彼は一枚のモンドの地図を差し出した。
地図には六つの印が打たれている。
「君たち、せっかく旅してるんだし挑戦してみない?」
「ジム巡り…!もちろん挑戦するよ!!」
「モンドではあんまり聞いたことないけど…」
「…それは、モンドリーグが実は出来て十年も経ってなかったりするからなんだけど…」
蛍はやっぱり目を輝かせる。
「私も興味あったけど、君達と一緒なら…それにフシギダネも貰っちゃったからね。」
「お兄ちゃんも、絶対強くなれるよ!」
「そう言われると断れないな……。まあ兄として少しは恰好を……」
「それで、6か所巡ったらチャンピオンとか出てくるの?」
蛍はウェンティに楽しげに聞いた。
「そりゃあ勿論!…でも、チャンピオンが誰なのかは公表されてないんだよね~…」
「…あ、チャンピオンに勝ってチャンピオンランクになるとワールドチャンピオンシップに出れて、そこで優勝するとなんでも叶う…なんて聞いたこともあるよ?」
「なんでも叶う…か。厄ネタでおなじみだな…」
ウェンティは満足げに微笑んだ。
「最初のジムはここから東の幽夜城って場所。ちょっと変わった子がリーダーをしてるらしいね?」
「それって、どう変わってるんだ?」
「まあ、ヒ、ミ、ツだよ。それじゃあみんな頑張ってね!」
「なんだか、嫌な予感がするね…」
「とにかく、早速行こうよ!」
「…望むところだ。一応。」
「私も私も!」
僕たちは成り行きのまま冒険に出る決意を固めた。
「それじゃ、冒険に出発だぞ!!」
「……パイモンはなにもやってない…!」
以下、設定公開ゾーン
空:蛍の兄、本作の主人公及び原神の主人公。一応主人公の器。
落ち着いた性格であり、サ◯シ等よりパンチが弱いので今後に期待。原神のものよりは全然喋る。
ポケモンについては、蛍に散々対戦を付き合わされたから大体は知っているが、最近のポケモンは未履修だったりもする。
蛍:原神の主人公にして、多分本作におけるライバル枠。ブラコン説が有力。兄より行動力がある。また、今まで数多の世界でそのバーサーカーっぷりを発揮してきた可能性がある。
ポケモンについては、どうやらSVのチャンピオンを倒すところまでやっていた様だ……
パイモン:実は非常食でもポケモンでも無いとされる生き物。ロトム図鑑に毛が生えた程度の性能をしているが、食費がかさむ分こちらの方が下だと思われる。
また、原神世界を書くうえで欠かせないのに、もうツッコミ枠は足りているし肝心の正体が謎といった扱いに困る生き物。
アンバー:何故か(筆者もそう思う)旅に同行することになった一般通過のアンバー。原作と違い見習いだったり、ちょっとステータスが下がっている模様。
ちなみに、本作はまずキャラごとに持っていそうなポケモンを考えてから書いています。この世界では、大くのキャラクターがある程度ポケモンの影響を受けてバトルに肯定的になっているかも知れない…
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