研究所の窓に吹雪が叩きつけられる音が響く中。
「これから、風魔龍を救いに行くって話?」
「そうだ。しかし、騎士団は僕らより一足早くついに風魔龍の討伐に動いた。」
机の上に、簡易的な地図が取り出される。
「戦闘を避けても完全に回り込む時間はない。どちらにしろ、風龍廃墟で必ず騎士団と衝突するはずだ。」
蛍が腕を組んで返す。
「つまり、突破するんだね?」
「そうだ。」
アルベドは否定しなかった。
「あのおっそろしい騎士団を相手に正面から!?…本当にできるのか?」
「そのためにも、君達が協力してくれると非常に助かる。」
蛍は一瞬嫌そうな顔をした後、すぐに肯定した。
「私は全然いいよ。」
ここまでに話を聞く限りだと、風魔龍はこの国にとっても殺すべきじゃない筈だ。
今までに作戦を実行しなかったのは、アルベド達では元々人数が足りなかったのだろう。
「…勿論僕も協力する。」
アルベドは僕達に頭を下げた。
「二人共、協力に感謝する。」
再び地図の方に目線が行く。
「問題となるのは騎士団の面々だ。彼等を悪と呼ぶつもりはないが、恐らく戦闘になるだろう。」
「やっぱりか……」
空気が重くなる。
「裏で動いている勢力があるが、そちらは、ガイアとディルックが対応する。」
アルベドは最後に、全体を見渡す。
「目的は一つ。風魔龍の所に辿り着き、止めることだ。」
そこで初めて出発の話に戻った。
「吹雪が止むのを待つ余裕はないから、まずアカツキシティまで行こう。今すぐに。」
吹雪を突っ切るように山を下り、気づけば雪は止んでいた。
赤い屋根の建物の前に見覚えのある背中がある。
「来たか。」
ディルックは振り返らないまま言う。
「説明は不要だ。」
ディルックが手を広げると、鳴き声と共に三体のファイアローが現れた。
「僕のじゃない。後で返してくれ。」
ディルックは短く続ける。
「風龍廃墟の手前までならこれで行ける。」
「手前まで?」
アルベドが一歩前に出た。
「風龍廃墟周辺は、常時強烈な気流が発生している。」
「まともに飛べないって事か。」
蛍が眉をひそめる。
「要するに、騎士団の部隊を突っ切らないといけない感じ?」
「そうだ。」
ディルックは最後にこちらを見る。
「僕は別で用事がある。そちらに協力はできない。」
「…大丈夫。」
「ああ。任せた。」
僕達の乗ったファイアローたちが一斉に翼を広げた。
眼下に広がるのはモンドの大地。
「アカツキシティ、モンド城、シードル湖……」
「…絶景だな!」
必死に掴まるパイモンは、そうは言っているが怖くて下を見れていない。
「こうして鳥とか竜に乗るのなんて、いつぶりかな。」
「分からない。でも久しぶりの感覚だ。自分で飛んでもここまで速度は出ないから。」
そんな話をしていると、アルベドは興味深そうにこちらを見ていた。
「質問するのは、全てを終わらせてからにしよう。」
……この一件の後、面倒な話になる事が確定してしまった。
遠くに見えるフィンドニール山や黄金に輝く浮島、巨木に作られた街などに思いを馳せていると、気付けば視界の先で雲が渦を巻いていた。
「空の旅はここまでにしよう。」
アルベドの合図で一斉に高度を下げる。
横から来る強い風を避け、岩場の影に着陸した。
乗っていたファイアローを撫でてその背から降りる。
「……やはり貴方達も来たのですか。」
すぐに声をかけられる。
見れば、近くに魔女帽の占星術師が立っていた。
「思ったより早かったですね。」
「文字通り飛んできたからな。」
そう返しながらモナについて行くと、すぐにキャンプ地に着いた。
荷物を整理しているノエル、岩に寄りかかっているロサリア。
少し離れたところで、クレーは物騒なことに地面に爆弾を積み上げていた。
「ディルックは別の用事って言ってたけど…」
「フィッシュルは居ないな。」
「あの子はただの遅刻でしょう。」
僕達の方を向いたロサリアが答える。
「人数は足りないが、もう出発しないといけない頃だろう。」
アルベドが言う。
耳を澄ますと、衝撃音や叫び声が遠くから聞こえる。
すでに騎士団が動いている証拠だ。
ノエルが胸に手を当てる。
「今こそ私たちは前へ進むべきです。」
クレーが顔を上げる。
「クレーもやる!」
「もう夜だけど、大丈夫なの?」
「今日に限っては特別に許可したんだ。君たち然り、本当はこういった場面で子供を頼るべきではないんだけどね。」
蛍の質問にそう自嘲するアルベド。
実際は僕と蛍の方が、ずっと年上かもしれないけれど。
だとすると蛍の精神年齢は…?
気にしないでおこう。
「で、クレーは何をする役なんだ?」
「うん!思いっきりドカーンして道を作る!」
「凄い物騒だな!?」
クレーに怯えるパイモンを横目に、アルベドは言い放つ。
「十分だ。」
そう言うと、廃墟の入り口の方を指差した。
「僕とクレーが最初に仕掛ける。」
「敵の陣形が崩れた瞬間、全員で突っ切るんだ。」
作戦は正面突破らしい。
他に入り口が無い様なので、当然と言えば当然だ。
「頑張ります!」
準備万端なノエル。
「嫌いじゃない。」
ロサリアが口角を上げる。
蛍が僕を見る。
「行ける?」
「……行くしかないだろ。」
全員で入り口が見える位置に着く。
見える限りでも、何人かの騎士が立っているのが見える。
弱い風の吹く音だけが聞こえる中。
「クレー。」
アルベドがその名前を呼んだ。
クレーは小さな手で爆弾を抱え、にこっと笑い返す。
「行っくよー!」
次の瞬間、廃墟の入口付近で轟音が炸裂した。
「今だ!」
声と同時に、全員が走り出す。
瓦礫を踏み越え、騎士団の陣形の隙間を一気に突っ切る。
アルベドとクレーが攪乱しているおかげで、道は強引に開けていた。
「止まるな!そのまま行け!」
アルベドの声が背後から飛ぶ。
その時。
突然地面に薄氷が走った。
「……?」
冷気を感じて横に飛びのく。
すぐ横を気配が抜けて行った。
一瞬振り返ると、モナとロサリアの手前に誰かが立ちふさがるのが見える。
「先に行ってください!」
モナが叫ぶ。
「今は風魔龍の所へ行くのが最優先です!」
前に居るノエルの声。
ここで速度を落としてはいけないだろう。
「お兄ちゃん、行くよ!」
「分かった。」
…どうやら面倒なことになったようですね。
先はノエルと二人に任せたけれど、私とロサリアの前に影が落ちる。
「西風騎士団遊撃部隊隊長、エウルア・ローレンス。」
現れたのは、蒼白の装束と鋭い眼差しの騎士の方。
「ここを通すわけには行かないわ。」
彼女はそう告げると、二つのハイパーボールを手に取る。
「モスノウ、ユキメノコ!」
ボールが掲げられ、出て来た2体と共に辺りの冷気がさらに濃くなる。
ロサリアが私に視線を合わせる。
「…さっさと片付けるわよ。」
負けじと私もボールを取り出す。
二つのボールが宙を舞った。
「ヤドキング!」
「マニューラ。」
ヤドキングが重い足取りで胸を張って前に出る。
マニューラは地面を蹴り、一気に間合いを詰める構えを取った。
「シャドークロー。」
早速ロサリアが仕掛ける。
エウルアもすぐに指示を飛ばした。
「…こごえるかぜ。ぼうふう。」
ユキメノコの放った冷気を、モスノウが増幅させる。
突然の吹雪に視界が一気に白んだ。
「ひかりのかべです…!」
勢いを完全には殺しきれなかった。
「チッ……、視界が悪すぎる。」
マニューラの攻撃が外れると同時にロサリアが毒突く。
「ユキメノコ、シャドーボール。」
暗い色の弾が弧を描いて飛来する。
「合わせましょう。」
「ああ。」
それぞれの相棒と目を合わせる。
準備は問題なしです。
「ダメおし!」
ロサリアのマニューラが、私のヤドキングを蹴って跳び上がる。
今までにこの二人で戦ったことはありませんが、やることは自然に分かります。
「ねんりきで守ってください!」
ヤドキングが手を突き出し、シャドーボールを勢いよく押し返す。
そのままユキメノコに衝突した。
上からマニューラが飛びかかり…
「むしのさざめき。」
突然モスノウが音波を放つ。
マニューラだけでなく、ヤドキングも一瞬動きが硬直した。
「ふぶき!」
追撃を正面から受ける。
「シャドーボール。」
更なる攻撃が来る。
これ以上受けてしまうと……
その時。
「ワイルドボルト!」
場違いなほど澄んだ音。
衝撃でユキメノコのシャドーボールが霧散する。
強烈な一撃を当てながら、一匹のデデンネが飛んできた。
「この断罪の皇女、フィッシュル・ヴォン・ルフシュロス・ナフィードットが来たからにはもう大丈夫よ!」
崖の上から飛び降りてきたのは、勿論フィッシュルだった。
もう少し早めに来ていただければ良かったのですが。
…憧れの対象である騎士団の人達には悪いですが、これも平和の為と思いましょう。
団員の皆さんを最大限避け、今は空さん蛍さんと共に風龍廃墟の中心を目指している所です。
とはいえ、そう簡単にはいかないようですね。
「随分と慌ただしい夜ね。」
「リサさん……」
二人にパイモンも、思わず警戒する。
「出た。あの人、絶対強い。」
彼女は微笑みを浮かべてこちらを見ていた。
背後にはやはりシャンデラを連れていますね。
「来ると思っていたわ。」
「私たちは、風魔龍を止めに来ました。討伐ではありません。救うためです。」
はっきりと告げると、リサは小さく息を吐いた。
「ええ。分かっているわ。団長ともその話はしたもの。」
「それでも止めるんですか。」
リサさんは、困ったようにこちらを見る。
「ええ。それが私の役目だもの。」
そう聞いた私は、目を逸らさずにポーチからボールを取り出した。
「空さん、蛍さん。ここは私に任せて先に行ってください。」
「…分かった。」
「分かりやすくフラグだけど、ノエルは大丈夫?」
蛍の質問には、自信を持って答えられた。
「はい。ご心配なく。」
その言葉に合わせて、シャンデラがリサの前に出る。
「そう簡単には行かせ無いわよ?」
リサさん、やはり通す気が無いようですね。
ここは私が強引に……
ボールを握りしめた瞬間、横から誰かが現れた。
「……ノエルちゃん。」
横を見れば、頭に結ばれた大きな赤いリボンが目に入る。
「…アンバーさん。」
「「アンバー!?」」
私達は一斉に声を上げる。
「私はもう大丈夫。二人は先に行って!!」
「わ、分かった。」
「うん。そっちは任せるから。」
「オマエも無理するんじゃないぞ!」
去っていく三つの影。
リサは驚いた様子もなくそれを眺めていた。
「さあ、始めましょう?」
リサの声から、冗談めいた響きが消える。
あの人にとっては、この流れも想定通りなようですね。
「…ノエルちゃん。」
「分かっています。」
二つのボールが宙を舞った。
「ルカリオ!」
「グレンアルマ!」
次の瞬間。
リサのブローチが、虹色に光る。
「お姉さんに勝てるかしら。」
紫の光と炎が、辺りをを妖しく照らす。
「シャンデラ、メガシンカ。」
メガシャンデラが浮かび上がり、リサの試すような視線がこちらを射抜く。
紫の炎が夜の廃墟を照らす。
メガシャンデラは、揺らめくことすらなく、こちらを見下ろしていた。
二人はほぼ同時に動いた。
「シャドーボール!」
「みずのはどう!」
闇色の球体と水の奔流が、炎の渦を切り裂くように飛ぶ。
しかし。
「れんごくよ。」
炎が一気に膨張し、攻撃をまとめて呑み込んだ。
爆ぜた熱の衝撃が広がり、二体が後方へ弾かれる。
「くっ……!」
ルカリオが踏ん張る。
グレンアルマも体勢を崩しながら、すぐに立て直した。
「次行くよ! ノエルちゃん!」
一瞬、視線が交わる。
「てだすけ!」
グレンアルマから光が湧きだし、ルカリオを包む。
「ストーンエッジ!」
ルカリオの拳で地面が割れ、一直線に巨大な岩が突き上がった。
だが。
「サイコキネシス。」
メガシャンデラの身体がふわりと宙へ浮く。
岩列は空を切った。
メガシャンデラの纏った光が、そのままルカリオに叩きつけられる。
「ぐっ……!」
追い討ちを許す間もなく。
「ほのおのうず。」
再び炎が巻き上がり、視界が完全に遮断された。
それでも相手の位置は読める。
今が好機です。
「アーマーキャノン!」
隣のグレンアルマの腕から砲撃が撃ち出された。
炎の向こうに確かな手応えがあった。
「今ですルカリオ、みずのはどう!」
炎が消える瞬間に合わせて、この一撃を当てたい。
だが。
炎が晴れかけた、その瞬間。
「……オーバーヒート。」
リサがそう宣告する。
「こらえる…」
そう言う間に、私の声よりも炎の方が速い事に気づきました。
「ノエルちゃん!」
アンバーさんのグレンアルマが一歩前に出るのが見え……
視界が白に染まった。
炎が引いた後、そこに立っていたのはルカリオ。
そして、その正面で地面に伏したグレンアルマだった。
「グレンアルマ、戻って。」
アンバーはすぐにボールを出した。
赤い光がグレンアルマを包んで消える。
アンバーさん、まさか私のルカリオを庇って……?
「大丈夫。あれはどちらにしろやられてた。」
「ですが……」
「良いの。まだまだ戦える。」
それだけ言ってアンバーは立ち上がる。
「あら、いい目をするのね。」
リサの言葉に首をかしげるアンバー。
しかしその時のアンバーさんは、この勝負に全く負ける気が無いようでした。
後ろをジムリーダーの人達に任せ、僕と蛍はようやく中心の塔の下までたどり着く。
道中に居た騎士団員は、横を走る蛍のポケモン達が全て蹴散らしてしまった。
「風がすっごく強いぞ…!」
パイモンが風に流されそうになりながら叫ぶ。
中心に近づくにつれて、確かに風が強まっているような気がする。
「騎士団も既に何度も戦ってたみたい。」
周囲を見回すと、巨大な足跡や砕けた岩、抉れた地面。
焦げ跡や氷が溶けた跡等も残っている。
「そう言えば、ウェンティさんも強いポケモンがいっぱい居るって言ってたな。」
「それで途中の人もあんなに消耗してたんだ。」
あっさりここまで来れたようにも感じるが、本当はもっと厳しかったのだろう。
更に少し進むと、ようやく塔の麓に着いた。
いかにも強そうな装備の一団、そしてその中心にマントをはためかせて立つ女性。
その背中からは今にも決戦に挑むような気配を感じる。
「……ジン団長。」
蛍が、低く名前を呼ぶ。
ジンはゆっくりと振り返った。
その視線は鋭いが、目に見えて疲労していた。
「もうここまで来たのか。……いや、君達なら来ると思っていた。」
その声は、風にかき消されることなくはっきりと届く。
周囲の騎士団員もこちらを向いて手元にボールを出した。
「…悪いけど、ちょっと通して。」
警戒を向ける騎士団を相手に、蛍が手を上げる。
「すなあらし、くろいきり、ふきとばし、でんじは。」
瞬間的に視界が煙に覆われ、周りが見えなくなる。
「っ…!全員用意!!」
「お兄ちゃん、こっち!」
ジンの声が背後で響く中、蛍に手を引かれるまま走った。
煙を抜けた時、目の前に見えたのは青く光る円形の紋様だった。
崩れかけの高い塔の一階、廃墟の中心。
風が、唸りを上げている。
「……ここか?」
そう呟いた瞬間。
「止まれ!!」
張り詰めた声。
沢山の強そうなポケモンと騎士を引き連れて、ジンが走って来る。
…先頭を走るジンが魔法陣の上に乗った瞬間。
床が揺れて光を放つ。
思わず尻餅をついてしまったが、すぐに状況に気づいた。
「…浮いてる?」
魔法陣のあった床が丸ごと空へ上昇している。
上を見上げると、渦となった暴風の中に浮いている遺跡があった。
呆然としているうちに床が上の遺跡に到着する。
ここだけは全くの無風で、星空の明かりがそのまま入って来ていた。
最初に口を開いたのはジンだった。
「……この命令を取り消す事はできない。」
視線が真っ直ぐ僕達を捉える。
「君たちを止めるのも私の役目だ。」
そう言ってからジンは一度だけ目を伏せた。
「……正直に言おう。君たちを止めるべきかどうか、私はまだ答えを出せていない。」
ジンが顔を上げる。
「風魔龍の所へ行きたいのなら……行ってくれ。」
自然と言葉が出る。
「先に行って。」
蛍は一瞬だけ狼狽え、それから強く頷いた。
「……分かった。絶対後から来て。」
蛍と、ついでのパイモンは遺跡の更に先、風魔龍の気配が渦巻く方向へ消えて行った。
その背中が見えなくなったところで、ジンが一歩前に出る。
「君は行かなくて良いのか?」
「あなたを無視する訳にもいかない。」
ジンは、小さく息を吐いた。
「話し合いで済むならそうしたい。だが…」
ジンは、腰のボールに手をかけた。
「私は既に、多くのものを背負いすぎた。」
二つのハイパーボールが、同時に握られる。
「だからこそ、私を止めてくれ。」
ジンは迷いを断ち切るようにそう宣言した。
「ワタッコ。」
白い綿毛が舞う。
「チルタリス。」
同じく綿のような白い翼が広がった瞬間。
ジンが触れた首元の石が、虹色に輝いた。
「メガシンカ……!」
光が収束しチルタリスの姿が変わる。
メガチルタリスが、ゆっくりと翼を開く。
「西風騎士団団長代理、ジン・グンヒルド。」
「…ポケモントレーナー、空。」
モンスターボールを投げ放つ。
「来い、ヤバチャ!カメール!」
遺跡の静寂が、完全に断ち切られた。
メガシンカ、本当に存在したのか。
騎士団の団長と言うだけあって間違いなく強いだろう。
「…行くぞ。」
静かに言うジンの前で、ワタッコとメガチルタリスがこちらを見据える。
「りんしょう。」
二体の鳴き声が重なり、音波が一斉にカメールへ走った。
「みずのはどう!」
放たれた音波に水の波が正面からぶつかる。
この程度では相殺しきれない。
「……ヤバチャ。」
カメールの前に欠けたカップが滑り込む。
音波はヤバチャの身体に当たり、完全に消滅した。
「めいそう!」
ヤバチャの周囲に、淡い光が集まっていく。
「アクアブレイク!」
間髪入れずにカメールで攻めに出る。
「ワタッコ、コットンガード。」
白い綿毛が爆発的に広がり、衝撃は吸収された。
「ダメージ無しか…。」
ジンは一切動揺しない。
「ワタッコ、ギガドレイン。」
「チルタリス。ドラゴンダイブ。」
白い翼が大きく打ち鳴らされ、メガチルタリスが一直線に突っ込んでくる。
同時に、ワタッコの綿毛が揺れ、緑の光がヤバチャへ伸びた。
「……ヤバチャ、もう一度めいそう!」
ギガドレインが直撃する。
だが、ヤバチャは怯まずにそのカップに光を集めて受け切った。
「守れカメール。」
僕と一瞬目を合わせたカメールが前に出る。
「でんこうせっかだ!」
カメールが残像とともに割り込むように走り、ヤバチャとメガチルタリスの間に滑り込む。
「てっぺき!」
空気が震え衝撃が炸裂した。
轟音。
巨体が叩きつけられ、爆発によって石片が舞い上がる。
それでもカメールは崩れず、地面に深く沈み込むだけで踏みとどまった。
衝撃の余波でヤバチャにも小さくないダメージが入る。
「……っ」
そろそろ仕掛けるべきだ。
「行けるな。」
確信を込めて告げる。
「……ヤバチャ。アシストパワー!」
重ねた力がヤバチャに集まる瞬間。
「コットンガード。」
白い綿毛が広がり、メガチルタリスの周囲を厚く覆う。
「カメール、アクアブレイク!」
間髪入れずに叫ぶ。
水を纏った突進が、真正面から叩き込まれる。
圧縮された水流が綿の壁を散らす。
ガードが崩れた、ほんの一瞬。
「今だ、ヤバチャ!」
打ち上げられた念動力が、弧を描いてに走る。
紫の輝きがメガチルタリスに降り注いだ。
メガチルタリスは空中で大きく体勢を崩し、翼を大きく広げて距離を取る。
「……」
それでもまだまだ余裕がありそうだ。
ワタッコも健在で、心配そうな目つきで隣のジンの方を見た。
「まだ、戦いますか?」
僕は、徐にそう聞いた。
「…ああ。辞めよう。」
ジンの小さな声が戦場に落ちた。
一瞬耳を疑ってしまう。
「我々騎士団は、モンドの民に希望をもたらしたかっただけだ。」
ジンはゆっくりとボールを下ろしたまま、前に出る。
「このまま進んだ先にあるのは、私が望んだ結末ではない。」
視線がこちらからワタッコとメガチルタリスへ移る。
「戻れ。」
黄色い光がメガチルタリスとワタッコを包み、ボールに収まる。
「…旅人よ。風魔龍を必ず救ってくれ。」
ジンは真っ直ぐにこちらを見る。
「……必ず。」
そう告げると、ジンは一度だけ頷いた。
「私は仲間に伝えに行かなけれはいけない。」
背を向けたジンを前に僕は振り返り、再び走り出した。
遺跡の一番高い所へ階段を登っていく。
すぐに何か話し合っている蛍とウェンティが見えてくる。
そこに、風魔龍の姿は何故か見えなかった。
蛍に駆け寄る…その時、ウェンティのある言葉だけがはっきりと聞き取れた。
「そうだよ?僕がモンドのチャンピオンだ。」
エウルア:ぽっと出になってしまった騎士団員の余り。四天王なら大体ぽっと出だしそこに問題はない。なお、遊撃隊長なのに一番前線から遠かった事は気にしない事。
リサ:ジン団長の右腕と言っても過言ではない女。この世界では参謀枠もやっているらしい。
戦闘を長引かせたくないが手持ちの格を下げないようにする為にもメガシンカはやはり最適である。メガシンカはロマン。
ジン:アレとかアレの間で苦悩する騎士団長。ちなみに代理である。この人の称号は蒲公英騎士、タンポポ、よってワタッコです。
あと、コットンガードはリアル基準だとまもるみたいな一ターン防御系の技らしい。
メガストーンなら層岩巨淵とかで取れるんじゃないですかね。