げんしん☆もんすたー   作:ちぃの

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放浪領の帝王 ANDRIUS

翌朝軽い朝食をとった後、僕達はガイアに言われた通り湖の西沿いの街道を北上していた。

湖の東側の道と比べて人通りはかなり少なく、道も何となく細かった。

先程から街道は森の中に入り、段々と薄暗くなってきた。

 

「この辺り、ちょっと寒くない?」

「風が強いからかな…?」

 

風が吹きつけてくる左の方を見ると、頑丈そうな柵が立てられ、奥には鬱蒼とした森が広がっている。

 

「迷って入ったら二度と出れなさそうな森だな…。」

「その通り。この辺りは放浪領って呼ばれてるんだけど、普通は入っちゃ駄目だよ。「北風の狼」が出るって言われてるんだ。」

「北風の狼…か。知らないな…」

「そりゃあ私だって知らないよ。伝説に出てくるような巨大な狼らしいよ?」

「それって多分ポケモン、だよな…?」

 

つまり、伝説のポケモンだろうか。

 

「え、じゃあ伝説のポケモン!?」

 

そう叫んだ蛍は、目を輝かせて今にも走り出しそうなポーズを取った。

 

「待て待て待て!?」

「ストップストップ!!」

「一旦落ち着け…。」

 

パイモンは役に立っていないが、三人がかりで走り出そうとする蛍を止めた。

 

「えー…」

「野生のポケモンがいっぱいいる森に一人で入ったらほんとに危ないよ!毎年それで何人か死んでるんだからね!?」

「…すみませんでした。」

 

蛍はアンバーに華麗なる土下座を決めた。

 

「分かったならいいの。次は無いように…」

 

蛍の事だから注意してもまたやりそうだ。

その時、遠くから狼のような遠吠えのが聞こえた。

木々が揺れ、近くの鳥ポケモンが一斉に飛び立つ。

 

「……今の、何だろう?」

「まさか北風の狼!?」

「いや…オイラ、なんか嫌な感じがするぞ…」

「だね…。何となく逃げたほうがいいって私の勘が言ってる。」

 

嫌な予感から逃げるように道を走っていくと、突然横の柵を突き破って誰かが飛び出してきた。

 

「うわっ!?」

 

灰色の髪に琥珀色の瞳の、どこか狼のような印象を受けるフードを被った少年。

さらに言えば少年の後ろにポケモンがいっぱい付いて来ていた。

正面に居るのがグラエナ、後ろに居るのはその進化前と他の犬っぽいポケモンのようだだ。

 

「……ニンゲン!?」

 

少年はこっちを警戒しているようだ。

 

「アンバー、この子の事知ってる…?」

「ごめん、こっちの方は来たことなくて…」

「じゃあパイモン、教えて!」

「ポケモンじゃないし分かんないぞ?」

 

蛍は色々な方向から少年を見回した。

少年に凄く犬っぽい威嚇をされている。

 

「片言…伸びた髪、ボールは持ってない。ポチエナやデルビル……色んなポケモンに群れのリーダーみたいに見られている……。野生児って所かも。」

「そうかも。騎士見習いとしては看過できないけど…」

 

どんな人物か何となくわかった所で、僕は一旦コンタクトを図ってみることにした。

 

「僕は空、こっちが妹の蛍。そっちはアンバーとパイモン。」

 

少年は何回か言い直したが、片言で名乗った。

 

「…オレ、レザー。ここで暮らしてる。」

「レザーって言うんだな…!」

「ニンゲンと白いの、ここで何してる?」

「オイラ白いの扱いか…!?」

「えーっと…旅の途中、かな。」

「ジム巡りをしてて…」

 

レザーはしばらく思考停止してから答えた。

 

「……よく分からない。でも、悪い奴じゃない。匂いで分かる。」

 

レザーは、周囲のポケモン達に短い声で合図を送った。

犬ポケモンの群れは警戒を緩めたようだ。

 

「……遠吠え、聞いたか?」

「さっきのやつ…?あれって…」

「あれって伝説のポケモン!?北風の狼!?」

「アンドリアス。森の王だ。」

 

アンドリアスと言うのが北風の狼と呼ばれているポケモンの正式名称なのだろう。

蛍が息を飲み、目を見開く。

 

「やっぱり伝説のポケモンじゃない…!?」

「だとしても喧嘩を売ろうとするなよ。」

「危険だから!絶対禁止!」

 

レザーは後ろを一瞬向いて急に言った。

 

「逃げろ!まだ黒が来てる。」

 

彼はそう言うと群れを連れて街道沿いに走って行く。

さっき彼が柵に開けた穴の向こうから、複数の足音がこっちに向かってきているようだ。

 

「なんか来る!!メリープ!でんげきは用意!」

「ロコン!出て来たらやきつくすを頼む。」

「ポニータ!準備OK!?」

 

それぞれ有効打になりそうな仲間を出し、来たる相手に備えた。

 

柵の穴からは数匹のポチエナが飛び出して来た。

だが、その目は赤く染まり全身に紫色のオーラを纏っている。

 

「やきつくす!」

「ねっぷう!」

 

相手が森から飛び出して来た所を、ロコンとポニータが放った広範囲攻撃が一掃する。

 

「何あれ!?」

「シャドウポケモンって奴!アビスの影響で…って、話は後!とにかく気を付けて!」

「分かった!」

「了解!」

 

シャドウポケモン…。

最初に飛び出してきた数匹は一撃でダウンさせたが、まだ足音が聞こえる。

 

「…次が来る。」

「分かってる!」

 

一瞬の沈黙の後、また一匹の影が飛び出して来た。

 

「でんげきは!」

 

蛍のメリープが強烈な静電気を発し、爆発音が響く。

 

砂煙が晴れると、……メリープは倒れていた。

 

「メリープ!?何が…」

 

眼の前に立って居たポケモンはさっきのポチエナと同じく闇に包まれているが、ずっと重い威圧感を放っていた。

 

「青い…イワンコ……。」

「色違い…!?」

「ヤバそうだぞ…!」

 

蛍は目線をイワンコに向けたまま、ヒトカゲのボールに手を掛けた。

僕とアンバーはそれぞれのポケモンに目配せする。

 

「りゅうのいぶき!」

「でんこうせっかで引き付けてくれ!」

 

ヒトカゲがボールから出ていきなり技を放つ。

睨んでくるイワンコを、残像を出して走るロコンが引き付けた。

 

「ポニータ、にどげり!」

 

背後から弱点の追撃…しかし、まだ倒れる気配が無い。

 

その時、イワンコは遠吠えを上げた。

 

「二人共!なんか来る!」

「皆下がれ!」

 

アンバーの注意を聞き、ポケモン達に下がるよう指示した。

 

…まずい、指示を間違えた。

 

空中に出現した岩が3匹を囲むように落ちる。

確かがんせきふうじ…。覚えてるって事は相当強い…!

 

「がんせきふうじ!?」

 

イワンコは再度、空中に岩を召喚しようとしているようだ。

 

このままでは…!と焦った時、イワンコは突然一閃を受けて倒れた。

攻撃を入れたのはポケモンの群れを連れたグラエナ。

 

「大丈夫か?黒い仲間、暴れて危険。」

 

助けてくれたのはもちろんレザーだった。

 

「最近、仲間が黒にされる。森が危ない。」

 

そう言うと、レザーはさっきの戦いで倒れたポチエナ達に、取り出した紫色の棘の生えた果実を与えていく。

ポケモン達が果実を食べると、纏う瘴気はすぐに消えた。

 

「うーん、何かのせいでここのポケモン達がシャドー化してるってことだよね…?そういえば、アンバーさっき何か言ってたよね?ピアスみたいな…」

「蛍ちゃん…ピアスじゃなくてアビスね?私も詳しいことは知らないけど、基本はアビスの魔術師っていう変な奴のせい!ほとんど見たことないし、見かけたら同僚に任せてるから……」

「まあ、アビスって言葉にいいイメージは無いな。なんかこう…落ちると戻ってこれない深淵みたいな?」

 

勝手なイメージに蛍が共感する。

 

「オイラも知らないな…」

「と言うよりパイモンは何も知らないんじゃない?」

「そんなことないぞ!」

 

そうこう話しているうちに、レザーは果実を全て与え終えて立ち上がった。

 

「ググプラム、一つ足りない。」

 

彼が指さしたポチエナは、まだ治療がすんでいないようで闇を纏ったままだった。

 

「つまり…もう一つ、さっきのトゲトゲしたやつが必要なんだな?」

「森にある。オレが取ってくる。」

「私も手伝うよ!!」

「蛍は行きたいだけじゃないのか…?」

「ゔっ…」

「図星ね…。うーん、行っちゃって良いのかな…」

「エキスパートが居るから大丈夫だろ!な、レザー?」

「この森はオレの家だ。知らない筈無い。」

「よし、行こう!二人共!」

 

どう見てもテンションが高い蛍とその他3人は、レザーと共に鬱蒼とした森に足を踏み入れた。

群れの犬ポケモン達は危ないから倒れたままの仲間を見張らせているらしく、レザーが連れているのはグラエナ一匹だ。

 

「あった。ググプラムだ。」

 

レザーの差す所、紫の果実が低木に実っていた。

あんなアビスとか言うのを解くために必要なアイテムがそんなに希少な物じゃなくて良かったとつくづく思う。

 

「これでさっきの子を直せるね。」

「ちょっと待って。それじゃ根本的な解決になってないんじゃない!?アビスの魔術師って奴を倒さないと!」

「うんうん…まさかついでに伝説のポケモンに喧嘩を売ろうとか考えてないよね?」

「あ、アンバーちゃん?そんなこと考えてる訳ないじゃん…ねっ?」

 

蛍らしく無い口調…やっぱり図星のようだ。

 

「なんか馴れ馴れしいな。」

「アンバーちゃんなんて呼ばれた事無かったけど…。」

「というか蛍は僕に近づく女に無差別攻撃をするタイプだったろ。」

「お兄ちゃん!?私がそんなヤンデレみたいな女だって言いたいの!?」

「かなり。」

「ぐはぁっ…!」

 

蛍はレザーにさえ呆れた目で見られていた。

かっこいい時はちゃんとかっこいいのに、いささか残念要素が多すぎる…。

 

結局森の中を進んで行くと、開けた場所に出た。

古い石造りの広場が森の中に作られてあり、ここだけは空も見えていてなんだか神聖な雰囲気がある。

が、その中央で、妙な奴が妙な儀式を行っている。

 

手に杖を持ってふわふわと浮かんでおり、すごく怪しい。

 

「あいつだ!アビスの魔術師!」

「あのパイモンみたいな奴ね!」

「オイラみたいじゃないだろ!?」

 

パイモンとの共通点はマスコットみたいな見た目で浮いているという点だけだが…やっぱり十分近いか。

軽口をたたいていると、こちらに気づいたアビスの魔術師は闇に包まれたオニドリルを何処からか繰り出してきた。

 

「黒いの、来るぞ。」

「分かってる。オニドリルってまあまあ強いんじゃないか?」

「進化も20レベルだしそこそこ強い!」

「…れべる…?」

「それは良い!とにかく行くよ!」

 

僕達は思い思いのポーズでボールを構え、ボタンを握りこむ。

 

「ヒトカゲ!」

「ゼニガメ!」

「フシギダネ!」

 

3つの光が地面に着地し、お馴染みの三匹が同時に構えを取った。

 

「来るよっ!」

 

オニドリルは、暴走したように突貫してきた。

 

「フシギダネ、つるのムチで足止め!」

 

フシギダネのつるがしなり、オニドリルに絡みつく。

オニドリルは急旋回して振りほどこうとするが…

 

「ゼニガメ、とっしん!」

 

背後からゼニガメのアタックが決まった。オニドリルがふらつく。

 

「今!ほのおのキバ!!」

 

…これで決着がつくかと思った時、突如地面が揺れて攻撃が外れた。

 

次の瞬間、何かがアビスの魔術師に直撃し、地面に叩きつけられる。

魔術師の体は凍り付き、砕けて粉々になった。

 

「ひっ…!」

「そんな…!?」

 

木々の隙間から、雪の混じった強風が吹き荒れる。

オニドリルの瘴気は不思議と風で吹き飛び、正気に戻ったオニドリルはすぐに逃げるように飛んで行った。

 

「なっ…何この風…!?」

「…アンドリアスだ。」

 

森全体がざわつき、空気が一気に冷え込む。

 

「あれって……」

「もしかして……!?」

 

地面を叩く重い足音。

いつの間にか辺りを覆っていた白い霧を割って、巨大な狼が現れた。

数メートルのサイズ感から発せられる威圧感、雪の様に銀色に光る毛並み、青く輝く瞳。

明らかに普通のポケモンじゃない。

 

「あれが、アンドリアス…。北風の狼…。」

 

ヒトカゲは怯えて蛍の後ろに隠れ、ゼニガメは相手を睨む。

フシギダネは震えながらもアンバーの前に立った。

 

アンドリアスは静かに低く唸った。

レザーは当然のように頷く。

 

「……アンドリアス、言ってる。ニンゲン、なぜ森に入れた。」

「怒ってるのか……?」

「…やっぱり迂闊に伝説のポケモンの縄張りに入っちゃいけなかったんだ…!」

 

アンドリアスの前に立ったレザーが続ける。

 

「ニンゲン、黒いの倒した。森の仲間、助けた。」

 

アンドリアスはしばらく沈黙したあと、短く吠えた。

 

「力を見せろ。そう言ってる。」

「って事は……」

「つまり戦うんだね!?」

 

この期に及んで目を輝かせる蛍。

 

「蛍ちゃん…負けたら多分さっきの魔術師みたいにされるよ?」

「ひぃっ!怖いぞ……」

「負けたら死ぬ、ね。このくらいの修羅場、いくらでも行けるよ!…だよね、お兄ちゃん?」

「うっ……やるしか無いか。」

「二人共、ほんとに慣れてるんだ…やっぱり怖いけど私も…!」

 

アンバーも覚悟を決めたみたいだ。

パイモンを除けば、今一番覚悟が決まっていないのは僕かもしれない。

思わず後ずさってしまった足を、再度踏み込む。

ここの所安全な状況で勘が鈍っていたが、僕は改めて決死の覚悟を決めた。

 

「…オレは、戦えない。アンドリアスは、お前達を試す。」

「分かった。ヒトカゲ、行けるよね?」

 

蛍がそう言うと、ヒトカゲは自身を奮い立たせてアンドリアスと向き合った。

 

「フシギダネ!私達に力を貸して!」

 

アンバーの声掛けに答えて、フシギダネは少し怯えながらも臨戦態勢に入った。

 

「ゼニガメ、やる気は上々って事でいいんだな…!?」

 

初めからやる気満々に見えたゼニガメは、こっちを向いて鳴き返し、再度アンドリアスに向き直る。

 

「北風の狼…勝負!」

 

蛍はアンドリアスに挑発的にバトルを宣言した。

北風の狼と呼ばれる伝説のポケモンは、その青い眼でこちらを睨み返す。

 

強い風圧を伴った遠吠えが空をつんざく。

 

 

 


 

 

 

 北風の狼 アンドリアスが あらわれた!

 

 

 

アンドリアスが勢いよく跳び上がり空中で身体をひねると、その巨体から風の刃が打ち出された。

 

「エアスラッシュ…!」

 

狙いはポケモンじゃなくて私達みたいだ。

当たったらひとたまりもないけど、この程度なら簡単に避けれる。

 

風の刃をあっさりと避け、一度状況を確認した。

 

「「アンバー!」」

 

アンバーは伝説のポケモンを前に足がすくんでしまっている。

私やお兄ちゃんと違って、場馴れしていないのは予想出来た筈なのに…!

 

レベル差があるだろうし技での相殺は期待できない。

距離があるせいで私が助けるのは間に合わない。

 

このままじゃ、アンバーが…!

 

 

ギュッと目を瞑って見開くと、そこには傷を負いながらもアンバーを庇うフシギダネがいた。

苦しそうにしながらも、その目に宿る闘志は微塵も失われていなかった。

 

アンドリアスはフシギダネを一瞥すると、続けて氷柱を放った。

 

「今なら間に合う!ヒトカゲ、かえんぐるま!」

「ゼニガメ、なみのり!」

 

二匹がフシギダネを守るようにして技を繰り出す。

そちらに意識を取られていた私は、視界に影が落ちた事に気づかなかった。

 

 

「蛍ちゃん!」

「蛍!」

 

二人に言われてふと気づくと、頭上に大きな氷柱が迫っていた。

間に合わない。

 

ポケモン達も、二人も、パイモンも届かない距離にいる。

 

 

 

その時、視界をよぎった青い残像が眼前の氷柱を噛み砕いた。

 

つららおとしを正面から止めたのは、青い毛並みに翡翠の瞳を持つ色違いのイワンコだった。

 

「イワンコ…!?」

「さっきの!?」

 

レザーも驚いた表情をしている…

理由は知らないけど、ずっと私達を追いかけて来ていたのかも。

イワンコは一度鳴いて私の方を向いた。

何もしていないのに私に懐いているみたいだ。

 

「二人共、ごめん。伝説のポケモンと戦うのって、こういう事だったんだね…。でも、もう大丈夫。」

「当たる前から怯んでちゃ駄目だよ。」

「分かってるよ。」

 

アンバーは軽く口角を上げた。

あれは、私と同じ戦うのが好きな奴の顔だ。

 

「今度は決めに行く。」

 

そう言うお兄ちゃんは私やアンバーとは違うけど、何だかんだ言ってここまで冒険をしてきた私の相棒なんだから、きっと大丈夫。

 

…伝説のポケモンをそんなに待たせる訳にもいかないね!

中断しておいて締まらないが、私は再度戦いの合図を叫んだ。

 

「来い、アンドリアス!!」

 

伝説のポケモンの本気が来る。

 

…それは、さっきまでの一撃くらい戯れだったって事でもある。

 

「ヒトカゲ、ほのおのうず!」

 

アンドリアスは、地面に現れた炎からすぐに離れた。

その巨体を風が覆う。

 

「来るよ!」

 

私の掛け声の後、狼の形をとった風が襲いかかってきた。

 

「がんせきふうじ!」

「つるのムチで動きを止めて!」

 

フシギダネが足につるを引っ掛け、一瞬固まったアンドリアスに大量の岩が降り注ぐ。

やっぱり効いてる。多分こおり単タイプだ。

 

 

だけど氷のように鋭い風となったアンドリアスは、攻撃を無視して突き抜けてきた。

 

「ゼニガメ!」

 

合図とともに甲羅に入ったまま加速したゼニガメがアンドリアスの額に直撃する。

アンドリアスは思わず足を止めた。

 

「ナイス!」

 

今の所こっちの攻撃は全部効いている。

この調子…!

 

 

調子づいていたが、そうは上手くいかないようだ。

森を振るわせるような遠吠えと共に、雪が降り始める。

おまけに周囲に何本も竜巻が現れた。

 

「…本気モード、って所かな…?」

 

アンバーは震えた声で言った。

 

アンドリアスはまた加速して迫って来た。

しかも、今度は吹雪を固めたような竜巻も添えて。

 

「ゼニガメ、みずのはどう!!」

 

指示とほぼ同時に、青い衝撃波が飛ぶ。

でも勿論この程度じゃ止められない。

 

「ほのおのうず!」

 

アンドリアスの正面に炎の渦が広がり、その軌道を逸らす。

 

「はっぱカッター!」

 

フシギダネがアンドリアスの顔に鋭い刃をお返しした。

だけど相手は一瞬怯んだだけ。

そのままこおりのキバを繰り出した。

 

「イワンコ!!」

 

呼ぶより先に、青い影が飛んでいった。

イワンコの体が光のような速さで突っ込み、アンドリアスの顎に衝突する。

 

巨体が一瞬揺れた。

 

「今!ヒトカゲ、ほのおのキバ!」

 

炎が思い切りあたり、アンドリアスは後ろへ飛び退いた。

 

その時、私は突然空気が重くなったのを感じた。

 

「何か、来る…!」

 

私が叫ぶより速く、アンドリアスは広場の縁の方へ跳んで行った。

そのまま、雪煙を巻き上げながら外周を高速で回り始める。

走るアンドリアスの残像が二、三と増えていく。

 

「何あれ!?」

 

必殺技…?

 

アレは絶対何かの前兆。

 

アンドリアスが吠え、周囲に散っていた残像が一斉にこちらへ向き直った。

 

「……一気に来る!?」

「まともに当たったら…死ぬ。」

 

寒さもあって背筋が凍りそうな発言だ。

 

 

でも、

 

「…あの狼は私達を試すって言ったんだよ。」

 

「つまり!?」

「これくらい耐えなきゃ話にならない!」

 

ポケモン達に一気に命令を出す。

 

 

「私が二方向防ぐ。…ヒトカゲはかえんほうしゃ、イワンコはがんせきふうじ。」

 

「分かった!フシギダネ。タネばくだんをお願い!」

 

「…蛍、今回は信じるからな。ゼニガメ、アクアテールで行くぞ。」

 

 

 

その瞬間、轟音と共にアンドリアスの実体と虚像が四方八方から次々と飛び掛かって来た。

 

 

 

 

「いっけぇぇ!!」

 

風と氷の突撃が、それぞれのわざと衝突して爆風を生む。

 

炎が風を割り、草が、岩が残像を砕き、水が氷の牙とぶつかる。

 

 

 

 

目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

…冷気だけが残る中、白い霧を最初に破ったのは、アンドリアスだった。

 

「そんな…!?」

 

倒せていない。私たち全員、満身創痍でこれ以上戦えそうにない。

 

 

だけどアンドリアスは私達に背を向けてゆっくりと森の奥へ帰って行った。

 

雪の結晶が混ざった霧が晴れ、太陽の光が差し込んできた。

ポケモン達はぽかんとしてこっちを向いている。

 

 

「森の王、お前達、認めた。」

 

レザーは晴れやかな顔で近づいてきてそう言った。

 

 

「…勝った…?」

「ひょっとして、私達…伝説のポケモンに認められた!?」

「やったーー!!」

 

疲労のあまり、私はごろんと地面に寝転がった。イワンコと目線が噛み合い、ふふっと笑い合った。

 

「ゲットしたかったなぁー…」

「いや、倒すにはまだ全然だと思う。」

「蛍ちゃん?一歩間違えてたら死んでたんだよ!?今後はこんな事に首突っ込まないでね!」

「えー……」

 

こんな時、お兄ちゃんはいつもうるさい。

アンバーも説得するのがもっと面倒くさい…。

 

「蛍、いつも言ってるけど死地に飛び込むのはやめろ。」

「死んでないから死地じゃない!」

「そういう問題じゃないぞ!」

 

などと言い合っていると、ポケモン達の方が何だか眩しく見える。

私の眼の前で、3匹の体が光り輝いていた。

 

「ひょっとして!」

「進化!?」

 

数秒の後、光が消えるとそこにはヒトカゲもゼニガメもフシギダネも居なかった。

 

「カメール…」

「フシギソウ…!」

「リザード!」

 

私達の御三家は、3匹纏めて進化した。

 

「と、言うことは…」

「…何だ?蛍が言うと碌な事じゃない気がするけど。」

 

お兄ちゃんはそんな事を言っているけど、この仮説は間違い無いはず。

 

「伝説のポケモンは落とす経験値が多い!もっと倒しに行こう!」

「「やめろ!」」

 

説は合ってると思うのに、何故か二人がかりで止められた。

…なんで。

 

そうこうしている内に、日は傾いて来ていた。

 

「そろそろ森から出ないとな。」

「そうだね…。流石に夜は危険でしょ?」

「そうだな!今日も昼に何も食べてないからな…!お腹が空いたぞ!」

「私も何か食べたい!…お兄ちゃんのおごりで!」

「金は渡してあるんだから自分で買ってくれ……」

 

こうして、私達は進化した三匹を連れて森を出ようとする…と、青いイワンコがついてきた。

 

「そういえば、この子…」

「…そいつ、戦うのが好きだ。でも、狩り、上手くない。」

「西から来た。群れ、居なかった。」

 

「ここから西って言うと…瑠月地方だな!」

「りーゆぇ…?」

「そうだぞ!岩山が聳え立つエリアで…、かなりジム巡りも盛んなんだ!」

「…そんな!?」

「なんだ?」

「パイモンって役に立つことあったんだ!?」

「オイラに失礼だぞ!」

 

だって、ポケモン図鑑みたいな枠の割に私より知らないみたいだし。

話をイワンコの事に戻す。

 

「結局、この子は私の物って事?」

「そうだ。そいつ、お前と戦うのが、好きだ。」

 

私は、私をまっすぐ見据えるイワンコに近づいて、額にモンスターボールを押し当てた。

 

 

イワンコを、ゲットした!!

 

 

…私達はレザーに近道を教えてもらって森を出た。

森を抜けるともうモンド城はかなり南の方に見える辺りに出る。

 

「一気に近づいたな!これなら寄り道した遅れは取り戻せそうだぜ!」

「こういう寄り道こそジム巡りの醍醐味らしいけど。」

「そうそう!ヒトカゲ達も進化したし…イワンコもゲットした!」

「ほんと、毎回こんな冒険じゃ身がもたないよ。」

「でも、悪くないでしょ?」

「……うーん…?」

 

夕陽が差す森を背に、私たちは次の目的地へ歩き出した。

こうして、私達の旅は続いて行く…!

 

「…いや、毎回これじゃ絶対死んじゃうぞ~~!」




レザー:出したい出したくないにかかわらず、アンドリアス関連のイベントを書こうとすると勝手にポップする人。幸い扱いづらいキャラでは無い。

蛍のイワンコ:…「主人公っぽい」「犬ポケモン」の2点で抜擢された。色違いなのはたまたまである。
レザー君があんまり話してくれなかったので補足すると、瑠月から流れ着いた個体であり、元々戦闘狂で、一人で突っ込みがちな性格だったからか群れに馴染めていなかったらしい。
モンドにやって来てレザーの群れに居候していた所、同じ天性の戦闘狂を見て一目惚れしたのかもしれない。


アンドリアス:伝説のポケモン。氷タイプで攻撃と特攻が両方高く、耐久もそこそこ。素早さはそんなに速くなく、こうそくいどうで補う形…。
ポケモンのルールで言うと中途半端な両刀なので多分弱い、と言いたくなるが素早さを防御と特防に振ったレックウザみたいな種族値だから救いはあるのか?

肝心の特性はまさかスカイスキン…? 他にあるとしたらかそく辺りでしょう。
威力が上がってひこう技になってもタイプ一致ではないのでテラスが無い環境だと何とも言えませんね。

ちなみに、 エアスラッシュ、ぼうふう、たつまき、かみくだく、こおりのキバ、こうそくいどう、スピードスター、とっしん、ギガインパクト、こごえるかぜ、ゆきげしき、ふぶき、つららおとし、ぜったいれいど 辺りの技を覚えていると思われます。タイプ一致技が大体弱い…?
専用技は…名前はブリージングラッシュとかにしておきましょうか。命中90威力45くらいで最大3ヒットする氷タイプの物理技…全弾1割凍結……酷い運ゲーですね。


パイモン:存在がギャグすぎたせいか戦闘時にもセリフ等がカットされた。このままだと本当にオチ担当に降格する危険性がある。
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