げんしん☆もんすたー   作:ちぃの

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蛍視点スタート。


かくとうジムはメイド式!

朝のモンド城は、昨日の騒ぎが嘘みたいに静かだった。

 

「……平和だね。」

「昨日が異常だっただけだ。」

 

宿の簡素な朝食を平らげながら、私は平和な窓の外を眺める。

 

「…なら毎日もうちょっと異常だったらいいのに。」

「人は皆お前みたいに破滅願望があるわけじゃないぞ。」

「毎日あれじゃオイラ怖くてどこにも出歩けないぞ!」

 

私は溜息をついた。

 

「…で、今日は四か所目のジムに行くんだっけ?」

「そのつもりだけど。」

「切り替えが早いな…。」

「でも、次のジムリーダーって誰なんだっけ?」

 

横で聞いていたアンバーはパンを片手に答えた。

 

「多分…あの人。」

「ジムの場所は騎士団本部のすぐ傍だし、他にいないと思う…。」

 

そんな会話を交わしてからだいたい一時間後。

 

 

騎士団本部の裏手、少し開けた場所にある訓練場にて。

 

 

「……なんか朝から、すごい音してない?」

 

金属がぶつかるような音が聞こえてくる。

 

広い訓練場の中央で、何人かの騎士に混ざって一人の女の人がポケモン達と向き合っていた。

 

特注品なのか騎士団の正装よりも高級そうな白銀の装備。

その割にひらひらのスカートが付いていて、動きやすいのかよくわからない。

 

「…居た、ノエルちゃんだ。」

 

アンバーが小さく言った。

 

ノエルと呼ばれた人は、一斉に動くポケモン達を木の両手剣一本で相手取っている。

 

「ポケモンを相手に……!?」

「……あの人、相当強い。」

 

私がそう呟いた瞬間、その人はこちらに気がついたらしい。

 

彼女はこちらへ歩いてきて一礼した。

 

「おはようございます。」

「お、おはよう!」

 

アンバーが反射的に敬礼しかける。

 

「この人がノエルさん、だよね…?」

「はい。私がノエルですよ。」

 

そう言うと彼女はメイドさんみたいなポーズでお辞儀をした。

 

「訓練中に失礼しました…」

「いえ。ちょうど区切りでしたので。」

 

頭の上がらなさそうなアンバーにノエルはそう言って、背後のポケモンたちに軽く合図を送った。

 

「オマエ…よっぽど強いんだな…」

「いえ、まだまだ未熟です。」

 

そう答えてはいるが、あれだけの訓練で彼女の息は一切乱れていない。

 

「あなたって、騎士団の人なんだよね?」

「あくまでも私は西風騎士団のメイドです。…本物の騎士と比べたらまだまだですよ。」

 

本当にメイドだったらしい。

……実力はとっくに騎士顔負けに見えるけど。

 

お兄ちゃんが少し緊張した様子で続ける。

 

「ここって、ジムの場所でもあるって聞いたんですけど…。」

 

ノエルは一瞬考えた後頷いた。

 

「はい。その通りです。」

「えっ?」

 

思わず声が出た。

 

「もしかして…!」

「はい。私がモンドリーグの四人目のジムリーダーを務めております。」

 

一拍の沈黙。

 

「……やっぱり…!」

「めちゃくちゃ失礼な態度取っちゃったぞ…!」

 

一斉に騒ぎ出す私達に、ノエルは少し困ったように微笑んだ。

 

「お気になさらないでください。普段はあまりそちらの仕事で表に出ませんので。知られていないのも無理はありません。」

 

そう言ってから、改めてこちらを見据える。

 

「皆さんがジムに挑戦されているトレーナーであることは先ほどの会話で分かりました。」

「はい。四つ目のジムに挑戦しようと思ってて……」

「でしたら……」

 

彼女は背筋を正し、深く一礼する。

 

「ジムリーダーとして、正式にお相手いたしますよ。」

「…!」

 

胸の奥が、きゅっと締まる。

 

「今朝は騎士の皆さんにも稽古をつけていたのですが…この隣に団長様に貰った私だけの訓練場があります。」

「騎士団の裏手ですので、多少派手にやっても問題ありませんよ。」

 

 

隣の訓練場に移動し、ノエルは訓練場の中央に立つ。

 

地面に置いていた木剣を壁際へ移し、代わりにボールへ手を伸ばした。

 

「ノエルちゃん、ポケモンバトルもすっごく強かった筈だよ?」

「どうしよう。何タイプのジムかも聞き忘れたし。」

「……二人が悩んでるなら、私から行ってもいいよ?」

 

私がそう言ったのとほぼ同じ時、ノエルが壁に立て掛けた剣が時間差で折れた。

 

お兄ちゃんとアンバーは2人揃ってそそくさとコートから離れていく。

 

 

「…露骨に距離取らないでよ!?」

「オイラ達だってあんな風にバキバキにされたくないぞ!?代わりに行ってくれ!」

 

結局私が先陣を切る事になってしまったらしい。

 

 

…上等。

 

3つのボールを選んで腰に着け、コートに躍り出る。

 

 

「…私はポケモントレーナーの蛍。あなたにバトルを申し込む。」

 

「それでは、本かくとうジムのジムリーダー…ノエル、参ります!」

 

 

 

ジムリーダーの ノエルが しょうぶをしかけてきた!

 

 

 

ノエルは、最初のボールを静かに放った。

白い光が弾け、現れたのは…

 

「パーモット!」

 

電気と格闘を併せ持つ、速攻型のポケモン。

 

「…イワンコ。」

 

こっちもお返しのボールを投げる。

飛び出すのは青い狼だ。

 

「色違いですね。」

「うん。で、それが凄いって?」

「いいえ。勿論、そんな事で負けてはいられませんよ。」

 

 

ジムリーダーと挑戦者は軽口を叩く。

 

バトル開始の合図は無い。

 

 

互いの視線が交錯した、その瞬間イワンコが地を蹴った。

 

「近付いてインファイトです!」

 

飛び上がったイワンコに黄色い拳が一直線に迫る。

 

「イワンコ、かげぶんしん!」

 

紙一重。

それは残像だ、ってつい言いたくなる。

 

イワンコは横に跳び、すぐさま岩を蹴って背後から距離を詰めた。

 

「ふいうち。」

 

ここで強烈な一撃を…

 

「いい踏み込みです。」

 

しかし、ノエルに焦った様子は微塵も見られない。

 

「はやてがえし…!」

「…!?」

 

次の瞬間、パーモットが振り向きざまに拳を放つのが見え…

イワンコが弾き飛ばされ、地面を転がった。

 

「イワンコ!」

 

手痛いカウンターを食らってしまった。

幸いイワンコは、呼びかけに応えてすぐに立ち上がってくれた。

 

「…次は耐えられないでしょう。ワイルドボルト!」

 

自慢の拳に電撃を纏わせ、駆けてくるパーモット。

 

「イワンコ、私を信じて飛び込んで。」

 

こちらも、正面衝突する構え。

パーモットにむしろ正面から突っ込む選択…!

 

「喰らえ、じだんだ!」

 

イワンコがパーモットの近くに着地し、一気にじめんを揺らした。

じだんだは、前のターンの技が失敗していた時…威力が倍になる技…!

 

全体重を乗せた一撃にパーモットは耐えきれず膝をついた。

 

…パーモット、ダウン。

 

「…やられてしまいましたね。」

 

ノエルが静かに告げ、一匹目をボールに戻す。

 

「よし!」

 

私は思わず拳を握る。

 

ノエルは、二つ目のボールを手に取った。

 

「頼みます、コジョフー。」

 

軽やかな音と共に現れたのは、細身のかくとうポケモン。

 

「ここはモココ。頼むよ!」

 

ボールを投げる。

 

桃色の羊っぽい小動物。

ふわふわの体毛はそのままに、尾の赤い玉は鮮やかに輝いている。

 

「……あれ?」

 

遠くから見ていたパイモンは目を丸くする。

 

「メリープ…じゃないぞ!?」

「進化したの…?」

 

アンバーの声が、少し遅れて響く。

 

「お兄ちゃんはともかくアンバー達は知らなかったっけ。」

 

モココは少し誇らしげに鳴いて返す。

変な奴らと洞窟に落ちた時、私のメリープはモココに進化してくれた。

 

……まあ、今はそんな事説明してる場合じゃない。

 

モココは小さく前足を踏み出し、尻尾の球が強く輝く。

 

「行くよモココ。マジカルシャイン!」

 

光が一気に広がり、空間を染める。

かくとうタイプには有効打。ここは素直に押そう。

 

どう来るか…

 

「…フェイント!」

 

ノエルの声と同時、コジョフーの姿がふっと揺らぐ。

直前までそこにいたはずの影が消え、光は空を切った。

 

「周りを警戒して!」

 

モココは背後を警戒したが、気配が来ない。

気付けば、コジョフーは距離を取っていた。

 

「そのまま、ビルドアップです。」

 

相手の気配が一段、重くなる。

 

「……そっちで来たか。ならこっちも。じゅうでん…!」

 

モココの毛が電気が包み込み、しっぽの赤い球が点灯する。

積まれたら面倒だから、次で一気に落とす!

 

「こちらから行きましょう…こうそくいどう!」

 

コジョフーが地面を蹴り、光のように一直線に飛んでくる。

 

「今!」

 

私は即座に指示を出した。

 

「ほうでん!」

 

一泊の後に、モココを中心に電撃が弾ける。

逃げ場のない範囲攻撃。

 

「……バトンタッチ。」

 

だけど相手の方が少しだけ早い。

コジョフーが勢いそのままに後方へ跳び、ボールに戻った。

 

「……っ!」

 

思わず歯噛みする。

ノエルは落ち着いて最後のボールを手に取り、前に突き出した。

 

青と黒に光る、月の模様をあしらったボールが投げられる。

 

 

地面に静かに着地した青い人型の影は、まさに切り札。

 

「ルカリオ…。なるほどね。」

 

「…積みバトンなんて、いい構成してるじゃん。」

 

ノエルは少し照れたように、真っ直ぐこちらを見る。

 

「いえ、私なりに考えた結果ですよ。……どちらにせよ、ジムリーダーとして全力でお相手します。」

 

ルカリオが低く構え、赤い目がこちらを捉える。

こっちのモココもまだやる気だ。

 

ルカリオが一歩、前に出る。

 

「来るよ。」

「…はどうだん!」

 

ルカリオの手に、圧縮された闘気が生まれる。

砲弾のようにエネルギーが放たれた。

 

「避けて!」

 

モココが跳ぶ。

地面を削りながら、はどうだんが背後を通過する。

 

「エレキボール!」

 

蓄えた電気が一気に解放され、雷鳴の球がルカリオへ飛ぶ。

スピード重視。直撃すれば十分…

 

「しんくうはです。」

 

迎撃。

 

ルカリオの拳から放たれた衝撃波が、電撃と正面からぶつかった。

衝撃音とともに、煙が訓練場を覆い隠す。

 

煙の奥で、急に気配が跳ね上がるのを感じる…!

 

「…インファイト!」

 

芯の通った迷いのない声。

 

次の瞬間、煙を突き破って現れたのは、拳を振り抜くルカリオの姿だった。

 

……でも大丈夫。

 

「モココ、ボルトチェンジ!」

 

電撃が弾ける。

雷と化したモココが、ルカリオにぶつかってボールに戻って来た。

 

そして私も、三つ目のボールを投げる。

 

星のエフェクトが弾け……

 

燃える尾を揺らしながら、赤い竜が訓練場に着地した。

 

「リザード。」

 

リザードは爪を構え、その炎を奮い立たせた。

正面には、全く構えを崩さないルカリオ。

 

「しんくうは!」

 

間髪入れずして、衝撃波が飛ぶ。

 

「リザード、かわして……!」

 

言い終わるより早く、リザードは跳んだ。

 

それでも衝撃が体を掠め、リザードの身体が弾かれる。

 

「…畳みかけます。インファイト。」

 

ルカリオが一気に距離を詰めてくる。

 

「…ほのおのうず!」

 

リザードは歯を食いしばり、火を吹いた。

ルカリオはそのまま渦に飛び込み、痛手を負う。

 

「こっちこそオーバーヒートで決める!」

 

それでも勢いを止めていなかったルカリオに、真正面からの大技。

咆哮と同時に灼熱の火柱が噴き上がる。

 

「耐えてください、ルカリオ!」

 

これを食らっても、ルカリオは倒れなかった。

炎を無理やり突っ切って前に出てくる。

 

「今です!きしかいせい…!」

 

その拳に再び光が集まった。

 

これは、受け切れない…!

 

衝突音が響き、リザードの身体が、スローモーションで後方へ弾き飛ばされた。

 

「……リザードっ。」

 

光になったリザードがボールに戻る。

想定外だったけど、ルカリオももうボロボロだ。

 

「今度こそ。お願い、イワンコ!」

 

フィールドに残っているのは、それでも静かに構えているルカリオだ。

 

ルカリオの身体には、まだ闘気が残っている。

ビルドアップによるこうげきとぼうぎょ。

そして、こうそくいどうによるすばやさの2段階上昇。

 

「……速いし、硬いし、強い。」

 

イワンコは、私の声に一瞬だけ耳を動かした。

視線は外さない。

逃げ腰にもならない。

 

「次で終わらせる。」

 

ノエルは、その様子を見て、少しだけ目を見開いた。

 

「こちらも、最後の力を出しましょう!」

 

ノエルは、ルカリオと目を合わせた。

 

素早い踏み込みが来る。

最後と言っても、正直に正面からの拳。

 

「イワンコ、いわなだれ!」

 

無数の岩が降り注ぐ。

 

でもルカリオは岩の隙間を縫って全部避けて来た。

 

そして……

 

ルカリオが岩の影から飛び出した、ほんの瞬間。

 

「マッハパンチ!」

 

……それが来るのは、もうわかっていた。

 

「フェイント!」

 

一瞬の間に双方の攻撃が繰り出された。

 

 

 

ルカリオの死角から叩き込まれた衝撃が、身体を貫いた。

 

ルカリオは一歩、二歩とよろめき、

それ以上、踏みとどまれずに膝をついた。

 

 

…ノエルは静かにボールを構え、ルカリオを戻す。

 

「ここまでですね。」

 

彼女はふっと息を吐き、そして、はっきりと頭を下げた。

 

「私の負けです。ジムリーダーとして完敗でした。」

 

まだ相手も残っていたけど、ノエルは負けを認めたらしい。

訓練場の空気が、ふっと緩む。

 

「……強かった。」

 

思わず私はそう零した。

 

 


 

 

……その後。

 

ノエルは、改めて僕達三人の前に立っていた。

 

「蛍さん、空さん、アンバーさん。皆さんは三名とも、ジム戦を突破されました。」

 

そう告げて、ノエルは丁寧に一礼する。

 

「つ、疲れた……!」

 

先に声を上げたのはアンバーだった。

 

「ノエルちゃん、いつも訓練してたけど……、あんなに強いとは聞いてないって!」

「修行の成果が少し出ただけですよ。」

 

ノエルはどこか嬉しそうに言う。

 

「……やっぱり、いいジムだった。」

「こちらこそ。全力で戦っていただけて光栄です。」

 

その言葉に、ノエルは照れたように視線を逸らした。

やがて、懐から三枚のメダルケースを取り出す。

 

「こちらが、正式なジムバッジになります。」

 

橙色に輝く、薔薇と盾の模様をあしらった証。

それを受け取った瞬間、ようやく実感が湧いてきた。

 

…それは、四つ目のジムを突破したという事。

 

「皆さん…疲れているご様子ですので、宜しければここで休憩していきませんか?」

「休憩…?」

「はい。戦った後には、きちんと休むべきです。」

 

言われるままに近くのベンチで待っていると、ノエルはしばらくしてから戻ってきた。

両手には大きなトレイ。その上には、湯気の立つ紅茶と、山のように積まれたパンケーキが並んでいる。

 

ポケモン達の分まで作ってくれたらしい。

いや、そうにしても多い気がする…。

 

「お待たせしました。皆さん、こちらをどうぞ。」

「「え、これ全部……!?」」

 

蛍と声が被り、気まずくなって顔を見合わせる。

 

「こんなに食べられな……」

「こんなに食べていいの!?」

 

相変わらず食い意地の張った奴め…。

 

「まあ、足りないよりはよろしいかと。」

 

僕たちはベンチに腰を下ろし、それぞれ皿を取る。

 

優しい黄色に輝くふわっふわのホットケーキには、ルビーみたいに鮮やかな苺と、良く泡立ってツノの立ったホイップクリームがたっぷり乗せられている。螺旋を描くチョコソースと、てっぺんに乗ったミントが彩りを添えて、非常に食欲をそそる見た目をしている。

 

隣に座る蛍がゴクリと喉を鳴らす音が聞こえそうなくらいだ。

…というか聞こえた。

 

ポケモン達も皆目を輝かせている。

……唯一パンケーキの食えないヤバチャはテーブルの上にしれっと乗っているが、そんなところに居ても流石に間違えて飲んだりはしない。

 

「美味しい……!」

「この出来、僕よりも全然上手だな。」

「凄い、これ店出せるよ!」

 

がっついている蛍が素直に感嘆する。

 

「そうでしょうか?まだ練習中なのですが。」

 

そう言いながらも、ノエルは少しだけ誇らしそうだった。

 

「……あれっ、オイラの分は…?」

 

テーブルの縁から、パイモンが身を乗り出す。

ノエルは、パイモンをまじまじと見た。

 

「えっと……この子はポケモン、ですか…?」

 

空気が一瞬止まる。

 

「違うぞ!…多分だけど。…とにかくオイラはパイモンだ!」

 

ノエルは少し困惑した様子で、トレイとパイモンを見比べる。

パイモンの分のパンケーキは用意されていなかった。

ポケモン用のカウントに入っていたのだろう。

 

「…分かりました。今皿を持ってきますね…!」

「おっ?持ってきてくれるなら有難く……」

 

何となくがめついパイモンを、蛍が遮る。

 

「いやいや、別に大丈夫だよ!」

「蛍ちゃん、…というと?」

「パイモンは何も活躍してないし別に良いかなって。」

「あんまりだぞぉ…!?!」

 

あたふたするアンバーとノエル…。

このままだと収拾がつかなくなりそうだ。

 

「僕には食べきれないし、ちょっと分けてやるから…。」

「空!ほんとか!?」

 

パイモンはパンケーキを一口食べて、目を輝かせた。

 

「オマエ、命の恩人だぞ……!」

 

どう考えても大げさである。

ノエルはほっとしたように微笑んだ。

 

その横で、アンバーが紅茶を一口飲んで息をつく。

 

「いやー…旅に出てから、本当に毎日疲れるね。」

「でも、楽しかったよ?」

 

蛍があっさりと言う。

 

「うん。ジム巡りって、やっぱりいいよね。」

「確かにロマンはあるな。」

 

ノエルはその言葉に頷いた。

 

「皆さんのような若い方々と戦えるのは……ジムリーダー冥利に尽きます。」

 

訓練場には、もう戦いの緊張は残っていない。

あるのは、朗らかな午後の空気と紅茶の香りだけだった。

 

 

……そのちょっと後。

 

 

僕達は、モンド城の城門前に立っていた。

 

「こうしてここに立つのも…、一週間ぶりだね。」

 

一週間か…。一つの地方のジムを半分以上制覇するには、速すぎるペースのような気もする。

 

「速かったな。」

「…まあ、止まる理由もないし。」

「次は……南西かな?」

 

アンバーが地図を指でなぞる。

 

「五つ目のジムの場所は、アカツキシティ。…モンドで二番目に大きい都市だね。」

「多分強そう…」

「見た所、今までと比べるとかなり遠いな。同じペースで行くと、二日はかかると思う。」

 

ここからの道のりはちゃんと長そうだ。

 

「でも、オイラ的には町が大きいってだけで期待値が高いぞ…!」

「そうそう!」

「宿も料理もいいんじゃないか!?」

「二人共、目的がズレてるよ…。」

「否定はできないが…。」

 

…僕は最後にもう一度モンド城を振り返った。

 

最初に訪れた場所。

 

あっというまに湖を一周して、ジムを四つ越えてここまで来た…。

 

「……よし。行くか。」

 

自然と足が前に出る。

 

橋を渡ると、気持ちのいい風が吹いていた。

 

 

僕達の旅は、まだまだ続く……!

 

 

 

「よっ、お前達。また会ったな。」

「……って、ガイア!?」

 

蛍が真っ先に振り返る。

そこに立っていたのはそろそろ見慣れた長身の男、ガイアだった。

 

相変わらず涼しい顔で、腕を組んでこちらを見ている。

 

「偶然だな。城門前で鉢合わせとは。」

「いや、偶然にしては会いすぎじゃない?」

「第一かっこよく締めようとしてた所で出てこないでよ!?」

 

ガイアは軽く肩をすくめた。

 

「別に追いかけてるわけじゃない。」

 

ガイアは、バッグから橙色のバッジを取り出した。

 

「それって!」

「生憎と、俺も昨日貰ってきた所なんだ。」

 

正に僕達が今日手に入れたのと同じ4か所目のジム、ノエルのバッジだ。

 

「次は知ってるだろ?」

 

ガイアは城門の外、街道の先を見る。

 

「そこのジムリーダーが、面倒な男なのさ。」

「……知り合い?」

「昔のな。」

 

それ以上、ガイアは何も言わなかった。

 

既に豆粒ほどのサイズになって来た、後ろのモンド城。

 

 

僕はこれから先の旅も波乱万丈になるだろうな、と思いを馳せた。

 




ノエル:ダンプさえ かるがる もちあげる ちからをもつ。ゆびさきは きようで こまかい しごとも なんでもこなす。※カイリキーの図鑑説明より抜粋
かくとうタイプの使い手ってなんでみんなポケモンに勝てる程強いんでしょうかね。
ゲームではないこの世界において、トレーナーとして意外に未熟な蛍よりもちゃんと上手の模様。


ジムについて:積みバトンして来るわインフレが激しい…?多分内部的なレベルは優しめにしてるはず…。
なお、そろそろ冒険が後半に差し掛かってるが主人公達のポケモンは約30ちょいまで育っている想定らしい。(こんなもんだっけ。)
ちなみにコジョフーは低種族値で積みバトンが出来るということでの採用。多分モンドでは無く次の地方のポケモンである。

Q進化が遅い?Aアニポケ仕様です(暴論)
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