げんしん☆もんすたー   作:ちぃの

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赤い鳥と赤い石 それと…赤い爆弾?

隣の地方にもつながっているという西側の街道に出ると、地平線まで石畳が続いていた。

人通りこそ多いが、モンド城の喧騒と比べるといくらか穏やかに思えた。

 

「しかしまあ……」

 

先に口を開いたのはガイアだった。

……結局、同行する流れになったのだ。

 

蛍が突っ込んだが、既に細かいことは気にするなと返されてしまっている。

 

「お前達、ずいぶん速いペースで来てるじゃないか。この余裕ぶりならあと一週間もあればリーグを制覇するんじゃないか?」

「いやいや、余裕そうに見えるだけでギリギリだからね。」

「私はまだまだ戦えるけど。」

 

蛍が即座に返す。

 

「オイラだって余裕だぞ!」

「…特に何もしてなくないか?」

 

軽く突っ込みながら、僕は横目でガイアを見る。

相変わらず気楽そうでなんだか胡散臭い顔をしている。

 

「ガイアもここまで来てるってことは、やっぱりチャンピオンランク狙いなんだよね?」

「……当然だろ。」

 

その言葉には含みがある気がした,。

 

「次はアカツキシティだったっけ。」

「多分。ほのおジムって書いてあったはず。」

 

改めて何かを思い付いたような顔をするアンバー。

 

「……へぇ。」

「なに、その顔。」

「別に?ただ、炎タイプのジムって聞くと、ちょっと燃えるなって。」

 

ガイアは一瞬だけ目を細める。

 

「はは。あそこのジムを気に入るってか?」

「…何その言い方。」

「まあまあ。それより……ジムに挑む時、お前達はどう思ってるんだ?まだ緊張する年頃だろ?」

 

そう言って、ガイアは話題を逸らした。

 

「んー……ちょっと緊張するけど、嫌じゃないかな。」

「勝つって決めて挑む。負けても死なないからって手を抜くのは間違ってるよ。」

「オマエ、やっぱり物騒な考え方だな!?」

 

死地に慣れている蛍は強気だ。

 

「まあ、大事なのは、自分とポケモンを信じる事……とかか…?」

「……全く、強かな奴らだ。」

 

それきり、ガイアは何も言わなかった。

 

歩く事数時間。

 

やがて日が傾き、街道から少し離れた所で野営の準備をすることになった。

アンバーとガイアもそれぞれ自分のテントを建てる。

 

「今日はここまでにしておこう。」

「賛成。無理して進む意味もない。」

 

焚き火が起こし、簡単な食事を作る。

ポケモンたちもそれぞれ休み始めた。

 

「……平和だね。」

「フラグ立てないでよ。」

 

アンバーの一言に、隣の蛍が即座に突っ込む。

 

ガイアは焚き火の少し外側で、闇の方を向いて腰を下ろしていた。

 

それから、作ったカレーを食べ、張ったテントで寝た後…

 

僕は何故か、寝付けなかった。

まだ消えていない焚き火の音だけが聞こえてくる。

 

「……?」

 

外から何故か声が聞こえる。

 

横の蛍と、その枕にされているパイモンを起こさないようにテントから出てみると、ガイアとアンバーが起きていた。

 

「おや、起きたのか。」

「空…!」

「何かあったの?」

 

聞いてみると、すぐに答えが返ってきた。

 

「…アンバーは、ヒノヤコマに起こされたって事?」

「うん。それで、見ての通り何かに警戒してる。」

 

見ると、ヒノヤコマはアンバーのテントの上で森の方を睨んでいた。

 

「…ガイアは…」

「俺は元々起きてたのさ。ちょっと夜風に当たりたくてね。」

「そんな事だろうとは思った。」

 

ガイアも林の方から何かの気配を感じているようだ。

確かに、嫌に静かだ。

これが普通かもしれないが、耳を澄ましても焚き火の音しか聞こえない。

 

「…戦う用意をした方が良い?」

「多分。」

「十中八九そうだな。」

 

ガイアはモンスターボールを1つ手に握る。

僕も寝ているポケモンたちの方を見た。

 

カメール、ディグダ、ヤバチャ…モココやイワンコにポニータも皆寝ているようだ。

ヤバチャまで寝ているのか…?

 

そんな中、一匹のポケモンと目が合った。

起きて顔を上げたのは、僕のロコン。

 

「頼む。」

 

元気よく鳴いて返事をしてきた。

 

「……客人だな。」

 

彼は立ち上がり、暗い林を睨んでいる。

 

地面に、重い音が響いた。

 

闇の中から姿を現し、薄い月明かりの下に着地したのは、巨大な2本角を持つ虫タイプのポケモン。

 

「おっと…カイロスか。」

「この前見たオヤブンのゴルバットより大きい…!」

 

縄張り意識が強いのか、ここにキャンプを建てた事にお怒りの様だ。

 

「まさか、ヌシって奴…?」

「それかも…。」

 

指示を出すより早く、カイロスは一気に距離を詰めてきた。

 

「ヒノヤコマ、上!」

 

ヒノヤコマは即座に飛び上がり、アンバーの前に出る。

 

「ロコン、下がってかえんほうしゃ!」

 

炎が容赦なく当たるが、カイロスは止まらない。

強引に突っ切り、そのまま角を振り下ろしてくる。

 

「……硬いな。」

 

ガイアが低く呟き、ボールを放った。

 

「よし、ラプラス。」

 

月明かりの下、冷気とともに水色の巨体が現れる。

 

「れいとうビーム。」

 

氷がカイロスの胴に当たり、動きが一瞬鈍った。

 

「今、ヒノヤコマ!」

 

アンバーの声に応え、ヒノヤコマが急降下する。

 

「つばさでうつ!」

 

鋭い一撃。

だが、カイロスはそれでも踏みとどまる。

巨大なハサミが逆にヒノヤコマを掴み、投げ飛ばした。

 

「ヒノヤコマ…!」

 

ヒノヤコマはまともに弾き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

アンバーが駆け寄ろうとしたその時、カイロスが再び大地を蹴る。狙いは、倒れたヒノヤコマだ。

 

「まずい、ロコン…でんこうせっかで気を引いてくれ!」

 

僕の指示にロコンが動くが、距離がある。間に合わない。

 

「…こおりのつぶて。動きを止めろ!」

 

ガイアもラプラスに指示を出し、カイロスの脚が凍りつく。

…が、その怪力によって剥がされてしまった。

 

「させないッ!」

 

アンバーは、丸腰でカイロスとヒノヤコマの間に割って入る。

 

「…危ない!」

 

ガイアの声が飛ぶ。

だが、アンバーは振り返らない。まっすぐカイロスを睨みつけ、両手を広げた。

 

「…ヒノヤコマだけじゃない。私が守るのは後ろで寝てる蛍ちゃん達、それにモンドの皆だよ!」

 

カイロスは、そんなアンバーを前に一瞬だけ足を止め怖気づく……。

 

…いや、違う。カイロスが見て怯えていたのは、アンバーでは無くその後ろ。

 

倒れたヒノヤコマの体が、内側から溢れ出す光りに包まれていた。

 

「……えっ!?」

 

振り返ったアンバーが、いつもの調子で言う。

 

眩い光の中、ヒノヤコマのシルエットが大きく、鋭く変貌していく。

一陣の熱風が吹き抜け、光が弾けた。

そこにいたのは、燃えるような紅の翼を持つ鳥…。

 

「……ファイアロー。」

 

アンバーが息を呑む。

ファイアローは一瞬だけ振り返り、まっすぐアンバーを見た。

 

アンバーは、拳を握った。

 

「ファイアロー、ブレイブバード。」

 

誰よりも速い、赤い流星が夜を裂いた。

 

地面に叩き伏せられたのは、さっきまであんなに威圧感を放っていたカイロスの巨体だった。

 

 

…翌朝。

 

昨晩と同じメンバー…分かりやすく言うと一人暮らしが出来そうな3人で朝飯を用意していた時。

差し込む朝日に目を細めながら、テントから蛍とパイモンが這い出してきた。

 

「よく寝たぞ……!おはよ……うわっ!?」

「…寒い。お兄ちゃん、何か温かいの…」

 

寝ぼけ眼のパイモンは、座る僕たちを見て文字通り飛び上がった。

 

「な、なんだ!? 赤くてデカい鳥が…?」

「何…?あっ、ファイアロー!」

 

蛍も目を丸くして、アンバーの隣で羽を休めているファイアローを凝視している。

アンバーは、誇らしげに言った。

 

「おはよ、二人とも! 驚いた? 実は昨日の夜、ちょっと大変だったんだよ」

「……こいつ、昨日の夜に進化したんだ。お前らが爆睡してる間に、森の主を倒したんだぞ?」

 

ガイアがいつもの調子で肩をすくめる。

蛍は急いでファイアローのそばに駆け寄り、まじまじと見つめた。

 

「ここなら温かい。」

「いや、もうちょっと感想あるでしょ…」

「蛍、寒いのは分かったからスープでも飲んでろ。」

 

作りたてのコーンスープを蛍とパイモンにも叩き込み、2人が寝袋に戻ろうとしない内にテントを畳んだ。

 

「……さて。騒がしい朝になったが、出発の準備はできてるな?」

 

ガイアが立ち上がり、街道の先を指指す。

 

「よし。そろそろ出るか。」

「うん。蛍ちゃんも…」

 

見れば、なんと蛍とパイモンはほのおタイプのポケモン達に絶賛ダル絡み中だった。

ファイアローは良いらしいが、ポニータとリザードは明らかに嫌そうだし、グレンアルマとロコンは呆れているようだった。

 

「来い。」

 

引っ掴んで連れて行くに限る。

 

「酷いー!引っ張らないでー!」

「なら迷惑をかけるな。」

「はい…。」

 

ともかく、5人で街道を進んで行く。

 

そのまま一日中歩き通して、翌日になった後。

 

「あっ、あそこじゃない!?」

「そうだな。確かにあれがアカツキシティだ。」

 

丘を越えた時、ついに街が見えた。

 

「やっと見える所まで来たな…!」

「こんなに遠いなんて聞いてない。」

「多分今までが速すぎただけだと思うけど。」

 

進んでいくと、左右の道路脇には広大なブドウ畑が広がっている事が分かってきた。

似たようなズリの実は他のきのみと同じ木に実るというのに、ブドウはブドウの木なのは世界の真理案件である。

 

「ブドウだ…!」

「美味しそうだな…そろそろ収穫って感じか!?」

「いや、まだまだだな。…知ってるか、ここのワインはテイワット中に輸出されるんだぜ?」

 

…ワイン用だったらしい。

食い意地担当は露骨にガッカリしていた。

 

そんな二人を宥めつつ田園風景の中を歩いていると、向こうからやたら元気な声が聞こえてくる。

 

「…ガイアお兄ちゃーん!」

 

赤い鞄を背負い、見たことのないポケモンを連れた少女がぶんぶんと手を振って走り寄ってきた。

 

「おっと、クレーか。…また問題を増やして無いといいが。」

「…何もしてないよー!」

 

クレーと呼ばれた少女はぷくっと頬を膨らませる。

 

「知り合い?」

 

僕が小声で聞くと、ガイアは少し歯切れ悪く答えた。

 

「まぁ、昔からの厄介な縁だ。」

 

クレーは僕たちを順番に見回し、ぱっと笑顔になる。

 

「ねえねえ! ガイアお兄ちゃんのお友達?」

「…多分大体そう。」

 

アンバーが屈んで目線を合わせる。

 

「ふーん……」

「私はアンバー。偵察騎士見習いだよ。こっちは空と蛍、それに……」

「パイモンだぞ!」

 

割り込むパイモンに、クレーはぱっと目を輝かせた。

 

「凄い!浮いてるのがしゃべった!」

「オイラだって勿論喋るぞ!」

「でも、クレーのドドコの方がもっと凄い!」

 

謎の張り合いが始まりそうだったので、僕は軽く止める。

 

「クレー、は今は一人なのか?ちょっといろいろ心配だけど…」

 

問いかけると、クレーは一瞬だけ視線を逸らし、次の瞬間には満面の笑顔で言った。

 

「ううん?クレーは一人じゃないよ!だってドドコが居るもん!」

 

そう言って指差したのは、さっきからクレーの後ろにいた生き物。

クレーとお揃いの帽子を被っているように見え、白くてモフモフしている。

クレー本人もそのドドコと似たようなアクセサリーをいくつも着けているようだ。

 

「これが…ドドコ?」

「知らないポケモン…!」

「ポケモン?違うよ!ドドコはドドコだから!」

 

自慢げに胸を張るクレーに対し、ガイアは軽くため息をついた。

 

「それは良いんだが…クレー、こんな所で何をしてるんだ?」

「えーっとね、任務……の途中!」

 

言い淀むクレー。

 

「……その間に、何か壊してないだろうな?」

「壊してないよ…!ちょっと…ヒビが入っただけ…」

 

この子もやはり問題児か。

しかも注意はもう手遅れだったようだ。

アンバーは困ったように頭を掻いた。

 

「えっと…それで、その任務って言うのは?」

「うん! あの街の近くにね、怪しい場所があるの!だから様子を見に…」

「アカツキシティか。それで、怪しい場所っていうのは何だ?」

 

勿論嫌な予感がする。

 

「どう怪しいって?」

「クレーの知らない所にボンボン爆弾があるの!」

「ボンボン…?」

 

知っている所でも、爆弾は危ないと思うが。

小さい頃からそんな事をしてると蛍みたいな大人になるぞ。

 

「…お兄ちゃん、今何か良くない事考えてなかった?」

「…何も?」

「ふ〜ん……」

 

クレーは、そんな僕達をお構いなしに歩き出す。

 

「こっちだよ!」

 

付いていくと、ブドウ畑の外れに小さな石造りの小屋があった。

古いが、特別変わった様子はない。

 

「ここ!」

「普通の物置じゃないか。」

「ドド大魔王の秘密基地かもしれないの…!」

 

扉を開けたクレーが上を指差す。

確かに棚の上で、何かが赤く光っていた。

 

「ほら、あれ!」

 

クレーが棚に手を伸ばした。

 

「おいおい、気をつけ…。」

 

ガタン。

嫌な音と共に、棚から何かが落ちて来る。

 

「うわっ…」

 

光っていた物体は、クレーの額に思い切り当たった後地面に落ちた。

 

「……ん?」

 

蛍が目を丸くする。

 

「これって、ほのおのいしだぞ!?」

 

アンバーも驚いている。

 

「進化の石…何でこんな所に!」

「管理が雑だったんじゃない?」

 

ガイアは屈んで石を拾い上げる。

 

「……使われてない石、か。」

 

独り言のように呟き、それ以上は続けない。

ガイアは石を指先で転がし、僕を見た。

 

「お前さん、ロコンを持ってたよな。」

「うん。」

「なら、持って行くと良い。」

「いいのか?」

「必要になった時のためにな。」

 

少し迷ってから、ほのおのいしを受け取った。

 

「これって、窃盗にならない?」

「大丈夫さ。その石は元々俺のだ。」

「じゃあなんでここにあるんだよ…」

 

ガイアは答えてくれない。

複雑な事情が有りそうなのは察したので、これ以上は聞かない事にした。

 

その時、畑の向こうから慌てた声がした。

 

「クレー!? どこ行ったの!」

「あっ。」

 

いまだに額を抑えて痛そうにしていたクレーがぱっと振り向いた。

 

「やっと見つけた…!」

「残念だったな。」

 

騎士団らしき女性が駆け寄ってくる。

 

「もう! 目を離したら……!」

「えへへ……。」

 

クレーは悪びれず笑い、こちらに手を振る。

 

「またね!」

 

そう言って、彼女は連行されていった。

まるで嵐…いや、爆弾のような少女だった。

 

静かになった畑道で、懐の中の石を確かめる。

 

「…これ…託された、って事で良いの?」

 

ガイアは歩きながら答える。

 

「その石は俺には必要じゃなかった。それだけだ。」

「……。」

 

その時はこれ以上、話題は広がらなかった。

 

 

街に着いたときには、もう夕方。

既に見えていたとはいえ、アカツキシティまでの道のりは事実かなりの距離だったらしい。

 

 

僕達は町外れのちょっと良い宿に入った。

割といい雰囲気の石造りで、窓からはブドウ畑が見える。

 

夕食は、相変わらずのパンとスープ、それから肉料理。

付け合わせのブドウは甘く、ジュースはやたらと濃い。

 

「これって、ワインじゃないよね?」

「ギリギリでまだブドウジュースだと思う。」

 

なお、ガイアは平然とした顔でワインの三杯目を飲んでいた。

 

「お前達も少しくらい飲まないのか?」

「法律で問題無くてもまだ無理だよ…」

「私は一応良いけど。」

「手が付けられなくなるから駄目だ。」

 

食後は、誰が言い出したわけでもなくテーブルにチェス盤が置かれた。

 

「チェスか、久しぶりだな。」

「付き合うか…。」

 

結果から言うと、ガイアに全員まとめて負けた。

 

「どう見ても酔ってるのに…こんなのチートだよチート!」

「その言い分なら、そっちも飲めば勝てるんじゃないか?」

 

寝る前も、大部屋が無かったせいで僕とガイアで相部屋とかいう気まずい展開になりかけたりした。

 

 

そんなこんなで不安と期待を抱えながら寝ると…

 

翌朝、隣の部屋に泊まった筈のガイアは居なかった。




クレー:湖のコイキングをドカーン!することに快楽を覚える危険思想のロリ。
アンドリアスやトワリン等、原神のキャラがポケモンだった事にされている場合があるが(多分デフォルメされてる。)、彼女が連れているドドコは、ポケモンですらなくなんと動くぬいぐるみに分類される。クレーの母親が作ったらしいが…

色々あって出したはいいが活躍が無くなった…
この活躍の少なさでは文句を言われるかと思ったが、ベネットの存在がそれを肯定してくれる。
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