【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった 作:初雪空
雨が降っていた。
戦闘服を着た兵士が1人、どこかの部隊に追われているようだ。
辺りは暗いが、まだ昼。
雰囲気と地形から、ヨーロッパのどこかの森林地帯だ。
「大勢の味方を殺したスナイパーは、この辺りにいるはずだ! 探せ!!」
指揮官らしき男の叫びで、他の兵士たちが散開する。
その時に、ニャーッ! と鳴き声。
誰もがライフルの銃口を向けつつ、緊張した顔で近づく。
やがて、指揮官が中に入るも……。
スリングでライフルを肩掛けしたまま、両手で掲げたのは、ネコだった。
一斉に息を吐く、兵士ども。
「もう逃げたようだな……。別の場所を探すぞ!」
ネコを地面に置いた指揮官は、部下に命じた。
面食らったネコは、一目散に走り去る。
彼らが立ち去った後で、隠れていた兵士が出てくる。
両手に赤ん坊を抱いたまま……。
「おい? 呼吸をしろ、呼吸!」
見つからないように口を塞いでいたことで、呼吸をしていない。
ペチペチと叩くと、ゴホッと息を吐く赤ん坊。
思い出したように、泣き出す。
その男は周りを見ながら、肩に狙撃用ライフルを下げたまま、早足で立ち去る。
・・・・・・
・・・・
・・・
・
目が覚めた。
擦り切れた畳による、せまい部屋だ。
「リア……。やっぱり、バチが当たったんかね? 俺が近くで見守っていなけりゃ、せめてお前は……」
それは、合同葬儀にあった女子の名前。
木佐久は広げた両手を見下ろすも、答える者はいない。
「日本を離れるか! だが、その前に……」
木佐久の表情は、ゾッとするほど冷たかった。
「あいつをこんな目に遭わせた奴らは、生かしておかねえ……」
立ち上がった木佐久は、畳を起こした。
その下には、よく整備されたショットガン、拳銃などが並ぶ。
細長い筒が印象的なハンドガンを選び、慣れた様子でチェックする。
――放課後
目につきにくい場所で集まった、不良グループ。
「ちくしょう!
「今は個人情報の保護で、自宅も分からんしなあ……」
「とっとと買うか、ヤッておけば」
「いても、ハイクラスだろ? 俺らじゃ、無理だぜ」
けれど、リーダーは思いつく。
「生徒会長の
「ずっと休んでるよ」
「ああ、そのはずだ……」
「
「合同葬でも、見かけたような……」
「古波津が登校したら、すぐ教えろよ? 俺の女にするわ」
「分かった」
「水鏡の妹は、どーすんの?」
「そっちは、どうでもいい! お前らが狙ってるなら、好きにしろ」
やがて、リーダーだけ残る。
「あーあ! 古波津は来ないし、綾ノ瀬はくたばったか、逃げちまった」
火をつけ、煙をくゆらす。
「水鏡の妹でもいいな? 今度は柄にもなく遠慮しねーで、早くヤッておかないと――」
プシュッ! プシュッ! プシュッ!
規則正しい、炭酸が抜けるような音。
訳も分からず、倒れ伏すリーダー。
「な、何だぁ?」
激痛にうめくも、自分が何をされたのかも不明なまま。
いっぽう、サイレンサー内蔵の22口径のセミオートマチックを握る木佐久は、近づいてから頭に銃口を向ける。
「お、おっさん……救急車を――」
プシュッ! プシュッ!
硬いものが割れる音で、リーダーは絶命した。
周りを見た木佐久は、切れた電球を交換するような雰囲気でリーダーの両脇に手を入れ、ズルズルと運び出す。
◇
『水鏡くん、自首して?』
開口一番に言われた俺は、
「京本さん、宗派は何ですか?」
『へっ?』
「いや、どういう葬儀にするかって――」
『仮にも現役の刑事に殺害予告をするの、止めてくれない!?』
心温まる会話をした後で、俺は尋ねる。
「順番に、話してくれません?」
『……本川高校で男子が1人、失踪したの! 最後に目撃された場所には本人らしき血痕があって』
「どうして、俺が?」
『あの高校の不良をまとめているリーダーでね? 君も放課後に呼び出されて、詰め寄られたって――』
「俺を呼び出したギャルが、取り調べで言ったか……。あとで、始末しとこ」
『だから、冗談でも言わないでって!』
「俺じゃないです! アリバイは……たぶんない」
息を吐いた香穂は、あっさりと言う。
『嬉々として完璧なアリバイを言うほうが、怪しいわよ!』
「呼び出された時は、『綾ノ瀬を彼女にするから手を出すな』だったか? 違うと答えたら、すぐ解放されたけど」
沈黙のあとで、香穂が告げる。
『本川署は、あなた達のせいでビビりまくり! 公立高校は文科省の管轄だし、敷地内に乗り込んで捜査する気はないようね……。何やったの?』
「知らないほうがいいです! 邪魔が入らないのなら、やりやすい……。淫紋アプリの件は、片付きました。でも、それを仕組んだ犯人と、アレーテが目撃したスラムファイアーの奴が残っています」
緊張した様子の香穂が、尋ねてくる。
『どうするの? 後者は、あの売春クラブにいた支配人を殺したんだっけ?』
「……ええ! スラムファイアーのほうは見当がついているから、そっちの対応を見てから、前者の犯人を消します」
苦笑しながら、指摘する。
「今度は、言わないんですね? 殺すなと……」
ゆっくり息を吐く音のあとで、香穂は低い声で答える。
『私もね? 怒っているの……。大勢の女子の命と尊厳を奪った奴を……。これ以上は、言わせないで』
「分かりました……。もうすぐ、この事件は終わりますよ! じゃ」
スマホの画面をさわれば、時刻は朝だ。
俺は、ベランダの窓から外を見る。
「憎らしいぐらいの快晴だ……。最後に、本川高校を見ておきますか!」