【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第22話 ブラッディ・クローザー(後編)

 俺が近くに立ったら、息を吐いた中年男は屈み、背を向けたままで呟く。

 

「来ると思ってたぜ……。俺を始末するのか?」

 

「抵抗しないんだな? どうせ、ハンマーを起こした小型のリボルバーでもあるんだろ?」

 

 再び息を吐いた中年男は、ゆっくりと立ち上がり、振り向いた。

 

 本川(ほんがわ)高校に住み込みの用務員、木佐久(きさく)だ。

 そして、ここは敷地内。

 

 木佐久は、右手にあるリボルバーを見せた。

 

「持ってるさ! 本川署の大騒ぎは、俺の耳にまで届いたぜ……」

 

「ムダと分かっても、性分か! ま、安心するよな?」

 

 俺が苦笑したら、ゆっくりとハンマーを戻したあとで、リボルバーをポケットに仕舞う木佐久。

 

「聞きたいことがあんだろ? 言ってみな!」

 

「俺は、この乱痴気騒ぎを仕掛けた馬鹿を始末するが……。あんたも恨みがありそうだから、先にお伺いを立てたんだ」

 

 肩の力がぬけた木佐久は、怒りを見せながら答える。

 

「俺がやりてえ! 安心しな、黒幕をぶっ殺したら日本を立ち去るからよ!」

 

「この高校に主犯がいるとは、気づいていたわけか……」

 

 頷いた木佐久は、煙草を取り出し、火をつけた。

 

 煙を吐いてから、俺を見る。

 

「ああ……。だけど、せいぜい売春の手引きで女子を売ってるぐらいに思っていた。組織が手玉にとられていたとは、日本のヤバいところもレベルが下がったもんだぜ!」

 

「あんたが得意な手段で、仕留めればいい! ついでに、誘い出してやる」

 

 地面に落としたタバコを足で踏み消した木佐久は、下を見たままで言う。

 

「聞かねえんだな? どうして人を殺したとか、怒っているんだとか……」

 

「聞いて欲しいのか?」

 

 俺の質問で、おかしそうに笑った木佐久が顔を上げる。

 

「ククク……。まさか! そうそう、嬢ちゃんに返して欲しいものがある」

 

 

 ◇

 

 

 浅岡(あさおか)あいかは、生徒会室に急いでいた。

 

 その理由は、水鏡(すいきょう)アレーテからの電話。

 

 ――あの会員制クラブで、古い辞書のような本を見つけましたの!

 

「こんにちは!」

 

 すれ違った女子が挨拶したものの、あいかは無視した。

 

 足音を響かせて、生徒会室にたどり着く。

 

 引き戸に鍵を差し込み、乱暴に開けた。

 

(あった! 他の魔術師に襲撃され、全て持ち去られたか、処分されたと思ったけど……)

 

 1冊でも残っていれば、御の字だ。

 

(次の取引相手を見つけ、今度はもっと上手くやりましょう!)

 

 アレーテが置いていた禁書に近寄り、もどかしそうに開く。

 

「……本物のようね? 助かったわ!」

 

 窓際にある生徒会長のデスクの前に立ったまま、どんどんページをめくる。

 

「このことを知っているのは、水鏡さんとその兄? どうやって口封じをしたものか――」

 パリンッ

 

 ガラスが割れる音。

 

 あいかの体に、強い衝撃が加わる。

 

 狙撃されたのだ。

 

 窓は小さな穴から四方に割れていき、バラバラと落ちていくガラス片。

 

「ぐっ! あいにく、私にはライフル弾ぐらい耐えられる障壁があるの!」

 

 禁書を閉じた「あいか」が、それを小脇に抱えつつ、生徒会室の出口を目指す。

 

 背中を向けているが、本人が言ったように見えないバリアーが守る。

 

 けれど――

 

 二発目の弾丸は、その障壁にぶつかりつつ、あっさりと貫いた。

 

 柔らかい人体など、紙と同じだ。

 

「ぶっ!? な、何で――」

 

 三発目、四発目、五発目。

 

 その度に殴られたようにビクンッとしつつ、あいかは前に倒れ込んだ。

 

 落とした禁書がドスッと、鈍い音を立てる。

 

「だ、誰か……」

 

 必死に助けを求めるも、流れ出る血は増え続け、じきに伸ばしていた手も落ちた。

 

 開いたままの引き戸から見える廊下は、放課後らしい夕暮れを示す。

 

 コツコツと近づいた女子が、右手で持っている小型のセミオートマチックで頭に数発、心臓に数発を撃ち込んだ。

 

 パンパンッと乾いた音がするも、知らなければ銃声とは思わない。

 

 落ちている禁書を拾い上げたアレーテは、生徒会室から出て、引き戸を閉めた。

 

 奪った鍵で施錠したら、女子トイレに流す。

 

 そのまま、下校する生徒に交じった。

 

(あの木佐久が持ち逃げしたガード・スペシャルで女魔術師にトドメとは、皮肉ですわね?)

 

 同じ制服で歩き続けるアレーテは、もう見ることがない景色を目に焼き付けた。

 

 

 ――高台

 

 うつ伏せで狙撃ライフルを構えていた木佐久は、撃ち尽くしたままで立ち上がる。

 

「たいしたもんだよ、坊主! ライフル弾を止めるような化け物に効くとは……」

 

 持っていたライフル弾に魔術的な付与をしてもらい、その結果がこれだ。

 

 立ったままで斜面を滑り降り、停めていたバイクにまたがる。

 

 パトカーのサイレンが聞こえる……。

 

 ライダースーツで、顔が見えないヘルメットをかぶった。

 

 バイクには大手の運送会社のマークがあり、緊急走行のパトカーは反対車線を通りすぎる。

 

 

 木佐久は途中でバイクを乗り換え、服装も変えた。

 

 やがて、太平洋を横断できるだけのヨットに乗り込む。

 

 出航しつつ、遠ざかる日本の陸地を振り返る。

 

「あばよ、リア!」

 

 日が暮れて、海は真っ暗に。

 

 星空と人工的な明かりになった中で、木佐久は呟く。

 

「これから、どうすっかね?」




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