【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第23話 20人以上の女子が自殺した原因は、こいつでした!

 本川(ほんがわ)高校の生徒会室で、浅岡(あさおか)あいかの死体が発見された。

 

 窓越しに狙撃されたうえ、別の銃で撃たれていたから。

 

 狙撃できるポジションで撃ち尽くしたライフルも見つかったが、俺と水鏡(すいきょう)アレーテは警察に呼ばれず。

 

(特区から保護者よろしく付いてきた女刑事の京本(きょうもと)香穂(かほ)が取り成したとは、思えん!)

 

 ちなみに、生徒会長の古波津(こはつ)百合(ゆり)の取り調べをしたようだが、アレーテが付き添ったことで1時間もせずに解放された。

 

 ずっとアレーテが一緒で、通信履歴や目撃情報もあっただろう。

 

 というか、普通の女子高生は狙撃をできないし、日本のスーパーで銃は売っていない。

 

(本川署の建物が人ごと斬られなくて、何より……)

 

 犯人の木佐久(きさく)は、どっかへ逃げたようだ。

 

 で、俺は炭八馬(すみやま)佳守(かず)に呼ばれた。

 

 お互いに制服を着たまま、放課後の時間でファーストフード店でカウンターに並ぶ。

 

「百合を守って、事件を解決したわけだし……。これ、約束の女子を惚れさせるやつ」

 

 プリントアウトした紙を渡された。

 

 いかにもな円と記号が並ぶ。

 

(淫紋アプリは、これの派生か……)

 

 折り畳み、内ポケットに入れる。

 

「確かに……。古波津先輩も、いずれ出てきますよ」

 

「今は、君の妹さんが付き添っているんだよね? 本当にありがとう」

 

 俺にこれを渡した理由は、それだな……。

 

 機嫌を損ねた俺がアレーテを引き上げさせたら、絶望した百合は自殺しかねない。

 

「先輩は?」

「……百合は会ってくれないし、既読スルーもない! 家族が事務的にお断り」

 

 そりゃ、そうだ!

 

 惚れさせる魔術は、禁書が消えたことで無効化されたし。

 

(弱った百合と一緒にいれば、惚れ直すかもしれんが……)

 

 そもそも、佳守は陰キャだ。

 

 警察が殺気立っていて銃撃された死体も出た状況じゃ、チャラ男先輩だって匙を投げる。

 

 佳守は、こちらを見た。

 

綾ノ瀬(あやのせ)さんの行方は、知らない! 悪かったね?」

「……仕方ないです」

 

 季節の限定バーガーの濃い味が、いつまでも残る。

 

 甘ったるい炭酸ジュースで流せば、放課後ライフの完成だ。

 

(フライドポテトの塩味、すごいな?)

 

 まったりしていたら、隣の佳守がポツリと呟く。

 

「実はさ? 個人輸入をしたんだ……。僕じゃなく、古い洋書を扱っている古本屋で! 本屋の隣にあるチェーン店じゃなく、ガチで詳しい人だけが立ち寄って、本によっては一財産するところさ」

 

 ほーう?

 

 そっちで流れてきたか……。

 

「知ってますよ? 一見で行くと、『はよ出て行け』とプレッシャーかかる本屋」

 

 笑った佳守が、頷いた。

 

「そうそう! 君が誰に使うかは別として、これで共犯だから……。その古本屋にふらっと立ち寄り、店番をしていた店主にオススメされたんだ。辞書みたいな古い洋書を数冊……。その中の1冊に、書かれていたってわけ! 僕は百合と相思相愛になったことで満足して、今度は怖くなった。ちょうど生徒会に出入りしていた浅岡先生に相談した後で、全部渡したんだ」

 

 え?

 

 感情を捻じ曲げられた女子が20人以上も自殺して、一家心中になったのも。

 

 この街で大きな売春クラブに成長したのも――

 

(ぜんぶ、お前のせいだったのか!)

 

 ショックを受けている俺に、佳守が苦笑する。

 

「その浅岡先生も、殺されちゃってさ……。僕は百合を支えていくから、君も本当に好きになった女子にだけ使うといいよ?」

 

「……そうですね」

 

 佳守は罪悪感を抱いたのか、自分のトレイを持って立ち去る。

 

「じゃ、じゃあ! 学校閉鎖になったけど、課題をやらないといけないから! 百合の家にも立ち寄ってみる」

 

 残ったジャンクフードを口に入れ、考える。

 

(さーて、どうしようか?)

 

 炭八馬佳守は、禁書の運び屋にされた。

 だが、古波津百合の気持ちを捻じ曲げた犯人でもある。

 

(悪用したのは、浅岡あいか! 俺は、警察でも裁判官でもないからな……)

 

 問答無用でぶっ殺してもいいし、完全犯罪にもできる。

 

 法律で裁かれることはない。

 

(なればこそ、慎重に対応する)

 

 極論を言えば、自分しか律する存在がいないのだ。

 

 気に食わないで処していたら、キリがない。

 

(あの陰キャの罪……ではあるよな? 問題は、やつの自覚が薄すぎること)

 

 その時に、スマホが震えた。

 

 メッセージを見ると、百合が動くようだ。

 

(ふむ……。俺は、許してやろう! だが……)

 

 文面を考えつつ、俺はスマホの画面にさわる。

 

 

 ◇

 

 

 国際空港でスーツケースを転がしている女子高生。

 

 古波津百合だ。

 

 その顔には疲労が色濃く、ドラマのような声に立ち止まり、振り向く。

 

「百合! 待ってくれ! 最後に、これを見て欲しい」

 

 泣きそうな顔の炭八馬佳守が差し出したものは、水鏡(さい)に与えたのと同じだ。

 

 渡された紙片をジッと見た百合に、佳守が告げる。

 

「君は、僕の彼女だ! 行かないで欲しい! 僕がずっと支えるから――」

「何をしてくれるの?」

 

 無表情の百合に問われて、佳守は驚いた。

 

「えっ? そりゃ、一緒にいて慰める――」

「怖い警察に付き添ってくれたのも、ずっと自宅にいてくれたのも、水鏡さんだったわ……。おかげで、自殺せずに済んだ」

 

「そ、それは! 仕方ないじゃないか! だって、僕はまだ高校生で、君の家族に断られたし――」

「分かった」

 

 呆れたように息を吐いた百合は、魔術的な記号や呪文らしきものから、佳守を見た。

 

 にっこり微笑む。

 

「分かってくれたんだね! ひとまず、僕の自宅に――」

「さよなら」

 

 脱力した手から、女を惚れさせる術式の紙がヒラヒラと舞う。

 

 背中を向けた百合は、国際線のゲートに荷物を置いた。

 

 いっぽう、膝が落ちた佳守は、リノリウムの床に手をつく。

 

「……何で?」

 

 様子を見ていた警備員2人は、視線をそらし、目立たない場所へ移動した。

 

 国際線で、ちょくちょく見られる光景だ。




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