【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第24話 俺は許そう! だが、こいつが許すかな?(前編)

 水鏡(すいきょう)アレーテは、見送り用のデッキに立ったまま、古波津(こはつ)百合(ゆり)が乗っている旅客機が飛び立つ様子を見守った。

 

「ふうっ……」

 

 US行きの国際線だ。

 

 本川(ほんがわ)高校の生徒会長だった百合とその家族は、日本を捨てた。

 

 いや、それは言い過ぎだろう。

 この街を捨てたのだ。

 

 本川署に呼ばれたうえ、生徒会の担当だった女教師の浅岡(あさおか)あいかと一緒に売春をしていたことで、ある事ない事を言われたから……。

 

 オープンデッキに立っている人々は、見送った人が乗る旅客機を探し、あるいは、旅客機を見ることが目当て。

 

(さい)の魔術によって顧客の名簿がなくなり、そもそもアナログ管理だったことは幸いでしたね?)

 

 本川署にしてみれば、怒髪冠を衝く話。

 

 けれど、アレーテに関係ない。

 

(それでも、ハイクラスで百合を抱いていた連中がいる……)

 

 政治家、経営者、重役、ヤクザの幹部。

 

(いつ、どこで会うやら……)

 

 見えない敵に怯え続けた挙句に、売春のネタでまた抱かれるのでは、発狂する。

 

(百合を心配していた綾ノ瀬(あやのせ)奈々美(ななみ)は、全面的に協力してくれました……)

 

 USへの入国と滞在の許可、さらに現地での仕事。

 

 一通りを準備したのだ。

 

 さすが、綾ノ瀬!

 

 そのおかげで、引き篭もりになっていた百合とその家族は逃げるように日本を後にできた。

 

 踵を返したアレーテは、オープンデッキから建物に入り、街に思えるほど広い場所から戻っていく。

 

 まだ明るい時間帯。

 

 アレーテは、一期一会となった友人に思いを馳せつつ、歩き続けた。

 

 空港の周りは再開発されていて、綺麗で広い車道と歩道を外れれば、とたんに寂しくなる。

 

 人の気配がなくなったところで立ち止まり、そのまま聞く。

 

「何のつもりですの?」

 

「き、君なら、百合の連絡先を知っているだろう!? 教えてくれ! 彼氏である僕には知る権利がある! これに書いてくれ!」

 

 小走りで駆け寄った炭八馬(すみやま)佳守(かず)が、紙を渡した。

 

 それを見つめているアレーテに、改めて命じる。

 

「古波津百合の連絡先と、海外での滞在先を教えてくれ! あと、僕に連絡するように言ってくれ! 百合と一緒だった君が言えば、あいつだって……」

 

 アレーテは、両手で広げた紙を持ったままで俯いた。

 

 肩を震わせて、笑い出す。

 

「フ……フフフフ! 今、自分が何をしたのか、分かってますかぁ?」

 

 顔を上げたアレーテの表情は、ニタァという笑み。

 

 狂気を感じた佳守が、無意識に後ずさる。

 

「い、いいから、早く教えてくれ! 何をするんだ!?」

 

 アレーテが手に持っていただけの紙が燃え始め、佳守は慌てて取り返そうとする。

 

 でも、あっという間に燃え尽き、黒い物体がハラハラと散るのみ。

 

「何てことを! 君は――」

「効果を失った術式で、こっけいなこと! せっかく、空港での一件を見逃して差し上げたのにぃ!」

 

 ポカンと口を開けた佳守は、オウム返し。

 

「効果を……失った?」

 

「ええ、そうですわ! 禁書の1つが発動体とバッテリーを兼ねているようなもので、今は落書きでしかありません! わたくし達が、あの売春クラブにあった禁書を残らず消したので!」

 

 もはや言葉もない佳守に、顔をゆがめたアレーテが言葉責め。

 

「どう考えても釣り合わない女子にチヤホヤされて、さぞや気分が良かったでしょうねえ? 初体験も、彼女にリードされたままの受け身?」

 

「うるさい! 僕と百合は愛し合って――」

「古波津さんは、こう言いました! 『どうして炭八馬くんを好きだったのか、自分でも分からない』と! それは、そうですわ! 魔術でねじ曲げられた想いだったから……。フラットに接すれば、彼女があなたに惚れる道理はありません」

 

「君に何が――」

「生徒会長で忙しく、就職か大学受験を控えている古波津さんの何を知ってますの? 彼女の悩みは? 喜ぶことは? 最近のデートプランは? 彼女の敏感なところは?」

 

 佳守は、アレーテの質問に答えられない。

 

 どこまでも都合のいい女で、童貞を捨てるのに最高の相手。

 

 それだけだ……。

 

 ここで、アレーテは真顔に。

 

「わたくしは、古波津さんの連絡先を知りません……。彼女は新天地でやり直すから、本川高校と売春クラブを思い出させる私は不要です! 無責任にさえずる近所や何を言い出しても不思議ではない警察に、睨みを利かせていただけ! ずっと張りつかれていたら、迷惑です。わたくしにも、自分の生活があるのですよ? 再起するにせよ自殺するにせよ、彼女の問題」

 

 ガックリと肩を落とした佳守は、諦めた。

 

「そうか……。まあ、海外にまで追いかけられないし……。もう、いいよ!」

 

 アレーテに背を向けた佳守は、泣きながら帰ろうとする――

 

 佳守が足を進める先で、陸上のスタートラインのように溝ができた。

 

 バコッと、地面が破裂する音。

 

 足を引っ込めた佳守が、叫ぶ。

 

「うわっ! な、何だ!?」

 

 片手を振り、それを成したアレーテが、元の状態にしつつ、宣言する。

 

「わたくしの話は、まだ終わっていません! 才から言われた条件は、たった今、満たされました!」

 

「そ、それは?」

 

 ニヤニヤしているアレーテは、説明する。

 

「才は、あなたを許しました! 『悪用した奴が悪いのであって、炭八馬の罪を問うのは微妙だから』という理由でね?」

 

「だったら!」

「そして、こうも言いました! 『俺は許そう! だが、こいつが許すかな?』とも!」




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