【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第25話 俺は許そう! だが、こいつが許すかな?(後編)

「わたくしと(さい)には、今回のようなチャチな魔術もどきではなく、その気になれば世界を滅ぼせるだけの魔術がありますわ!」

 

 水鏡(すいきょう)アレーテの告白に、対峙している炭八馬(すみやま)佳守(かず)は無意識に後ずさった。

 

「……え?」

 

「けれど、『気に入らないから』で殺しては、遠からず現代社会は崩壊するでしょう……。才は、それを望みません! 少なくとも、今は!」

 

 相手が引いた分だけ、アレーテは踏み込んだ。

 

 ニタァと笑みを浮かべたまま、敵対を宣言する。

 

「わたくしたちの敵は、同じ魔術師か、人知の理解が及ばない化け物……。特区に押し込まれた人々への蔑称ではなく、本物のね? さて、炭八馬先輩? あなたが魔術師だったとは驚きですわ! それも、女子20人以上に売春をさせた挙句に正気に戻すという、鬼畜ですら眉をひそめる所業を」

 

 佳守は、ブンブンと首を横に振った。

 

「ぼ、僕は知らない! そんなことをするわけがないだろう!? 狙撃されたっていう浅岡(あさおか)先生が――」

「あなたは、わたくしに思考誘導の魔術を使いました! 攻撃された以上、あとはどちらかが死ぬだけですわぁ!」

 

 片足を滑らせて、肩幅ほどに開いたアレーテは、何も持っていない片手で横に振る構えに……。

 

(偽りとはいえ、古波津(こはつ)百合(ゆり)の彼氏だった……。苦痛なく、一瞬で殺す!)

 

 どれだけの痛みだろうが、それを自覚しなければいい。

 

 いっぽう、可憐な後輩による殺気で、佳守は必死に叫ぶ。

 

「き、君は、その術式が無効だと言っていたじゃないか! それを分かっていながら……。冗談じゃない! そんなに詳しい君たちこそ、真犯人じゃないか!」

 

 アレーテは、片手を横に振り抜く直前のまま、何も答えない。

 

 焦れた佳守が、責任転嫁を始める。

 

「よくも、僕の気持ちを弄んだな……。そのせいで、百合は誰も知らない外国へ亡命するしかなく、自殺した女子は20人以上! 許さない、許さないぞ! 今、警察を呼ぶから、後はそっちに言い訳をすればいい! 君たち兄妹は、もう日本の敵……いや、世界の敵だ!」

 

 正義の味方を気取り出した佳守は、自分のスマホで通報する。

 

 茶番を見ていたアレーテは、呆気にとられた後で、片手を振るうための姿勢をやめた。

 

「そうですか、そうですか……。ここまで怒らせる相手は、そういませんわね? 『せめて最期ぐらい楽に』と思いましたが……」

 

 通報を終えた佳守は、得意そうに告げる。

 

「もう、君たちに逃げ場はないよ! 今から逃げれば、外国へ行けるかもね? ハハハ、ハ?」

 

 うるさいほど聞こえていたジェットエンジンの音が、なくなった。

 

 ザッ ザッ ザッ

 

 片足で地面を蹴るのを止めたアレーテは、無表情で顔を上げた。

 

「あなたにふさわしい罰が、決まりましたわ! そんなに多くの犠牲を出したことに怒っているのなら、お望みの通りにして差し上げます……。水鏡才の従者たるアレーテが命じる!」

 

 アレーテが立っている地面を中心に、青く光る魔法陣が広がった。

 

 幻想的な雰囲気の中で、どこから取り出したのか、分厚い魔術書を開く。

 

「ザブラサイズにより、この炭八馬佳守が本川(ほんがわ)高校を中心にした売春騒動の発端であることを理解させろ! 対象は……日本全国。これは理屈ではなく、事実である! 認証を!」

 

 大きな機械が動いたような音と、眩いばかりの光。

 

 それが収まった後には、何も持っていないアレーテが立っているだけ。

 ジェットエンジンや人の声も、遠くに聞こえる。

 

 両手で顔を覆っていた佳守は、おそるおそる、彼女を見た。

 

 けれど、アレーテは先ほどの怒りが嘘のように穏やか。

 

「古波津さんは、海外に救いを見出しました……。あなたにも許します。受け入れる国はないでしょうけど」

 

 歩き去っていくアレーテに、佳守は叫ぶ。

 

「に、逃げる気か!? せめて、僕に謝れ――」

 ウゥ――ウ!

 

 サイレンの音を鳴り響かせたパトカーが、数台。

 

 急停止しつつ、ドアが開き、どの警官も銃を抜いた。

 

「動くな! 動けば、撃つぞ!」

 

 けれど、その銃口は全て佳守に向けられている。

 

 殺気と銃口により、佳守は混乱した。

 

「あ、あれ? 通報したのは僕で……」

 

 弱々しく、途中で言葉が途切れた。

 

 いっぽう、アレーテには優しい言葉。

 

「君、大丈夫か!」

「……ええ、おかげさまで。IDは」

 

 その確認に、警官は首を横に振る。

 

「いい! 君を次の自殺者にしたくないからな! こいつを引っ張るだけの理由があれば十分だ!」

 

「本当はマズいから、早く行ってくれ……。SNSとかで話さないようにね?」

 

「分かりましたわ! では、ごきげんよう」

 

 悠々と歩き去るアレーテを見送る、佳守。

 

 地面に引き倒され、後ろ手に手錠をかけられた。

 

「な、何で!?」

「うるさい! これだけの自殺者や一家心中を出しておいて、よく聞けた!」

 

「ぼ、僕のせいじゃない! あいつらのせいなんだ!」

 

 乱暴にパトカーの後部座席へ放り込まれた佳守は、通常走行に戻ったパトカーの列で送られる。

 

 それを見送ったアレーテは、心の中で呟く。

 

(腐っても法治国家だから、起訴はされないでしょう……。しかし)

 

 日本にいる人々は、売春クラブの騒動は炭八馬佳守のせいだと信じている。

 

(わたくしも、あなたを許しますわ! でも、彼らが許すでしょうか?)

 

 つまるところ、救いは1つだけ。

 

 最後まで責任転嫁をしていたクズには、その度胸もないだろう。




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