【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった 作:初雪空
「わたくしと
「……え?」
「けれど、『気に入らないから』で殺しては、遠からず現代社会は崩壊するでしょう……。才は、それを望みません! 少なくとも、今は!」
相手が引いた分だけ、アレーテは踏み込んだ。
ニタァと笑みを浮かべたまま、敵対を宣言する。
「わたくしたちの敵は、同じ魔術師か、人知の理解が及ばない化け物……。特区に押し込まれた人々への蔑称ではなく、本物のね? さて、炭八馬先輩? あなたが魔術師だったとは驚きですわ! それも、女子20人以上に売春をさせた挙句に正気に戻すという、鬼畜ですら眉をひそめる所業を」
佳守は、ブンブンと首を横に振った。
「ぼ、僕は知らない! そんなことをするわけがないだろう!? 狙撃されたっていう
「あなたは、わたくしに思考誘導の魔術を使いました! 攻撃された以上、あとはどちらかが死ぬだけですわぁ!」
片足を滑らせて、肩幅ほどに開いたアレーテは、何も持っていない片手で横に振る構えに……。
(偽りとはいえ、
どれだけの痛みだろうが、それを自覚しなければいい。
いっぽう、可憐な後輩による殺気で、佳守は必死に叫ぶ。
「き、君は、その術式が無効だと言っていたじゃないか! それを分かっていながら……。冗談じゃない! そんなに詳しい君たちこそ、真犯人じゃないか!」
アレーテは、片手を横に振り抜く直前のまま、何も答えない。
焦れた佳守が、責任転嫁を始める。
「よくも、僕の気持ちを弄んだな……。そのせいで、百合は誰も知らない外国へ亡命するしかなく、自殺した女子は20人以上! 許さない、許さないぞ! 今、警察を呼ぶから、後はそっちに言い訳をすればいい! 君たち兄妹は、もう日本の敵……いや、世界の敵だ!」
正義の味方を気取り出した佳守は、自分のスマホで通報する。
茶番を見ていたアレーテは、呆気にとられた後で、片手を振るうための姿勢をやめた。
「そうですか、そうですか……。ここまで怒らせる相手は、そういませんわね? 『せめて最期ぐらい楽に』と思いましたが……」
通報を終えた佳守は、得意そうに告げる。
「もう、君たちに逃げ場はないよ! 今から逃げれば、外国へ行けるかもね? ハハハ、ハ?」
うるさいほど聞こえていたジェットエンジンの音が、なくなった。
ザッ ザッ ザッ
片足で地面を蹴るのを止めたアレーテは、無表情で顔を上げた。
「あなたにふさわしい罰が、決まりましたわ! そんなに多くの犠牲を出したことに怒っているのなら、お望みの通りにして差し上げます……。水鏡才の従者たるアレーテが命じる!」
アレーテが立っている地面を中心に、青く光る魔法陣が広がった。
幻想的な雰囲気の中で、どこから取り出したのか、分厚い魔術書を開く。
「ザブラサイズにより、この炭八馬佳守が
大きな機械が動いたような音と、眩いばかりの光。
それが収まった後には、何も持っていないアレーテが立っているだけ。
ジェットエンジンや人の声も、遠くに聞こえる。
両手で顔を覆っていた佳守は、おそるおそる、彼女を見た。
けれど、アレーテは先ほどの怒りが嘘のように穏やか。
「古波津さんは、海外に救いを見出しました……。あなたにも許します。受け入れる国はないでしょうけど」
歩き去っていくアレーテに、佳守は叫ぶ。
「に、逃げる気か!? せめて、僕に謝れ――」
ウゥ――ウ!
サイレンの音を鳴り響かせたパトカーが、数台。
急停止しつつ、ドアが開き、どの警官も銃を抜いた。
「動くな! 動けば、撃つぞ!」
けれど、その銃口は全て佳守に向けられている。
殺気と銃口により、佳守は混乱した。
「あ、あれ? 通報したのは僕で……」
弱々しく、途中で言葉が途切れた。
いっぽう、アレーテには優しい言葉。
「君、大丈夫か!」
「……ええ、おかげさまで。IDは」
その確認に、警官は首を横に振る。
「いい! 君を次の自殺者にしたくないからな! こいつを引っ張るだけの理由があれば十分だ!」
「本当はマズいから、早く行ってくれ……。SNSとかで話さないようにね?」
「分かりましたわ! では、ごきげんよう」
悠々と歩き去るアレーテを見送る、佳守。
地面に引き倒され、後ろ手に手錠をかけられた。
「な、何で!?」
「うるさい! これだけの自殺者や一家心中を出しておいて、よく聞けた!」
「ぼ、僕のせいじゃない! あいつらのせいなんだ!」
乱暴にパトカーの後部座席へ放り込まれた佳守は、通常走行に戻ったパトカーの列で送られる。
それを見送ったアレーテは、心の中で呟く。
(腐っても法治国家だから、起訴はされないでしょう……。しかし)
日本にいる人々は、売春クラブの騒動は炭八馬佳守のせいだと信じている。
(わたくしも、あなたを許しますわ! でも、彼らが許すでしょうか?)
つまるところ、救いは1つだけ。
最後まで責任転嫁をしていたクズには、その度胸もないだろう。