【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第27話 女心が分からないにも程があります!

 俺の隣で寄りかかるように座っている綾ノ瀬(あやのせ)奈々美(ななみ)は、嬉しそうに自分のスマホを俺が見られるように持つ。

 

 けれど、その胸元は大きく開いており、肩から伸びる紐とその物体が丸見えだ。

 

(……まったく、気づいていない?)

 

 奈々美は気にした様子もなく、魔法学校での日常を語る。

 

「世間が思っているよりも、ウチは魔法を使っておらず――」

 

 スマホを見ようとすれば、自然に胸元が目に入る。

 

 指摘しようか悩むも、時間は過ぎていく。

 

「あ! ちょっと、お待ちください……。学生証を」

 

 奈々美は、自分の横に置いているバッグに手を伸ばした。

 

 そして、上体を戻すが――

 

「ほら? 私、本当に魔法学校の生徒ですよ?」

 

 顔写真付きのカードを見せられたが、それどころではない。

 

 奈々美の胸元にある肩紐の1つが、下にずり落ちていたから。

 

(え? 片側は丸見えで、気づかない……)

 

 いっぽう、奈々美は上体を動かさないままで学生証を仕舞った。

 

「フアッ! 私、眠くなってきました……。少し、仮眠をとってもいいですか?」

 

 俺のほうに体を預けた奈々美は、すうすうと寝息を――

 

 ピンポーン♪

 

 バッと上体を起こした奈々美は、玄関ドアのほうを向く。

 

 俺もソファから立ち上がりつつ、インターホンへ。

 

「アレーテか? 綾ノ瀬さんは……もう来ているぞ?」

 

 内鍵を外し、玄関ドアを開いた。

 

 勢いよく入ってきた水鏡(すいきょう)アレーテは、犯人を探しているように見回す。

 

 ソファに座っている奈々美を見つけて、ホッとする。

 

 俺は玄関ドアを閉めて、内鍵をかけ直す。

 

「おかえり」

「……寿命が縮まりましたわ」

 

 今の特区で、まだアレーテに手を出す奴がいるのだろうか?

 

 全員が揃ったから、本題に入る。

 

 具体的な原理を除いて、一通りを説明。

 

 息を吐いた奈々美は、脱力する。

 

本川(ほんがわ)高校の古波津(こはつ)さんは、USへ旅立ちましたか……。依頼にないことをお願いして、申し訳ありません」

 

 奈々美の胸元は、中が見えない状態だった。

 

(さっきの今で、ブラの紐が落ちていたことに気づいた?)

 

 アレーテの視線を受けて、探偵事務所の所長として応じる。

 

「こちらも、古波津さんと面識がありましたから……。依頼人はあなたのお兄さんで、俺の隣にいるアレーテが成功報酬などの交渉を担当しています。そちらに質問がなければ、あなたへの説明は終了です」

 

 対面のソファでモジモジした奈々美は、俺を見た。

 

「あの……。水鏡くんと、また会えますか? 私、これでお別れは嫌です」

 

「申し訳ございません……。あなたは依頼人の妹さんですし、何よりも――」

 

 ――現状で何らかの魔術的な影響を受けている方の意見は、拒否します

 

 その返答で、和やかだった空気は凍りついた。

 

 同じく固まっていた奈々美が、ゆっくりと話す。

 

「ア、アハハ……。そうですよね? すみません、私の気持ちは偽物だから――」

(さい)っ!!」

 

 俺の隣に座っていたアレーテが立ち上がり、俺を睨みつつ、絶叫した。

 

 いっぽう、小さく震えながら俯いた奈々美は、泣き出す。

 

「……失礼しますっ!」

 

 横に置いていたバッグをつかみ、逃げるように走り去る奈々美。

 

 俺は、胸倉をつかんだアレーテに持ち上げられるも――

 

「……後にしますわ」

 

 乱暴に放され、自分のスマホをつかみ、出て行くアレーテを見送るのみ。

 

 息を吐いた俺は、誰もいない自宅に取り残される。

 

 

 ◇

 

 

「ただいま……」

 

 高級住宅街。

 

 注文住宅に帰ってきた綾ノ瀬一京(いっきょう)は、妹が出迎えないことに不審がる。

 

「……妙だな?」

 

 ブルルルと震えたスマホを見れば、新着のメッセージ。

 

 それを確認することなく仕舞った一京は、左腕に巻いた時計をさわる。

 

(防犯装置に異常はない、か)

 

 持っていたビジネスバッグを置きっぱなしに。

 

 玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えることなく、摺り足でリビングダイニングへ……。

 

 センサーで明かりがつくはずだが、暗いままのリビングダイニング。

 

「……奈々美?」

 

 ダイニングから続く台所に、人の気配がある。

 

 明かりをつけた。

 

 片目を閉じていたことで、半分の視界。

 

 死角を警戒しつつ、片目は閉じたまま。

 

 これは、急に暗くなった場合の備え。

 

 ジリジリと進み、今度は台所の明かりをつける。

 

 壁を背にしたまま、綾ノ瀬奈々美が座り込んでいた。

 

 周りに、誰かが潜んでいることもない。

 

 息を吐いた一京は、妹を見て……固まった。

 

「お兄様……」

 

 おずおずと見上げた奈々美の両手には、包丁が握られていた。

 

 どう見ても、これから食材を切るとは思えない。

 

「奈々美!」

 

 とっさに動いた一京は、両手の上から柄を握りしめ、切っ先を誰もいない方向へ向けつつ、魔法を発動した。

 

「あっ……」

 

 ベクトルを与えられた包丁が飛び出し、その先にある壁に突き刺さった。

 

 ビイインッと、刃が震える音。

 

 片膝をついた一京は、妹の両肩をつかんだ。

 

「何があった!?」

 

 緊張が解けたのか、泣き出す奈々美。

 

 落ち着くのを待つ間に、スマホの新着メッセージを確認する。

 

 やがて、奈々美はヒックヒックと泣いたまま、事情を説明した。

 

 全てを聞いた一京は、正面から妹を抱きしめる。

 

「大丈夫だ、奈々美……。俺に任せておけ!」

 

 ようやく顔を上げた彼女は、不思議そうに呼びかける。

 

「……お兄様?」

 

「安心しろ! 全て上手くいく……。全てな?」




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