【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった 作:初雪空
俺の隣で寄りかかるように座っている
けれど、その胸元は大きく開いており、肩から伸びる紐とその物体が丸見えだ。
(……まったく、気づいていない?)
奈々美は気にした様子もなく、魔法学校での日常を語る。
「世間が思っているよりも、ウチは魔法を使っておらず――」
スマホを見ようとすれば、自然に胸元が目に入る。
指摘しようか悩むも、時間は過ぎていく。
「あ! ちょっと、お待ちください……。学生証を」
奈々美は、自分の横に置いているバッグに手を伸ばした。
そして、上体を戻すが――
「ほら? 私、本当に魔法学校の生徒ですよ?」
顔写真付きのカードを見せられたが、それどころではない。
奈々美の胸元にある肩紐の1つが、下にずり落ちていたから。
(え? 片側は丸見えで、気づかない……)
いっぽう、奈々美は上体を動かさないままで学生証を仕舞った。
「フアッ! 私、眠くなってきました……。少し、仮眠をとってもいいですか?」
俺のほうに体を預けた奈々美は、すうすうと寝息を――
ピンポーン♪
バッと上体を起こした奈々美は、玄関ドアのほうを向く。
俺もソファから立ち上がりつつ、インターホンへ。
「アレーテか? 綾ノ瀬さんは……もう来ているぞ?」
内鍵を外し、玄関ドアを開いた。
勢いよく入ってきた
ソファに座っている奈々美を見つけて、ホッとする。
俺は玄関ドアを閉めて、内鍵をかけ直す。
「おかえり」
「……寿命が縮まりましたわ」
今の特区で、まだアレーテに手を出す奴がいるのだろうか?
全員が揃ったから、本題に入る。
具体的な原理を除いて、一通りを説明。
息を吐いた奈々美は、脱力する。
「
奈々美の胸元は、中が見えない状態だった。
(さっきの今で、ブラの紐が落ちていたことに気づいた?)
アレーテの視線を受けて、探偵事務所の所長として応じる。
「こちらも、古波津さんと面識がありましたから……。依頼人はあなたのお兄さんで、俺の隣にいるアレーテが成功報酬などの交渉を担当しています。そちらに質問がなければ、あなたへの説明は終了です」
対面のソファでモジモジした奈々美は、俺を見た。
「あの……。水鏡くんと、また会えますか? 私、これでお別れは嫌です」
「申し訳ございません……。あなたは依頼人の妹さんですし、何よりも――」
――現状で何らかの魔術的な影響を受けている方の意見は、拒否します
その返答で、和やかだった空気は凍りついた。
同じく固まっていた奈々美が、ゆっくりと話す。
「ア、アハハ……。そうですよね? すみません、私の気持ちは偽物だから――」
「
俺の隣に座っていたアレーテが立ち上がり、俺を睨みつつ、絶叫した。
いっぽう、小さく震えながら俯いた奈々美は、泣き出す。
「……失礼しますっ!」
横に置いていたバッグをつかみ、逃げるように走り去る奈々美。
俺は、胸倉をつかんだアレーテに持ち上げられるも――
「……後にしますわ」
乱暴に放され、自分のスマホをつかみ、出て行くアレーテを見送るのみ。
息を吐いた俺は、誰もいない自宅に取り残される。
◇
「ただいま……」
高級住宅街。
注文住宅に帰ってきた綾ノ瀬
「……妙だな?」
ブルルルと震えたスマホを見れば、新着のメッセージ。
それを確認することなく仕舞った一京は、左腕に巻いた時計をさわる。
(防犯装置に異常はない、か)
持っていたビジネスバッグを置きっぱなしに。
玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えることなく、摺り足でリビングダイニングへ……。
センサーで明かりがつくはずだが、暗いままのリビングダイニング。
「……奈々美?」
ダイニングから続く台所に、人の気配がある。
明かりをつけた。
片目を閉じていたことで、半分の視界。
死角を警戒しつつ、片目は閉じたまま。
これは、急に暗くなった場合の備え。
ジリジリと進み、今度は台所の明かりをつける。
壁を背にしたまま、綾ノ瀬奈々美が座り込んでいた。
周りに、誰かが潜んでいることもない。
息を吐いた一京は、妹を見て……固まった。
「お兄様……」
おずおずと見上げた奈々美の両手には、包丁が握られていた。
どう見ても、これから食材を切るとは思えない。
「奈々美!」
とっさに動いた一京は、両手の上から柄を握りしめ、切っ先を誰もいない方向へ向けつつ、魔法を発動した。
「あっ……」
ベクトルを与えられた包丁が飛び出し、その先にある壁に突き刺さった。
ビイインッと、刃が震える音。
片膝をついた一京は、妹の両肩をつかんだ。
「何があった!?」
緊張が解けたのか、泣き出す奈々美。
落ち着くのを待つ間に、スマホの新着メッセージを確認する。
やがて、奈々美はヒックヒックと泣いたまま、事情を説明した。
全てを聞いた一京は、正面から妹を抱きしめる。
「大丈夫だ、奈々美……。俺に任せておけ!」
ようやく顔を上げた彼女は、不思議そうに呼びかける。
「……お兄様?」
「安心しろ! 全て上手くいく……。全てな?」