【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった 作:初雪空
日本でありながら日本でない、観察特区。
地方とは違う都市部があり、新築が多いことから独特の雰囲気だ。
ぎっしり詰められた雑居ビルに、ランドマークとなったタワービルも。
オカルトと不条理を詰め込んだ隔離エリアだろうと、観光客は来るらしい。
安全のためか、大型バスで乗り付けて、そのまま商業施設の中へ入っていく。
帰りは、その巻き戻しだ。
そのタワーの天辺にちかい張り出しに、1人の女子が立っていた。
年齢は、女子中学生ぐらいか?
どこか安っぽい、白のセーラー服を着ている。
白い肌で、黒い髪は長く、ツインテールに縛っている。
可愛いと評される顔で、ルビーのように赤い目が輝いた。
高所にふさわしい強風が続き、紺色のスカートがバタバタと揺れ続ける。
けれど、その少女は地面に立っているかのように目を閉じた。
その口から、舞台の役者のような声が響く。
「わたくしは、すぐ夢中になりました」
「あの人も、それに応えてくれました……」
「わたくしの全てが満たされて、支配され、とても幸せでしたわ……」
ここで、彼女の声が低くなる。
「彼が、わたくしの一族を滅ぼした張本人と知るまでは……」
赤い宝石が2つ、暗い輝きを帯びた。
邪悪な笑みを浮かべた少女は、強風が吹き荒れる高所で、語り続ける。
「でも、わたくしは愛してしまったのです! だから……」
恥じらいつつも、人を殺しかねない雰囲気。
「わたくしの期待に、応え続けてくださぁい……。そう、わたくしの一族が滅んでも仕方ないと思えるほどに……。フフ、フフフフフフフ! 今や、あなたのことを考えない時間はないのだから!」
セーラー服を着ている少女は、ポケットからIDを取り出した。
彼女の顔写真と共に、“
息を吐いたアレーテは、IDを仕舞う。
「
別人のように落ち着いたアレーテは、片耳にイヤホンを嵌めた。
小さな端末のスイッチを入れる。
ザッ
『C87地区の立て籠もり事件は、いまだに膠着しており――』
警察無線だ。
サイズと操作から、受令機らしい。
ニヤッと笑ったアレーテは、ぼそっと呟く。
「ちょうどいい、獲物ですわ……」
イヤホンを外した彼女は、立ったままの状態から信じられないほどのジャンプを行い、そのまま地面へ落ちていく。
◇
『犯人に告ぐ! 人質を解放して、出てこい! 今なら、罪は軽いぞ?』
言っている本人ですら、信じてない。
C87地区は、市民の退避を行いつつ、パトカーや装甲車が囲んでいた。
警官の手には、サブマシンガンどころか、ショットガン、小銃まである。
日本と思えない光景だ。
その時に、離れた位置で停まった車から、1人の若い女が出てきた。
「刑事です! 通して!」
「お、お疲れ様です!」
上下に開いた警察手帳を見せつつ、見張っている警官がどけたバリケードテープの下を潜る。
息を切らして、スーツの上から防弾ベストを着た男たちがいる場所へ。
頭を下げつつ、自己紹介。
「ほ、本日付けで特区警察に配属された、
1人の中年男が、片手を上げた。
「おう! 特警で刑事をしている
投げられた防弾ベストを受け取り、それを上から着る香穂。
「ありがとうございます! えっと……。申し訳ありません! 事件を知って、すぐこちらへ来てしまい……」
再び頭を下げた香穂に、行人がパタパタと手を振る。
「いいから! 責めているわけじゃない……。じゃ、絶対に前へ出るなよ? 俺たちで対応するから。……お、来た来た!」
面白そうに呟いた行人は、違う方向を見た。
理解できない香穂も、それに
土煙を上げる勢いで、車道を1人の少女が走ってきた。
ギョッとした香穂が、思わず叫ぶ。
「ちょっ! ちょっと!? 危ないわよ! 戻りなさい!!」
立て籠もっている建物の窓から、バババと連射音。
車道のアスファルトに小さな穴が開き、破片が飛ぶ。
けれど、その火線を避けるように左右へズレる少女は止まらない。
美少女と呼べるだけのお顔が歪み、絶叫する。
「才との幸せ計画のマネーになってくださいましぃいいいっ!」
少女は減速せず、そのまま建物へ突っ込んだ。
凄まじい音と揺れが、周りに響き渡る。
まったく動じない行人は、警察官の必須アイテム、腕時計を見た。
「かかって、15分……。犯人と人質の移送準備、それと現場検証の用意も――」
色々な準備をしている間に、銃撃していた窓から人影が飛び降りた。
ドスンッと、重い音と揺れ。
続いて、獲物を狩ってきたネコのように、先ほどの少女が満面の笑み。
「確認を……」
ピロン♪
差し出されたIDを端末に読み込ませた行人は、役所のカウンターのように告げる。
「ほい、お疲れさん!」
黒髪ツインテールをした少女は、首をかしげる。
「現場を見なくても?」
「スラ子なら、問題ない――」
「その呼び方は、止めてくださいまし!」
片手をヒラヒラさせた行人は、受け流す。
「悪かったね、水鏡ちゃん! 聞きたいことがあったら、連絡する」
「では、失礼……」
スタスタと歩き去る、白いセーラー服。
その背中を見ながら、若い女の刑事はボソッと呟く。
「えっ? 何なの、これ……」
「特区の日常だよ! 早く慣れろ、新人」
行人は、周りを見ながら、新しいパートナーに教えた。