【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

30 / 47
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
https://hatuyuki-ku.com/?p=707


第30話 女を侍らせていた男子が魔法学校にやってくる!

 魔法学校に通っている(いずみ)佳乃(よしの)は、高級マンションの一室で目覚めた。

 

 日光のような目覚ましによる、穏やかな目覚め。

 

 ルーティンで登校する準備をしながら、長い黒髪にブラシをかける。

 

 タイパで、同時にサンドイッチをもぐもぐ。

 

 前髪を横にざっくりしつつ、両耳の前にデザイン的なもみあげがある、姫カットだ。

 

 学生証によれば、高等部1年。

 

 中学生どころか、小学生に見えそうな童顔で、琥珀色の瞳の顔写真が張り付けられている。

 

 ブウウウッと震えた、卓上のスマホを手にとる。

 

 同じ魔法学校に通う、友人から。

 

“編入生が来るんだって!”

 

 そうなんだ?

 

本川(ほんがわ)高校で売春クラブの元締めをしていた幹部の1人が、うちに来るって! 首席の綾ノ瀬(あやのせ)さんも、すっかり言いなりだとか! 自宅に住まわせているっぽいから、毎日ヤッてるんじゃない? 清楚な見た目だけど、すっごい性欲だったわけ!”

 

 ひえっ!?

 

 何で、そんな男子を入れたの?

 

 佳乃は憂鬱になりつつも、適当に返信しつつ、朝の準備を急ぐ。

 

“一部の生徒が、その男子を追い返そうと待ち構えるってさ! 面白そう!”

 

 友人の無責任な発言に、佳乃は溜息をついた。

 

「まったく……。でも、何で入れたんだろ? いくらウチが特区の学校と言っても、理事会が黙って……綾ノ瀬のゴリ押し? 嫌だなあ……」

 

 独白しながらも、両手は動き続ける。

 

 魔法学校のブレザーを羽織り、正面玄関へ向かった。

 

 

 ◇

 

 

 綾ノ瀬奈々美(ななみ)を狙う人物を特定できないまま、ラッキースケベは10回を超えた。

 

 彼女の上下のバリエーションを知ったうえ、うっかり部屋を間違えた彼女が同じベッドで寝ていたことも。

 

 起きたら、上下逆さまの奈々美がいて、頭と正反対の場所に挨拶したという。

 念のために言うと、彼女はパジャマを着ていた。

 

 脱いでおくべきでした、という、ボソッとした呟きは、気のせいに違いない。

 

 俺は、非常に落ち着かない。

 

 どこが? とは言わないが……。

 

 ともあれ、ボロくて治安が悪い繁華街の雑居ビルの一部屋より安全で快適だ。

 

(女子2人との同居は、気を遣う!)

 

 やっぱり、賃貸で一人暮らしをしたい。

 

 でも、お金と信用がないのだ。

 

 魔法学校に入るため、通信制の高校に入り、そこから編入する形だ。

 

(観察特区だから、異能がある子供の受け皿だな!)

 

 唯一の救いは、そこも新しい施設ということ。

 

 魔法陣のような丸いマークがついたブレザーを着て、俺は義妹の水鏡(すいきょう)アレーテと共に、ここの優等生である奈々美に案内されて、正門を通る。

 

 遠巻きにしている生徒たちが、何やら話している。

 

 奈々美は、笑顔で指し示す。

 

「ここは自習に近いので、(さい)くんとアレーテも自分のペースで――」

「綾ノ瀬さん! そいつが、例の編入生ですか!?」

 

 俺たちが見ると、そこには同じ制服を着た男子が1人。

 

 敵意にあふれた目つきで、俺を睨む。

 

 いつの間にか、剣呑な雰囲気の生徒が出てきた。

 

(男女……。学年も、バラバラか?)

 

 特区だからか、わりと国際色が豊か。

 

 声をかけてきた男子は、後ろに控えている奴らの代表らしい。

 

「風紀を乱すような奴を入れることは、たとえ理事会が認めても、ボクたちが認めない!」

 

 ムッとした奈々美が、抗議する。

 

伊田(いだ)くん!」

 

「綾ノ瀬さんは、騙されているんだよ! こいつに何をされたか知らないが、一度落ち着いて――」

「水鏡だ! 俺に用があるのなら、俺と話せ」

 

 俺の割り込みで、顔をゆがめた伊田が、こちらを向いた。

 

「聞いての通りだ! お前は歓迎されていない! 分かったら、とっとと帰れ」

「……願いを叶えてくれたら、そうする」

 

 思わぬ発言だったようで、伊田は不審そうな表情へ。

 

「才くん!?」

 

 傍にいる奈々美が驚くも、伊田はニヤリとする。

 

「何だ? 聞くだけ聞いてやる」

「……賃貸契約の保証人になってくれ」

 

 ポカンと口を開けた伊田が、聞き返す。

 

「は?」

 

「賃貸の保証人だ! 俺はいい加減に一人で暮らしたいが、引っ越し先がなくて――」

「ま、待て待て! お前はいったい、何を言っているんだ!?」

 

 慌てる伊田にジリジリと迫りつつ、説明する。

 

「なら、こうしよう! とりあえず、お前の家に泊まらせてくれ!」

「嫌に決まっているだろ!? いい加減にしないと、ボクの後ろにいる……いない!」

 

 巻き込まれないように、伊田の仲間は退避したようだ。

 

 遠巻きになりつつ、事態を見守っている。

 

 その時に、低いイケボで男子の声。

 

「何を騒いでいるのかと思えば……。君たちの一存で彼の進退を決めるわけがないだろう? これは、魔法学校としての決定だ」

 

 全員が見ると、オシャレな眼鏡をかけた、同じ制服の男子。

 

 そちらを向いた伊田が驚く。

 

「せ、生徒会長……」

 

 メガネ男子は、息を吐いた。

 

「君とお仲間も、一緒に来たまえ! 逃げてもムダだぞ? 正門の前に監視カメラがないと思うか?」

 

 その発言に、フェードアウトしかけていた連中がピタリと止まる。

 

 観念したように、こちらへ近づいてきた。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。