【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第32話 「相手を殺す攻撃は禁止だ」と言ったよね?

 ブレザーの上を脱いだ俺は、目を開けた。

 

(……ひとまず、相手の様子を見るか)

 

 離れている見学席で心配そうに見ている綾ノ瀬(あやのせ)奈々美(ななみ)に構わず、こちらを睨んでいる男子である伊田(いだ)と向き合う。

 

 この場にいる最上位、つまり生徒会長の安倍(あべ)良高(よしたか)が宣言する。

 

「では、これより2人の模擬戦を始める! スキルの使用を許可するが、相手に致命傷、または後遺症を残すような攻撃は禁じる! どちらかが戦闘不能か降参、または、我々が判断した時点で終わりだ!」

 

 長方形で、平らな床が続くトレーニングルーム。

 

 それゆえ、ギャラリーの掛け声はない。

 

「始めっ!」

 

 俺の正面で立っている伊田が、開いたままの片手を向ける。

 

「食らえっ!」

 

 次の瞬間に、火炎放射器を思わせる噴射が行われ――

 

 バシバシッと、銃弾が当たったような音。

 

 俺の手前で止まり、予めかけておいた、不可視の防御を削る。

 

(少なくとも、拳銃ぐらいの威力か……。おっと!)

 

 ほぼ同時に、俺の視界は広がった炎だけに。

 

 しかし、俺を避けるように進み、周りで回転したあとに実行者へ戻っていく。

 

「やった! ……えっ?」

 

 伊田の叫びは、疑問の声へ。

 

 こちらは、風の魔術によって奴を後ろの壁へ叩きつけるつもりだった。

 

 その準備段階としての風が、結果的に俺がウェルダンになることを防いだのだ。

 

 つまり、後ろの壁へ背中から衝突するはずだった伊田は、火炎旋風で黒焦げになるわけで……。

 

「うわぁああああっ!?」

 

 ここまで、数分も経っていない。

 

(仕方ない……)

 

 人差し指を含む2本を伸ばした片手を振り、時間経過の魔術を行使した。

 

 風の魔術を消しても、すでに加速した炎は消えないから。

 

 見る見るうちに勢いをなくした風と炎はゲームのように消えていき、人を殺せるだけの高温になった空気は伊田の肺を焼くことなく、かび臭い空気となって押し寄せた。

 

「……えっ? ゲホゲホッ!」

 

 両手をクロスさせて立ちすくんでいた伊田は、おそるおそる、腕を下ろし――

 

「お前、いい加減しておけよ?」

 

 俺の独白と共に、風の壁がやつの正面から迫り、それで両足が浮かんだ後に、その勢いのまま、後ろの壁に叩きつけられた。

 

「ガハッ!?」

 

 伊田は、訳の分からないまま、どさりと前に倒れる。

 

 一方的に消滅させた直後で、動いている風は機嫌が悪そうだ。

 

 それを消しながら、見守っていたギャラリーのほうを向く。

 

(ずいぶんと、手の内を見せたな……)

 

 予想通りというか、水鏡(すいきょう)アレーテを除いて、唖然とした表情ばかり。

 

 我に返った良高が、宣言する。

 

「模擬戦は、水鏡くんの勝ちだ! しかし、まいったな……」

 

 伊田は、明らかに俺を殺そうとした。

 

 炎の魔法か、火遁の術か知らんが、どう考えても致命傷か、命は助かっても重度の火傷や肺を焼いただろう。

 

 嗾けてきた副会長の夢咲(ゆめさき)アリアは、笑顔のままでダラダラと汗を流している。

 

 そーっと、部屋を出て行こうとするが――

 

「待ちたまえ、夢咲くん! これは、君の責任でもある……。水鏡くん? 彼らについて、どうしたい? 言った通りにするとは限らないが、今回は発言する権利がある」

 

 良高が、断罪を始めた。

 

 全員の視線を集めたまま、息を吐く。

 

「正直なところ、伊田は殺してやりたいですね……。夢咲先輩についても、同罪です! ただ、無理に編入した俺が2人も退学にさせれば、こっちが悪く言われるのは目に見えています」

 

「ふむ……。それで?」

 

「俺とアレーテが魔法学校で過ごしやすいように、働かせてください! そのほうがいいです」

 

 首肯した良高は、顔が引きつっているアリアを見た。

 

「では、君が水鏡の兄妹を担当したまえ……。伊田くんにも、必要があれば指示を出せ! 何かあったら責任をとってもらうので、覚悟しておくように」

 

「ちょっ!」

 

 アリアは、笑顔のままで震えている。

 

「い、今のうちに、実力を見ておきたかっただけで――」

「残念だよ、夢咲くん……。どうやら、君によく似た女子が客をとることで暮らしていくようだ! きっと、予約で埋まるだろう」

 

 マナーモードになったままのアリアが、涙目で答える。

 

「2人の面倒を見まにゅ……」

 

「よろしい! 副会長がいれば、伊田くんは不要か……。(わたる)? 彼は訓練中の事故で長期療養に入ったうえ、継続が困難であることから自主退学するらしい。治療費などは、しばらく面倒を見てやれ」

 

 頷いた土御門(つちみかど)渡は、あっさりと答える。

 

「承知しました、若さま」

 

 何なんだよ、この学校……。

 

 生徒会の権限が強いというより、生徒会長がラスボスだ。

 

 そう思っていたら、オシャレな眼鏡がこちらを向く。

 

「ご苦労だった、水鏡くん! 言いたいことは色々あるだろうが……。後日に改めて、お互いの自己紹介としよう」

 

「あ、はい……。お疲れ様でした」

 

 頷いた良高は、生徒会室で給仕した女子を見る。

 

(いずみ)くん! 簡単でいいから、校内を案内してくれ……。そのほうが、次に会った時にムダがない」

 

「は、はいっ! あの……私も水鏡くんの相手を?」

 

「その意味はない……。何かあれば、私に言いたまえ」

 

 呆れたように答えた、良高。

 

 その会話を聞きながら、俺の評判、すごいことになっているなあと思う。




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