【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第35話 Memento Mori

 綾ノ瀬(あやのせ)奈々美(ななみ)の自宅から、高校生の男女が出てきた。

 

 端末で呼んでいた自動タクシーは、庭を兼ねた空間からの出口である小さな門扉の外に横づけ。

 

 辺りは真っ暗で、注文住宅だけの高級住宅街とあって、静か。

 

 一定の間隔で並ぶ街灯が、スポットライトのように道路を照らす。

 

 姫カットで幼い感じの(いずみ)佳乃(よしの)は、到着したときの白カエルが気になった。

 

 以前に見かけたところを眺めると、ゲコゲコ♪ という返事と共に、地面に座っている小さな生き物がジッと見上げた。

 

「バイバイ……」

 

 手を小さく振る。

 

『ゲコゲコ♪』

 

 代表するように1匹が鳴き、暗がりに跳ねていった。

 

 それを見送った佳乃は、若干だけ動きが鈍かったことに、首をかしげる。

 

(お腹いっぱい? 虫でも食べたのかな?)

 

 しかし、水鏡(すいきょう)アレーテの声で我に返る。

 

「佳乃? あなたのマンションですが……。住人の入れ替わりが激しいと?」

 

「う、うん! 私は他の人と交流しないから、怖いなと感じるぐらい……。高級マンションで家賃が安かったし、高校生の一人暮らしでも入れたの! 今は不景気でここは観察特区だから、珍しい話じゃないよ。戸締りをしっかりすれば、大丈夫かなって」

 

 アレーテは、腕組み。

 

 神経質に、指でトントンと自分の腕を叩く。

 

「Memento Mori……」

 

「えっ? な、何か言った?」

 

 理解できない佳乃に、アレーテは見つめる。

 

「見送りがてら、遊びに行っても?」

「……お腹いっぱいだし、もう休みたいんだけど」

 

 とはいえ、少しぐらいなら――

 

(さい)と一緒に」

「ぜっったい、ダメ!」

 

 ただの送り狼だった……。

 

 けれど、アレーテは諦めない。

 

「そのマンションで、あなたが親しい女子……。モエちゃん?」

 

「うん! その子も一人暮らしで、まだ中学生……。えっと、もういいかな?」

 

 個人情報をベラベラ喋ったことに気づき、佳乃は口を閉じた。

 

 息を吐いたアレーテは、妥協する。

 

「わたくしが、そのマンションを見ておきたいです……。どうにも、嫌な予感がします。あなたの家に入れなくても、構いません」

 

 才を連れて行かないことを条件に、佳乃は了承した。

 

 

 ――佳乃が暮らしているマンション

 

 言うだけあって、立派な物件だった。

 女子高生の一人暮らしには、オーバーすぎる。

 

 子育ての夫婦が住む間取りで、水鏡アレーテは泉佳乃に歓迎された。

 

 いっぽう、水鏡才も、そのマンションの廊下を歩き出す。

 

 彼は1つの物件の前に立ち、インターホンを鳴らす。

 

 ピンポーン♪

 

 やがて、可愛らしい女子の声。

 

『ハーイ! ……誰?』

 

「泉佳乃の契約を解除してくれ……。俺は、お前を知っている。サガリスによる断罪なら、他の奴らにしろ!」

 

 沈黙。

 

 しかし、インターホンの先にいる女子が悩んでいる気配。

 

『……待ってて』

 

 ブツッと、切れる音。

 

 程なく、ガチャッと内鍵を開ける音も。

 

 才は、インタホーンの場所から動かず。

 

 しびれを切らしたのか、玄関ドアが少しだけ開いた。

 

 その隙間から覗き込んだ顔は、子供らしい丸みを帯びつつも女として羽化しつつある雰囲気。

 

 後ろの髪をハーフアップにしている少女は、顔の半分を見せたまま。

 

「お兄ちゃん、誰?」

 

「泉の契約を解除しろ! 二度、言わせるな」

 

 バンッと、玄関ドアが開かれた。

 

 外側へ半円をえがいた後には、影のある顔のまま、少女が両手でハンドガンを構えている。

 

 パンパンパンッ!

 

 同じく右手にダブルアクションだけのリボルバーを握っていた才は、出遅れた。

 

 トリガーを引くことで後ろのハンマーが起き上がるも、それが落ちる前に着弾する。

 

 衝撃で後ろへ揺れつつ、リボルバーを取り落とした。

 

 尻もちから廊下に倒れた男子に、ゾッとするほど冷たい目の少女が銃口を向けたままで近づく。

 

 片足でリボルバーを蹴り飛ばし、遠ざける。

 

 銃口を下に向け、才の頭を撃ち抜こうと――

 

「撃ち合いで、間に合わない! 大尉(たいい)の言う通りだ……。次から、ストライカー式のセミオートにするか」

 

 愚痴を言いながらも、自分の手を動かす才。

 

「えっ!?」

 

 驚く少女は、自分の手が動いたことに反応できず。

 

「うぐっ……」

 

 半開きの口へねじ込むように、初めて奥まで咥え、そのままトリガーを引いた。

 

 約3kg。

 

 大きめのペットボトルを持つぐらいの力が、彼女の最後に行ったこと。

 

 ボンッ! と鈍い音がして、後ろへのけぞった少女の膝が落ち、頭から床に倒れた。

 

 

 ◇

 

 

 登校した泉佳乃は、憂鬱だった。

 

 自宅のマンションで連続猟奇殺人があることが判明して、その犠牲者には仲良しだったモエも含まれていたから。

 

「ハアッ……」

 

 あまりに怖くて、信用できる友人の家を渡り歩きつつ、急いで引っ越し。

 

 観察特区で、たまにある事件だ。

 

 助けられなかったモエに罪悪感を抱くも、彼女を殺したのが水鏡才と知らず。

 

 彼も、説明しない。

 

 世の中には、知らないほうがいいこともある。

 

 あのマンションでは、行方不明者が続出していた。

 ところが、警察沙汰にならない。

 

 まだ無事だったのは、入居したばかりの佳乃と、最古参といえるほど長く住んでいたモエぐらい。

 

 それを知った水鏡の兄妹が、犯人を始末した。

 

 殺されたモエにとってのMemento Moriは、何であったのか?

 

 今となっては、どうでもいい話。




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