【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第41話 人生いろいろ、非合法の被験者は言うまでもない(前編)

「やれ!」

 

 俺の命令を聞いた、ヌイグルミのような羊が鳴く。

 

『ミィイイイイッ!』

 

 警備室にいた警備員は驚くも、次々に倒れて、寝息を立てる。

 

「さて……」

 

 次の交代要員が来るまで、時間を稼げた。

 

 このチームの現場責任者のコードで、俺が入れられていた個室を除いて、閉じ込められた奴らがいる部屋のドアを解錠。

 

 次に、再び個室を訪れる。

 

 顔見せをしていたことで、半信半疑という様子だが、しぶしぶ廊下へ出てきた。

 

 閉じこもっていても、人体実験があるだけ。

 

 寝ている警備員を適当に縛り、猿轡も嚙ませたあとで、協力して目立たない場所へ……。

 

 誰もいない警備室で、俺たちは向き合う。

 

 お互いを信用できないため、微妙に距離を空けたまま。

 

「最初に、提案がある! 俺をリーダーにしてくれ! ここを脱出するまでに内輪揉めをしている暇はない」

 

 沈黙。

 

 最初に反応したのは、長い黒髪の美女。

 

「いいわ! あなたが、私たちを出してくれた。でも、拒否権は持つわよ? あからさまに捨て駒という命令は嫌」

 

「構わない。……残りは? 返事がなければ、俺はこの女性と行動するぞ?」

 

 それを聞いた少女が、息を吐いた。

 

 見たところ、小学生ぐらい。

 

 ダークブラウンで、短めのボブ。

 

 ややピンクがかった赤色の瞳で、俺を見上げた。

 

「I'm counting on you!(頼りにしてる)……よろしくお願いします」

 

 最後に、20代半ばと思われる男が、両手を広げつつの詰問。

 

「おい? 本当に、外へ出られるんだろうな!?」

 

「不服なら、元の部屋へ戻るか、お一人でどうぞ……」

 

 冷静に返したことで、男は言葉に詰まる。

 

「分かった、分かった! 俺じゃ、この状況も無理だ! 頼む!」

 

 降参するように片手を上げて、俺に従う意思を示した。

 

 俺は、ぐるりと見回した後に、リーダーとしての発言。

 

「この4人で脱出します! 自分の名前を言ってください。フルネームではなく、偽名で構いません。また、年齢の上下に関係なく、敬語を止めましょう。時間がかかります」

 

 3人は、同意した。

 

「俺は、サイだ」

 

「マリナよ!」

「メティス」

「ケンイチだ」

 

 さっそく、説明する。

 

「ここは、レトゥス製薬会社の非合法エリアだ! 警備員から聞いたが、刑務所とよく似たセキュリティ。別のエリアへのゲートを開けられるが、次のエリアではまたチェックされるわけだ……。おそらく、合法エリアとの間に傭兵のような部隊が待機している部屋がある。合法エリアへ出ても、テーザーガンか鎮静剤を打たれて、ここへ連れ戻されるか、始末されるだろう」

 

 黒髪の美女であるマリナは、自分の腕を組んだ。

 

「ええ! この敷地から自力で脱出しないと……。あなたのプランは?」

 

「協力し合うと言ったろ? 脱出に役立つような技能は? 俺は、観察特区にいる魔術師だ」

 

 3人は、怪しむような目つきに。

 

 それでも、マリナが発言する。

 

「私は、VTuberをやってる! 過激なネタとして、この製薬会社を扱い……ご覧の通り」

 

 両手を上げたマリナに、質問する。

 

「人気があると?」

 

 ここでリスナーに媚びても、意味はない。

 

 それを感じとったのか、マリナが付け加える。

 

「医学部を中退したの……。だから、一般人より詳しい――」

「もったいねえ! 何で、辞めちまったんだ!?」

 

 ケンイチの指摘に、マリナはうんざりした表情を向けた。

 

「医学部に入った全員が医者になるわけじゃない。ドロップアウトする人は、学年で数%いる」

 

「えっと……。何でだ?」

 

「私は、人間関係でちょっとね? 単位の取得や実習については、問題なかったけど」

 

 それ以上は、聞くな。

 

 責めるような視線に、ケンイチは黙った。

 

 聞いていた俺は、医学部の教授に迫られて拒絶したことでのトラブル? と思う。

 

 せまい業界だろうし、単位を取らせないだけで詰む。

 

(卒業すら無理と踏んで、早々に見切りをつけたか……)

 

 医学部に入る難易度を考えたら、思い切りが良い。

 

 俺の視線を感じたのか、マリナが言う。

 

「受験にかかった予備校代と医学部の学費は、バカにならないわ……。医者になってから返済する予定だったから! 一気に稼ごうと、焦りすぎた」

 

 大学受験レベルの化学、生物はあるし、よく使われる薬品の名前や、だいたいの用途、機材について説明できる。

 

 そう付け加えたら、ケンイチが口を開いた。

 

「借金つながりで、俺の番だ! こいつと違って、ギャンブルの借金だけどな……。パチスロ、競馬とか合法で負けが込んで、ヤーさんの紹介で裏カジノに行ったら、限界まで借りる羽目になったのさ! 役に立つスキルはないな」

 

 事務所でヤーさんに詰められ、この治験に応募することでチャラという話に。

 

「話が上手すぎるとは、思ったさ! サインして気づいたら、ここの部屋に閉じ込められていた。脱出できたら、ドヤで日雇いをするよ……。もう、こりごりだ」

 

 ケンイチには、注意したほうがいい。

 

 ともあれ、残りは1人だ。




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