【第四章 かわらぬ挨拶をもう一度のスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

50 / 52
指名手配となった室矢重遠は、どこへ!?
https://hatuyuki-ku.com/?p=707


第四章 かわらぬ挨拶をもう一度
第50話 慣れてるんだ、銃口を向けられるの


「おっ? いよいよ、ストライカー式のセミオートに?」

 

 男の店員は、ニコニコ顔だ。

 

「前に、リボルバーで撃ち負けて――」

「ほーら! とっさに抜くなら、グレスケがいいって!」

 

 肩を落としたまま、愛想笑い。

 

「ハハハ……。で、グレースケールは?」

 

「スチシバのコンパクトリボルバーも、悪くないんだけどね? 普段使いには、ちょっと厳しい」

 

 俺が愛用していたリボルバーが、スチールシルバー製。

 

 店内との区切りとカウンターを兼ねた透明のショーケースの上に、男が黒ポリマーの拳銃を置いた。

 

「ほい! グレスケで、(さい)の手に合うサイズだ」

 

 断りを入れてから、右手でグリップを握り、銃口を誰もいない方向へ向ける。

 

 下からマガジンを抜き、上のスライドを引いた。

 

(弾丸なし、と……)

 

 片手、両手で握ってみる。

 

「トリガーを引いても?」

 

「どーぞ!」

 

 ググッ カチッ!

 

「おー、軽い! リセットして、と……」

 

 トリガーをゆっくり戻して、再び押し込む。

 

 カチッと聞いた時点で、人差し指をトリガーガードの外へ。

 

「二発目は、こんなもの……。口径は?」

 

「9mmだぞ? 45口径の信者か?」

「……いや、これでいい」

 

 念のために、1つ上、1つ下のサイズも握らせてもらう。

 

 その後で、弾丸の箱と合わせて購入。

 

「じゃ、これを詰めていいか?」

「新品あるんだろ? 客に意地悪するな!」

 

 嫌味なく笑った男は、俺が出したID一式をチェックしつつ、会計。

 

 観察特区で現金を出すことは少なく、クレカのようなカードで支払う。

 

 ホルスターは、ズボンの中に突っ込むタイプと、外につけるタイプの2つ。

 

「売れる分には、大歓迎だけどな? 俺は、インサイド派」

 

 護身用に、ズボンの前にはグリップが出ている。

 

「銃を見せておかないと、アホなことを考える奴もいるわけよ! そうでなかったら、利き手の腰のすぐ後ろかな? お前も、使いながら考えろ」

 

「分かった……」

 

 その時に、端末から電子音。

 

 どうやら、新しい銃の登録が完了したようだ。

 

 ライセンスを持っていない場合は、テストから始まるため、10日間ほど。

 

 男が端末に向かい、最後の手続きを済ませた。

 

「はい、終わり! 今出すから、ちょっと待ってろ」

 

 展示用のセミオートを回収した男は、カウンターの奥へまとめて置き、そのまま奥へ。

 

 じきに、小学生が図工の時間に使いそうな、薄いプラスチックケースを片手で下げてきた。

 

「これと……。ホローポイント、フルメタルジャケットが、1箱ずつ」

 

「ありがと! しばらくは、慣らしだな」

 

 デイパックに入れて、背中へ。

 

「CR(コンパクトリボルバー)のホルスターは?」

「……いらん! 分かってて、言っただろ?」

 

 笑いながら見送られて、外へ。

 

 護身で、ポケットに小型リボルバーがある。

 

(同じ日本とは、思えない!)

 

 登録制とはいえ、ここでは実銃を持ち歩けるのだ。

 

 それだけ、命の危険がある。

 

 

 そのまま、次の店へ。

 

 自動ドアが左右に開くと同時に、軽快な電子音と声優のボイス。

 

 そう、ゲーム屋だ!

 

 ネットでダウンロード購入が主流になっても、俺はこだわる。

 

 薄いパッケージが並べられている棚の間を歩きつつ、お目当てを探す。

 

(ほう? このシリーズ、次が出ていたんだな?)

 

 気になったゲームを1つ、2つ、3つ。

 

 片手に重ねたままで、さらに歩く。

 

(今の俺には、金がある!)

 

 タダ働きも多い気がするが、今は気晴らしだ。

 

 その時に、出入口の自動ドアが動く音と、電子チャイム。

 

 気配と歩き方から、女のようだ。

 それも、複数。

 

 最新作のデモを眺めつつ、入ってきた女2人が視界に入る。

 

 仲が良く、友人というより姉妹のようだ。

 話しているのは……英語。

 

(姉は新社会人の20代半ば、妹は俺より少し年上?)

 

 そう思いつつ、レジへ。

 

 会計を済ませて、その姉妹とすれ違い――

 

(姉の首筋に……黒いマーク?)

 

 シュホッ

 

 硬いものが擦れる音が聞こえたと思ったら、妹のほうの声。

 

「Don't move! Hands where I can see them!(動くな! 両手を上げろ!)」

 

 そちらを見ると、セミオートマチックの黒い銃口。

 

 両肘を下げたままで、広げた両手を上げる。

 

 傍にいた姉らしき女子が、すかさず叫ぶ。

 

「Louise!? Stand down-now!(ルイゼ!? やめなさい!)

 

 姉の命令に、わきを締めた構えで両手持ちの妹が、視線を向ける。

 

 しばらく英語で叫び合っていたが、しぶしぶ銃口を下げた。

 

 こちらを見たままで、ホルスターに仕舞う。

 

「失礼しました。人違いだったので……」

 

 会釈した後で、俺の返事を待たずに外へ。

 

 集まっていた店員や客を振り払うように、ズンズンと歩き去った。

 

 残された姉は、息を吐く。

 

「ご迷惑をおかけしました! こちらが連絡先になります。この件での問い合わせは、そちらへお願いします」

 

 慣れているのか、名刺のようなカードを渡した後で、妹よりも深く頭を下げての退場。

 

 周りの視線を浴びた俺も、カードと複数のゲームが入った袋を手にしつつ、自動ドアから逃げる。

 

 しばらく歩き、やっと落ち着いた。

 

「次はどうするか――」

 

 左腕の裏側にある、黒いマジックによる殴り書きに気づく。

 

“ルイゼを忘れるな!”

 

 それは、明らかに自分の筆跡で、乾いていた……。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。