【第四章 かわらぬ挨拶をもう一度のスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった 作:初雪空
「妹がご迷惑をおかけしてしまい、深くお詫び申し上げます……」
クラウディア・マルガレータ・エルデルと名乗った女は、頭を下げた。
ダークブラウンの瞳で、同じ色の髪を清楚な雰囲気のショートボブ。
最初に見かけた印象の通り、20代半ば。
その妹、女子高生のルイゼ・マルガレータ・エルデルは、うんざりした様子だ。
ライトブラウンのボブだが、全体的に丸みを帯びた感じ。
同じ色の瞳は、俺をジトッと見たまま。
(ゲーム屋で、いきなり俺に銃口を向けた犯人でもある……)
私服ではあるが、護身用の拳銃を持っている可能性が高い。
今は
応接セットを兼ねたソファに座っており、この姉妹と、それ以外でグループ化。
俺と
綾ノ瀬
「事情は、そこにいる水鏡くんから聞きました……。ここが観察特区であろうと、いきなり銃口を向けられたことは、警察に通報するべき話です。あるいは、US軍や大使館への抗議」
クラウディアは、畏縮する。
「お言葉、ごもっともです! どのようにお考えですか? こちらは、それに合わせます」
全員の視線が、俺に集中した。
(まあ、当然か……)
色々な思惑が絡まった視線を感じつつ、発言する。
「最初にハッキリさせておきたいのは、ルイゼさんが俺に銃口を向けた理由です。発作的に銃を抜くようでは、軍人失格どころか、銃を取り上げるべきだと思います」
俺の提案で、今度はルイゼに視線が集まった。
座ったままで身を縮めた彼女に、姉のクラウディアが庇う。
「ル、ルイゼは、ある事情で不安定になっており――」
「いいよ、お姉ちゃん! 水鏡くんは、どうすれば納得するの?」
笑顔を作ったルイゼは、首をかしげた。
俺は、その隣に座っているクラウディアを見てから、ルイゼに視線を移す。
「取り上げるべきだと――」
「Please, don't! I'm begging you!!(やめてっ! お願い!!)」
絶叫したルイゼが、隣のクラウディアに抱きつく。
理解できない面々は、対応に困ったようだ。
横から抱きつかれたクラウディアは、ソファで座ったまま、妹を抱きしめる。
その視線を感じつつ、言い直す。
「なら、ルイゼさんが俺とデートしてください!」
あまりの落差に、全員の顔が不安定になった。
向かい合って座る姉妹も、それぞれに困惑する。
姉のクラウディアが、代表して質問する。
「あ、あの……。理由を説明していただいても――」
「お姉ちゃん? 私は、それでいいから」
再び笑顔になったルイゼは、俺に言う。
「早く言ってよ? とりあえず、アプリの連絡先でいいかな?」
全員が悩む中で、ルイゼは自分のスマホを取り出した。
◇
「お待たせ!」
ルイゼ・マルガレータ・エルデルが、私服でやってきた。
「今日は、暑いな……」
数回目のデートで、だいぶ慣れた。
別の女の声が、割り込む。
「こんにちは……。毎回、私が付き添うのは――」
「お姉ちゃんも、楽しいよね?」
何とも言えない表情のクラウディアは、息を吐いた。
「ルイゼ……。いい加減にして! 水鏡くんと付き合うなら、自分で向き合いなさい」
姉の腕に抱きついたルイゼが、首を横に振る。
「嫌だよ! お姉ちゃんも、一緒!!」
「ハアッ……」
頭痛がするように首を振る、クラウディア。
俺は、提案する。
「次は、2人で遊びに行きます! エルデルさんにご迷惑をおかけしました」
「こちらこそ、妹が迷惑をかけました……。ルイゼ? 分かったわね?」
正面から向き合った姉の説得に、ルイゼはしぶしぶ頷いた。
「うん……」
――大型のテーマパーク
老若男女で賑わう、広大な場所。
陽気なBGM。
いつもより豪華な服であるルイゼが、くるりと一回転。
「すごいね! 今日は、楽しもう?」
「そうだな……」
順番待ちの行列がいたる所にあるが、パスを追加購入したことで、どんどんアトラクションに乗っていく。
クラウディアはいないが、ルイゼに気にする素振りはない。
あっという間にランチタイムで、楽しそうな彼女と食事をする。
こちらでも、お金を気にせずに特別席だ。
(遠くから、視線を感じる……)
気にしないように演技をしつつ、ウキウキしているルイゼと食べさせ合う。
「楽しい! もっと早く、こうしていれば良かったな……」
遠くを見たままで息を吐いたルイゼが、こちらを見た。
「ねえ、
「いつまで、続ける気だ?」
俺の指摘に、ルイゼの表情にドロッとしたものが混ざる。
「お姉ちゃんと才がいれば、それでいい……。正直なところ、同じ反応ばかりで飽き飽きしていたんだ! これまでは、ずっと君を警戒していたし、邪魔されたけど」
ニパーッとした彼女は、あっけらかんと言う。
「私たち3人で、いつまでも幸せに過ごそ? それ以外だったら、好きにしていいよ? 才も、本当はやってみたいことがあるんじゃない? やりたい放題だよ!」
立ち上がったルイゼは、俺の耳元で囁く。
――どうせ、全てなかったことになるんだし