【第四章 かわらぬ挨拶をもう一度のスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった 作:初雪空
「変わらないものはない! 望むかどうかに、関係なく……」
俺が答えると、ルイゼ・マルガレータ・エルデルは顔を背けた。
「そんな綺麗事は、聞きたくない!」
応じつつも自分の席に座り、笑顔を作る。
「
「お前の名前が、マジックで腕に書いてあった……」
片方の腕を上げると、ルイゼはそちらを見つめた後に、息を吐く。
「そう……。時間遡行のループでどうして残ったとか、ツッコミどころはあるけど」
しぶしぶ頷いたルイゼは、白状する。
「オープンしておく! この世界は、お姉ちゃんと一緒にいるためにあるの」
「だいぶ短い……。同じことを繰り返せば、普通は発狂するだろうに」
「私には、お姉ちゃんがいる!」
叫んだルイゼに、俺は窘める。
「タイムループは異常……。異常に正常を求めても、それは異常でしかないぞ?」
ガタッと立ち上がったルイゼが、絶叫する。
「あなたは、大事な人を失ってないから!」
周りの注目を集めたことで、俺は提案する。
「そろそろ、行くぞ? 食事は十分だろ?」
――1時間後
気まずい雰囲気も薄れて、何事もなかったように楽しむ。
離れている場所からの視線も、一定間隔を保ったままでついてくる。
次のアトラクションへ。
『かつて、沿岸に上陸した大量のカニ! 日本の歴史を作った先人の偉業をあなたも体験してみましょう!』
大人ぐらいのカニ、2倍ぐらいのカニ、戸建てを上回るカニ……。
(刀や槍で貫かれるカニ、串刺しになる侍との激戦だ)
俺たちが乗っている物体は、レールに沿って進む。
『けれど、空から降ってきた爆撃鳥による侵攻もあり、カニと上空からの攻撃に悩まされて、太平洋に面した沿岸部は軒並み奪われました!』
刀を振り回していた侍の集団から、ガトリングガンで空や地上を掃射する図式へ。
(……何だ、これ?)
◇
「今の日本は、カニと爆撃鳥を倒した末の平和のようです!」
「そんな……」
顔に縦線が入った奈々美は、周りのカオスな空間を見回す。
水鏡才による情報共有で、女子2人は時間がループしていることを自覚。
今は、デートを尾行している。
ガタン、ガタンと、ゆっくり進んでいく乗り物。
ちょうど2人乗りだから、邪魔者はいない。
(ルイゼを始末するか? どうにも、動きづらいですわ!)
才の考えが気になるものの、今は奈々美を落ち着かせることが優先。
彼女の耳元で囁く。
「姉のクラウディアを死なせないためのループ! 才が対応するでしょうから、バックアップに徹しますよ?」
「ですが、どうして……」
暗がりでライトアップされている空間には、建物の一部がどんどん漂着した状態で固まったような、見ていると精神が不安定になる光景が続く。
西洋の城と思えば、日本家屋に変わり、それは崖のような部分へ……。
(まるで、地層の断面図を引っ張り出したかのよう!)
そちらを見たアレーテは、息を吐いた。
「おそらく、タイムループによる弊害ですわ! 死んだ者を蘇らせれば、その皺寄せで誰かが突然死。あるいは、生まれるはずだった命がなくなる? 無機物も例外ではなく、このように本来のあるべき場所から流されてくるのでしょう」
同じ動きを繰り返す展示物は、歴史的なシーンを再現している。
動いていく乗り物によって場面が切り替わり、リアルな紙芝居だ。
繰り返されるBGMと音声が、それを盛り上げる。
しかし、アレーテは、隣に座っている奈々美の頭をグイッと低くした。
「動かずに!」
手で押さえ込まれたまま、奈々美は横を見た。
同じように頭を低くしているアレーテは、緊張した様子。
じきに、アレーテが頭を上げつつ、手を退けた。
「大丈夫ですわ!」
「あ、ありがとうございました……。いったい、何が――」
ゴトンゴトンと、前へ進み続けるアトラクションに乗りつつ、周りを見たら、後ろに乗っている人の首が2つ飛んでいた。
噴水のような血しぶきと、首なし死体を見た奈々美は、横にいるアレーテの袖を引っ張る。
「アアア、アレーテ! 人が!!」
後ろを見たアレーテは、興味なさそうに告げる。
「心配いりませんわ! ほら、楽しそうにしています」
そんな馬鹿な、と思いつつ、奈々美が振り返ったら――
「過激だなー!」
「……びっくりした」
男女のカップルは、血だらけのまま、首が飛ぶ前の状態で話し合っている。
薄暗く、乗り物同士で前後の距離があるため、よく見えないが……。
前を向いた奈々美は、次にアレーテを見る。
「死なないのでしょう……。あるいは、死んでも直前に巻き戻るのか? ルイゼが姉のクラウディアを生きたままにしようと繰り返した結果、もはや死に対する恐怖すら失われつつあります」
「えっ?」
怯える奈々美に、アレーテが説明する。
「ですが、延々とコピーを続けるに等しい! どんどん劣化していき、異形となった人やサイコパスのような精神を持つ人が増えていきます」
死のアトラクションが終わった。
いや、切れたワイヤーが飛んできたような事故だったのか?
自分の足で立った女子2人は、ふわふわする感覚のまま、しばらく歩いた。
やがてアレーテが立ち止まり、横にいる奈々美もならう。
とある方向を見たアレーテは、知っていたかのように呼ぶ。
「そろそろ、あなたが話す時間ではなくて? クラウディア・マルガレータ・エルデルさん?」