【第四章 かわらぬ挨拶をもう一度のスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった 作:初雪空
テーマパークの賑やかなBGMと、狂い始めた人々が通りすぎるだけ。
いっぽう、アレーテと向き合った、クラウディア・マルガレータ・エルデル。
隠れようか、と悩むも、すぐに諦めた。
「いつから?」
「……これでも、わたくしは魔術師ですわ! 舐めないでくださいまし」
息を吐いたクラウディアは、提案する。
「ここは、人目があります……。別の場所へ行きましょう」
――フードコート
何とか、3人分の席を確保した。
周りは騒がしく、老若男女の声。
美女、美少女に注目する視線はあれど、ガンマイクを向けても聞き取るのは難しい。
座っているクラウディアが、自分のドリンクを口に含み、落ち着いてから話す。
「結論から述べると、私はもう死んでいます……。いえ、そのはず」
「何があったんですの?」
テーブルを挟んでいるアレーテの詰問に、正面のクラウディアが答える。
「私と妹のルイゼは、US軍でアイドル的な部隊にいました。士気高揚としての慰問です……。ライブのようなパフォーマンスはあれど、接待で抱かれるような行為はなし。若い女だけのグループで、前線に近い兵士たちに娯楽を提供していたんです」
「すさんでいる兵士が、それぐらいで鎮まるとは思えませんけど?」
アレーテの質問に、クラウディアは目をそらす。
「別の女性たちが担当しているとは、聞きました。ハッキリと説明されたわけではありませんが」
US軍として、綺麗なままのアイドル活動。
「ある日、奇襲されました……。最寄りの敵が、捨て身の突撃をしてきたんです」
不意を突かれて、迎撃が間に合わず。
ライブ衣装のまま、指揮車に乗り込んだ。
「表向きの所属は、機甲部隊……。対抗できる火力と装甲があるのは、私たちだけ」
しかし、ゲリラに近い敵とはいえ、機甲部隊だけでは浸透される。
「私たちが粘ったおかげで、一部の味方は逃げられたようです。代わりに、私たちは捕虜になりました」
うつむいたクラウディアが、小さく震え出す。
「そこで、私は……」
話そうとするも、歯をガチガチと鳴らし、明らかに様子がおかしい。
「もう、いいですわ! 自分が死んだと思える理由を言えるのなら」
アレーテの発言に、クラウディアは顔を上げた。
「撃たれた気はしますが……。なにぶん、死ぬのは初めてだったので」
二度も、ありませんよ?
心の中で突っ込んだ
(捕虜……。それも、これほどの美人が)
奈々美の視線に気づいたクラウディアが、苦笑する。
「ご想像の通りです……。ゼロから、一気に経験人数が増えました! 数える気にもなりませんが」
「ご……いえ、捕虜にした勢力に心当たりは?」
反射的に謝ろうとした奈々美は、言い直した。
「戦力を整えた友軍が反撃に転じて、かなり残酷に殺したようです。というのも、私が死んだ後の話だったので! 把握している範囲では、妹は無事だったはず」
「そ、そうですか……」
奈々美は、返す言葉が見つからない。
代わりに、アレーテが問いかける。
「クラウディアさんは、どうしたいんですの?」
悩み始めた本人が、ポツリと呟く。
「私は、もう死んだ人間です。妹が……ルイゼが幸せに生きてくれれば」
「あなたは、どうなっても構わないと?」
「……ええ!」
アレーテの質問に答えたクラウディアは、迷いなき表情だ。
女子2人の視線を集めたアレーテが、自分のドリンクをすする。
「
「……それが、妹の幸せであれば」
奈々美は、指摘する。
「才くんに、対処できるんですか?」
向き直ったアレーテが、事もなげに言う。
「才は、わたくしの主人ですわ! タイムループと分かった以上、あとはカップラーメンを作るようなもの」
「そ、そこまで!?」
驚いた奈々美に、アレーテは頷く。
「問題は……才がルイゼを気に入って、この永遠を維持するほうに回った場合」
「アレーテが止めては?」
「……無理ですわ! わたくしは、逆らえません」
再び驚いた奈々美は、しみじみと頷く。
「そうですか……。ちなみに、どういう調教をされたので――」
「お話の途中で申し訳ないけど、才くんが妹に篭絡されたら終わりと?」
クラウディアの突っ込みで、脱線をまぬがれた。
そちらを見たアレーテは、首肯する。
「ヘタレ童貞ですから、色仕掛けでイチコロだと思いますわ!」
「……私、けっこう誘ってるんですけど」
ボソリと呟いた、奈々美。
それに対して、笑顔のアレーテが答える。
「OKサインがあるのに応じないヘタレだから、童貞ですの!」
「……なるほど」
引きつった顔のクラウディアは、相談する相手を間違えたかな? と思うも、妹が才に執着している以上、どうすることもできず。
真剣な表情になったアレーテが、タイムリミットを告げる。
「才は、わりと気が短いですわ……。夕方か夜には、ルイゼを抱いて、共にこの狂った世界を繰り返すか、あるいは殺すかを決めるでしょう」