【第四章 かわらぬ挨拶をもう一度のスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

53 / 53
指名手配となった室矢重遠は、どこへ!?
https://hatuyuki-ku.com/?p=707


第53話 捕虜は殺されないだけ

 水鏡(すいきょう)アレーテは、自然体のまま。

 

 テーマパークの賑やかなBGMと、狂い始めた人々が通りすぎるだけ。

 

 いっぽう、アレーテと向き合った、クラウディア・マルガレータ・エルデル。

 

 隠れようか、と悩むも、すぐに諦めた。

 

「いつから?」

「……これでも、わたくしは魔術師ですわ! 舐めないでくださいまし」

 

 息を吐いたクラウディアは、提案する。

 

「ここは、人目があります……。別の場所へ行きましょう」

 

 

 ――フードコート

 

 何とか、3人分の席を確保した。

 

 周りは騒がしく、老若男女の声。

 美女、美少女に注目する視線はあれど、ガンマイクを向けても聞き取るのは難しい。

 

 座っているクラウディアが、自分のドリンクを口に含み、落ち着いてから話す。

 

「結論から述べると、私はもう死んでいます……。いえ、そのはず」

 

「何があったんですの?」

 

 テーブルを挟んでいるアレーテの詰問に、正面のクラウディアが答える。

 

「私と妹のルイゼは、US軍でアイドル的な部隊にいました。士気高揚としての慰問です……。ライブのようなパフォーマンスはあれど、接待で抱かれるような行為はなし。若い女だけのグループで、前線に近い兵士たちに娯楽を提供していたんです」

 

「すさんでいる兵士が、それぐらいで鎮まるとは思えませんけど?」

 

 アレーテの質問に、クラウディアは目をそらす。

 

「別の女性たちが担当しているとは、聞きました。ハッキリと説明されたわけではありませんが」

 

 US軍として、綺麗なままのアイドル活動。

 

「ある日、奇襲されました……。最寄りの敵が、捨て身の突撃をしてきたんです」

 

 不意を突かれて、迎撃が間に合わず。

 

 ライブ衣装のまま、指揮車に乗り込んだ。

 

「表向きの所属は、機甲部隊……。対抗できる火力と装甲があるのは、私たちだけ」

 

 しかし、ゲリラに近い敵とはいえ、機甲部隊だけでは浸透される。

 

「私たちが粘ったおかげで、一部の味方は逃げられたようです。代わりに、私たちは捕虜になりました」

 

 うつむいたクラウディアが、小さく震え出す。

 

「そこで、私は……」

 

 話そうとするも、歯をガチガチと鳴らし、明らかに様子がおかしい。

 

「もう、いいですわ! 自分が死んだと思える理由を言えるのなら」

 

 アレーテの発言に、クラウディアは顔を上げた。

 

「撃たれた気はしますが……。なにぶん、死ぬのは初めてだったので」

 

 二度も、ありませんよ?

 

 心の中で突っ込んだ綾ノ瀬(あやのせ)奈々美(ななみ)は、考える。

 

(捕虜……。それも、これほどの美人が)

 

 奈々美の視線に気づいたクラウディアが、苦笑する。

 

「ご想像の通りです……。ゼロから、一気に経験人数が増えました! 数える気にもなりませんが」

 

「ご……いえ、捕虜にした勢力に心当たりは?」

 

 反射的に謝ろうとした奈々美は、言い直した。

 

「戦力を整えた友軍が反撃に転じて、かなり残酷に殺したようです。というのも、私が死んだ後の話だったので! 把握している範囲では、妹は無事だったはず」

 

「そ、そうですか……」

 

 奈々美は、返す言葉が見つからない。

 

 代わりに、アレーテが問いかける。

 

「クラウディアさんは、どうしたいんですの?」

 

 悩み始めた本人が、ポツリと呟く。

 

「私は、もう死んだ人間です。妹が……ルイゼが幸せに生きてくれれば」

 

「あなたは、どうなっても構わないと?」

「……ええ!」

 

 アレーテの質問に答えたクラウディアは、迷いなき表情だ。

 

 女子2人の視線を集めたアレーテが、自分のドリンクをすする。

 

(さい)は、ルイゼを殺すかもしれませんよ?」

「……それが、妹の幸せであれば」

 

 奈々美は、指摘する。

 

「才くんに、対処できるんですか?」

 

 向き直ったアレーテが、事もなげに言う。

 

「才は、わたくしの主人ですわ! タイムループと分かった以上、あとはカップラーメンを作るようなもの」

 

「そ、そこまで!?」

 

 驚いた奈々美に、アレーテは頷く。

 

「問題は……才がルイゼを気に入って、この永遠を維持するほうに回った場合」

 

「アレーテが止めては?」

「……無理ですわ! わたくしは、逆らえません」

 

 再び驚いた奈々美は、しみじみと頷く。

 

「そうですか……。ちなみに、どういう調教をされたので――」

「お話の途中で申し訳ないけど、才くんが妹に篭絡されたら終わりと?」

 

 クラウディアの突っ込みで、脱線をまぬがれた。

 

 そちらを見たアレーテは、首肯する。

 

「ヘタレ童貞ですから、色仕掛けでイチコロだと思いますわ!」

「……私、けっこう誘ってるんですけど」

 

 ボソリと呟いた、奈々美。

 

 それに対して、笑顔のアレーテが答える。

 

「OKサインがあるのに応じないヘタレだから、童貞ですの!」

「……なるほど」

 

 引きつった顔のクラウディアは、相談する相手を間違えたかな? と思うも、妹が才に執着している以上、どうすることもできず。

 

 真剣な表情になったアレーテが、タイムリミットを告げる。

 

「才は、わりと気が短いですわ……。夕方か夜には、ルイゼを抱いて、共にこの狂った世界を繰り返すか、あるいは殺すかを決めるでしょう」




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。