【第四章 かわらぬ挨拶をもう一度のスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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指名手配となった室矢重遠は、どこへ!?
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第55話 気分が良い時、哀しい時には、マーチを歌おう!

 メガネをかけた中年男だが凄みのある大尉は、俺を見据えた。

 

 笑顔で、優しい声を出す。

 

「何に、使うんだね?」

 

「……関係あるのか?」

 

 大尉は、俺のぶっきらぼうな返事に、頷いた。

 

「そうだな! 我々には関係ない……。君が対価を払えば、ご要望のスマートキャノンを弾ごと渡しても構わん」

 

「なら――」

「それでも、私は知りたいのだよ! 比例原則にこだわり、それを自分がまともである証明とする君が! 明らかにオーバースペックな火器を求める理由を!」

 

 銃声が、止んだ。

 

 視線を感じる。

 

 それに構わず、パイプ椅子に座っている大尉を見つめる。

 

「ルイゼのためだ……。彼女は、最後までUSを信じていた。だから、教えなかった! 教えられなかったんだ! そのうえで……」

 

 泣きながら崩れ落ちた俺に、立ち上がった大尉が歩み寄り、肩に手を置いた。

 

「君は、スマートキャノンで何を撃つ?」

 

「――――」

 

 俺の返事を聞いた大尉は、笑顔で頷いた。

 

「軍曹! スマートキャノン一丁と弾だ! 私のカードから、引いておけ!」

 

 しかし、当番兵のように控えていた男は笑う。

 

「そりゃ、ないですぜ! 俺のカードからも、引いてください」

 

 いつの間にか集まっていた男たちも、口々に言う。

 

「払う!」

「ああ、俺も!」

「むしろ、俺たちが行きたいぐらいだ」

 

 呆然とする俺に、屈んだ大尉が告げる。

 

「私たちは、もはやUSの地を踏めない……。海兵隊からも、不名誉除隊どころか戦争犯罪人だ! たとえ冤罪であろうと、国家ぐるみで行われれば、それを覆すことは不可能! みんな、君に助けられた」

 

 立ち上がった大尉は、少しだけ歩き、こちらを向く。

 

「持っていきたい武装があれば、何でも持っていけ! だが、それとは別に、君を正装にしたい! 晴れ舞台にふさわしい、戦士の正装に」

 

「……頼む」

 

 

 ◇

 

 

 水鏡(すいきょう)(さい)は、戦士としての正装になったうえ、パワードスーツ用にも使われる大型ライフルを抱えて、立ち去った。

 

 それを見送った大尉は、中隊を全員集める。

 

 兵舎で見かけそうな食堂で席に着いた兵士たちを上座で見た大尉が、演説する。

 

「諸君! 我らの恩人にして友人である才は、USの腐った奴らをぶっ飛ばしに行くそうだ! 今まさに、彼は旅立った!!」

 

 男たちの低い声が、それに呼応した。

 

 上座で立っている大尉が片手を上げれば、ピタリと止む。

 

「だが、我々のための復讐ではない! 彼自身のためだ……」

 

 ふうっと息を吐いた大尉は、続ける。

 

「才は、ついに恋を知った! けれど、それは悲恋だ……。彼が気づき、それを受け入れるには時間がかかるだろう。自分の手でその女を始末したとあれば、尚更な?」

 

 しんみりした空気が、場に満ちた。

 

 男であれば、誰でも心当たりがある話。

 それも、トラウマになりそうな結末。

 

 けれど、大尉は明るい声へ。

 

「我々は手伝えないが、彼が希望したスマートキャノンを贈った! 才にとっては、彼女の象徴だろうが……。まあ、それはいい!」

 

 長机についている1人が、突っ込む。

 

「あいつが魔術を使えば、そんな手間をかけなくても……」

 

 それは、そう。

 

 けれども、周りの兵士たちが失笑する。

 

 同じように笑った大尉は、説明する。

 

「ハハハ! それを言ったら、お仕舞いだ! あえて言うなら、儀式……。ルイゼという女を悲劇に追い込み、ひいては自分との関係も断つしかなかった原因をたたくことでな?」

 

 別の兵士が、質問する。

 

「大尉! そのクソ野郎どもは、自分の身を守ることだけは徹底しているんじゃ?」

 

「その通りだ! 元特殊部隊などの精鋭を民間軍事会社による雇用で、最新の装備を使わせているだろう。一般には非公開の場所でな?」

 

 息を吐いた1人が、言い捨てる。

 

「俺たちを捨て駒にした奴らが……」

 

「奴らにも、奴らの理屈があるのだろう! 我々は現場の中隊に過ぎず、USに銃口を向けることなく、母国を捨てた……。しかし、同じように、友人の復讐を止める義理もない!」

 

 それを聞いた兵士たちは、一斉に笑う。

 

 一緒に笑いつつ、大尉が続ける。

 

「才は、その気になれば、明日にでも世界を滅ぼせるだろう! スマートキャノンがあろうとなかろうと、彼が倒すと決めれば、奴らに助かる可能性はない……。観察特区の片隅でひっそりと暮らす我々だが、あのスマートキャンにはその怒りも込められている。詳細を知る機会はないが、今だけはそれに思いを馳せて、留飲を下げよう」

 

 グラスワインを手にすれば、他の兵士たちも手に。

 

 いよいよ、大尉の掛け声。

 

「では……。才の初恋に!」

 

「「「才の初恋に!」」」

 

 唱和が続き、それぞれがグラスワインを飲み干す。

 

 大尉が奮発して、秘蔵のワインを開けたのだ。

 

 ほろ酔いになった兵士たちが、誰ともなく、軍のマーチを歌い出す。

 

 全員での合唱となった後で、様々な話題へ。

 

 当番兵に給仕されながら、座った大尉は思う。

 

(才……。君は、どのようなマーチを歌うのかね?)

 

 

 ――USのリゾート地

 

 一般人が立ち入れない、高級リゾート地。

 

 森林を切り開いた、綺麗に整備された一角に、場違いな青少年が歩いていた。

 

 一歩ずつ踏みしめる度にその口から紡がれるのは、テーマパークで流れているのがお似合いの明るいマーチ。

 

 水鏡才だ。

 

 森林迷彩の戦闘服にブーツを履き、太い柱のようなスマートキャノンを肩に担ぎ、丘へ向かう罪人のようでもある。

 

 夜間用の迷彩を顔に塗っており、凹凸が分かりにくい。

 

 その目は、視線だけで人を殺せそうだった。




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