【第四章 かわらぬ挨拶をもう一度のスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった 作:初雪空
重武装したパワードスーツが、3機。
2mほどの身長で、ギリギリ屋内を移動できる。
ここのオーナーである、経営者の若い男が、パワードスーツの中から告げる。
『リゾート島は、壊して構いません! 存分に、やってください!』
初老の軍人と、同じく議員の男が、笑った。
『そう、こなくては! こいつで歩けば、床がグチャグチャだからな……』
『まさか、軍用のパワードスーツで撃ちまくるとは』
軍人は、2機のほうを向いた。
『私が、指揮を執るぞ?』
『お願いします!』
『異論はない』
首肯した軍人は、パワードスーツに包まれたまま、各種のデータを見た。
『島外への退避は、完了したようだ……。シェルターには、誰もいない。少し待て!』
出航したクルーザーなどの船舶への無線。
『私だ! 我々3名はシェルターに籠もる! 数時間後に、ここを奪還してくれ』
ザッ
『了解! お気をつけて! 以上』
軍人らしい、必要最低限の返事。
パワードスーツで外部との無線を封鎖した軍人が、2人に告げる。
『君たちも、外部との無線を閉じろ! ここから3機のデータリンクのみにする』
『うむ……』
『はい、ただちに!』
そこで、若い経営者が提案する。
『じきに、日が暮れます! 照明を全て切りますか?』
『……やってくれ』
夕暮れで、太陽が海に沈む。
影が伸びていき、黒で塗り潰された。
一瞬だけ、オートで各所の明かりがつくも、星空と月だけの状態へ戻る。
パワードスーツ3機は、暗視装置による、緑一色の視界へ。
『便利ですねえ……』
『映画では、よく見たな?』
のんきな2人に、軍人が告げる。
『諸君! これは、リアルだ! 侵入者は兵士1人でスマートキャノン一丁らしいが――』
近くの壁が、爆破されたように吹き飛ばされた。
生身であれば、鼓膜が破れていそうな轟音が響き、パワードスーツの内部に警報が鳴り響く。
『ぐっ!?』
『……ス、スマートキャノンって、こんなに破壊力があったんですか!?』
動揺するだけの2人に対して、指揮している軍人も戸惑う。
(そんなはずは……。戦闘車両の攻撃か、歩兵のロケットランチャー?)
集まってくるデータで考え込む軍人が、さらなる飛行物体に叫ぶ。
『全員、伏せろぉおおおっ!』
言いながら、自身も床に這いつくばる。
議員のパワードスーツも、それに倣う。
だが、若い経営者がのっている機体だけ、棒立ちだ。
『な、何です? 相手は1人だけと――』
ヒュウゥウウッ ゴガンッ!
硬いものが衝突する音と共に、棒立ちのパワードスーツが上下に分断された。
宙を舞った上半身が、中身入りで床を大きく凹ませる。
顔を上げたパワードスーツ2機は、その惨状をクリアに捉えた。
いや、デジタル補正で、正気を失いそうな部分はモザイクだ。
軍人が、呆然としたままで呟く。
『しゅ、主力戦車の主砲による徹甲弾? 馬鹿な……。待て! うかつに出るなぁ!』
パニックに陥った議員は、アクチュエーターの音を響かせつつ、立ち上がる。
背中にマウントした軽機関銃を前へ向けて、めたらやったらに連射し始めた。
『くそっ! くそっ! 来るなら、来い! 蜂の巣にしてやるぞ!?』
ドシュンドシュンと、重い足音と凹みにより、ヴヴヴと断続的に連射するパワードスーツが前へ歩いていく。
けれど、夜空を見られる外へ出た瞬間に、同じような風切り音の直後に、被弾。
前面装甲で受け止めたが、その部分が大きく凹む。
それでも、バランサーと制御ソフトのおかげで、仁王立ち。
両手でそれぞれにロケットランチャーを持ち、撃ってきたと思われる方向へ撃ち続ける。
煙をたなびかせて、飛び続けるロケットは、それぞれに大爆発。
建造物やプールなどが壊れて、その破片が炎に彩られた。
『ハハハハ! やったぞ! 私が仕留めた!! 見ていたかね――』
ピュイイイイッ ドゴンッ!
1機目と同じように、上下で泣き別れのパワード―スーツ。
上半身は瓦礫だらけのプールへ沈んだが、生死を気にする必要はないだろう。
(マズいな……。こんなことなら、子飼いの部下は残しておくべきだった)
外と繋がった屋内で、壊れた壁を遮蔽にしている軍人のパワードスーツは、リンクしている島内のセキュリティで、議員が死んだことを把握。
両手で重機関銃を持ったまま、パワードスーツで島外へ逃げ出すべく、走り出した。
内部のモニターに、次々とデータ画面が出る。
サポートAIが、無機質な男の声で報告。
『敵の攻撃は、海上艦による艦砲射撃、または、水陸両用の戦車による主砲の徹甲弾と思われます』
「そんなことは、分かっている! 私は生き延びたい!」
要望を聞いたAIが、わずかな時間で検索と思考。
『島内のシェルターへの退避、または、船舶による脱出……。どちらも可能です。いかがでしょうか?』
「海上艦は?」
『確認できません! ただし、索敵はこの島のセキュリティに頼っています』
「シェルターは、今の攻撃に耐えられるか?」
『不明です! あの破壊力で連射された場合、シェルターが耐えても、出入りが不可能になるか、しばらくの生存も不可能になる恐れがあります』
「ええいっ! まるで、役に立たん!!」
『お役に立てず、申し訳ありません』
所詮は、AIだ。
まさに正体不明の敵に殺されかけている軍人は、息を吐いた。
それでも、どちらかを選ぶしかない。