【第四章 かわらぬ挨拶をもう一度のスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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指名手配となった室矢重遠は、どこへ!?
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第58話 無言の断罪

 最後に残った、高級将校が乗ったパワードスーツ。

 

 中年男が選んだ兵装は、重機関銃だ。

 2mの巨人でも、長い銃身は取り回しがやりにくそう。

 

 それでも、ロケットランチャー、スマートキャノンと比べて、使いやすい。

 

 戦闘機、海上艦、戦車と、幅広く採用されている傑作。

 相手の撃破もそうだが、弾幕を張っての誘導など、多目的に使える。

 

 戦術AIはシェルターの位置を示すが、すでに奴の射程だ。

 壁抜きをしてくる以上、背中から撃たれて貫通か、瓦礫に埋もれる。

 

(やむを得ん! こうなったら、やつの要求を呑むか?)

 

 この場を乗り切れば、何とでもなる。

 時間を稼げば、友軍の航空部隊、歩兵のロープ降下、高速艇からの砲撃、弾幕によって逆転だ……。

 

 外部音声にした軍人は、必死に呼びかける。

 

「話し合おう! 私は、USの高級将校だ! 君の目的は、何だ!?」

 

 地図に載っていないリゾート島は、満天の星空に包まれた。

 

 柱のようなスマートキャノンの先を地上に下ろした侵入者は、立ち止まる。

 

 緑色の視界だが、デジタル補正により、本来の姿が映し出された。

 

(戦闘服だが、森林迷彩? どういうことだ……)

 

 FCSの明るい蛍光色による囲いで、水鏡(すいきょう)(さい)がクローズアップされた。

 持っている武装のスマートキャノンについて、注意するべきデータを示す。

 

 遮蔽をとり、いつでも重機関銃を撃てる姿勢のまま、銃口だけ下げている姿勢。

 

 すると、才が喋った。

 

『ルイゼ・マルガレータ・エルデルを知っているか?』

 

 まさに、話題だった姉妹の片割れ。

 

(復讐か? だが、何を考えている?)

 

 今でもUS軍にいるルイゼの立場が、悪くなるだけ。

 

 けれど、彼女は捕虜になっている間に暴行されただろう。

 それを恨んでいることは、十分にあり得る。

 

(脅しつつ、利を説くしかない……)

 

 せまい空間で深呼吸をした軍人は、答える。

 

「知っている! あれは不幸な事故だった――」

 ビービービー!

 

 パワードスーツの中に警報音が鳴り響き、自動操作による、銃口の跳ね上げ。

 

 床を削りつつ、両足を踏ん張っての弾幕。

 

 けれど、遅い。

 

 ガキィン! という金属音に、よろめくパワードスーツ。

 

 ドドドドと、もはや発砲音とは思えない銃声が重なり、曳光弾の光が違うところへ放物線を描く。

 

「ぐうっ!」

 

 装甲で止めても、その衝撃は中まで伝わり、体の芯まで響くダメージに。

 

 呻いた軍人は、AIによる補正もあり、パワードスーツの銃口を向けて――

 

 風切り音とほぼ同時に、重機関銃が弾け飛んだ。

 

 オートで捨てて、サブウェポンである、アサルトライフルを真ん中で縦に切り落としたような形状のライフルピストルに持ち直す。

 

 先ほどよりも軽い銃声が続き、才の体に吸い込まれていく。

 

 打った直後で隙だらけの彼は、避けることもできず。

 

 ところが、ライフル弾の列は、その直前でガラスをひっかくような音と共に消え失せた。

 

「なっ!?」

 

 目を剝いた軍人は、オートでマガジン交換をしながらも、射撃しつつの移動を選ぶ。

 

 いっぽう、スマートキャノンの銃口が空を向いたままで地面に叩きつけられ、ガンッ! と砕ける音。

 

 才は横に突き出たコッキングレバーにもたれつつ、全身で下へ押す。

 

 立ち上がる動作に、戻ろうとするレバーがついていく。

 

 ガシャッ キンッ! ドンッ!

 

 ビール瓶のような空薬莢が飛び出して、床にめり込んだ。

 

 構わずに、次弾を装填したスマートキャノンの銃口を向ける。

 

 軍人は反射的にARピストルを撃ちまくるも、やはり空中で消え失せるだけ。

 

 弾切れになり、それを投げ捨てた。

 

「待てっ! 投降する――」

 

 鐘の中に入れられたまま、それを突かれたような衝撃と反響。

 

 着弾したのだ。

 

「ぐうううっ」

 

 アシストがあっても耐え切れず、片膝をつく。

 

 とっさに脱出しようとするも、装甲が開かない。

 

 数発を食らった衝撃で、歪んでしまったようだ。

 

 慌てて、外部音声で叫ぶ。

 

「投降する! 私を殺せば、USを敵に回すぞ!?」

 

 ガンッ!

 

 ガシャッ キンッ! ドンッ!

 

 脳震盪で気絶しそうなほどの衝撃で、パワードスーツは尻もちをついた。

 

「いい加減に――」

 

 ガンッ!

 

 ガシャッ キンッ! ドンッ!

 

 復讐者は、何も語らない。

 

 ただ、スマートキャノンの砲身を立てて、排莢と次弾装填を済ませては撃ってくるのみ。

 

 少しずつ近づいてくる、才。

 

 軍人は、ついに心が折れた。

 

「やめてくれ……。痛い……。ここから出してくれ……」

 

 正面から向き合っている才は、構わずに同じ動作を繰り返す。

 

 カチンッ

 

 ゼロ距離で向けられた銃口からは、何も飛び出さず。

 

 人型の棺桶の中で打ち震えていた中年男は、フーッと、息を吐く。

 

 いっぽう、スマートキャノンを投げ捨てた才が、背中を向けて歩き去る。

 

 唖然としたままで見送る、中年男。

 

(何だったんだ? まあ、いい! 今は友軍に救助してもらい、やつの特定と報復を――)

 

 ゴゴゴと、地面が揺れ始めた。

 

「な、何だ? 地震?」

 

 慌ててパワードスーツを立ち上がらせるも、バランサーが機能せずに、無様に倒れ伏す。

 

 その間にも揺れは酷くなり、亀裂ができていき、海水で満たされていく。

 

「ま、まさか……。島が沈んでいる!?」

 

 ここで、AIによる男のボイス。

 

『リゾート島が崩壊しています! 現在の状態では、気密を保てません。ただちに高所へ向かうか、オプションの海上装備と接続してください』

 

「パワードスーツから出たい! 何とか、しろ!」

 

『ネガティブ! 最寄りの海上艦、または、航空機への救難信号をお勧めします』

 

「だったら、早くしろ!」

『……リゾート島の電波塔が機能していません。代替え手段は――』

 

 サポートAIが説明している間にも、パワードスーツの中に海水が入り込んでいき、本体も崩れていく島と共に深海へ向かう。

 

「嫌だ……。どうして、私が! 許さん……。あんな兵士ごときが――」

 ゴボボボボ

 

 それでも、本能でわずかな酸素を求めた。

 

 いずれは酸欠か、水圧による爆縮が待っている。

 

 ハッキリしているのは、異常を知った軍がやってきた時に、島の残骸が浮かんでいたことだけ。




過去作は、こちらです!
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