【第五章 魔法少女アンジュソニアがスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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元凶の女子2人を調べるため、キャンパスライフ♪
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第62話 青春の終わり

「おっ? ひょっとして、火野平か!?」

 

 伊沙花(いさか)市を偵察してきた火野平(ひのひら)翔花(とか)は、隠れるのが間に合わなかったことを悔やんだ。

 

 視線の先には、爽やかな男子、百舐目(ひゃくなめ)差玖(さく)がこちらを見ている。

 

「お前、外に出られるじゃん! ウチに何の不満があるんだよ? とにかく、良かった!」

 

 外廊下で、大きな声。

 

 見えている範囲に人はいないが、他人に聞かれて嬉しい内容とは言えず。

 

 足早に通り過ぎ、鍵を取り出した翔花は、息を吐いた。

 

 ノンデリを無視して、玄関ドアに鍵をさし込む。

 

「ちょっと! 差玖が話しているのよ!?」

 

 鍵をさしている腕をつかんだ女子は、気色ばむ。

 

(太陽(たいよう)東(ひがし)高校の制服だ……)

 

 黄色に近い金髪ロングに、深い青に紫が入った瞳。

 

 美人と評するだけの容姿で、今は男に媚びた雰囲気のまま、怒っている。

 

 確か、減牧(げんぼく)朝宇未(あさうみ)。

 

 けれども、名状しがたい不快感がある。

 

(気持ち悪い……。AIに3Dで描かせた人物みたい)

 

 整いすぎて、死体が喋っている感じ。

 

 差玖にアピールしたいのだろうが、友人でもないクラスメイトに説教される謂れはない。

 

 鍵をひねってから、抜く。

 

 そのまま、相手のつかんでいる腕を巻き込むように払った。

 

 動きに逆らわなかったことで、痛みはなかったはず。

 けれど、引き籠もりに舐められたことが屈辱のようだ。

 

 もう片方の手でさすりつつ、睨んでくる。

 

「それが、返事なわけ?」

 

「頼んだ覚えはありません! 人の腕をつかむと、危ないですよ? 今みたいに」

 

「へえ? 言ってくれるじゃん!」

 

 朝宇未は美しい顔をゆがませ、睨んできた。

 

「帰ってください! 警察を呼びますよ?」

 

 翔花の最終警告に、嫌味なく笑った差玖が言い返す。

 

「担任に頼まれた! 警察を呼んだら、引き篭もりのお前が困るだろ? 俺たちは、お前を救いに来たんだ! あとは、中で話そう――」

 ゴンッ!

 

 玄関ドアが開いたのを見て、当たり前のように続いた差玖は、思い切り衝突。

 

 ドア越しにも、痛がっている様子が伝わってくる。

 

 内側で鍵をかけた翔花は、瞬時に女騎士のような格好の魔法少女アンジュソニアへ。

 

 片手を向けつつ、透視する。

 

 そこには、金属バットを両手で握った差玖がいる。

 

『お前の心の壁! これで、粉砕してやるぜぇ!』

 

 ピッチャーの球を打ち返すように構えた差玖が、バットをスイングしようと――

 

「衝撃波(ショックス)」

 

 アンジュソニアが向けている片手が光り、差玖は廊下から吹っ飛んだ。

 

『うわぁあああああっ!?』

 

 落下していくことで、変わっていく声。

 

『差玖!』

 

 朝宇未の声に構わず、透視を切り、元の姿へ。

 

 人差し指を上へ伸ばしたまま、クルクルと回す。

 

「フルール! 家を変えるわよ?」

 

「はーい!」

 

 

 ――30分後

 

 通報で駆けつけた警官4名が外廊下にたどり着いた瞬間に、火野平翔花が住んでいる家は内側から爆発した。

 

 玄関ドアが外へ開きつつ、大きくゆがんだ。

 

 ベランダ側の窓ガラスは一気に粉砕されて、バラバラと降り注ぐ。

 

 現場には焼け焦げた死体があり、状況から翔花と判断された。

 

 原因は、換気をしないことでのガス爆発。

 

 そうとしか、考えられない……。

 

 

 ◇

 

 

 放課後の太陽東高校。

 

 誰もいない屋上で、差玖と朝宇未が話し合っている。

 

「昨日は、まいったよ! しかし、火野平がそこまで悩んでいたとは」

 

「もう、いいじゃない。その話は……」

 

 差玖に怪我はなく、マンションの外廊下から落ちたとは思えない。

 

 けれど、彼は悩ましい顔に。

 

「同じクラスにいる、マウントしてくるあいつ! そろそろ、飽きてきたな? 鬱陶しい! 青春というのは青で、それに似合わない奴らは遠慮するべきだ」

 

「そうね!」

 

 

 ――教室

 

「おい? お前、赤になってるぞ!?」

「……見間違いじゃ?」

 

 それを聞いた1人が、絶叫した。

 

「嘘だろ……。俺は、てめえの望んだ通りに……」

 

 真っ青になったのは、屋上で差玖たちが話していたマウント野郎だ。

 

 首が苦しいのか、そこへ両手を当てつつ、遠巻きになった面々に強がる。

 

「お、俺は、もう帰るからよ? またな!」

 

 他の面々は首元にあるチョーカーが青いのに、彼だけ赤い。

 

 泣きながら笑顔を作っている男子に、女子の1人が叫ぶ。

 

「待って、アッ君!」

「……ダメだよ、ユーちゃん!」

 

「我慢して! お願い!」

 

 二人がかりで錯乱した女子を押さえ込むも、彼女は止まらない。

 

「離して! 離せぇええええええっ!」

 

 リミッターを外したような力に、左右で押さえ込んでいた女子が弾き飛ばされた。

 

 ユーちゃんと呼ばれた女子は、アッ君を追いかける。

 

 

 ――翌日の朝

 

 教壇に立った男の担任は、思い詰めた表情で下を向いたまま。

 

「えー……。昨日、うちの2人が急に引っ越すと……」

 

 ガタガタと震えつつ、涙や汗が落ちる。

 

 今にも自殺しそうな様子に、誰も喋らない――

 

「せんせーい! 朝から暗いですよ? あの2人は残念でしたけど、俺たちは青春を楽しまないと! なあ?」

 

 百舐目差玖の声に、クラスは静まり返った。

 

 物音1つ、しない。

 

 けれど、笑い声に包まれる。

 

 呼吸を整えた担任も、顔を上げた。

 

「そ、そうだな! さすが、ヒーローだ」

 

 彼らは、青春を謳歌している。

 

 青でなくなった者を気にする必要はなく、その暇すら惜しむ。

 

 そうでなければ、いけない……。




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