【第三章 滅んでしまった未来に愛を込めて…… 更新中!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第9話 スラム・ファイアー(後編)

 ショットガンを連射した男は、離れていた連中が我に返る前に、地面に落ちた小型のセミオートマチックを拾いつつ、走り出す。

 

 水鏡(すいきょう)アレーテは、目を見張ったまま。

 

 その男は駅の近くで繁華街のスキマにあるような公園から逃げ出し、ジャンプしたと思ったら雑居ビルの出っ張りに飛び移り、それを繰り返すことで屋上へ消えていった。

 

(な、何ですの!?)

 

 どう見ても、人間の動きではない……。

 

 すると、ウゥ―ッ! という、お馴染みの音が響き渡る。

 

 タイヤで急停止する音が続き、瞬く間に赤ランプを回転させているパトカーや覆面パトカーによる壁。

 

 その光景に、今日の目玉だったJK処女に集まっていた男どもが慌てて逃げ出す。

 

「はえええよ!」

「逃げろ!」

 

(確かに、早すぎますわ……。誰かがタレ込んでいたか、見張っていたか)

 

 本物のケイドロとなった現場では、運よく外側にいたか、銃声が響いた時点で逃げていた奴らを除き、片っ端から地面にねじ伏せられていく。

 

「動くなっ!」

「……痛えええ! 俺ぁ、関係ねーって!」

 

 銃声が連続したことから、警官と刑事のどちらも銃を構えている。

 

 小さな公園でスポットライトに照らされているような女子2人にも、銃口が向けられた。

 

 肘を下ろしたままで両手を上げる、アレーテ。

 

「やっべ!」

 

 いっぽう、我に返ったギャルは逃げ出した。

 

 スーツを着た女刑事がその足を払えば、派手に転ぶギャル。

 

「うわあああっ! いててて……。てめっ――」

「動くな! 20時13分、公務執行妨害の現行犯で逮捕する!」

 

 女刑事に上から押さえ込まれ、後ろに回されたあとに手錠。

 

「てめえ、覚えていろよ!」

 

 騒ぐギャルに対して、アレーテはボディーチェックをされた後で、手を下ろす。

 

「あのギャルのスマホ、見せてもらえます?」

「……話は、署で聞かせてもらう」

 

 まるで、BOTですわね?

 

 そう思ったアレーテは、大人しくパトカーの後部座席に乗った。

 

 逃げずに協力的だったから、ギャルのように痛めつけられることはない。

 

 

 ――本川(ほんがわ)

 

 拘置所で朝を迎えた、水鏡アレーテ。

 

 ようやく、取り調べに呼ばれた。

 

 刑事ドラマによくある、コンクリだけの殺風景な部屋と事務デスク。

 

 案内した人間はすぐに出て行き、ドアを閉める。

 

 やがて、見覚えのある顔が入ってきた。

 

 事務デスクをはさみ、向かい側の椅子に座る。

 

 先に座っていたアレーテが、世間話のように聞く。

 

「拘置所の食事って、死ぬほどマズいですわね? メーカー品だけど、わざわざマズく作らせたので?」

 

「知らないわよ……。というか、ほんっと問題児ね!」

 

 呆れたように息を吐いたのは、京本(きょうもと)香穂(かほ)だ。

 

 観察特区でアレーテが立て籠もり犯を制圧した時に着任した女刑事。

 

 香穂は、平然としているアレーテに言う。

 

「で、どうなの?」

「……記録係という、相方は?」

 

 万が一に備えて、すみに記録係という名の2人目がいるはず。

 

 指摘された香穂は、苦い顔に。

 

「ここの方々は、特区に関わりたくないの! 私は特区警察で、いきなり呼ばれたわけ!」

 

「それはそれは、ご苦労さまです」

 

 電話一本で呼ばれた原因は、ニコニコしながら言ってのけた。

 

 しかし、香穂が怒鳴り散らす前に、真面目な顔へ。

 

綾ノ瀬(あやのせ)の依頼で、本川高校を調べていました。連続失踪の手掛かりを求め、あの公園にいたギャルに接触したのですが……」

 

「あなた、銃を持っていたそうじゃない? そのギャルが証言したわよ? 他の男たちの証言とも一致する! 銃刀法違反で――」

「わたくし、モデルガンが趣味ですの! 実弾は撃てませんわ! 撃ってきたのは、あそこを仕切っていたチンピラ」

 

 そう言われてしまえば、銃がない以上、水掛け論になるだけ。

 

 座り直したアレーテは、逆に問いかける。

 

「スラム・ファイアーをした男は?」

「……捜査情報を言うわけないでしょ?」

 

 スラム・ファイアーとは、ショットガンの疑似的な連射。

 

 トリガーを引いたままで装填すると、そのまま発射される。

 

 ただし、これは暴発の一種。

 

 今は連射できるショットガンがあり、わざわざ使うことはない。

 手動の装填をする型も、スラム・ファイアーができない構造である。

 

「あの撃ち方をするのは、よっぽどの玄人ですわ! それも、古いタイプの……。顔はよく見えず、バッタみたいに跳ねて屋上へ逃げました」

 

「そう……。あなたに、心当たりは?」

 

 ニヤッとしたアレーテは、話題を変える。

 

「ありませんわ! それより、ここの方々はわたくしを拘留して、事態の変化を見ると思います……。淫紋を刻むスマホアプリがあるようだから、どんどん売春する女子が増えますわよ? いいんですの? ヤリマンが大勢いる地区だと、全国的な知名度になりますが」

 

 凄みがある顔になった香穂は、牽制する。

 

「そんなハッタリ……」

 

 しかし、心当たりがある表情だ。

 

 ギャルや男どもの事情聴取で、そういった話題が出たのだろう。

 

 アレーテに聞く。

 

「知っていることがあれば、教えてちょうだい!」

「わたくしに淫紋を刻んだとほざくギャルがいましたわ……。それだけ」

 

 言い切ったアレーテは、部屋の中を見回した。

 

「どうせ、盗聴しているでしょう? 本川を腰振る女子だけのヤリ場としたければ、このままでどうぞ! そのうち綾ノ瀬が弁護士を寄越すから、特区へ帰ります。わたくしの依頼は、達成したも同然……。今から10分で、結論を出してくださいまし」

 

 思い出したように、アレーテが付け加える。

 

「そうそう! わたくし、あまり堪え性がなくて……。イラついたらこの署をぶった切るかもしれないので、予めご承知おきください! スラ子という愛称をご存知?」

 

 首をかしげている、香穂。

 

 けれど、5分でドアが開いた。

 

 険しい顔をした男の刑事が、言い捨てる。

 

「お前の身元は、ハッキリしている! 必要があれば呼ぶから、帰れ!」

 

 精神が不安定な顔をしている香穂に対して、笑顔のアレーテは立ち上がった。

 

「それは、どうも……。荷物を返してくださいね?」




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