ブルーアーカイブ ポケットの中の戦争   作:龍角散ガム

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いつもよりちょっと長めです



木々を抜けて大空へ

 

ドゥン……!!

 

機体全体にエネルギーが行き渡った瞬間、ザクのモノアイが鈍く、紅く、そして禍々しい光を灯す。それはまるで、長き眠りから目覚めた獣のようだった。

 

 

「バーニィ、バーニィ!!ザクが目を覚ましましたっ!!」

 

 

アリスはまるで飛び跳ねる小鳥のように軽やかにステップを踏みながら、目を輝かせてバーニィとザクを交互に見つめた。

 

 

 

「よし、アリス。こっちに来てみろ」

 

 

 

「??・・・・・・あ!?もしかして、ザクに乗せてくれるんですか!?」

 

 

 

「さすがに操縦まではさせられないけどな。コックピットからの景色、見せてやるよ」

 

 

 

「わーいっ!アリス、ザクに乗ります!!」

 

 

 

アリスは満面の笑みで駆け寄ると、躊躇なくコックピットへ飛び込み、バーニィの膝の上にちょこんと座った。

 

 

 

「バーニィ、早く早くっ!」

 

 

 

「分かったよ。でも揺れるからしっかり掴まってろよ」

 

 

 

「はーいっ!アリス、行きまーす!!」

 

 

 

操縦桿を強く引くと、ザクの脚部が低くうなりを上げる。次の瞬間、重厚な機体が地面を踏みしめ、地響きを伴って大地を蹴り上げた。

 

周囲の木々が揺れ、小動物たちが驚いて逃げ出す。やがて、ザクは堂々と立ち上がった。

 

 

 

「わぁ・・・すごい、すごいです!アリス、ゴーレムになっちゃいました!!」

 

 

 

「ゴーレムって・・・もうちょっとカッコいい例えなかったのかよ」

 

 

 

「バーニィがゴーレムの心臓ですっ!」

 

 

 

「聞いてないし・・・まあいい。じゃあ、そろそろ出発するか」

 

 

 

「はいっ!あの、眠ってた廃墟までひとっ飛びです!!」

 

 

 

「・・・本当に大丈夫なんだろうな? あそこ、ミレニアムに検知されたりしないんだよな?」

 

 

 

「心配ありませんっ!もうあそこは完全クリア済みで、冒険終了マークもちゃんとついてます!」

 

 

 

「本当かよ。まあ、確かにここまで毎回戻ってくるのは骨が折れるし、あそこに拠点を移すのは悪くないか」

 

 

 

「だからバーニィ、出撃です!!」

 

 

 

「よし、行くぞ!しっかり掴まれよ!!」

 

 

 

そう言うと、バーニィはペダルを強く踏み込み、機体のブースターが一気に射出される。

 

背部のランドセルと脚部のスラスターを巧みに操作し、ザクは轟音とともに宙へと舞い上がった。

 

 

 

「わぁ・・・アリス、空を飛んでます!!」

 

 

 

「ハハッ、すごいだろ?」

 

 

 

「もっとスピード出してください! アリス、まだまだ行けます!!」

 

 

 

「よし、じゃあ一気に加速するぞ!」

 

 

 

「うわーいっ!!」

 

 

 

空を駆けるザクのコックピットの中に、アリスの歓声が明るく響き渡る。

バーニィは横目に、無邪気にはしゃぐアリスを見つめた。

 

風を切る振動の中で、彼女は目を輝かせながら外を見つめ、無邪気な笑顔を浮かべていた。

その笑顔は、あまりにも純粋で、あまりにもまっすぐで。見ているだけで胸の奥が温かくなる。

 

キヴォトスという特殊な世界で生きていても、彼女はまだ年相応のただの子供なのだと改めて思い知らされる。

 

ふと、バーニィの口元に笑みが浮かんだ。

もっと彼女を喜ばせてやりたくなって、スロットルを軽く押し込む。

 

ザクの機体がさらにスピードを上げ、空気を切り裂くように進む。

アリスは、廃墟までの道のりが、まるで冒険のように色づいて見えた。

 

バーニィは操縦桿を握り直し、心の中でそっと呟く。

 

 

──元の世界に戻るまでは、俺がこの笑顔を守らなきゃな

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「・・・よし、この辺でいいかな」

 

 

バーニィは周囲を見回しながら、廃墟と廃墟の間にザクの足をしっかりと固定させた。

機体が安定したのを確認すると、ハッチを開けてゆっくりとコックピットから降りる。

 

 

「さて、アリス。さっきまでザクがいた場所まで戻るぞ」

 

 

「え? どうしてですか?」

 

 

首を傾げるアリスに、バーニィは呆れたように言う。

 

 

「借りてたトラックはどうするんだ?」

 

 

「……あっ」

 

 

ザクでの移動が楽しすぎて、アリスはすっかり自分たちが乗ってきたトラックの存在を忘れていた。

だが、すぐにひらめいたように顔を輝かせ、右手を勢いよく掲げて叫ぶ。

 

 

「そうですっ! ザクでトラックを運べばいいのではないでしょうかっ!?」

 

 

「ザクで掴んだらトラックが凹んじまうよ。ザクに繊細な操作には向いてない」

 

 

「な、ならっ!もう一度ザクで戻って、バーニィがトラックを運転してここまで戻ってきてください!」

 

 

「で、ザクはどうするんだよ」

 

 

「アリスが操縦しますっ!!」フンス!!

 

 

胸を張って言い放つアリスに、バーニィは盛大なため息をつくと、コツンと軽くその頭を叩いた。

 

 

「痛いですっ!?」

 

 

「馬鹿なこと言ってないで、さっさと戻るぞ」

 

 

「うぇぇ〜・・・」

 

 

頭を押さえてしょんぼりと縮こまるアリスを尻目に、バーニィは静かに歩き出す。

目指すは、先ほど通ってきた森林地帯。

 

 

「・・・・・・ザクは操縦させないけど、似たようなもんなら乗せてやるよ」

 

 

「え? 本当ですか!?」

 

 

アリスの目が一瞬でキラリと輝く。

その瞳に見つめられ、バーニィは小さく頷いた。

 

 

「ああ、本当だ。だから早く戻るぞ」

 

 

「分かりましたっ! アリス、再び森のダンジョンへと進みますっ!!」

 

 

宣言とともに、アリスは元気よく駆け出していく。

その背を追いながら、バーニィはふっと口元を緩めた。

 

 

「バーニィ、早くっ!!」

 

 

その声に、苦笑いを浮かべながら、バーニィは足を早めてアリスの後を追った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

真っ暗な宇宙空間。

星の光すら届かぬその闇に、突然ピンク色のビームが視界のすぐ横を駆け抜けた。

続けざま、遠くの隅でオレンジ色の閃光が一瞬煌めく。まるで命の灯火が燃え尽きたかのように。

 

 

『敵艦確認!先行するように三機のモビルスーツが接近中!直ちに対処してください!』

 

 

通信と同時に、レーダー上に三つの赤い光点が表示される。

それはまぎれもなく、こちらへと向かってくる敵の証だった。

 

視界の端に、赤と白の機体が映り込む。

その肩に刻まれたエンブレムが、敵が反乱軍であることを明確に示していた。

 

敵が来る。

 

心臓が嫌な音を立てて鼓動を速めていく。

手が震え、呼吸が浅くなる。

それでも、震える指で操縦桿を握り、マシンガンを構えて接近する敵機へ向けて牽制射撃を試みる。

 

だが、真っ暗な宇宙では、遠近感覚が地上とはまるで違う。

照準が定まらず、弾丸は虚空を切り裂くだけだった。

 

カチッ・・・カチッ・・・

 

トリガーを引く音だけがむなしく響く。

弾切れだ。

 

用済みとなったマシンガンを放り投げ、代わりにビームライフルを手に取る。

この武器は、一撃で敵機を破壊できる力を持つが連射は効かず、エネルギー切れも早い。

外せば死。

命中させねば、こちらが落とされる。

 

敵機を照準の中心に捉える。

震える手で、操縦桿のスイッチを押した。

 

チュドン!!

 

ピンク色の閃光が、己の機体からまっすぐに放たれる。

狙いは外れなかった。

ビームは敵機の脚部に命中し、そこから火花を散らしながら爆発。

推進力を失った敵は、制御を失って宇宙の闇へと消えていった。

 

安堵する間もなく、次の敵機が視界に入る。

すぐに狙いをつけて再びスイッチを押す。

 

ビームは目標を逸れ、虚空へと消えた。

 

焦りが生まれる。

残る敵は二機。こちらへの距離はどんどん詰まっている。

 

再度照準を合わせる。

しかし、次の一撃も敵機を掠めることすらできず、ただ闇を照らしただけだった。

 

一発、一発を正確に。

そんな余裕はもう残っていなかった。

心臓の鼓動が速くなり、喉が焼けるように渇いていく。

 

カチッ・・・!!

 

乾いた音が虚しく鳴った。

ビームライフルのエネルギーが尽きていた。

 

咄嗟にライフルを投げ捨て、背部に装備されたビームサーベルへと手を伸ばす。

 

だが——

 

正面から放たれたピンク色の光が、右腕を貫いた。

 

腕部が爆発し、機体が大きく揺れる。

アラートが赤く点滅し、警告音が耳をつんざいた。

 

幸いにも、エンジンまではやられていない。

懸命に機体のバランスを取り戻し、敵の動きを確認する。

 

その時、視界の隅に母艦へと迫る一機を捉えた。

ペダルを強く踏み、残った推進力で加速する。

だが、次の瞬間、左舷に衝撃が走る。

 

機体が吹き飛ばされ、くるくると宇宙空間を漂う。

無重力下での回転に翻弄されながらも、重い操縦桿を握りしめなんとか体勢を整えた。

 

そして、次の瞬間——

 

視界一面に、敵機の姿が広がった。

 

近い。

あまりにも近すぎる。

 

敵は、棒状の武器、ビームサーベルを構え、こちらの頭部に向けて動きを止める。

 

見つめ合う、ほんの一秒。

だが、それは永遠のように長く感じられた。

 

敵は無慈悲にスイッチを押した。

同時に視界が光に包まれる。

 

 

 

———そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『GAME OVER』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわーん!!アリス、やられてしまいましたーっ!!」

 

 

VRゴーグルを外しながら、アリスは涙をこぼして崩れ落ちた。

その様子を見守っていたのは、ゲーム開発部の仲間たち。

部室に設置されたコックピット型シートの周りに集まり、彼女のプレイを固唾をのんで見守っていた。

 

アリスの背後に立っていたバーニィは、小さく笑みを浮かべ、そっと彼女の頭を撫でた。

 

 

「マシンガンを撃ちすぎたな。操縦桿越しでも動きは悪くなかったけど、弾の管理が甘い。普段、戦うときもそんな感じなのか?」

 

 

そこへ割り込んできたのは、モモイだった。

 

 

「ちっちっちっ・・・分かってないね、バーニィは。弾幕こそ、正義なんだよ!!」

 

 

「とか言って、お姉ちゃんすぐに弾切れになるじゃん。撃ち漏らした敵、誰が処理してると思ってるの?」

 

 

と、横からミドリが突っ込む。

 

 

「うっ・・・・・・!」

 

図星を突かれたモモイはぴくりと体を震わせて口ごもり、そのまま黙り込んだ。

そんな中、バーニィが一歩前に出る。

 

 

「じゃあ、次はユズの番だな。聞くところによると、この中で一番ゲームが上手いらしいじゃないか。その腕、俺にも見せてくれ」

 

 

「———!!」

 

 

その一言で、ユズの雰囲気が変わった。

普段の内気な様子とは打って変わって、彼女の瞳に鋭い光が宿る。

すっと立ち上がり、迷いなくコックピットシートに腰を下ろすと、ゴーグルを装着した。

 

 

「UZQueenモード、起動ですっ!!」

 

 

アリスが嬉しそうに叫ぶ。

 

 

「ユズクイーン?」

 

 

バーニィが眉をひそめると、ミドリが軽く咳払いして説明を始めた。

 

 

「UZQueenっていうのは、ユズちゃんのオンラインネームです。ユズちゃんは、オンライン上では伝説と呼ばれる実力者で、本気モードになると雰囲気が変わるんです。今がその状態ですね」

 

 

「へぇ・・・まるで別人だな」

 

 

「やっちゃえユズー!!アリスの仇をとってぇっ!」

 

 

「ついでに何もできなかったモモイの仇もお願いします!」

 

 

「ちょ、アリス!?それ言わないって約束したじゃん〜っ!!」

 

 

モモイはアリスの言葉に撃沈し、その場に崩れ落ちた。

そして、アリスはバーニィに振り向いた。

 

 

「次は、バーニィの番ですよ?」

 

 

「え、俺?いや、俺は別に・・・」

 

 

「ダメです!!モモイたちにも、本物のパイロットの実力を見せてあげてくださいっ!」

 

 

「アリス、バーニィのプレイ見たことあるの?」

 

 

「もちろんですっ!!だってアリス、実際にザクに——モゴッ!?!?」

 

 

バーニィは反射的にアリスの口を塞いだ。

その様子を、モモイとミドリは首を傾げながら見つめていた。

 

 

「「・・・・・・?」」

 

 

バーニィは気まずそうに笑いながらアリスの肩を掴み、彼女を部屋の隅へと引っ張っていく。

そして、モモイたちに聞こえないように声をひそめた。

 

 

「(おい、ザクのことは秘密だって言ったろ?)」

 

 

「(でも・・・アリスは、バーニィのすごいところをモモイたちにも知ってほしくて・・・・・・!)」

 

 

純粋な瞳で真っ直ぐに見つめてくるアリスに、バーニィは一瞬言葉を失った。

その輝きに気圧されるように身を引きかけるが、すぐに顔を左右に振って意識を切り替える。

しかし、アリスの純粋な瞳に耐えられず、バーニィは深いため息をついた。

 

 

「(はぁ・・・わかったよ。でもな、ザクを動かすのと、ゲームの操縦桿じゃ感覚が全然違う。うまくやれるとは限らないんだぞ?)」

 

 

「(大丈夫ですっ!!“エース”のバーニィなら絶対できます!!)」

 

 

“エース”と言う単語をを聞いた瞬間、バーニィの眉が一瞬だけピクリと動いた。バーニィの顔に陰が差す。

だが、アリスには悟らせまいとすぐにいつもの笑顔を浮かべた。

 

 

「——そうだな。“エース”の実力、ちょっとだけ見せてやるよ」

 

 

「わーいっ!!」

 

 

アリスはぴょんっとその場で跳ねて喜びを表現した。

その無邪気さに、バーニィも思わず小さく笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間——

 

部室のスピーカーから、耳をつんざくような警報音が響き渡った。

 

 

『緊急警報、緊急警報!!ミレニアム上空に異常な熱源を確認。生徒は直ちに安全な場所へ避難してください。繰り返します——』

 

 

「えっ?」

 

 

「なっ、なんですか・・・!?!?」

 

 

「何なのこれ?今日、避難訓練なんてはあったっけ?」

 

 

モモイたちは顔を見合わせ、困惑を浮かべたまま立ち尽くす。

だが、バーニィだけは違った。

 

その警報を聞いた瞬間、身体の奥底に冷たいものが走った。

まるで氷の針が心臓を刺したような感覚。

 

 

「まさか・・・・・・!!」

 

 

呟きとともに、バーニィは駆け出した。

誰よりも早く部室を飛び出し、廊下を駆け抜ける。

開いた校舎の扉を突き抜け、外に出る。

 

そして、見上げた空。

ミレニアムタワーのさらに上空で、空間が歪んでいた。

 

まるで何かが世界そのものを削るように、鋭く、静かに。そしてその裂け目からは、鮮やかなピンク色の光がじわじわと広がりはじめた。

 

バーニィは“その現象”を知っていた。

震える唇が、自然と名前を呟く。

 

 

 

「ゼクノヴァ———ッ!?!?」

 

 

 





【定期】モチベに繋がりますので引き続き感想・高評価をお願いします!!
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