彼女を解放するために、僕は世界を渡り続けた。
幾つもの世界を超え、様々な世界を体験してきた。
そして、ようやく見つけた。
彼女がいる世界を。
だけど彼女は眠ったままで、僕にはどうしようもできなかった。
だから僕は彼に近づいた。
彼を引き合わせれば、彼女が目覚めると信じて。
“ニュータイプ”の僕が、彼に気に入られるのは必然だった。
そして、僕は彼から“ガンダム”を譲り受けた。
あとは“その時”が来るのを待つだけ。
——そう思っていた。
ある日、“ガンダム”に搭載された“サイコミュ”が、何かに引き寄せられるように暴走を始めた。
それと同時に、僕の頭に誰かの言葉が響いた。
『・・・・・・私のミスでした。
私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。血今日、この結果にたどり着いて、あなたの方が正しかったことを悟るなんて・・・・・・。
・・・・・・今更図々しいですが、お願いします。
先生。
きっと私の話を忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。
何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから・・・・・・。
ですから・・・・・・大事なのは経験ではなく、選択。
あなたにしかできない選択の数々。
責任を負うものについて、話したことがありましたね。
あの時の私には分かりませんでしたが・・・・・・。
今なら理解できます。
大人としての、責任と義務。
そして、その延長線上にあった、貴方の選択。
それが意味する心映えも。
・・・・・・。
ですから、先生。
私が信じられる大人である、貴方になら、
この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を・・・・・・。
そこへ繋がる選択肢は・・・・・・きっと見つかるはずです。
だから先生、どうか・・・・・・。』
僕じゃない、
それが“サイコミュ”を通じて僕の中に入り込んできた。
僕はその想いを受け止める気はなかった。
だけど、“ガンダム”がその想いを強く受け止めてしまった。
目の前がピンク色の光に染まる。
幾度と体験したこの現象。
僕は抵抗することもなく、その光に包まれた。
ミレニアム上空を無人攻撃機が、突如としてゼクノヴァから出現した“赤いモビルスーツ”に向けて一斉に攻撃を開始した。
銃火が火花を散らし、ミサイルが咆哮を上げて放たれる。
だが、その攻撃のすべてが、虚しく空を切るか、装甲に弾かれて消えていった。
無人機の
直後、ミレニアム地区の空に鋭い金属音が響き渡る。
空気を裂くように振るわれた鎖付きハンマーが、疾風のごとく無人攻撃機を叩き落とし、熱を帯びたビームサーベルが装甲を易々と貫通していった。
爆発。爆風。火花。
そして、墜落する無人機の残骸。
強固を誇ったミレニアムの高層ビル群も、“赤いモビルスーツ”の攻撃の余波に耐え切れず震動し、窓ガラスが破裂するように吹き飛んでいく。
大地を揺るがす連続爆発の轟音が、街の静寂を切り裂くように鳴り響いた。
ヴェリタスとエンジニア部のメンバーたちは、制御卓にかじりつきながら、信じられない光景を目の当たりにしていた。
ミレニアムが誇ってきたの最先端技術は、“赤いモビルスーツ”の前では無力だった。
通信は断続的に途切れ、ドローンはホバリングすら維持できずに墜落。
自動砲台は起動せず、センシングシステムも機能不全に陥る。
一方、その中心にいる“赤いモビルスーツ”は、何一つ影響を受けていないかのように滑らかに動いていた。
ミレニアムの技術。
それはキヴォトスにおいてトップクラスとされ、他の学園の追随を許さない卓越したもの。
その常識が、今、崩れ去っていた。
「赤い・・・ガンダム・・・・・・ッ!!」
バーニィの口から震える声が漏れた。
まるで、目の前の現実が信じられないというように。
眼前に現れた“赤いモビルスーツ”。
それは、彼が追い続けてきた“シャア・アズナブル”が搭乗する機体、“赤いガンダム”だった。
本来であれば、任務を果たせたと胸を張っていいはずだった。
だが、バーニィの心は喜びとは程遠い場所にあった。
「(なんで……なんでガンダムがここにいる……!?どうして平和なミレニアムに……!?)」
脳裏に、これから起こるであろう最悪の未来が鮮やかに浮かび上がる。
それは、“赤いガンダム”によって、ミレニアムの街が焼き払われていく悪夢だった。
崩れ落ちる学園施設。
逃げ惑う生徒たち。
そして——
アリスがバーニィへ必死に手を伸ばす。
だが、その手が届く前に、ビームサーベルの閃光が彼女の身体を貫き、彼女の存在そのものを焼き消してしまう。
バーニィは立ち尽くし、息を呑んだ。
そのとき、遠くから叫ぶ声が響いた。
「———バーニィ!! バーニィ!!」
アリスの声だった。
その必死の呼びかけに、バーニィは我に返る。
「ッ・・・・・・!!逃げるぞ、アリス!!」
バーニィは彼女の手を取ると、周囲を見回してゲーム開発部のみんなを探す。
「え? 逃げるって・・・どうしてですか?」
「モモイたちは・・・あそこだ!!」
焦燥に駆られた様子で走り出すバーニィ。
手にした携帯端末で“先生”への連絡を試みようとする。
「バーニィ!! 待ってください!!」
アリスが後ろから追いすがる。
だが、バーニィは止まらなかった。
「今はお前のワガママに付き合ってる余裕なんてないんだ!!」
怒鳴るように返したその声に、アリスが立ち止まり叫んだ。
「なんで逃げるんですか!? 戦えばいいじゃないですか!!」
「戦う!? どうやってだよ!!」
「ザクに乗って、あの赤いロボットをやっつけるんです!!」
その言葉にバーニィは顔を歪め、歯を食いしばった。
「勝てるわけないだろッ!! 相手はあの“赤い彗星”なんだぞ!!」
バーニィの叫びが響く。
それでも、アリスはまっすぐバーニィを見つみ、震えながら言った。
「そんなことないです・・・! バーニィなら・・・・・・バーニィなら勝てますっ!!」
「どこからそんな自信が出てくるんだよッ!!」
「だって・・・・・・」
「——だって、バーニィは“エース”なんですから!!」
「ッ・・・・・・!!」
その言葉を受け、バーニィはアリスから目を逸らす。
彼女の信頼が重くのしかかった。
「(違う、違うんだよアリス——!!俺はお前が思っているような人間じゃあ——ッ!!」
その瞬間、ミレニアムの空が爆風とともに唸りを上げた。
“赤いガンダム”がブースターを吹かし、空を駆け抜ける。
進路はザクが隠された廃墟。
バーニィがかつて不時着した、あの森林地帯だった。
数機の無人攻撃機が追撃を開始するが、制御不能のまま空中で暴れ、次々と墜落していく。
“赤いガンダム”は、ミレニアムを抜け、やがて完全に視界から姿を消した。
残されたのは、破壊された街と、瓦礫の山。
そして、沈黙。
それは、まるで戦場の後に訪れる死の静寂だった。
やがて、避難していた生徒たちが顔を出し、次第にその人数が増えていく。
誰もが言葉を失い、崩壊した学園の姿を呆然と見つめていた。
「誰かっ!!救急車を呼んで!!」
誰かの悲鳴が響く。
倒れている生徒が一人、頭部から流れる血で制服と地面を濡らしていた。
ヘイローが断続的に点滅し、その意識が今にも途切れそうになっている。
「こっちにも怪我人が!!」
「誰か、手伝って!!」
次々と上がる叫び声、そして泣き声。
それは、平和だったはずのミレニアムが、一瞬にして“戦場”と化したことを強く物語っていた。
バーニィはその光景を無言で見つめていた。
かつて見た戦争の傷跡。
自分が幾度も目の当たりにしてきた、あの“地獄”がここにも広がっていた。
その光景が、バーニィの眠っていたトラウマを呼び起こし、彼の心を締め付ける。
そして、アリスの無垢な声が、彼の心に突き刺さるのであった。
『だって、バーニィは“エース”なんですから!!』
「違うんだ。俺は———」
平和な日常パートを書くのはめちゃくちゃ時間かかるのに、シリアスパートは筆が進んじゃうんですよね
【定期】モチベに繋がりますので引き続き感想・高評価をお願いします!!