オイオイオイ、死んだわこの世界   作:あいうえお

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うーむ、難しい。


寄り添われる絶望

 

 

 

「──へぇー、盾子ちゃんていうの」

「はい!ライム君とは仲良くさせてもらってます!」

 

どうしてこうなった。

 

オレンジジュースの入ったコップを口に当て、喉へと流し込みながら死んだ目で目の前の光景を見ていた。

 

我が家のリビングで母親とあの江ノ島盾子が談笑している。

 

ふっ、頭と胃が痛くなってくるな(泣)

 

「それにしても……あんたもなかなか隅に置けないわねー」

 

このこのぉと俺の体を小突く母君。

 

ははは、やめろクソッタレ。親からのそのいじりはきついんだよ。あと相手が江ノ島盾子とか悪夢にも程がある。

 

帰りてー。あ、ここ俺ん家だったわガハハ!

……逃げ場がねえ!!

 

ちなみに父親はお仕事に。そして本日は土曜日休み。

父君よ。土曜出勤お疲れ様。社会人ってしんどいよねー、分かる分かる。

 

「じゃ、あとは若い二人で楽しんでね。お母さん買い物行ってくるから。戸棚のお菓子もあるから仲良く食べてちょうだいね」

 

そう言って、うふふと笑いながらすたこらしていく。

去り際にガッツポーズで頑張れ的な応援を貰った。別の意味で頑張らさせてもらいます。とりあえず早めに帰ってこいよ?照れ隠しとかじゃなくて。

 

「えーと………」

「…………」

 

残された2人、流れる気まずい空気。

 

「なんか用あった?てかなんで家の場所──」

 

「ゲーム一緒にやろ!」

 

「……っ!う、うっす……」

 

有無を言わさぬ食い気味の返答。

 

やだもう怖い!天上天下唯我独尊すぎるこの子!

 

とりあえずゲームを準備。セット。

俺がカチャカチャやってる間、江ノ島の視線が嫌という程突き刺さるのを感じた。

 

チラッと見ればなんだかガンギマリお目目。

ほんとに子供?俺と同じ人生2周目とかじゃないの?

 

「えと……何やる?格ゲーとかパーティゲーとか色々あるけど……」

「うーん……戦うやつ!相手殺すのやりたい!」

 

「……物騒なの好きね。殺すとか強い言葉すぎるからあんま言わないようにね」

「………?なんで?」

 

やだあ、首を傾げて純粋なお顔。可愛いね。会話の内容に目をつぶればね。倫理観持ってー?

 

教えはどうなってるんだ教えは!

 

とりあえず格ゲーでいいや。

ふふふ、見せてやる!これでもこのゲームはやり込んでるんだぜ!

 

後々地獄を見せられるというのなら!今この場は俺が地獄を見せてやるぅ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『K.O!!』

 

 

「やった!勝ったぁ!」

「………」

 

………え?なんか俺のキャラ倒れてる?

江ノ島のキャラのHPバー減ってる?……ああ!いや減ってるぞ!1ミリくらい!

 

夢かな?夢だな。よし寝よ。

 

「格ゲーって意外と簡単じゃん!」

「………ふへへ」

 

何この子ぉ。やだもう誰か助けてぇ。

 

江ノ島と3ラウンド格ゲーを3連戦。

 

1試合目は二本先取で俺の勝ち。

2試合目は互いに一本、ラストに俺が取ってギリ俺の勝ち。

3試合目は江ノ島二本先取で江ノ島の勝ち。

 

上達速度やべー。なんだこれ。クソゲーかな?

これが超高校級の分析力というわけか。

 

強スンギ〜、強スンギ〜。

 

江ノ島を見れば視線が合う。

どうする?みたいな視線。

 

なるほどなあ、読めちまったぜテメェの魂胆がよォ!

 

やり込んだゲームで数試合のうちにボロ勝ちされたら俺が絶望するなんて思ってたのか。確かに普通ならそうかもしれんな。

 

だが甘い!甘々の甘ちゃんがよぉ!

 

俺はこれでもかなりの負けず嫌いなんだよ!お前が絶望だとしても譲れん部分はあああああある!!!

 

 

「バカヤロウ!何ボケっとしてる!続きだ続き!俺が勝つまでやんぞボケェ!」

 

「……っ、へぇー?」

 

……あのー、"こいつ…!面白い…!"みたいな感じの反応やめてね?怖いから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──飽きた

 

江ノ島盾子はコントローラーを両手にもはや死んだかのような興味の無い目で目の前のモニターを眺めながら隣に座る少年とゲームをしていた。

 

初回は初めて故にボロ負け。

しかし、あらかた内容を理解した2回目はほぼ互角に。

3回目ともなればコツは完全につかみもはや隣の少年じゃ勝てないレベルまでの急成長。

 

江ノ島盾子はこの世界に"絶望"している。

 

その圧倒的な分析力。いずれ超高校級と呼ばれるほどのその才能を持って産まれた彼女にとって世界とは常に頭で思い描いたように動くだけのつまらないものとして感じていた。

 

隣にいる少年。

彼と初めて会った時から感じた他とは違う雰囲気。

 

期待を持って、関わりを持とうとこの日もまた訪ねてきた訳だが。

 

 

──いつも通りか

 

 

数度の経験で既に少年を超えた彼女。

 

それに対して少年は諦めることなく食らいついてくる。

"楽しませてくれるかも"なんてことを思ったのもつかの間、自分がストレート勝ちする変わらない展開が既に20回以上は続いている。

 

極度の飽き性な彼女にとって正しく生き地獄と呼べるこの状況。早く終わりたい。終わらせたい。

 

最後に少年のショックを受けた表情、"絶望"の顔を見て終わりたい。

 

そんな風に、"気を抜いた時"だった。

 

 

『K.O!!』

 

「……あ」

「シャッ!オラァ!!」

 

何とか1本取り返した少年。

流石に気を抜きすぎたか。

 

少女はコントローラーを持ち直し、少しだけ集中することにしたが──

 

 

──ブチッ

 

 

「え……」

 

少年はなんの迷いなくゲーム機の電源を切った。

何をしているのかを疑問に持つ前に彼はまくし立てるように言った。

 

「お前強すぎな!ふざけんなよ!やり込んだゲームを軽く超えんなよ!まあ、最後は俺の勝ちなんで実質俺の勝ちなわけだけどなあ!」

「……いやいや、一本取っただけで何言ってんの?」

 

「俺はプライドも何も無いからな!最後に勝てばよかろうなのだよ!悪いけど俺は堂々と勝ち逃げするタイプだから!はいお前の負けー!」

「…………」

 

まさかの超理論。子供っぽいというかなんというか。呆れるほどの開き直り。

そんな彼を目の前にして彼女、江ノ島盾子は──

 

「……プハッ」

 

──笑った。

 

「何それウケる…!」

 

落ち込む人は落ち込むし、怒る人は怒る。

いつだって"振り回す側"だった彼女だったが、開き直られ、あまつさえ負けてるのに勝ち宣言された。初めて"振り回される側"になった。

 

そのことに確かな充実感を感じていた。

 

「えぇ……なんで笑ってんの、怖……」

「はぁーあ……で?次何する?なんでもいいよ」

 

「え、まだやるの?」

「当たり前。ほら早く」

 

次は何を経験させてくれるのか。そんなことを考えつつ、期待の籠ったセリフと態度で少年に行動を促した。

 

この瞬間が、彼らが"友達"になる第一歩だった。




江ノ島盾子
完全体絶望になりきれてないため、少し絆され気味。より一層主人公に対しての興味が深まった。

主人公
ムキになりやすく負けず嫌いな男の子。能天気気味な性格のため江ノ島の悪意を案外上手く流せるタイプ。
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