前世...若しくは...転生後の君へ・・・   作:赤道さとり

4 / 13


~前話おさらい~

・エレンの元にも不審な手紙が届く⇒未読に終わる。そこに誰かの舌打ち。
・馬が脱走したという状況を利用してトロスト区に調査兵団が留まるよう誘導した。
・モブリットとドハンジが脱走した馬の調査中に外門破壊の地鳴りが聞こえる。


↓それでは、本編へどうぞ↓




トロスト区襲撃事件編
#04 コタエル


 

 

=====

 

[エレン視点]

 

___同時刻。

___【トロスト区外門:壁上】にて。

 

それは、俺たち固定砲整備4班がちょうど外門付近の壁上で作業をしている時だった。

 

 

ッドオォォオォーーーーンン!!

 

 

脳みそを揺さぶる激しい地響き。

 

鼓膜をぶっ叩くような轟音。

 

 

「よぉ……5年ぶりだな」

 

 

超大型巨人(そいつ)と対峙するのは2度目だ__今度こそ、息の根を止めてやる。

 

 

「くっ!……鈍い!行ける!!……(()った!!)」

 

ブンッ…

 

 

だが、俺の渾身の一撃は、結果として目の前の蒸気を振り払っただけに終わった。

 

そう__ヤツは5年前と同じく、突然現れて突然姿を消したんだ。

 

 

「超大型巨人が消えた!!……エレン!お前が倒しちまったのか!?」

 

 

頭上から聞こえる同士の声に導かれ、顔を上げる。

 

この時。

 

何故か俺は、破壊された外門の上部に描かれていたものに目が釘付けになったんだ。

 

 

「…なんだ? ()()()()…」

 

 

………

 

 

=====

 

 

 

 

 

 

***

 

 

___数分後。

___【駐屯兵団トロスト区本部】にて。

 

 

カン!カン!カン!カン!

 

 

巨人の襲撃を知らせる鐘が鳴り響く中、俺たち調査兵団を含めた兵団の者すべて*1がこの場に集った。

 

どうやらここで迎撃部隊の編成を決めるらしい。

 

原作通りであれば、住民の避難が完了するまでの間、補給支援・情報伝達・巨人の掃討に努めろってことだろうが、()()()()()()その“配置”だ。

 

 

「注目!!これより、対襲撃部隊の編成を告げる!…

 

“前衛”を実戦経験が豊富な調査兵団、諸君らに託す!巨人の進入を最小限に留めてくれ!

 

“中衛”を偶然居合わせた訓練兵団、少数の班で広範囲に散らばり隙を作るな!訓練の成果を見せる時だ!

 

そして、“後衛”を我々駐屯兵団が受け持ち、最も肝心な任務『住民の避難誘導』に死力を尽くす!

 

…以上だ!!総員、直ちに持ち場につけ!

 

 

以上、か。まずいな…

 

前衛が調査兵団__それは想定通り。問題は、駐屯兵団の精鋭すべてを後衛に回せるようになってしまったが故に、特別に訓練兵から()()()()()()()()()()()()()()ことだ。

 

ミカサがエレンの傍にいられては困る。エレンを襲おうとする巨人をミカサがやっつけてしまったら、エレンが巨人化するきっかけを逃してしまうからな。

 

あと、ミカサが「肉を削ぐ特技を披露する」って脅してくれないと、リーブス商会が退かず避難が遅れてしまう。

 

俺の計画『被害を最小限に抑えつつ、エレンには巨人化してもらい、鎧の巨人(ライナー)にそれを見せる』を遂行するためにも、ミカサには後衛にいてもらう必要があるんだ。

 

イアンに頼み込んでみるか?……イヤ、確かイアンは班長で隊長はキッツだったな。決定権が高いのはキッツの方か。

 

仕方ない。()鹿()()()()に接触を図るとするか…

 

そうして俺は、エルヴィンたちの目を掻い潜り、駐屯兵たちの中に紛れていった。

 

 

「あ、いたいた!……キッツ隊長!一つ頼みがありましてっ…」

 

「む。何だ貴様、調査兵団の者ではないか。さっさと前衛へ行き巨人の討伐に向かわんか」

 

「えぇ、もちろん。この後ソッコーで向かいますよ。しかし、先ほど発表された部隊配置に少し欠陥があるように思えてなりません」

 

「何だと? 私の部隊編成は規則通りだ。何も間違ってなどいない」

 

「そうですね、規則は絶対です。ですが、もう5年前のような()()は許されません。それはあなたが一番、上からとやかく言われていることなのでは…?」

 

「!……つまり、何が言いたい?」

 

 

…お。少し揺らいだ。

 

やはり繊細な男だな、少しの不安要素にも敏感に反応してくれる。

 

よし、もう一押し。

 

 

「もちろん住民の避難が最優先事項です。しかし、兵団の将来を担う者…つまり優秀な訓練兵をここで死なせてしまうことも()()()()()()()()()()と言えます」

 

「損害、か……確かに今期の訓練兵たちの成績は過去の実績を大きく上回るものと聞いている」

 

「えぇ、特に主席のアッカーマン訓練兵は並の兵士100人に相当するほどの実力者だとか……ここで失うには惜しい人材です」

 

「回りくどいぞ。では、どうしろと言うのだ?」

 

「例えば、訓練兵団から()()()()()()()()()を後衛に回す……というのはいかがでしょう? ちょうど後衛の配置は大きく分けて4つ、中央と左右、それから住民の避難誘導のための内門近辺とありますからね。それぞれの区画に1人ずつ配置できます。口実は『訓練兵にも避難誘導を実戦で覚えてもらうため』とでも言っておけばいいでしょう。後衛に厚みを持たせれば、住民の避難もより確実なものとなります。優秀な者の育成と避難の確実性を高める……どうです? 一石二鳥じゃありませんか」

 

「ふむ。念には念を、か……よかろう。貴様の提案を受理する」

 

「ありがとうございます!では早速、訓練兵に声をかけてきますね!」

 

 

そう言って俺はキッツ隊長に向かって軽く手を振ると、訓練兵たちの元へと駆け出した。

 

だいぶゴリ押し感があったが、納得してもらえたようでよかった。

 

これで104期訓練兵の成績上位4名、ミカサ、ライナー、ベルトルト、アニが後衛に回ることになる……ついでにマーレ組もバラけさせることができたのはラッキーだった!これで彼らも急な作戦変更などはできまい。

 

それにしても意外と口が回るもんだな。これはハンジの頭脳の賜物か? 何にせよ、今なら誰でも意のままに()()()()()()気がしてきた。

 

この調子で行けば、ミカサたちもすんなりと言うことを聞いてくれるかもしれないな…

 

 

 

**

 

 

 

「後衛には行けません。私の腕では足手まといになります」

 

 

…だよね。うん、知ってた。

 

そんで、これはアッカーマンの血がそうさせてるのか? ミカサもかなりの目つきだ。何なら兵長より怖ぇ…

 

だが、ミカサに負けないほどの鋭い視線を送ってくる者がもう一人__アニだ。

 

104期の元まで来たはいいが、マーレ組を目の前にすると嫌に緊張感が走る。アニの横にいるライナーやベルトルトも不審な表情で此方の様子を伺っているから尚更だ。

 

それにしたって、やけにジロジロ見てくるな……もしかして、俺の顔なんかついてる? 朝洗い損ねたからちょっと不安になってきた。

 

まぁとにかく、ミカサさえ説得してしまえばいい!首席が動けば他も言うことを聞かざるを得ないだろう。

 

そう考えた俺は、期待の眼差しをエレンに向ける。すると…

 

 

「オイ、お前は優秀なんだ。住民の避難にはより多くの精鋭が必要だろ?」

 

 

いいぞ、エレンがミカサを説得し始めた__しかし、なかなかミカサも引き下がらない。

 

 

「ダメ、私がいないとエレンは早死にする……私はあなたを守る。だから後衛には行けない」

 

「いい加減にしろ、ミカサ!」

 

ゴッ…

 

 

あ、これ原作で見覚えがあるぞ。

 

確かエレンがミカサに頭突き? おでこコツン? しながら窘めるシーンだ。

 

 

「人類滅亡の危機だぞ!!なにテメェの勝手な都合を押しつけてんだ…!」

 

 

そういう君は今ミカサに頭を押しつけているんだけどね。

 

とにかくそろそろ片をつけないと__マーレ組(特にアニ)からの視線が痛い。体に穴が開きそうだ。

 

ここは、大人の俺が思春期の青春を導いてやるか…

 

 

「エレン…だっけ? この子の言う通りだ、アッカーマン訓練兵。いや、ミカサ……それに恋人の頼みには一つ返事で“応える”のが筋ってもんだろ?」

 

「!?……家族です…」

 

「私からすればどっちも同じさ。住民の避難を少しでも早く済ませられたら、他の訓練兵たちが無駄に身を削ることもない……ミカサ、君の力が必要だ。協力してくれるかい?」

 

「……わかりました」

 

 

よかった__それはそうと、頬を赤らめながら小さく頷くミカサは可憐だ。ジャンも惚れるわな。

 

だが、ジャンのことなんて気にも留めていないミカサは、彼の目の前で俺でさえ羨ましいと思えるような言葉を堂々とエレンにかけるのだった。

 

 

「エレン。一つだけ、頼みがある……どうか、死なないで…!

 

 

 

 

 

 

***

 

 

___数分後。

 

 

「分隊長!どこ行ってたんですか!? 探しましたよ!」

 

「すまない、モブリット!……もう移動か!?」

 

「はい。それと、先ほど兵長が分隊長に用があると言っていましたが…」

 

「リヴァイが? 何だろうな……後で聞いておくよ」

 

「また忘れたりしないでくださいよ!」

 

「…ったりめぇよ!?」

 

「…たり…め…?」

 

「あ、いや……忘れてくれ

 

「……」

 

 

き、気まずい。

 

何だ? モブリットが黙り込んでしまった……そんなに変だったか!?

 

確かにさっきの口調は完全に江戸っ子だった。俺も日本に染まり過ぎたな。

 

しかし、こんなことではダメだ!モブリットの前だとどうにも気が抜けるのか、ついつい言葉遣いへの意識も薄れてしまう。

 

もっと気を引き締めていかないと…

 

 

「…あ、分隊長。そう言えば先ほど兵長が用があると言っていましたよ」

 

「え? それならさっきも聞いたけど…」

 

「あれ、そうでしたか?……とにかく行きますよ!団長もお待ちです」

 

「…あぁ。急ごう!」

 

 

何だったんだ?……まぁ、いっか。

 

 

 

**

 

 

 

エルヴィンたちの元へ合流し、いよいよ前衛へ向かう。

 

もちろん人数分の馬なんて備えはない__移動手段は『立体機動』だ。

 

皆、当たり前のように次々と飛び出して行く。あちこちで沸き立つワイヤーを巻き取る音とガスを蒸かす音が俺にプレッシャーを与える。

 

できるのか? 俺に……イヤ、できるできないじゃない。やるんだ!

 

イメトレだけは前世で引くほどしてきた。夢の中ではよく立体機動で日田の山々を駆け巡ったもんだ、あの感覚を思い出せ!

 

おそらく出だしが肝心__最初の飛び出しさえ成功すれば、あとは勢いで何とでもなる。

 

射出角度を見誤るな!背を少し逸らし腰を上に向け、狙いを定めて…

 

 

パシュッ!……ガッ…

 

 

刺さった!すぐにレバーをっ…

 

 

プシュゥゥーーー…

 

 

おぉ!!いける……いけるぞ!

 

さすがにハンジの体がある程度記憶しているようだ。特に意識をしなくても、どのタイミングでアンカーを外し次のアンカーをどこへ刺すべきか、感覚的にわかる!

 

しかし、一瞬たりとも気を抜けん__推進時の重力負荷が半端じゃない。体に力を入れていないと四肢がばらけそうだ。

 

ハンジの体が鍛えられていてよかった。前世の俺だったら出だしで『くの字』になって腰終わってたな、たぶん。

 

このまま感覚を研ぎ澄ましていき、無意識に立体機動をこなすようになれば、斬撃だってちゃんと繰り出せるはずだ。

 

そのためにも、特にバランス感覚は今のうちにマスターしておかねば…

 

 

「オイ、クソ眼鏡。いつもより動きにキレがないようだが…?」

 

 

兵長!? 何でここに……って、さっきモブリットが用があるって言ってたな。もう忘れてた。

 

 

「あ、わかっちゃった? 実はちょぉ~っとお腹が痛くてね…」

 

「なるほど。今朝のを引きずってんのか……()()()()キレが悪かったらしい」

 

「ははっ、こんな時でも君の冗談は冴え切ってるねぇ~……それで、何用かな?」

 

「今回の襲撃も、まず超大型が出現し外門をぶち破った。5年前と段取りが同じなら、次に出てくるのは鎧だ」

 

「…あぁ。きっと、役割分担があるんだろうね。超大型巨人が外門を蹴破って、()()()()()()()()()鎧の巨人が内門まで突進する」

 

 

ごめんよ、兵長。今回の鎧は外門の穴からは入ってこないと思う。

 

というか、シガンシナ区の時も鎧は壁をよじ登ってベルトルトとアニを壁上に下ろしたのち再び壁を降りてトロスト区に侵入してるから、正確に言えば前回も穴はくぐっていないんだけれども。

 

だが、今のリヴァイたち調査兵団は知性のある巨人の存在や人間が巨人化する事実を知らない。ここで「鎧の巨人は壁の中で出現すると思うよ?」なんて失言は許されないんだ。

 

まずは、リヴァイの言い分を聞こう…

 

 

「つまり、前衛の俺たちが侵入してきた鎧を食い止めりゃいい」

 

「うん、まぁそうなるね」

 

「だが報告によれば、鎧には砲弾が効かないと来た。そんな相手に立体機動での白刃攻撃でやみくもに向かって行けば返り討ちに遭うだけだ」

 

「うん、その想定は正しいと思う」

 

 

さすが、兵長。察しが良いと言うか、勘が鋭いと言うか…

 

周囲の状況をよく観察し、常に先を見据えて次の行動に移る__きっと兵士として基本中の基本の心構えなんだろうが、混乱した戦況の最中それを平然と実現できる人間は数少ない。瞬時の判断力が問われる上、実現力としての技術も必要だ。

 

リヴァイが『人類最強』と言われる所以は、節々から感じ取れる。

 

俺は今、そんな超人と言葉を交わしているんだ。少しでもハンジっぽい回答をできなければ一瞬で怪しまれてしまう。

 

ここで変に波風を立たせるわけにはいかない…

 

とにかく慎重に__石橋は雷槍で破壊したのち、隣の鉄橋を立体機動で滑空するくらいの心持ちで行け!*2

 

 

「そこで、だ。日頃から巨人の研究にご熱心なお前に意見を求めにきた……本当に、鎧には打つ手がないと思うか? 付け込む隙がどこかにあるはずだ

 

 

…なるほど。

 

超難関な問いだと()()()()()()()思うだろうな。

 

だがしかし!俺は進撃ガチ勢だ、その解答ならもうハンジが出してくれてる!

 

台詞はほとんど頭に入ってる。あとは原作通り、ハンジになり切って“答える”まで…!

 

 

「これは推論なんだけど……本当に全身が石造のように固いのなら、あんな風に動けないはずだ。昔の戦争で使ってた鎧にも人体の構造上、鉄で()()()()()()()()()…」

 

「ほぅ…それは、どこだ?」

 

「脇や股の部分と、あとは……膝の裏側だ」

 

「つまり、そこを狙えば鋼の城も崩せるかもしれねぇと…」

 

「あぁ。もしうなじが鎧で覆われていて狙えなくても、足止めは可能なはずだ!動きさえ封じてしっかり観察すれば、うなじを剥き出す方法も見つかるかもしれないしね…」

 

「…了解した。鎧が出現したら、俺が相手になる。お前らは他の巨人どもが邪魔しねぇよう遊んでやれ」

 

「わかったよ、リヴァイ」

 

 

そう言って、俺が力強く頷いて見せると…

 

 

パシュッ!……プシュゥゥーーー…

 

 

リヴァイはすぐさま進路を切り替え、自分の班へと戻って行った。

 

俺はその後ろ姿を見送りながら大きく息を吐き出す。

 

 

「ふぅ……なんとか、切り抜けた…」

 

 

初めての立体機動だってのに、その移動の最中にリヴァイと緊張感のある会話を繰り広げることになるとは。

 

そろそろ外門が見えてきたな。

 

しかし、疲れる。やはり立体機動ってのはとんでもなく…

 

 

転生して間もない俺の体には“堪える”らしい。

 

 

 

 

 

 

―【 続く 】―

 

*1
現在進行形で破壊された外門の修復と巨人の迎撃に出ている者を除く

*2
某万事屋作品で著者が好きなセリフを参考・応用しています






〜後書き〜

今回のタイトルは言葉遊び的な感覚でつけてみました。

本編中に『コタエル』の同音異義語を3つ(以下)入れ込んでいます。

「応える」「答える」「堪える」

また、今回モブリットの様子が一瞬おかしかったと思いますが、これも何かの伏線かもしれませんね。


■次回予告:『#05 まだ体が慣れない』

■おまけ
◎サブタイトル参考元:原作第11話『応える』

◎部隊の配置
後衛部隊の配置ですが、原作では特に描かれていない部分でしたので、独自で『大きく分けて4区画』と設定しております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。