日は昇り、日は墜ちる。そしてまた…   作:お労しや兄上

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日柱は岩柱との組打ちを終え、鬼の討伐の依頼を受けて次の街へと赴いていた。


第二話 水面の日輪

 

小鳥遊「日の呼吸 陸ノ型 日暈の龍・頭舞い」

 

黒刀が鬼の首を切り裂き、頭が地面へと落ちる。

何やら暴言を撒き散らしながら、崩れ消えていく鬼の頭を視界の端で捉えながら大きく深呼吸をする。

その鬼の目には【下参】と文字が入れられていた。

その目を見て、今屠った鬼が十二鬼月であることを理解する。

 

小鳥遊(…下弦の参だったのか。十二鬼月とはいえども下弦ではこのレベルなのか。)

 

その戦いはものの数秒で決着がついた。

鬼の討伐のために、やってきた小鳥遊は、鬼を見つけるとそのまま刀を抜いて斬りかかっていった。

鬼もそれに気が付き、臨戦態勢を取ろうとするも、態勢が整う前に鬼の首元に刃が触れる。

まともな抵抗すらできずに鬼の首は切断される。

そんなレベルの攻防であった。

圧倒的な実力差を前に、鬼は現実を受け入れることすらできずに、塵と化した。

鬼が消えたすぐ後に、黒い何かが飛んできて、小鳥遊の肩に止まる。

 

鎹鴉「大丈夫か!大丈夫か!小鳥遊!生きているか!」

 

鎹鴉が大きな鳴き声を上げる。

小鳥遊はゆっくりと落ち着いた呼吸を続けながら、鎹鴉の頭を優しく撫でる。

 

小鳥遊「大丈夫ですよ。ありがとうございます、(うるし)。早速で悪いけれども、次の任務を教えてくれませんか?」

 

漆「カァー!大丈夫なんだな!無理はするなよ!次は〜!◯◯!◯◯へ行け!」

 

漆と呼ばれた鎹鴉は小鳥遊の体を心配しながらも、次の任務を言い渡す。

小鳥遊は漆にお礼を言うと再びお館様のところへと鎹鴉を飛ばす。

そのまま小鳥遊は、駆け出し、次の任務の場所へと急行するのであった。

小鳥遊が十二鬼月を討伐してから数時間後。

漆はお館様の屋敷へと戻って来る。

 

漆「伝令!日柱、小鳥遊輪道!下弦の参を撃破!撃破!」

 

お館様「そうか、素晴らしい活躍をしてくれたね、輪道。けれど、無理をしていないか心配だ。次の任務地は…確か近くに水屋敷があったはずだね。そこで休憩を1日取るように指示を出してもらおうかな?もちろん義勇にも同じ伝令をお願いするね。」

 

漆「カァー!承知!」

 

そう大きな鳴き声を上げると、漆は再び大空へと舞い上がり、小鳥遊の下へと飛んでゆく。

 

 

 

 

任務は移動時間がほとんどだ。

現地に向かうのに多くの時間をかけ、鬼の討伐自体刃物の数秒で終わる。

それが柱クラスの戦闘だった。

小鳥遊もその例に漏れず、戦闘そのものは一撃のもとで幕を下ろす。

彼にとっては下弦の鬼も、ただの鬼もそこまで大差はないのか、汗一つに勝つその様子には違いなどまるで見られなかった。

そんな彼の方に再び漆が舞い降りる。

 

漆「大丈夫か!大丈夫か!」

 

先ほど同様に大丈夫、と答えてから漆の頭を優しく撫でる。

すると漆は満足げに鳴き声を上げながら、伝令を告げる。

 

漆「伝令!水屋敷に向かい、1日の休暇をとれ!水屋敷に向かえ!」

 

その伝令を聞いた小鳥遊は目を丸くする。

任務だと思っていたが、実際には1日の条件付き休暇だった。

小鳥遊は優しく微笑みながら、漆に感謝の言葉を述べる。

漆は今日一番大きな鳴き声を上げると、一足先に、水屋敷へと飛びたっていった。

小鳥遊は、任務の時とは違い、ゆっくりと歩いて目的地へと歩を進める。

水屋敷まではここから歩いて約1時間ほど。

任務後の軽い運動にはちょうどいいと、考え走ることはせずにゆったりと歩いて向かう。

道中で、水柱に向けたお土産を買ってから屋敷へと向かう。

やがて、大きく立派な屋敷へとたどり着く。

戸を3回ノックし、屋敷の中にいるであろう水柱に向けて声を掛ける。

 

???「誰だ?」

 

中から人の声が聞こえる。

その声の主が自身の求めていた人物であることを認識すると、自分の正体を説明する。

 

小鳥遊「久しぶりですね、冨岡さん。小鳥遊です。」

 

冨岡「…どうぞ。」

 

冨岡は小鳥遊を屋敷内に入ることに許可を出す。

 

 

 

漆「カァー!カァー!伝令!伝令!」

 

冨岡「?勘三郎じゃないな?」

 

飛んできた鎹鴉が、自身の鴉ではないことに気がつくと、あたりをキョロキョロと見回す。

勘三郎が縁側で日向ぼっこをしているのを確認すると、ほっと一息つく。

そしてやってきた鎹鴉の伝令に耳を傾ける。

それは、水柱の追加の休暇と、その条件であった。

 

漆「日柱を水屋敷へ招き入れ、【共に】1日の休暇を過ごすこと!」

 

冨岡「!日柱さんと?」

 

それに返事をするように「カァー!」と一声なくと、鎹鴉は勘三郎の下へと飛んでいき。

寄り添うように羽を休める。

あの鴉はおそらく、日柱の鎹鴉であろう。

それを理解した水柱は頭を掻きながらもその状況を受け入れる。

 

冨岡(…なぜいきなり日柱さんをここへ?何も思い当たるふしがない。)

 

だがなぜ、こうなったのかは一切わからなかった。

そんな事を考えているうちに扉をノックする音が聞こえる。

誰かを確認するとそこから、名乗りを上げたのは日柱である小鳥遊輪道であった。

水柱が、屋敷へと入る許可を出すと、「失礼します」と一声かけてから屋敷の扉を開く。

底にいるのは間違いなく日柱であった。

 

冨岡「…お久しぶりです。日柱さん。」

 

小鳥遊「冨岡さんも、お久しぶりです。元気そうでよかったです。体には何も問題ありませんか?」

 

その問いに静かに頷き答える。

そして、視線を小鳥遊の目に移す。

その視線に気がついた小鳥遊は優しく微笑みながら、冨岡が話したいであろう内容を察する。

 

小鳥遊「(ぼく)は大丈夫ですよ。自分の体のことはよくわかっています。」

 

そう話すと、冨岡は小さく頷いてから屋敷の奥へと歩いていってしまった。

取り残された小鳥遊は苦笑いを浮かべながら、どうしようかと屋敷を見回してみる。

何かこれと言ってあるわけではなかった。

いや、より正確に言うのであればほとんど何もなかった。

生活必需品のみと鬼殺隊士としての配給物のみがあり、娯楽の類は一切置いてなどいなかった。

そんな様子を見て、小鳥遊の顔は陰りを見せる。

別に珍しい話ではない。

鬼殺隊に入るものは、親族や恋人を殺されたりなどして鬼に対し復讐を誓った者がほとんどであった。

そしてそれは冨岡も例外ではない。

彼は、結婚直前であった姉を殺された。

そしてその後、共に鬼殺隊を目指した親友も殺された。

その怒りをその剣に宿していた。

ゆえに娯楽などの楽を彼ら自身が望んでなどはいなかった。

彼も、他の柱も、多くの隊士も楽を知るものはほとんどいないだろう。

そういった組織なのだ。

小鳥遊にも確かに憎しみはある。

彼は、自分の兄を鬼に殺された。

霞の呼吸を使う、兄を鬼に殺された。

だが、それだけの感情で動くことはなかった。

やがて冨岡がお茶を持って、戻ってきて茶の間に座る。

静かに視線を小鳥遊に送ると、小鳥遊はその意味を理解して冨岡の対面に座る。

湯呑みを小鳥遊に渡して、自身は淹れた茶を飲む。

それを確認した小鳥遊は、紙袋からとある物を取り出して冨岡の前に置く。

冨岡はそれを見つめるもその物体に該当する名前に覚えがなかった。

 

小鳥遊「それは、水まんじゅうと呼ばれるものだそうですよ。」

 

そう言いながら自分の分の水まんじゅうと、おせんべいの詰め合わせを冨岡に手渡す。

 

小鳥遊「ここに向かう途中の茶屋で食べたのですが、思っていたよりもおいしかったので、ついついお土産にしてしまいました。冨岡さんも食べてみてください。」

 

そう笑顔で進めながら、水まんじゅうを口に運んぶ。

そして満面の笑みを浮かべながらその茶菓子を噛み締める小鳥遊の様子を見ていた冨岡は、その幸せそうな顔に若干の困惑を抱きながらも、勧められた水まんじゅうなるものを口に運ぶ。

もちもちとした食感にほのかなこしあんの甘み。

口の中の不思議な食感に、初めこそ違和感を感じるものの2口目を食べる頃にはそんな違和感など何処かへと消え去っていた。

いつの間にか自然と表情が和らいでした。

小鳥遊はその様子を横目で見てから、安心したように優しい笑みを浮かべる。

そして残った水まんじゅうを早々に平らげて、熱々のお茶を長々と冷ましながら飲む。

小鳥遊がお茶を飲み終えたのは、冨岡が2杯目のお茶を飲み終えたのとほとんど同じ頃であった。

一息つくと、小鳥遊はお茶のお礼を言い立ち上がる。

そして歩き出し、立てかけてあるあるものに手を伸ばす。

そしてそれを、富岡に向かって放り投げる。

冨岡はそれを受け取ると、目を丸くして小鳥遊の方を見つめる。

小鳥遊の顔は、変わらずに微笑みであった。

 

小鳥遊「久々に、模擬戦闘でもしませんか?」

 

彼の身体が弱いことは、全柱が…いや、おそらく全隊士が知っている事実であろう。

そんな彼が自ら模擬とはいえ戦闘を自ら申し出ているのだ。

それには冨岡も小さくため息をつきながら視線をそらす。

 

冨岡「…俺は戦わない。」

 

そう言った矢先に、冨岡の右肩あたりに鋭い何かが突き刺さるような感覚を覚える。

次の瞬間、冨岡は自身の方を守るように右手で受け取った木刀を掲げて防御を取る。

それほぼ同時に、右手に軽い衝撃が響く。

冨岡が掲げた木刀には、黒刀の峰がしのぎを削っていた。

 

小鳥遊「私の体を心配してくれているのであれば心配はいりませんよ。それとも…」

 

小鳥遊は、振るった黒刀にさらに力を加えて、木刀ごと冨岡を突き飛ばす。

 

小鳥遊「戦わない(そう)言えば、逃げられるとでも思っていましたか?」

 

小鳥遊は変わらぬ笑みを浮かべながら言葉を投げつける。

そんな様子に冨岡はため息をつきながら、立ち上がりしまってあったもう一本の木刀を取り出して小鳥遊に投げ渡す。

その木刀を受け取ると、小鳥遊は一足先に屋敷の外へと出る。

冨岡はもう一度ため息をつきながら、小鳥遊に続くように屋敷の外へと出る。

外へと出ると、稽古場にはすでに小鳥遊が待っており、右手で「おいで、おいで」とジェスチャーをしていた。

稽古場に着くと、小鳥遊は木刀を構える。

逃げられないことを再度認識させられ、嫌な顔をしながらも同じく木刀を構える。

 

冨岡・小鳥遊「よろしくお願いします。」

 

互いに挨拶を交わすと、その後は数秒間の空白がやってくる。

小鳥遊は目で冨岡に訴える。

 

(来ないのですか?いつでもいいですよ。)

 

そのわかりやすい雰囲気に、冨岡も木刀を握る手に力を込める。

冨岡の踏み切りを合図に、戦闘の火ぶたが切って落とされた。

 

冨岡「水の呼吸 弐ノ型 水車。」

 

目にも止まらぬ速度で、冨岡は小鳥遊の眼前に現れる。

本来であれば反応すらできないであろう速度の攻撃を、小鳥遊はその瞳にしっかりと捉え、迎撃の構えをとる。

 

小鳥遊「日の呼吸 壱ノ型・改 円舞・昇。」

 

小鳥遊の斬り上げが、冨岡の斬り下ろしとぶつかり合う。

激しい戦火を散らしながら、2人の剣撃は互いに弾け合う。

先に着地したのは、小鳥遊だった。

瞬時に冨岡の至近距離までに移動し、冨岡の胸をめがけて右から刀を振り抜く。

 

冨岡「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦。」

 

冨岡はその斬撃を、身体の捻りを加えた剣捌きにより受け流す。

そして無事に着地すると、小鳥遊に斬りかかる。

この斬撃を、上半身を僅かに仰け反らせることで紙一重の回避を行う。

繰り返し、冨岡が小鳥遊に向けて斬撃を繰り出すもその全ては紙一重で回避されてしまう。

このままでは埒が明かないと判断した冨岡は、深く息を吸い込み水の呼吸のある方を繰り出す。

次の瞬間、小鳥遊の視界から冨岡が姿を消す。

不意だった。

 

冨岡「水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫。」

 

独特な歩法・縦横無尽の歩法と呼ばれる水の呼吸。

水の呼吸は守りと自在な足捌きによる、場所を選ばない戦闘術が特徴の呼吸だ。

その特徴をフルに活用した歩法である型が、【玖ノ型 水流飛沫】であった。

足と腰の捻りを使い、瞬時に相手の背後へと移動し回り込む歩行術。

そして、この型はもう一つの大きな特徴を兼ね備えている。

 

小鳥遊「水の呼吸 参ノ型 流流舞。」

 

それは、すべての水の呼吸に隙なく繋げられることである。

小鳥遊は、右足を軸に反転しその攻撃を受け止める。

しかし、一度守勢に入ったがゆえに防戦を強いられる。

流流舞は回避と連続攻撃の型である。

一度守りに入れば、攻撃の合間を縫って攻勢に転じることは困難であった。

なんとか隙を見つけて攻撃を加えるも、その攻撃を器用に躱してその隙を的確に突いてくる。

そんな状況を打開するべく、小鳥遊は力ずくで状況を変える。

冨岡の木刀を受け止めると、自身の木刀の峰に向けて右手の掌底を力任せにたたきつける。

攻撃の最中に突然強い衝撃を受けた冨岡はわずかに体勢を崩す。

そのわずかな隙を見逃さない。

 

 

 

 

冨岡はバランスを崩して、わずかに重心が後ろに傾く。

ほんの僅かな崩れだとしても、日柱はその隙でも十分であった。

冨岡は瞬時に、攻撃を仕掛けられることを直感する。

そして、刀の刃先を下に向け、受けの姿勢を作る。

 

小鳥遊「日の呼吸 参ノ型 烈日紅鏡。」

 

左右からの2連撃…のはずだった。

だが、日柱の技量から放たれるその攻撃は、2連撃ではなく左右からの同時攻撃のようにしか見られなかった。

 

冨岡(刀が2本に見える!?…これが日柱(最強の柱)の御業か。)

 

そう感じながらも、その攻撃を防ぐべき自身の持ちうる中で最硬になり得る型を放つ。

 

冨岡「水の呼吸 拾壱ノ型 凪。」

 

その神業とも呼べる同時攻撃を、本来存在しない拾壱ノ型で防いでみせた。

 




お久しぶりです。
あまり高頻度では、投稿できませんが、自分の仕事に余裕がある時には更新をしていきたいと思います。
あまり土日もしっかり休めるわけではないので、速度については期待しないでいただけると幸いです。
次回もよろしくお願いします。
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