中央世界”カノニカル”。
ダーザイン本部が設立されている世界であり、その本部が存在する都市部から少し離れた郊外に鼻セレブ隊の事務所は建っている。
部隊としてのまとまりに乏しく、各々が好きに活動する事が多い鼻セレブ隊だが、今日は珍しく5人全員が事務所に揃っていた。
「昇格の知らせを聞いてから飲む酒うっま!これからは任務受ける時の報酬も相応に上がるんじゃない?アガるわー」
「お前ら、ようワイの指示通りに動いたな」
「俺ァおめぇが指示出すとこ一度も見た事ねぇけどな」
社不の佃煮とまで呼ばれる程に悪意を持って集めたかのような問題児揃いの部隊が何の手違いなのか、この度昇格してSランクへと相成ったのだ。
「この酒はなかなか美味じゃな。アホ面よ、これはなんという銘柄じゃ」
「鬼ころしって書いてますよ」
「ヘ…ヘイトスピーチ…!!」
「なんで変態なのにたまにちょっと繊細なとこあるんすか。変態は図太くあれよ」
十星を除いた一般のバースセイバーにつく肩書きとしてはこれより上は無い。知らせを聞いた5人は祝い酒だと言わんばかりに事務所で宴会をおっ始めていた。
「すげぇぞ…天井が高速回転始めたぜ…ハハァ」
「誰かこのカスに水飲ませて。ぼちぼちマーライオンみたいになるから」
正直なところ自分たちの立ち位置などに興味は無い。飲める理由になれば何でも良いのだ。
大体のレジャーに薄ら飽きてきていて酒以外に人生の楽しみを見出せない鼻セレブ隊の面々は未成年が混じっていようと宴が突発的に行われる。ダメな大人の祭典がそこにはある。
「櫂くん、さっきから何書いてんの。何その大量の紙」
「いつ求められても良いようにサインの練習っす。ほら、もう俺Sランクのバースセイバーなんで…フフ…」
「共感性羞恥がいかついな。最初にやるのがサインの練習とかゾクゾクしてくるで」
肩書きに執着する例外もいるにはいる。櫂がそうだ。何故ならその方がモテそうだから。
「別に立場が変わったところで実力が変わるもんでも無いじゃろ。勝って紐パンの緒を締めよと言う。浮かれるのもほどほどにじゃな」
「なんだ変態が真っ当な事言ってんぞ。俺酔ってんのか」
「酔っとるで。お前は水飲めや」
「えぇーでもSランクですよ?ハルさんも気持ちわかりますよね!?」
鬼子の言っている事は正しい。
バースセイバーのランクは組織に対する貢献度によって分類される物であり、戦闘における実力に応じた物では無い。
任務を質より量でこなしてきた鼻セレブ隊に対し、今後はより苛烈な任務が下される事も予想される。隊としての真価を問われるのはこれからなのだ。
「…てぇ〜」
「なんて?」
そんな中ハルは珍しく浮かれていた。
「Sランクになったあたしの銅像とか建ててぇ〜」
「なんで??」
めちゃめちゃ浮かれていた。
「どういう欲求?それマンモス校の理事長とか独裁者だけが抱く奴だろ」
「まず銅像建てるならワイのとちゃうんけ。隊長ワイやぞ」
「ギャラの交渉からあんたらへの指示出し、他部隊へのヘルプの依頼までやってたの鑑みて銅像建ててぇ〜」
「銭ゲバが酔っ払う姿は珍しいのぉ」
腕は立つが扱いにくい社不達を率いて数々の任務をこなしたハルの緊張の糸が切れたのか。次々と酒瓶を空にしながら流れるように要望を出してくる。
「使えねぇカス共を率いて八面六臂の活躍をした女傑として生きてる間に銅像建ててぇ〜」
「めちゃくちゃ言われてんな。なんで銅像なんだよ」
「勇者ヒ◯メルならそうしたから」
「まぁ確かに作中でめちゃめちゃ銅像建ててますけどね」
「こいつ自認が魔王を倒した勇者なのしんどいのぉ」
エッジの効いた本音をボロボロと漏らし、やたらと銅像を建立したがり始めたのだ。
「出来たら駅に建ててぇ〜」
「めちゃくちゃ無理やろ。マンモス校の理事長でも無理やろ」
「じゃあ駅から徒歩5分のとこに建ててぇ〜」
「不動産激戦区やないか。舐めんなや」
「ならちょっとえっちな銅像にしていいから」
「どういう種類の妥協?これなら需要あるだろ的なスタンスが鼻につくな」
「建てましょう!!!」
「乗るな◯ース!戻れ!」
しかもやたら駅にこだわる。
「わかった。じゃあ駅からバスで20分の範囲で建てよ」
「それもう自宅に建立でええやろ」
「それだとあたしがお金払う事になるじゃん。普通銅像って国とか自治体が建てるでしょ。自腹で銅像建てる独裁者見た事ある?」
「こいつ税金で自分のちょっとえっちな銅像建てようと考えとるの今日イチしんどいのぉ」
「ハルさん、自分が独裁者タイプの銅像建立願望者と自覚してるんすね」
もはや言いたい放題である。
「あたしの銅像が駅前にあったら国民も今日も一日頑張ろうってなるじゃんね」
「なんでちょっと独裁者の思考トレースしてんねん」
「お前の本業泥棒なのに自己顕示欲強すぎだろ。もっと闇に生きろよ」
「頑張ろうってなりますね」
「アホ面は銭ゲバが絡むと全肯定イエスマンになるのしんどいのぉ」
「じゃあもう等身大アクリルスタンドとかでいいから建ててぇ〜」
「さっきから妥協のスピード感えげつないで。これもう独裁者の器ちゃうやろ」
「独裁者アクリルスタンド建てねぇだろ」
「じゃあもうアクキーでいいや」
「アクキー作りたがる独裁者しんどいのぉ」
・・・・
・・
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「じゃあカードコネクトであたしのカード作りたい」
「それなら全員分作ればいいだろ」
Sランクの鼻セレブ隊のカードが作られる事になった。