葉沼櫂 ダーザイン入隊前夜   作:バッセの鼻セレブ

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さらっと幕間


葉沼櫂 VS生活 幕間

「だァから言ってんだろハゲ。俺がやったんだよドカーンて」

 

「ドカーンじゃわかんないって言ってんの!報告じゃ大きな黒い影が出てたって聞いてるからね!?君の能力じゃないでしょ!?」

 

「ナメんなハゲ。やろうと思えばできんだよ。3分でこのビルを平らにしてみせようか?」

 

「なんでそんな戸愚◯みたいな事言うの!?」

 

ここはダーザイン本部。端的に言うと俺は今任務のやらかしでここへ呼ばれて来ている。

戦闘を伴う任務で魔力の出力を間違えてしまったのだ。俺が呼び出したましら様の現象体はコントロール出来なくなり、辺り一帯を破壊しまくった。

 

そもそも信心も無い一般人の体に、ほんの一部とはいえ神を降ろすという行為にかなり無理があるらしい。事の元凶であるましら様は「切り替えていこう!」と手を叩いている。邪神と言って差し支えない。

 

人的な被害は無かったものの、よその《世界》での建造物の破壊。ダーザインの火消しの為に参考人として招集されてきたというわけだ。

 

「組織として責任の所在を追求したいわけじゃないんだってば!!ただこれ以上は庇えなくなっちゃうからね!?」

 

「それをどうにかする為にお前がハゲてんだろうが」

 

「君の能力でそれをやったとなると意図的な行為として″上″が見るの!!何が起きたか話してマジで!!」

 

「あーもうめんどくせぇな…記憶にございませェん!」

 

「何その押しの強さ!もうお前が国政担えや!(謎)」

 

「やってやるよ!適当に誤魔化しとけ!」

 

当初は紳士的な話し方をしていた中間管理職の人もご覧の有り様だ。ハゲ散らかした髪を振り乱してテツさんと口論に興じている。

 

「帰んぞ櫂。こんなもんは形式上のチャンバラみてぇなもんなんだよ。おいハゲ!後で始末書送るわ!」

 

「今度奢れよ!あと死ね!!(直球)」

 

 

カノニカルの本部からの事務所までの帰り道。俺は無言のテツさんの後ろを追いかける。言い方は戸◯呂のようだったが無理を通して俺を庇ってくれていた。

 

黙々と無言で歩く。

俺はこの沈黙をよく知っている。

 

蒸発した両親に捨てられた俺は血の遠いほぼ他人の親戚の家に預けられた。

昔からこの体質で俺は方々で問題を起こしては、その時その時の保護者と謝罪の行脚の帰り道。その重い空気がそれだ。

 

口火を切って親戚が決定的な事を言う前に、毎回俺から言ったものだ。迷惑はかけられない。ここを出ますと。

 

そんな事を繰り返しては巡り巡って施設に預けられ、今はダーザインの子飼い。鼻セレブ隊の皆に鍛えられ、もしかしたらここが俺の居場所なのかと思い始めた先のこれである。

 

こんなややこしい人生を送って来た。

今更環境が変わったところで問題はない。今の俺はダーザインに登録されたバースセイバーなのだ。所属する部隊が変わった所でこの人達と縁が切れるわけでもない。

 

もしかしたら俺をどこかの部隊が拾ってくれるかもしれないし、1人で活動する人だっている。

 

俺なら持ち前の人懐っこさで異動先でもうまくやれる。いつだってそうやってきた。

 

短い期間だったが俺はこの人達が好きだ。カスで人間性終わってて欲に忠実で、でも時折息が止まる程かっこいい瞬間があるこの人達が好きだ。

 

だからこそ綺麗に別れたい。

言え。いつものように軽いノリで言え。

 

「テツさん、俺…」

 

「俺さぁ」

 

かぶせるようにタバコを吹かしながらテツさんが話し始めた。

 

「ちょうど今のガキぐらいん時か?故郷捨てて出たんだわ」

 

「…はぁ」

 

「別に今の環境に全く不満はねぇし、多分やり直しても同じルート辿ると思うけどな」

 

「思う時あんだよ。あん時の俺に、もし少しは頼れる大人がいたら、もちっと日の当たる場所歩めたんじゃねぇか?って」

 

「もう少しここで気張ってみせろよ。見ててやるから」

 

「……うす」

 

「あと仕事の失敗は仕事で返せよ。今言おうとした事、次言ったら前歯折るぞ」

 

「嘘でしょこっわ」

 

テツさんがおらさっさとドヤされて来いや、と言いながら事務所のドアを乱暴に蹴り開ける。中ではハルさんがくしゃくしゃにした紙をアザラシに無理やり食わせていた。何が起きているのかわからない。頭がおかしくなりそうだ。

 

「あ、帰ってきた!アンタら手伝って!この請求書をコイツに食わせて無かったことにするの!!!」

 

「助けてくれ櫂!ワイはこのままでは童謡のキャラみたいになってしまう!!!」

 

「白ヤギさんのように!!」

 

その手があったかとぼやきながらテツさんが加勢に向かった。食わせたところで請求そのものが無くなる事はない。やらかしが消えるわけではないのだ。

 

「あのノンデリのカスになんか言われたんでしょ」

 

隣にハルさんが立って笑っている。この人は足音はおろか、僅かな衣擦れの音さえ出さずに動くので急に話しかけられるとビビる。

 

「しみったれたツラしてさぁ。アタシらがなんでいつもこんな馬鹿騒ぎしてると思ってんのよ」

 

「ハルさん、すんません俺…」

 

「大人が笑うのはね、ガキに羨ましがられる為なの」

 

「大人は楽しいぜーって、身をもって証明してんの。ガキ共に人生は面白いぞってね」

 

「アタシの大人論。にひひw」

 

「なんすかそれw」

 

「ガキが一丁前に凹んでんじゃないの。半人前のアンタのミスなんざ最初っから勘定に入ってる。しっかり給料から天引きするから、あの請求書どうにかする為に手伝いなさい」

 

眼前でアザラシがこちらに向かって叫んでいる。

 

「助けてくれ櫂!こいつら根本的なところで知能が足りとらんのや!」

 

「このままではワイは童謡のキャラみたいになってしまう!!!」

 

「黒ヤギさんのように!!!」

 

まだ余裕ありそうだなと咥えタバコでテツさんが請求書をアザラシに食わせている。

この珍妙な、世にも奇妙な光景を見ながら俺の心は少し救われたような気がした。

 

そしてそれはそうと、給料から天引きはするんだなと1人で噛み締めた。

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