今すぐは難しいかもしれないですが、そのうち主人公を暴れさせようと思います!
鬼殺隊は震えて眠れ
Satakeさん、アールスさん誤字報告ありがとうございます!
無限城での会議から家に帰り、ふと考える。
そういえば無惨様から血を貰った俺はどれぐらい強くなったのだろうか、と。
今後も原作的に柱と遭遇する可能性が高い。あるいは他の鬼と戦うこともあるかもしれない。自分の力を試すために自分の実力を確かめておくべきだろう。そう考えた俺は夜になるまで待ち、人里を離れて山へ行き、いつもの狩りのついでに力を試してみることにした。
夜の山に入り、気配を探ることに集中する。
以前から狩りをする時に獲物を探したり、追っ手や鎹鴉に見張られていないかと周りの気配を探る事が習慣になっていた。更に血の影響なのか、いつもよりも感覚が研ぎ澄まされており、風による木の揺れや、鳥の鳴き声といった山全体の気配を感じ取れるようになっていた。原作の伊之助が肌で感じていたのと似たような物なのだろうか?
「お、ちょうどいい獲物発見」
そんな事を考えていると、何かが動く気配を感じた。
その動きからして、どうやら鹿が遠くの位置にいるようだ。力を試すにはちょうどいいしまずは
「よっ! ……当たったか?」
音はないが鹿の気配が動いたので恐らくは当たったのだろう。俺の血鬼術自体には殺傷能力がない。たとえ血を固めて撃ったとしても、途中で液体になってしまう為、相手が死ぬことはない。……だけど、それはこれまではの話だ。
「……うん、死んだな」
時間差で鹿の気配がいきなり消えたので、おそらくは死んだだろう。俺は鹿が死んだであろう場所へ行き、そして口周りを血で汚して事切れている鹿の死体を見つけた。鹿の皮膚には小さな穴が開いており、しかし致命傷とは思えない傷だった。
ではなぜこの鹿は死んだのか。
それは、俺の命令を込めた血鬼術の弾を受けたからである。
今まで俺は殺傷性がないことと、一分以内に口頭で命令することを条件に血鬼術『血鬼仙翁』を使ってきた。しかし、実際に柱と戦って分かったのは不意打ちを仕掛けない限り、術をかけて命令する余裕がないのだ。もちろん一対一ならば初見殺しでもできなくはないだろうが、既に俺の情報が鬼殺隊内で共有されていてもおかしくはない。ならば尚の事この血鬼術に頼り切るのは危険だ。
故にこの血鬼術は今までとは違い、複雑な命令ではない単調な命令を一つしか込められない代わりに、体に入り込んだ血が脳に達した時に発動する血鬼術だ。……『
話は戻るが、なぜこの鹿が死んだのか。それは俺が死ねという命令を刻んだ血の弾を受け、その血が鹿の頭へと侵入し、その命令を受けた鹿が自らの舌を噛みきったからである。
自己のセンスに浸っていたことでいつの間にか俺は気が緩んで気配を探す事をやめていたらしい。人の二、三倍ほどの大きいヒグマが俺に近づいていた事に気づかなかった。どうやら目当ては俺が仕留めた鹿なのか、それとも俺なのか、ともかくその熊は俺に突っ込んできており、──もう、衝突は避けられない。
無駄な殺生をするのもどうかとは思うが、今は練習相手が来てくれた事に喜ぶ。
相手がこちらに触れる距離になった瞬間、全集中の呼吸を使い、熊の突進を回避する。相手は俺が消えたと錯覚したのか辺り一面を探し、そして俺が上にいる事にも気づかずに、俺は血鉄砲の刃で熊の首を跳ね飛ばした──。
「すみません。貴方達の命は、決して無駄にせず有効に使います。どうか安らかに」
既にもの言わぬ肉塊となった熊、そして鹿に手を合わせる。この体に生まれ変わって狩りを始めた頃から、数え切れないほど殺してきていた野生動物たちに、せめてもの償いとして手を合わせるのだ。それが元人間の鬼として彼らに出来る最低限の礼儀だと思っている。
狩った獲物をこのままこの場所に放置する訳にもいかないので、持ち帰り解体しようとしゃがみこむ。
「……なるほど……無惨様から聞いた通り、人を喰わない鬼、更に呼吸を使うか……」
瞬間、背後から聞こえた声に全身の身の毛がよだち、汗が流れ出す重圧に襲われる。おかしい、先程の反省を生かし、気配を既に探っているはずなのに、背後に誰も感じられない。
しかし、その声の主はかつて聞いた事があり、原作の映画でも出ていた声だ。俺は、後ろの存在を確かめるべくゆっくりと後ろを向き、そして目を見開く。
「しかし、呼吸は浅く、痣も発現しておらず、透き通る世界にも入れていない。剣士として余りにも未熟……お前のような者を何故、無惨様が気に入られているのかが理解できない」
その者は、刀を持っていた。長い髪と、紫の羽織を着ており、六つの赤い瞳に上弦の壱と刻まれている金色の瞳が、こちらを覗いていた……。
「……あのお方が、私にお前を強くするよう命じられた。私には主の御心は分からぬ、しかし、お前の粗末な動きを見てお前に師はいないとみた……得物を構えろ。一から叩き直してやるとしよう」
「…………。(絶望した表情)」
その瞬間、上弦の壱、黒死牟による無数の斬撃が、俺を襲った。どうして、どうしてこうなったあああああああああああ!!?
──
あれからどれくらい経っただろうか? 既に山はあちらこちらで黒死牟による月の呼吸の斬撃により、大地は裂け、木々は消し飛び、辺り一面はもはや更地と化している。そして、更地になった中心には全身血塗れ、フラつき動けなくなる寸前のボロボロの俺と、全く息を切らさず、こちらを見る黒死牟様のみである。
正直に言う。この兄者すら超えられない継国縁壱とは果たしてどれ程の化け物なのかと。俺の血鬼術で何かしようとする前にいつの間にか切られており、仮に術にかかったとしてもその前には既に意識が飛んでいる。これが至高の領域へと至った鬼の力なのか……。
「……それだけか。その息も絶え絶えな姿……見苦しい。呼吸と呼ぶには浅く、剣技と呼ぶには粗末。血鬼術という小細工に頼り、己の未熟さから目を背けるか。
──軟弱千万。
お前のような者を、何故あの方が目をかけられるのか……私には理解が及ばぬ。だが……命令は命令だ。……立て。お前の
黒死牟様の六つの瞳が、虫けらを見るかのように俺を見下ろしている。鍛錬? 違う、これはただの拷問、一方的な蹂躙だ。既に全身の骨は何度も砕かれ、再生が追いつかないほどの斬撃を浴び続けている。無惨様からいただいた血がなければ、とうの昔に塵になっていてもおかしくない。
血反吐を吐きながら、霞む視界で目の前の
立て、という無言の圧が全身に突き刺さる。だが、指一本動かすことすら億劫だ。鬼の力によって傷は再生はしているが、それ以上に疲労と恐怖が精神を蝕んでいく。このまま動かなければ、次の一太刀で「軟弱千万」という言葉と共に、今度こそ首が飛ぶだろう。
(このままじゃ殺されるっ!)
脳内で警鐘が鳴り響く。
どうする。どうすればこの絶望的な状況を打開できる?
血鬼術は通用しなかった。血鉄砲も、霧血粧も黒死牟様に届くことはなく、間合いに入る事すら出来ない。速度も、力も、技も、全てが天と地ほどの差がある。小細工は、この御方には児戯に等しいだろう。一体どうすれば……。
……いや、ある、のか? ここを乗り切る為の方法が。
俺はボロボロになった手に持つ血鉄砲を見る。
もし、俺の仮定が正しければ、あの力は己自身にも使えるはずだっ!
俺は血で濡れた地面に指を突き立て、爪を食い込ませる。折れた腕に無理やり力を込め、血鉄砲を杖代わりに、震える足でゆっくりと、しかし確実に立ち上がる。
ぶっつけ本番の付け焼刃にも等しい事だが、このまま嬲り殺しにされるだけだ! それなら、少しでも生き残れる道を選ぶ! 覚悟を決めた俺は、
そして血の弾丸を装填し、命令を刻む、
──己の限界を超えろと
──
「……愚かな」
六つの目が、その常軌を逸した行動を、何の感情も映さずに捉えている。刀を構え直すでもなく、ただ静かに、その異様な光景を観察していた。
何を思ったのか。この男は突然、自らの頭を撃ち抜き、そして血走った瞳でこちらを見ている。息は乱れ、隙だらけのその体には
「……愚の骨頂とは、まさしくこのことだな」
──真の強さとは、数百年と技を研ぎ澄まし、血反吐を吐く修練の果てに……ようやくその一端に触れられるもの。それを己の血に込められた術でこじ開けようとは……剣士への侮辱に他ならぬ。
……やってみよ。
お前の先に待つのが、さらなる絶望か、あるいは無様な自壊か……この目で見届けてやろう。
──
血鉄砲の銃口がこめかみに触れる。冷たい感触はない。己の血から生まれた武器だからだ。
引き金を引いた瞬間、世界から音が消えた。
衝撃はない。代わりに、灼熱の鉄杭を脳天から突き立てられたような、凄まじい激痛と情報の奔流が意識を塗り潰していく。
「ぐ……あ……ああああああああああああああッッ!!!」
(痛い痛い痛い! 何だこれ! 脳みそを直接かき混ぜられてるみたいだ!)
その命令が、俺自身の血によって、俺の細胞の隅々まで強制的に浸透していく。血管が内側から破裂しそうな圧力を感じ、全身の筋肉が悲鳴を上げて引き千切られ、そして超速で再生する。まるで自分の体が、自分のものではなくなっていくような感覚。
だが、痛みが臨界点に達したその先で、世界が一変した。
(……見える)
空中に舞う塵の一つ一つが。風に揺れる木の葉の葉脈が。そして目の前に立つ黒死牟様の、その羽織の僅かな皺の動き、静かな呼吸に伴う筋肉の微細な収縮すら、スローモーションのように認識できる。そして、己の体に浮き出た褐色の痣。
これが……痣の発現……! 原作で見た力の一端!
だがあくまでこの力は仮初だ。以前の通り、血鬼術による血は命令を発動した後、すぐに消え去り、効果を失う。今こうして痣が出ているのも時間の問題だ。
「……愚の骨頂とは、まさしくこのことだな」
愚の骨頂、か。正しくその通りだ。
これは剣士が研鑽の果てに辿り着く領域とは似て非なる、血鬼術によるまがい物。ガラス細工の肉体に無理やり鬼の力を流し込んでいるに過ぎない。俺は荒い息を吐きながら、血鉄砲を構え直す。溢れ出る力は荒々しく、全く制御できていない。だが、先程までの絶望的なまでの実力差は、ほんの、そう一ミリくらいは少しだけマシになったのだと……思いたい……。
まあ、透き通る世界に入れないから絶対に勝てる訳ないのだが
「はぁ……はぁ……黒死牟、様……」
口から漏れるのは、尊敬と、そして生き残るための必死の懇願。
「これが……俺が出来る精一杯の足掻きです。……どうか、ご指導……お願い、いたします……!」
俺は強化された五感で、黒死牟様が刀の柄に指をかける、その僅かな音を捉えた。六つの瞳が、初めて俺を
「……面白い。ならばその児戯が、どこまで通じるか……試してやろう」
次の瞬間、先程とは比較にならない速度と密度の斬撃が、再び俺へと殺到した。しかし、今この瞬間だけは、その一筋一筋を、確かに捉えることができていた。
──
月光が、無惨に転がる鬼、狂酔の姿を照らしている。
……児戯の果てが、その見苦しい有様とは、……実に醜いものだ。
一時、私の太刀筋を捉えたかのように見えた……だが、それは付け焼刃にも劣る紛い物の力。
術が切れれば、ただの
「……覚えておけ。真の強さとは、そのような小細工で手に入るものではない。永劫の時をかけて、己の骨身に刻み込むものだ。お前のやったことは、その道程から逃げただけに過ぎぬ。……じきに夜が明ける。太陽に焼かれて灰になる前に消え失せろ……。明日の夜も、ここで続きを行う。それまでに……せめて立てるようにはなっておけ」
そう言い残し、上弦の壱は去っていく。
残されたのは無数の斬撃によって切り刻まれ、再生も追いつかず満身創痍で倒れる鬼のみだった。
Q.……おい、死んだ鹿と熊はどうなった!
A.……勘のいい、じゃなくてスタッフ(狂酔が呼んだ傀儡)に持って行かせました。
おまけ・狂酔のその後
(…………指一本、動かせやしない……。体の再生? そんな余力残ってないっての……)
夜明け前の冷たい空気が、斬り刻まれた体に突き刺さる。黒死牟様が去っていった闇を見つめることしかできない。
(明日も……続きを、か……)
絶望しかない。あの地獄がまた繰り返される。だが、全身を苛む激痛の奥底で、ほんの僅かな、しかし確かな感情が芽生えていた。
(……でも……殺されは、しなかった……。見捨てられも……しなかった、のか……? あの御方の基準で、最低限のラインは……越えたってことか……?)
地面に張り付いたまま、乾いた笑いが漏れる。だが、笑うだけで全身の傷が軋んで、すぐに苦悶の表情に変わった。
「……ははっ……」
それでも、こうして生きている。まだ俺は生きているんだ……こんなに嬉しいことは無い!
こうして、ただの力試しのはずだった地獄は終わり、そしてその後も、毎日の夜に黒死牟様によって切り刻まれる日々を、原作の時まで過ごすのだった……。
皆さんに参考までに聞きたいんですど、このまま原作に沿ったルートにするか、それとも原作から大きく離れ、鬼側無双RTAみたいに展開を早くするかどっちがいいですか?
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今まで通り原作準拠で進める
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主人公の血鬼術による鬼側無双ルート
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その他(ifとして後で作る)