無惨様ニコニコで草   作:カラ硝子

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エタりそうになりながらも頑張って書いてます。
更新がなくなったら察してください。

月見餅さん誤字報告ありがとうございます!


無限鍛錬編・前編

 

 ……その後も黒死牟様との修行は続いた。

 

 鍛錬に行かなければ、黒死牟様と無惨様に殺されてしまうので、満身創痍の体でなんとか山へと入り、辺りを探る。すると、どうやら先に来ていたらしい黒死牟様がポツンと一人立っていた。

 

「お待たせしてすみません!」

 

 時間の指定はなかったとはいえ、先に待たせてしまった為、誠意を持って謝罪する。しかし、返ってきた言葉は全く予想していないものだった。

 

「……鍛錬に入る前に、これだけは言っておく」

 

「今後、己の限界を超えるなどというくだらない目的で、自身に血鬼術を使用する事は固く禁ずる」

 

「あの紛い物の力は、お前の未熟さから目を背けさせるだけの弱さの現れだ。そのようなものに頼る限り、お前は永遠に強者にはなれぬ。……今後、私の前でそれを使えば、即座に四肢を斬り飛ばし、日の出まで再生できぬよう刻み続けると知れ」

 

「……お前はまず、己本来の、ありのままの脆弱さと向き合わねばならぬ」

 

 ……要約すると、俺の新しい血鬼術は戦闘以外では使うなと言い渡されてしまった訳だ。そして生き残る為に考えた術が、皮肉にも死ぬ要因になり得てしまった……いや、死にたくないから絶対に使わないけども。

 

 あの時はアドレナリンでテンションが変になっていたに違いない。よく考えてみれば俺のやった行為は黒死牟様にとっての地雷でしかない。やってしまった以上は仕方ないが、今後は波風を立てないようにしなければ……。

 

 そのまま黒死牟様は、そのまま話を続ける。

 

「……昨日の死合でお前の実力はおおよそ分かった。……お前の動きは全てが粗末であり、呼吸も我流故に余りにも醜い。これでは鍛錬どころではない……故に、一から叩き直してやるとしよう」

 

 そして、黒死牟様は自身の刀を抜いた。

 

「……夜明けまで。貴様の血鉄砲とやらを剣として構えて立ち続けろ。僅かでもお前の体勢が崩れれば、私の斬撃がお前の体勢を正す。……言葉による指導はない。痛みが、お前の肉体に正しい形を刻み込むのだ」

 

「構えている間も、絶えず呼吸を行い続けろ。……深く、長く、途切れぬ呼吸を体に覚えさせるのだ。もし、お前の呼吸が乱れた時、横隔膜に斬撃を入れ、強制的に息を吐き出させる。……死の淵でこそ、真の呼吸は身につくのだ……」

 

「話は終わりだ。構えろ」

 

「はい……」

 

 こうして、鍛錬という名の拷問が始まった。

 言葉にすれば立って武器を構えるだけかとは思うが、実際にやれば分かる。全集中の呼吸を常に維持した状態で、ただ武器を構え続けるのはひたすらに苦行なのだと。

 

 それを夜が明けるまで、何時間も続けなければならない。僅かにも乱れたと黒死牟様が判断すればその時点で俺は切り刻まれた……途中から全集中の呼吸の常中による疲労で意識が途絶えそうだったが、意識を無くし、倒れてしまえば殺されてもおかしくない。

 故に俺は必死に耐え続けた……。

 

 ──

 

 幾十の日が経った夜、今日も今日とて体の再生が追いつかず、更に疲労困憊になった体で山に向かうと黒死牟様から新たに鍛錬を課せられる事になった……。

 

 だが、それは決して今までの鍛錬よりマシになる、という物ではない。

 

 むしろ更に酷い仕打ちだと言えるだろう。

 

「……お前の構えが、多少は形になったと判断した。……ならば、次に行うべきは素振りだ。お前のその奇妙な得物を、ただひたすらに振るのだ。十万、いや、百万。夜が明けるまで、ただ無心に振り続けろ」

 

「剣筋が僅かでもぶれた瞬間、お前の腕を斬り飛ばす。手首の返しが甘ければ、その手首を砕く。正しい一振りとは何か。それを骨の髄まで教え込んでやろう……」

 

「……はい、御鞭撻の程、よろしくお願いします……」

 

 ……こうして、鍛錬は更に苛烈さを増していった。

 

 血鉄砲は本来切るというよりも、叩き切る事を前提としていた為、やや重めにしてある。鬼の筋力で何振りかしても全く疲れないが、同じ動作をしかも剣筋が甘ければ横から斬撃が飛んでくるのだ。

 

 肉体の疲労というよりも、精神にくる鍛錬だ。

 

 ……不幸中の幸いか、鍛錬をしている間はこの地を離れる訳にはいかない為、日中は傀儡を使って、人間牧場の拠点を探したり、繁殖する為の種を探したり、鍛錬時の衝撃で探知された鬼狩りを傀儡を使って追い返したりしていた。

 

 そのおかげか昼の間に夜に失った体力を幾分か回復する事が出来た。

 

 ……本当に、幾分か程度だが。

 

 ──

 

 鍛錬を始めて既に幾百、幾千の夜を越えたかのような錯覚を覚える日々を送っていた。もはや相棒と言えるレベルで血鉄砲を振り続けた事で、もはや腕の感覚はないに等しい。

 

 再生した直後から再び振り始めるため、疲労は回復するどころか魂にまで蓄積していくようだった。

 

 今日もまた、死んだ目で約束の地へ向かうと、月光を背に佇む師の姿があった。

 

「……来たか。その有様……まだ無駄な動きが多いと見える」

 

「はっ……! 申し訳ございません!」

 

 俺の体の状態を透き通る世界で見ているのか、簡単に疲労や怠慢な部分があれば指摘されてしまう。

 

 既に何十日間の間鍛錬をしているが、ダメ出しが止まる事は無い……。いや、恐らくは今後も続く事だろう。他人にも、そして己にも厳しい師が満足する事は決してない。

 

「……素振りは、ただ振れば良いというものではない。一振り一振りに、己の全てを乗せるのだ。……だが、お前の振りは軽い。まるで、魂が乗っておらぬ木の葉のようだ」

 

「っ! も、申し訳……」

 

「……口先だけの謝罪は聞き飽きた。……今宵より、新たな鍛錬に移行する」

 

 その言葉に、俺の全身がこれ以上ないほど強張る。

 これ以上に過酷な鍛錬が待ち受けているのだろうか……。

 

「いつかの夜のように私に打ち込んでみせろ。……私が許すまで、ただひたすらにだ」

 

「…………」

 

 すぅ────ー……これは死刑宣告だろうか? 

 確かに以前より血鉄砲も馴染んできたし、構えや呼吸もレベルが上がったと感じた。

 

 だが、未だに痣もあれから出せておらず、ましてや透き通る世界にも入れていない。黒死牟様にとっては俺なんぞ相手にならないだろう。せいぜいサンドバッグから動く的になったくらいだ。

 

「……聞こえなかったか。それとも、恐怖で耳まで聞こえなくなったか。」

 

 六つの目が、憐れな虫けらを見るかのように俺を捉える。その視線だけで、足が地面に縫い付けられたように動かない。しかし、ここで動かねば確実に殺されてしまうだろう。

 

「……いえ! とんでもございません! ご指導の程、何卒、よろしくお願い申し上げます!」

 

 俺は恐怖を紛らわせるように叫び、血で錆びついたような血鉄砲を構える。正直、心臓が今にも口から飛び出しそうだ。

 

「……構えは悪くない。……では、来るがいい」

 

 心底恐ろしいが、行くしかない。俺は覚悟を決め、全集中の呼吸で踏み込み、黒死牟様の胴体目掛けて血鉄砲を振り下ろした。しかし──

 

「……遅い」

 

 その言葉を認識するより早く、俺の右腕が肩から斬り飛ばされていた。痛みを感じる間もない。ただ、自分の腕が宙を舞う光景だけが、スローモーションのように見えた。

 

「踏み込みに迷いがある。故に、剣に体重が乗らぬ。……もう一度だ」

 

「は……はいっ!」

 

 すぐに再生した腕で再び斬りかかる。しかし、今度は左足を薙ぎ払われる。

 体勢を崩して倒れる俺の体に、無数の浅い斬撃が走った。

 

「……恐怖で腰が引けている。そのような剣が、何故私に届くと考えた。……貴様の覚悟はその程度か」

 

「ぐっ……! あ……!」

 

 覚悟や思いだけで勝負に勝てるのは実力が拮抗した時だけだ。今の俺と黒死牟様との差は相当良く見積もっても、子犬とティラノサウルスだろう。もちろん前者は俺だ。

 

 その後も斬られては再生し、また斬りかかっては、別の場所を斬られ続ける。言葉による指導はない、という最初の宣言通り、黒死牟様はただ俺の弱点を斬撃によって的確に指摘し、確実に体に刻み込んでくる。

 

「……呼吸が乱れている。死の恐怖を前に、呼吸の常中すら維持できぬか。……ふん、やはり、軟弱千万だな」

 

 月明かりに照らされたその表情は、能面のように変わらない。だが、その六つの瞳の奥に、呆れとも侮蔑ともつかない色が浮かんでいた。

 

「……う、ううぅ……ああぁ……」

 

 しかし、その言葉をきっかけに俺の感情は崩壊した。

 恐怖、痛み、屈辱。それらがごちゃ混ぜになった感情が、涙となり溢れ出す。

 

 何故、どうして俺がこんな目に合わなければいけないのか。

 

 俺はただ普通に生きていただけの一般人なのに、ただ事故に巻き込まれ、やってもいない罪に追われ、迷惑をかけない人食以外の道を探そうとして、無惨様に見つかって青い彼岸花を探す事を強要され、殺されないように立ち回って……それなのに、なぜ俺は頼んでもいない鍛錬を強要され、命の危険にさらされながら過酷な修行に耐えねばならないのか。

 

 俺は再生もままならない体で、ただ喘ぐ事しかできなかった。

 

「……それで終わりか。……お前の呼吸には、『()』がない。ただ闇雲に力を込めているだけだ。それでは、どれだけ時を重ねようと、真の剣士にはなれぬ。……型なき呼吸は、ただの暴力だ。……そこに()はない。お前は、道を極める気概すら持たぬのか」

 

 黒死牟様の瞳が、俺の魂の奥底まで見透かすように細められる。

 

 型がない……? 当たり前だ。

 そんなものある訳がない。

 

 俺の呼吸は傀儡にした隊士から聞き出した呼吸の情報と前世の知識を基にした完全な我流でしかないからだ。

 

 そもそも俺は戦闘向けの鬼じゃない。

 生き残るために、鬼殺隊と戦う為に誰も助けてくれない暗闇の中で必死に生み出した物だ。型なんて極める余裕も、時間もなかった。

 

 だが、黒死牟様の指摘は、俺が最も目を背けたかった事実でもあった。

 結局、自分は半端でしかなく、この世界で生き残るには力不足だ。この御方のように、何百年もの歳月をかけて一つの道を極めた者の前では、砂上の楼閣に等しいだろう。

 

 その事実を改めて前にした今、俺が出来る事は──

 

「……お、教え……て、いただけない、でしょうか……。『型』……とは、いかほどのものか……」

 

 原作知識や見様見真似ではない、正真正銘の本物の型を身につける。それが生き残る事にも繋がるならば、どんな屈辱だろうと、今は教えを乞う事が明日に繋がると信じて。

 

 俺の懇願を聞いた黒死牟様は、しばしの沈黙の後、静かに刀を構えた。その動きには一切の無駄がなく、ただそれだけで周囲の空気が変わる。

 

「……良いだろう。一度だけ見せてやる。……これが、()()()()。我が四百年の……全てだ」

 

 そう呟いた瞬間、黒死牟様の姿が掻き消えた。

 

 

 

 

「月の呼吸・壱ノ型……【闇月・宵の宮】」

 

 

 

 

 次の瞬間、俺が立っていた場所の背後、遥か遠くの岩が、凄まじい轟音と共に両断されていた。

 俺が認識できたのは、夜空に浮かぶ三日月のような、美しくも禍々しい斬撃の軌跡だけだった。

 

「……見たか。これが、『型』を持つという事だ。……お前の児戯とは、次元が違う」

 

 背後から聞こえるその声に、俺は振り返る事すらできない。理解を超えた力の奔流を前に、俺はただ立ち尽くす事しかできなかった。

 

 衝撃の光景を網膜が焼き付けている俺を横目に、黒死牟様は冷たく言い放つ。

 

「……もし、お前に型を極めるという気概が本当にあるのならば、今見せた壱の型を模倣してみせろ。……期限は明日の夜までだ。……出来なければ、分かるな?」

「……え゛」

 

 その言葉は、事実上の死刑宣告に他ならなかった。

 絶望に染まる俺の表情を意にも介さず、黒死牟様は静かに踵を返す。

 

「……せいぜい足掻く事だ。……その軟弱な魂で、どこまで足掻けるか……見せてもらおう」

 

 月光だけが、その場に取り残された俺の呆然とした姿を、憐れむように照らしていた。




…あれ、おかしいな?この話で鍛錬編終わるつもりだったのに終わらないぞ??

という事で次回狂酔死す!デュエルスタンバイ!

本当はもっと時間かけて書きたかったけど、原作時間が無限列車まで一カ月くらいしか猶予がなかったから駆け足になりそう、無念。多分次で幕間を終えて以降に無限列車編にいくと思います。……エタらなければネ!

皆さんに参考までに聞きたいんですど、このまま原作に沿ったルートにするか、それとも原作から大きく離れ、鬼側無双RTAみたいに展開を早くするかどっちがいいですか?

  • 今まで通り原作準拠で進める
  • 主人公の血鬼術による鬼側無双ルート
  • その他(ifとして後で作る)
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