無惨様ニコニコで草   作:カラ硝子

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今回のお話は独自設定と話の展開によって賛否が分かれるかもしれません。
それでもよければ是非見ていってください。



パワハラが酷いのですが相談窓口はありますか?

 …あの夜、浅草で人間の女子供と親子を演じている時、耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りが現れた。

 

 かつて私を最も死に追い込み、今なお私の身体を蝕む傷をつけた、あの忌々しい化け物と同じような耳飾りを付けた鬼狩りが…!

 

思い出すだけでも腹立たしい!

 

「鬼舞辻無惨!」

「俺はお前を逃がさない! どこへ行こうと絶対に!」

「どこへ行こうと逃がさない! 地獄の果てまで追いかけて、必ずお前の首に刃を振るう!」

「絶対にお前を許さない!」

 

 私が鬼にした人間を抑えつけ、その場を去ろうとする私に対し罵倒し、あまつさえ殺そうとする意志を持つあの鬼狩りめ!……ああ、忌々しい、忌々しい!

 

 貴様は数百年に既に死んだはずだ!

 

 「……耳飾りの剣士め!」

 

 低く呟いた声は震えていた。

 しかし、それは恐怖ではなく、激しい憎悪と焦りの色を帯びる。

 

 あの男は既に死に、私の命を脅かす者はもう存在しない。

 しかし、あの男を想起させる存在を私は許さない。

 

「『お前達、花札のような耳飾りをつけた鬼狩りがいる。その者を見つけ次第、八つ裂きにして私の下へ連れてこい。生死は問わんっ!』」

 

 全国にいる無惨が鬼にした者達の脳内に無惨の命令が響く。そしてその命令はとある鬼にも届いていた。

 

「ついに始まったか、原作が」

 

 人を喰わず、己の血鬼術を用いて全国に自分の人間の傀儡を配置する無名の鬼。彼は前世の記憶を持ち、この世界を物語にした原作の知識を持っていた。

 

 これは、人の心を持った鬼が死を恐れ、最後まで生き抜こうとする世界一優しい鬼の物語──ではなく、人の心を被った鬼の話である。

 

 

 

 ──ー

 

 

『ベベンッ!』

 

 ──無限城、それは鬼の首領が住む鬼の居城。

 

 無限城の廊下は、琵琶の音ごとに形を変える。

 目の端に映ったはずの壁が、次の瞬間には消え、底の見えない闇が口を開けていた。

 

 

 ——なぜ、俺がここに

 

 今日も人間の協力者と情報を集めにいっていたはずが、いつの間にか俺は無限城にいた。

 ただでさえ息苦しく感じるような異質なこの空間に、それ以上の胸の奥で冷たい指が心臓を握られるような感覚。

 

 この感覚は以前にも無惨様と対峙するときに味わった、逃げられないという圧力に似ている。

 身体はその力に屈するかのように力が抜けていた。

 

 

 原作(鬼滅の刃)の主人公である炭治郎を殺せと言う知らせを受けてから既に二日程が経っている。今頃は仕向けた鬼が倒された頃だろうか?

 

 そこまで考えてようやく気付く。

 この重圧の正体が無惨様による怒りによるものなのだと。

 

 そしてその怒りの方向は、未だ青い彼岸花を見つけられない俺に向けられているということを。

 

 

『ベンッ!』

 

 どこからか琵琶の音がどこかから鳴り、空間が形を変える。

 上下左右が分からなくなるほど部屋が目まぐるしく変わり、一つの広い空間の部屋へとたどり着く。周りを見ると近くに鳴女らしき、琵琶をもった女性。

 

 そして部屋の中央の高い場所に、あの方は立っていた。

 

 

 月明かりのような蒼白な肌に白と黒が混ざった衣装を身にまとい、こちらを見下す強大な存在。その方の視線だけで全身を切り裂かれるような錯覚に陥る。

 

 その存在が誰なのか理解した瞬間、俺は即座に正座の形を取って頭を地面へと叩きつけ、邪心を抱かぬよう無の心を持って、全神経を周囲の気配と耳に集中させる。

 

 俺のその姿を一瞥し、無惨様が話し始める。

 

「……二年。貴様のほら話からもう二年も経った。これほど私を待たせたのだ……」

 

 その声は低く、鼓膜を破られるほどに響く。

 

「青い彼岸花はどこだ」

 

 冷たく鋭い声が背骨を凍らせる。

 私は息を整える暇もなく言葉を繋ぐ。

 

 ──あの日、鬼として転生してから約二年。

 

 それだけの時を費やし、俺は青い彼岸花を探すため、全国に捜査網を広げた。産屋敷邸も刀鍛冶の里も、更に隠れた場所を探るため、人間も鬼殺隊士も隠。そして時には鬼も俺の血鬼術で傀儡にした。

 

 

 水柱から逃げたあの日から、俺は村や街を転々と変えながら原作(鬼滅の刃)の主人公である竈門炭治郎の家を探した。炭次郎の母親である竈門葵枝(きえ)が青い彼岸花を知っている可能性があるという考察があったからだ。

 

 更に竈門家の裏の山に青い彼岸花があるという考察もある。考察の域故に半信半疑ではあったが一から手探りで行うよりかはマシだった。

 

 探している間も竈門禰豆子のように人間の肉を喰らうことは結局しなかった。

 俺の血鬼術と目的は生き残る事を主力としており、力を必要とはしていない。

 

 ──故に騒ぎを起こす必要が無いのだ。

 

 日中は日陰のある建物で睡眠を取って体力を温存し、夜になれば獲物を狩り、人間の傀儡を増やしつつ、竈門家の情報を傀儡を使って探し、遂に竈門家の家であろう家を見つけた。

 

 墓が並ぶ、主のいない家を。

 

 それは無惨様が既に竈門家を襲撃していた事、母親の葵枝に案内してもらうという択は消えたという事、そして原作が始まってしまったという事実であった。

 

 原作が始まってしまった以上、物語が終わるまで時間ははない。出来れば原作に出てくる人間にはなるべく手を出したくはなかったが、背に腹は代えられない。

 

 俺は炭次郎に鬼が出るからと泊まらせた猟師のおじさんを傀儡にし、青い彼岸花を探すように命じた。元々猟師なので山の危険に対し、戦う力はある。

 

 これであの山周辺はある程度捜索出来るだろう。

 

 他の地方でも同じように傀儡を増やし、今では全国に俺の協力者がいる。

 しかし.青い彼岸花を見つける事は出来ないでいた。

 

「……現在捜索中で「私は結果を聞いている。経過など犬にでも食わせろ」」

 

 ──空気が重くなり、胸が押し潰される。

 ──視界が赤黒く染まり、呼吸が薄れる。

 ──床に手をついた指が震える。

 

 

「貴様は私に言った青い彼岸花を探すと……私に未来の知識があると戯言を言い放ち、期待させるだけさせて貴様は私の期待を裏切った。私はこれ以上お前にどう期待すればいい?」

 

 ──無惨様から強い圧が溢れる。

 

「貴様には心底失望した。結局、鬼として人間を喰らわず、力を付けず、命令を果たせない鬼など私には必要ない」

 

 そう言うと無惨様の背後から気配が溢れて巨大な触手のような肉の塊が生まれる。

 

「私を愚弄したことを後悔して死ぬがよい」

 そう言い放ち、無惨様は俺を捕食しようと肉塊が大きく口を開け、喰らおうとする。

 

 ──死を目の前にし、俺は…切り札を全て使い切ることにした…

 

 

 

 

「──未来で太陽を克服する鬼を知っております」

 

 

 

──その言葉を告げた瞬間、肉塊と無惨様の動きが止まる。

 

「……何?」

 

 困惑した様子の無惨様を尻目に俺は言葉を続ける。

 今、生き残るためには無惨様に自身が有能な存在だという事を認識して頂かなければならない。

 

 そのためには、無惨様にとって有益である情報を伝えなければならない!

 

「その鬼は、無惨様が危険視される花札のような耳飾りをした鬼狩りが背負う妹、竈門禰豆子で無惨様の管理を離れた鬼となります。彼女は人肉を喰らうことなく、眠ることで食人要求を抑えております。それにより彼女の細胞は本来の鬼とは違う進化を遂げ、いずれ太陽を克服する鬼となります」

「おいちょっと待て」

 

 ──申し訳ありません、待てません。

 今ここで話を終わらせてしまえば俺の有益性を完全には証明できない。

 ここで終わってしまえば記憶の情報だけ奪えばいいという判断を下されるかもしれない。

 

 故に今は二年間で集めてきた保険をここで一気に解き放つ!

 

「花札の耳飾りを付けた鬼狩り、竈門炭治郎の動向は私の血鬼術【血鬼仙翁】によって洗脳した鬼殺隊の隊士、隠により監視し、動向を確認しております!他この血鬼術の効力は柱に通じ、一度水柱を退けております。次に柱に遭遇した際に私の血鬼術をかけることが出来れば、その柱に残る血を辿って産屋敷邸を見つけることも可能でしょう!」

 

「は…?」

 

「他には私の血鬼術の力を使い、傀儡にした人間の男女を集めて繁殖させて人間を生産し、食糧を確保する人間牧場を作ることも可能です!もしもこの無限城を管理する鳴女様のお力を貸していただけるならば、人間はおろか鬼狩りに感知されることなく、人間達の血液や不要な臓器を生かしながら取り、不要な危険を犯すことなく食糧を確保する事も可能です!その為の医者などの人員は既に傀儡にして確保しております!」

 

「他にはr「…もうよい!!」ぐはぁぁぁぁっっ!!」

 

 その瞬間、俺の頭に衝撃が走り、地面へと頭が叩きつけられて言葉が止まる。

 無惨様からの攻撃を受けたのであろうか、首が地面へとめりこみ顔が潰れてしまった。

 

 今まで集めてきた保険では不十分だったのだろうか……、でもまだ諦めて死を受け入れる訳には……。

 

 そう考えているとふと気づく。無惨様から追撃がこないこと。

 そして無惨様から剣呑な気配が消えていることを。

 

「はぁ、はぁ……良い。首を挙げよ」

 

 潰れた顔を修復し、ゆっくりと顔を見上げる……。

 見上げた先には怒りと困惑と喜びが混ざりあったような複雑そうな顔をした無惨様がいた。

 

「……本当ならば、青い彼岸花を持って来れなかった貴様を生かすつもりはなかった。……だが貴様の言う未来で太陽を克服するという鬼という情報とこの二年で得た血鬼術を使い、勤勉に働いていた事は評価する。それに免じて、今回青い彼岸花を持ってこれなかった事を不問にしてやる…無論それらが虚偽でなかった場合だがな」

 

 その言葉を聞いて、俺は涙した。

 命の危機から一先ず脱する事が出来たのだと。

 

 目の前の死からの解放に放心状態になっている俺を横目に無惨様は言葉を続ける。

 

「……そういえば貴様にはまだ名がなかったな…

 

…貴様のその酔狂であべこべな有様からきさまに『狂酔(きょうすい)』の名をやる……貴様の成果とやらを教えて貰おうか、狂酔よ」

 

「……っつ! はっ!」

 

 

 こうして無名の鬼から、無惨様から狂酔の名を頂き……生き残る事が出来たのだった。




はい、ということで2年間の集大成と原作ネタバレを開示してなんとか生かしてもらいました。
これによってこの小説の結末がある程度固まったと言えるでしょう。

次は無惨様との話し合いを終え、今後どう立ち回るかを決めていきます。
そういえば関係ない話ですけど鬼達の名前って病気がモチーフらしいですが、主人公はなんだろう?アルコール中毒?幻覚症状?どれもコレジャナイ感がすごいw

皆さんに参考までに聞きたいんですど、このまま原作に沿ったルートにするか、それとも原作から大きく離れ、鬼側無双RTAみたいに展開を早くするかどっちがいいですか?

  • 今まで通り原作準拠で進める
  • 主人公の血鬼術による鬼側無双ルート
  • その他(ifとして後で作る)
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