数多の忘却との出会い   作:獄華

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忘却の中の確かな記憶

 

 オブリビオニス。

 意味は忘却―――――。

 私が私の過去を忘れるために……人ならざる人形になる為に私自身に与えた名……。

 未練を断ち切り、全てを忘れる為に私はAve Mujicaを創ったけれど束の間の箱庭は脆く崩れ去ってしまいましたわ。

 最大の原因は睦を籠の中に閉じ込め人格を乗っ取ったモーティスなのでしょうが、実のところAve Mujicaはいつ壊れてもおかしく無かったのです。

 にゃむと私は言い争いが増え、海鈴は過去のトラウマから積極的に人と関わらず、初音はギスギスした空気を止める力が無く壊れてしまった……機能不全もいいところですわ。

 結果的に生じた亀裂はモーティスを産み、彼女の中でモーティスと睦は死んでしまった。

 色んな人に支えられ出来た復活ライブを終え私達は今、睦の家で定期練習を行なっています。

 

 「祥」

 

 この呼び方は睦の時と同じだけど中身はあの時の()じゃないんですわよね…。

 

 「どうしましたの睦?」

 

 「……睦がいや、あの子がまだ私の中に居た時のように祥が私に声を掛ける優しさが減った気がしたから」

 

 「あぁ…ごめんなさい。仮にも私は貴女の幼馴染みなのに、申し訳ありません」

 

 「私があの頃の睦(・・・・・・・)じゃないから祥は嫌なの?」

 

 「…………」

 

 何も言い返せません。

 ほぼ彼女の言う通りですから。

 

 「そうは…言ってませんわ」

 

 「嫌じゃないっても言ってないよね?」

 

 挑発的な目が私に向けられる。

 奇しくもこのやり取りは睦が全国ツアー初日にギターを間違え固まったのをパフォーマンスとして再現するように求められた際、私とにゃむの間で言い争いをした時と似ていた。

 だがそれよりも驚いたのは彼女の仕草。

 

 ―――今目の前にいるのは誰?。

 これではまるで……。

 

 「安心してモーティスももう死んでるから。今の私の動きは本物の人格には遠く及ばない模倣に過ぎない……」

 

 「…伊達に私の幼馴染みではないようですね。別の人格もしっかり私の事を記憶しているのね」

 

 「うん。祥、私達は幼馴染みで運命共同体なんだよね」

 

 「そうですわ」

 

 「ならAve Mujicaのメンバーとしてだけではなく私も見てほしい若葉睦(・・・)を。祥が睦に愛情を注いでくれたのを私は昔から羨ましく思っていた。ううん、私だけじゃない。他にもいる」

 

 冷静な口振りですがそこには確実に今の睦が自分を愛して欲しい感情が含まれてるのを感じました。

 この睦もまた、間接的に幼少期からの私と()のやり取りを見て愛情を求めているのです。

 

 「私は幸せになりたいし祥の事も幸せにしたい……死んでしまったあの子()の分まで。だから祥も私を愛して欲しい」

 

 「ふふふ……それは恋人として?」

 

 「違う友達としてだよ。恋人なんて言ったら初華に殺される。今度は人格だけじゃなく生命活動そのものを」

 

 ―――初音が睦を殺す?。

 それこそ悪い冗談ですわ。

 

 「初華はそんな事しませんわよ睦」

 

 「そうだよ!やだなぁ睦ちゃん。私は殺したりなんてしないよ♪(祥ちゃんに何かしてみろこら、私の姪だかんな。金の力で東京湾か相模湾に沈めんぞ若葉)」

 

 「……絶対とんでもない事考えてる」

 

 何故か初音を怖がる睦は私の背中に隠れてしまいます。

 その仕草がどこかかつての睦に似ていて私は笑ってしまいました。

 

 「睦分かりましたわ。今の貴女とも最愛の友達になれるようこの豊川祥子誓います!。私は神ですから!」

 

 「祥……ありがとう」

 

 「祥ちゃん!一生着いてくよ!」

 

 「流石、豊川さん。Ave Mujica(私達)の神たるだけはあります」

 

 「……喜んでいいとねこれ?」

 

 

 

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