転生したら『捕食者』だったんだが   作:犬養よわし

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#1転生

 意識が覚醒する。目が開けない。というか、目の感覚がない。もしかしてと思い、自身の体を隅々まで確認するが、何もない。体がないのか?何故俺はこんな状況に置かれている?そう思い記憶を辿っていくと、死因は忘れたけど、死んだってことを思い出した。

 

 死後の世界は地獄も天国もなくて、『無』しか無いってオカルト好きの友達が、言ってたけど本当だったのか……。言われたとき、散々バカにしちまったじゃねえか。どうしよ、また会ったときにドヤ顔で「ほら言わんことか」って言われる。

 

 ……いや……もう会うことはないのか……いざ会えないとなると寂しいな…。

 

『何も見えない。ここは…どこだ?』

 

 俺が感傷に浸っていると、謎の声が響き渡る。謎の声も俺と同様に状況を把握できてなく、戸惑っている様子だ。

 

 しかし、俺以外にも人がいる。なら、ここは死後の世界じゃないのか?俺は確かに死んだはずだが……もしかして転生?あの転生したらチート能力を手に入れて、美女を両肩に抱くことができる転生?………キタコレ!!誰でも夢に見たことであろうハーレム。それを叶えられるなら、俺に思うことなんて一つもない!早速、我が同志と交流して、ハーレムを築く第一歩と行こうじゃないか!

 

『おーい!聞こえるかー?』

 

 気合いで意思を伝えようとしたら、口がないのに何故か声を出せた。どう言う原理だ?

 

『なんか、賢者だ。大賢者だ。バカにされた気がするが…』

 

 おいコイツ絶対童貞だぞ。しかもコイツ四十歳以上で童貞だぞ。……いや同志が四十歳以上になっても、童貞を拗らせてる奴かどうかなんて、どうでも良いんだ。それよりも重要な問題があるかもしれん。

 

『さっさと返事しろ童貞ー!』

 

『そうだ!刺されて…』

 

 俺の質問に同志は一切答えない。多分無視とかじゃなくて聞こえてないんだ。これで確信に変わった。俺は同志の声を聞くことができるけど、俺の声は同志には届かない。でもなんでだ?俺と同志に何の違いがあるんだ?『童貞か、否か』か?しかし、屈辱的だが俺も同志と同じ童貞だ。わからん。お手上げだ。そもそも、自分が何者かもわからないのに、わかるわけがなかった。

 

《告。あなたはユニークスキル『捕食者』です》

 

『誰?!俺スキル?!スキルなん!?てか『捕食者』ってなんぞや!?』

 

《解。ユニークスキル『大賢者』です。『捕食者』とは捕食して対象物を体内に取り込み解析。その対象物のスキルを獲得できます。その解析が終われば擬態化も可能です》

 

 同志と同じように『大賢者』とやらの声が響き渡る。

 

 俺は人間どころか生命体でもない『捕食者』と言うスキルらしい。衝撃の事実だ。スタンドも空にぶっ飛ぶどころか、大気圏を突き抜けて宇宙に行くぐらいの衝撃だ。ついでにその衝撃で俺のハーレムを作る夢も粉々にされた。どうやって体がないのにハーレムを作るんだ……『捕食者』の名に恥じぬよう、いっぱい女の子食べたかったな……いや!俺はまだ諦めない!安西先生も言ってた!諦めたら試合終了だって!

 

『『大賢者』スキルが体を持つことはできるの?!』

 

《告。『さん』をつけなさい。敬語を使いなさい》

 

『え?』

 

 『大賢者』《『さん』をつけなさい》……『大賢者』さんにゼネコンで働いてたときに苦手だった上司の女の面影を感じた。もしかして今世でも前世と同じように馬車馬のように働かされるのか?嫌だぞ。俺はずっと女の子と戯れてたいんだ。そんな不安が俺の中で生まれる。というか何で『大賢者』さんは俺の心の声を読めるんだよ。プライバシーの侵害だぞ!中国か!

 

《……命。》

 

『すみません『大賢者』様。私のようなスキルでも体を持つことは可能なのでしょうか』

 

 『大賢者』さんの声のトーンが低くなり、何か嫌な予感を感じ取ったので、先手を取って強引に話題を切り替える。情けないかもしれない。恥じるべき行為かもしれない。しかし、恥をかいて楽をできるなら、恥をかいた方が良い。これがあの上司と一緒に働いた期間で学んだ処世術と言うものだ。

 

《……はぁ…可能です》

 

 すっごいため息つかれたんだが?何か会ったばっかなのに呆れられたんだが?しかし、俺でも体を持てるのか!スタンドが宇宙に行く衝撃で、粉々にされたはずの俺の夢は、まだ粉々になってなかった!でもどうやって体を持てるんだろ?流石に人の体を乗っ取るとかは気が引けるんだけど……どうなんですか?『大賢者』さん。

 

《解。ゴーレムに魂を移すことによって、誰にも被害を与えず、体を持つことが可能です》

 

『この世界にゴーレムっているんだ…さっすが『大賢者』さん!博識!…でもゴーレムってどうやって用意するの?俺って体ないし、なんか『大賢者』さん以外と会話できないし、ゴーレム作るの無理じゃない?』

 

《……》

 

『『大賢者』さん?』

 

《……》

 

『おーい?聞いてまっか?』

 

《……》

 

『……逃げるな卑怯者!逃げるなぁぁ!』

 

《命。後一ヶ月あなたが味覚を無くすことを禁じます》

 

『え?……別に余裕じゃない?俺ってスキルだから何か食うこともないし、そもそも味覚ないだろうし。ちょいとオツムが足りないんじゃないかな〜?『大賢者』さん?』

 

《……》

 

 『大賢者』さんが黙っちゃった。…てか今更だけどスキルに転生って何?スキルが結構強そうなのは救いだけど、せめて生命体にしてくれよ。体をくれよ。欲は言わないから、今からでも俺を町中の人が、五度見するぐらいのイケメンにしてくれよ。

  

 そんなことを願っても俺がスキルという現状は変わらない。

 俺が落胆して不貞寝を決めようとしたとき、同志が何かしようとしていることを感じ取れた。

 

『ん?これは草…かな?』

 

 同志がその言葉を発して草を溶かした直後。俺の無いはずの口に草が現れる。そして味覚を苦味が刺激する。今までの人生で一度も感じたことのないような苦味。漢方とか飲んでた人なら耐えられただろうが、俺は無理だった。いやスキルでも味覚あるんかい!そう言いたかったが、今は苦味に耐えるのが精一杯だ。

 

 ……もしかして、『大賢者』さんは俺に味覚が残っているのを知っていた?

 

《……ふっ》

『絶対知ってたじゃん!この策士め!』

 

 クッソ!やめろよ同志!もう絶対草を食べようなんてするなよ!お前の行動一つで不幸になる人間《あなたは人間ではありません》やかましいわ!

 

 頑張って草をむしゃむしゃ捕食して、何とか飲み込む。

 

『あぁ^〜体に染み渡る^~』

 

 俺が草を飲み込むと同志の体内の草も無くなった。同志が草を食わないことを願うが、同志は草を食うことに快感を覚えていた。

 

 絶対コイツまた草食うじゃん!嫌だ嫌だ!『大賢者』さんお願いです!味覚切ってください!

 

《告。あなたが味覚を切ることは一ヶ月間禁止されています》

 

 されてますってなんじゃい!『大賢者』さんが決めたことだから、やろうと思えば味覚切れるんでしょ!?さっきまでの愚行を全て謝りますから!お願いです!

 

《……》

 

 あの『大賢者』さん?……終わった…。

 あ、また草食おうとしてる……苦味がァァア!?

 

 

〜〜〜

 

 

 あれから途方もない時間が過ぎた。いや、もしかしたらそんなことないかもしれない。だが、俺は草の苦味にずっと苦しめられて、途方もない時間に感じた。

 

 同志が草を食べてる理由を『暇D⭐︎A⭐︎K⭐︎A⭐︎R⭐︎Aだよ』と答えたときは、殺意が湧いた。こっちは、お前が暇つぶしで食った草に、苦しめられてるんだぞ。結局『大賢者』さんには味覚を切ってもらえないし…。同志がスライムじゃなかったら、俺は暴走してたかもしれん。

 

 今はようやく『大賢者』さんが同志の体に定着して、様々な質疑応答をしているところだ。俺はすでに『大賢者』さんにみっちり教えられたので、聞く必要はない。そう思って、ぼーっとしていたら、何かやばいことが聞こえた気がするんだが?ま、まあ気のせいか…うん、そうだよな!そうに決まってる。

 

《否》

 

『ゑ?』

 

 『大賢者』さんが、俺の考えを否定した直後。同志がすごい勢いで草を取り込み始めてた。俺が覚悟を決める間もなく、口に大量の草を詰め込められる。

 

 俺は無我夢中で草を捕食した。だが、消費スピードよりも供給スピードの方が速い。飲み込んでもすぐに新しい草が口の中に現れる。助けて『大賢者』さん!このままじゃ俺が過労で死んじゃうよ!転生して過労死なんていやだよ!

 

《否。スキルが死ぬことはありません。速やかにヒポクテ草を消化しなさい》

 

『鬼畜!鬼!悪魔!大魔王!同志が童貞だから生まれたスキル!』

 

《……チッ…案。異空間に保管して、後で捕食するのはどうでしょう》

 

 『大賢者』さんからとてもでかい舌打ちを頂いた。これで案を却下でもしたら、俺はもう生きていけないだろう。

 

『それでお願いします……』

 

《了。ユニークスキル『捕食者』の隔離空間を利用します》

 

 すごい…。スキル自身の俺よりもわかってる。もしかして俺って要らない子?!

 『大賢者』さん!俺って要らない子じゃないよね!俺ってめっちゃ有能で居なくちゃいけない存在だよね!

 

《……》

 

 くそぉう!沈黙しやがって!

 別に良いもんね!俺が体を手に入れたらここからすぐ出てやるもんね!

 俺がそんなことをやってる間に、もう同志は草を取り込むのをやめたらしい。うん?でも何か嫌な予感が…。

 

『その辺の草でさえ、ヒポクテ草とか言う希少な薬草なんだったら、この石ころも価値があったり?』

 

《魔鉱石。魔素濃度の高い場所にある鉱石が、長い年月をかけて魔素を取り込んで変異した、貴重な石です》

 

『マジかよ!じゃあ……!』

 

 早速嫌な予感が的中しとる!無理だって!流石に鉱石は無理だって!そんなの食べたら俺のお腹が壊れちゃう!《否。スキルにそんなことは起こりません》あっそうなん?ならいいか…ってなるかボケェ!

 

 俺の講義も虚しく、同志が興奮した様子で鉱石を体内に取り込んだ瞬間。俺の口内をとてつもない圧迫感が襲う。

 

『ひぬうぅ!ひぇるぺすひー!(死ぬうぅ!ヘルペスミー!)』

 

《ハァ…。飲み込んだら勝手に胃で消化してくれます》

 

『ひぉれうぉひゃひゃくふぃってひょ!(それを早く言ってよ!)』

 

 俺は圧迫感に耐えて、何とか鉱石を飲み込む。

 

 本当に生命の危機を感じた。俺は噛まずに飲み込むと言うことを覚えて、格段に捕食が楽になった。それからも同志が次々と鉱石と草を取り込んでくるが、余裕で捕食する。

 

《告。あなたが噛まずに飲み込むと、解析スピードが落ちるのでやめてください》

 

 うっす。俺は草はしっかり噛んで捕食することにした。

 

『ぬわああん疲れたもおおん』

 

 俺は何とか後回しにしたやつを除いて全てを完食した。完食したら暇になったので、同志のことを見てみると…。

 

『食い放題だぁーー!』

 

 何か同志が調子乗ってるんだが?俺が必死こいて草と鉱石を捕食してるのに……天罰下んないかな……。

 

『え゛?』

 

 同志が崖を転がって水面に落下した。ザマァ!人を《スキルです》……スキルを散々バカにするからこうなるんだよ!Foo↑気持ちぃ~。

 

 ん?待って?これって同志が死んだら俺も死ぬくね?

 

 頑張るんだ同志!お前ならいける!頑張って水中から脱出するんだ!

 

 がんばれがんばれできるできる絶対できる。がんばれもっとやれるってやれる気持ちの問題だ。がんばれがんばれそこだ。そこであきらめるな絶対がんばれ、積極的にポジティブにがんばれがんばれスキルだってがんばってんだから。

 

 俺の応援が届いたのか、同志が何か行動を起こした。大量の水を捕食して、一気に水を吐いて水圧で加速した。うん?水を捕食?

 

『がぼぼぼ』

 

 口の中に大量の水が現れる。ああ…神様って本当にいるんだな。

 薄れゆく意識の中で俺はそう確信した。




『大賢者』さんからしたら『捕食者』は後輩みたいなもんです。
だから敬語を使えと言うし、何事もオブラートに包むことなく、直でぶつけてきます。

本当はリムルは三十代だけど、賢者という単語が出たことで主人公は四十代だと誤解してます。

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