転生したら『捕食者』だったんだが 作:犬養よわし
ようやく洞窟の出口が見つかった。思い返せば、ここに来るまで色んなことがあった。
トカゲを食べたり、ムカデを食べたり、蜘蛛を食べたり、コウモリを食べたり……本当に不味かった……。こんなにもゲテモノ喰いをさせられて、ストライキを起こさなかった俺は偉いと思う。いや偉い(確信)。
もしこれから先、リムルが何か上手い物を食べようとしたら俺はそれを盗み食いする気だ。日本人の食に対する執着はお化けだからね、しょうがないね。
まあ、ゲテモノばっか食ってた洞窟生活だったが、悪い事ばかりじゃなかった。ヴェルドラに会えたのは勿論のこと、何とヴェルドラと『大賢者』さん監修のもと、念願のボディを手に入れられたのだ。そんな俺のボディの容姿は、端的に言うと超ロングヘアーのつるぺた《機能美です》……機能美ロリだ。
因みに、俺の癖が出たわけではない。俺はこのボディの材料である魔鉱石を取り出すのに忙しかったので、顔面やスタイルは主にヴェルドラと『大賢者』さんが制作した。だから俺の容姿は、ヴェルドラと『大賢者』さんの癖が詰まっているのだ。
いや、ヴェルドラはともかく、『大賢者』さんは多分好みというか、機能性を重視したんだと思う。地面に着く程長い髪の毛は『大賢者』さんは最後まで、動きを妨害するからと反対していた。結局ヴェルドラが強引に押し通したが。しかし流石は『大賢者』さん、ただでは転ばなかった。条件として胸をつるぺ《機能美》……機能美にすることに成功したのだ。
胸と髪以外にも様々部位でお互いの意見が対立して、白熱した口論が始まっていたが……まぁ、そんなことは置いておいて、リムルの視点をヴェルドラと一緒に鑑賞する。
リムルがいざ外の世界へ!と外へ行こうとしたら、扉が勝手に開く、扉が開いた先には男二人、女一人の冒険者?らしき人達が立っていた。防具とかは貧相なので、あまり上位の冒険者じゃないんだろう。
リムルは見つかる前に岩の影に身を隠していた。スライムなんてクソ雑魚モンスター、見つかったら何されるかわからないからね。
リムルは冒険者が去ったのを確認してから外に出た。
この世界に来てから初の外の風景は、前世の東京のコンクリートジャングルと違って、木々が生い茂っていて、人工物の気配が感じ取れない自然が豊かな森だった。
『懐かしいな!我が封印される前と何も変わっておらん!』
ヴェルドラは数百年封印されてた。と言うことは数百年の間ずっとこの自然を維持していたのか。資源が結構豊富そうだし、資源目当てに人間が移り住んできそうなものだが……そこのところどうなんですか?『大賢者』さん。
《解。個体名ヴェルドラが『何故我に聞かんのだ!!』……》
『だってヴェルドラより『大賢者』さんの方が信用できるんだもん』
俺のその言葉が相当効いたのか、ヴェルドラが体を丸めて落ち込んでしまった。対照的に『大賢者』さんは体がないので表情などはわからないが、心なしか嬉しそうにしていた。やっぱり感情がないって嘘では……?
《ありません》
『ないに決まってるであろう』
『なんでお前はそっち側なんだよ!』
そんなにおかしいことかな……?
俺っていう例外は含めないとしても、結構ありそうなものだが……ワン⚪︎ースの動物系悪魔の実には意思が宿る的なノリで、ゴムゴムの実にはニカの意思が宿る的なノリで。……俺はもしかしてニカだったのか?
『バカなことを言っておらんで、映像を見てみろ。面白いことになっておるぞ』
ヴェルドラの声に従って映像を見てみると、そこには複数のゴブリンに土下座されてるリムルがいた。どうしてこうなった?RPGだと大体ゴブリンの強さは、スライムと同じぐらいの強さか、ちょっと強いぐらいだ。なのに土下座?リムルが他者に勝っていることなんて、40年も童貞を貫き通したことぐらいだぞ?この世界は童貞が偉いのか?
『なんでこんな状況に?』
『我もあまり見ていなかったので詳しくは知らんが、どうやらゴブリンがリムルの強さを見込んで助けを求めて、リムルがそれを忠誠を誓うことを条件に承諾したらしい。お人好しなやつよの、ゴブリンが忠誠を誓ったところで、大して役に立たんというのに』
『リムルは別にゴブリンを助けるのに理由とか損得とか、そう言うの考えてないよ。多分だけど』
『……ふむ?』
ヴェルドラは理解できてなさそうだ。しかしそれも無理ないだろう。この世界は弱肉強食が唯一絶対のルールの世界だ。元の世界の平和ボケした考え方は理解されなくてもしょうがない。
まぁ、リムルがお人好しということは同意する。元の世界基準で考えてもリムルはお人好しの部類に入る。……俺は元の世界ではどんな人間だったのだろうか、リムルのようにお人好しだったのか?
その後、リムルは牙狼族によって怪我を負ったゴブリンの治療に向かった。
治療には、洞窟で暇つぶしとか言うふざけた理由で、食っていたヒポクテ草から作った回復薬を使った。苦しみながら捕食した甲斐があったというものだ。これで何も使い所がなかったら俺はキレてた。
リムルがゴブリンを治療している間、ゴブリンに指示を出して、村を脅かしている原因である牙狼族から、村を守るために村の周りに柵を設置した。……柵と言うのも憚られる程の柵だが、ないよりはマシだ。それにリムルが一手間加えていたから、ただの柵ではないようだし。
これで、村の防御を万全…かは分からないが、やれることはやった。あとは牙狼族ことを待つだけだ。……それにしても、ここの村のゴブリンは優秀だな。初対面の奴の指示を疑わず、ただ信じて実行する。それは一見簡単そうに見えて、結構難しいことだ。少なくとも、俺だったら無理だ。
〜〜〜
「オォン!アォォォォオン!!」
太陽は沈み、代わりに月が空に上がってきた頃。
牙狼族は遠吠えを上げ、村に接近する。目標はゴブリンの村の制圧。
違和感。
牙狼族の族長は思わず足を止める。目の前の村はゴブリンの村だ。なぜ違う種族であるスライムがそこにいる?彼の頭にそのような疑問が浮かぶ。
しかし、所詮はスライムだ。一回でも突けばすぐ死ぬ、攻撃力も皆無。そのような下等な種族いたところで己の勝利は揺るがない。そう判断し、突撃を仕掛ける。
その判断が牙狼族の敗北を決定づける。
ゴブリンは柵で身を守り、弓矢で牙狼族の射程距離外から攻撃する、まるでアウトレンジ戦法のような策をとってきた。今までの、ただ牙狼族に一方的に襲われていただけのゴブリンとはまるで違う。今度は牙狼族が一方的に攻撃されている。
違和感。
族長は同胞が悲鳴をあげてる中、戦局を冷静に見極める。すると、血と月明かりに照らされた糸が目に入る。それはブラックスパイダーのスキル『鋼糸』だ。
今までゴブリンを襲っていたとき、そんなものが使われたことはなかった。ということは、このスキルは、突如村に味方するスライムによるものだ。そしてさっきから感じる違和感の正体は、この糸だ。族長は確信した。同時に安堵した。
この程度の糸は余裕で噛み切れる。牙狼族の勝利は揺るがない。
違和感。
族長は糸を噛み切りながらスライムの元へ進む。
ゴブリンが急にアウトレンジ戦法を使ったのもこのスライムの知恵なのだろう。ならば、スライムが死ねば、ゴブリンの抵抗は弱くなる。
族長の判断は間違っていなかった。実際にスライムが死ねば、ゴブリンの指揮はガタガタになり、士気も落ちて、まともな抵抗ができなくなるだろう。
違和感。
さっきから感じる違和感を振り払うよう、勢いよくスライムに飛びかかる。
勢いのまま、スライムを噛みちぎって殺……せなかった。両足が粘着性のあるものに引っかかり、動くことができなくなった。
「粘糸さ」
生き物全般に言えることだが、一度でも当たりと確信したものがあると、それ以外の可能性を全て切り捨ててしまう。この場合、族長は糸を全て『鋼糸』だと思い込んでしまった。だから、糸が粘着性のある『粘糸』だと気付けなかった。
「スキル『水刃』!」
違和感。
水で作られた刃が己の首に迫ってきても、違和感は拭えない。
首が綺麗に体から別れる。族長の意識は痛みを感じる間もなく、途絶えた。
『ここは……どこだ?我は確かゴブリンの村を襲い、そして……』
スライムに殺された。そう言葉を続けようとしたが、何者かによって遮られた。
牙狼族は嗅覚、聴覚が優れており、気配に敏感である。小さな虫が10m先にいても、余裕でその存在に気づける。しかし、声の主には声をかけられるまで、存在に気づけなかった。
『思い出さなくて良い』
『!?』
その声は男というにはあまりにも高く、女というには少し低い声をしていた。しかし、そんなのは些細なことだ。それだけだったら、己の体が震え上がるには至らない。
『何も思考しなくていい、どうせお前はこれから、私に魂ごと喰われるからな』
耳の奥深くへと話しかけてくるような優しい声。魂を誘惑する艶かしい声。本能が今すぐ逃げろと警鐘を鳴らす。今すぐに逃げなければ、己の魂は一生囚われる。確証はないが、そう確信した。
「何者なんだ!貴様は!!」
極度の恐怖心から、精神的な落ち着きがなくなり、声を荒げる。恐怖心を煽り、精神を弱らすのが、声の狙いだとも知らずに。
『……別に言っても良いが、聞いたところで何もできないぞ?』
「早く答えろ!!……まさか…?」
『心当たりがあったか?』
思い出したのは遠い昔、己がまだ幼い頃に親父殿に言われたこと。
当時はそんな者がいるはずがないと、存在を否定した者。
「……なぜだ?」
『ん?』
「なぜ貴様のような者があのスライムに……?」
『特に理由はない。偶々というやつだ。それに、私の宿主はあのスライムじゃない』
「それならば……」
『もう話すことはない。さらばだ。お前はもう、二度と輪廻の輪に組み込まれることはない』
声の主が族長に手を向ける。
たったそれだけの動き。それだけでも族長は己が今から死ぬことを理解した。
「嫌だ!待ってくれ!」
恥も何かもを捨てて懇願する。しかし声の主は聞く耳を持たない。
『……』
族長はようやく理解した。
ずっと感じていた違和感は、スライムなんかではない。違和感の正体は
お ま た せ
今まで食わず嫌いしてたブルアカをやってました。あれパネェッス。一瞬で沼りました。
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ま、多少はね?