Black Archive   作:アストラ連合学園中央生徒会

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コンタクト


読みやすくする為に一部スペースを入れるようにしました。


4話

 

 

 路地裏の奥で不良集団の気配は多く、隊員達の緊張も高まっていくなか、小隊長は低く命じた。

 

 

「突入!」

 

 

 ヴェール711の機関銃手を除いた01分隊と02分隊、計10名の生徒たちが順番に角を曲がった。

 

 ポイントマンの隊員が即座にバースト射撃を放つ。

 

 3発ずつの短い射撃音が路地の壁に跳ね返り、鋭い炸裂音と共に先頭にいた不良の頭部に命中する

 

 不良は悲鳴を上げる暇もなく、地面に倒れ込む。

 

 

「前進!」

 

 

 先手を取ったポイントマンが叫びながら前進を始めた。

 

 前進しながらもバーストを繰り返し、次々と不良を倒していく。残りの隊員たちは壁際に張り付く様に、互いにカバーし合いながら素早く続く。

 

 狭い路地では大きな動きは出来ない、ミス一つで命取りになる緊張感が全員を包んでいた。

 

 不良たちは最初、突然の猛攻に動揺した。しかしすぐに立ち直り、近くのゴミ箱やコンテナ、倒れた鉄パイプなどの遮蔽物に飛び込んだ。

 

 

「くそっ、何だこいつらは!」

 

「てめえら、ゆるさねぇ!」

 

 

 罵詈雑言を並べ立てながら不良たちが反撃を開始した。

 

 自動小銃の乱射が路地を埋め尽くし、壁に無数の弾痕を刻む。

 

 跳弾が耳元で甲高い音を立て、削られたコンクリートの破片が隊員たちのヘルメットを叩く。

 

 隊員たちは即座に遮蔽になりそうな物を利用しつつ前進を続けた。

 

 壁の凹みやコンテナの陰に身を寄せ、バースト射撃で応戦。

 

 マガジンが空になった隊員は即座に「カバー!」と叫び、後方の仲間が素早く制圧射撃を浴びせて時間を稼ぐ。

 

 空になったマガジンはダンプポーチに突っ込み、新たなマガジンを叩き込んでボルトを引く——そのわずか数秒の間も、仲間によるカバー射撃が途切れることはなかった。

 

 

「リロード!」

 

 

 更に別の隊員が叫んだ瞬間、隣の隊員が即座に身を乗り出して連射で不良を牽制。

 

 マガジンチェンジを終えた隊員はすぐに射撃を再開し、連携は完璧だった。

 

 しかし、戦況は一瞬で変わった。

 

 遮蔽物に隠れていた散弾銃持ちの不良が、突然飛び出して最前列のポイントマンに狙いも定めず射撃した。

 

 至近距離からの散弾がまともに命中し、彼女は胸を撃たれて後ろに吹き飛ばされた。ボディアーマーが衝撃を吸収したものの、強烈な打撃で行動不能に陥り、地面に倒れ込む。

 

 

「援護しろ!」

 

 

 小隊長の声が鋭く響いた。

 

 

「機関銃手、制圧射撃! 不良の頭を押さえろ!」

 

 

 後方に待機させていた01、02分隊を合わせて2人の機関銃手が即座に軽機関銃のトリガーを引き、銃弾の雨を浴びせる。

 

 7.62㎜の頼もしい銃声が路地を震わせ、不良たちの遮蔽物を削り取る。

 

 敵の反撃が一瞬途切れた隙に、後列の隊員2名が素早く行動不能になったポイントマンの両脇を抱え、近くの遮蔽物の陰に引き摺って隠した。

 

 引き摺られた隊員は苦しげに息を吐きながらも、徐々に意識を取り戻し始めていた。

 

 2人の隊員は彼女を安全な位置に横たえると、即座に隊列に戻り、再び射撃ポジションを取った。

 

 仲間を救う動作は迅速で無駄がなく、感情を押し殺した動きだった。

 

 小隊長は状況を即座に把握し、機関銃手に新たな指示を飛ばした。

 

 

「射撃点変更! 射撃しながら前進しろ!」

 

 

 機関銃手と装填手が伏せた状態から素早く立ち上がり、前進しながら制圧射撃を行う。

 

 その隙を突いて、小隊の擲弾手が動いた。

 

 彼女は不良たちが固まっている箇所を素早く確認すると、手榴弾のピンを引き抜き、大きく振りかぶった。

 

 

「グレネード!」

 

 

 叫び声と同時に手榴弾が弧を描いて飛んだ。隊員たちは即座に遮蔽物に身を隠し、口を開けた。

 

 数秒後、路地の奥で轟音が響き渡った。爆風が埃と破片を巻き上げ、狭い空間を一瞬で埋め尽くす。不良たちの悲鳴が爆発音にかき消された。

 

 爆発が収まった瞬間、小隊長が叫んだ。

 

 

「周囲警戒!」

 

 

 隊員たちが一斉に身を起こし、自動小銃を構えて前進を再開した。煙が晴れると、4人の不良が武器を地面に投げ捨て、情けなく両手を上げていた。

 

 

「降参だ〜! もうやめてくれ!」

 

「撃たないで! 銃は捨てた!」

 

 

 小隊長の声が鋭く響く。

 

 

「確保しろ!」

 

 

 即座に数名の隊員が前進し、4人を地面に押さえつけ樹脂製ハンドカフで後ろ手に縛り上げた。

 

 残りの隊員たちは周囲への警戒を怠らず、気絶した不良たちを次々と確保する。

 

 起き上がる前に拘束し、路地の片側に並べていく。動作は迅速で、一切の無駄がなかった。

 

 その時、一人の隊員が小隊長を呼んだ。

 

 

「隊長!」

 

 

 彼女の肩には、先ほど行動不能になっていたポイントマンが捕まっていた。気絶から立ち直った彼女は、顔をしかめながらもしっかりとした声で訴えた。

 

 

「問題ありません! 戦闘継続可能です!」

 

 

 小隊長は一瞬だけ彼女の様子を観察し、短く考えた。無理をさせるのは危険だが、ここで戦力を落とすわけにもいかない。

 

 

「……無理はするな。痛みが強くなったら即座に後退しろ」

 

「了解!」

 

 

 行動不能から復帰したポイントマンは、軽く肩を回して再び隊列に戻った。仲間たちは無言で彼女の復帰を歓迎するように、拳をぶつけ合った。

 

 小隊長は周囲の状況を確認し、縛り上げた4人の不良たちの元へ歩み寄る。彼女のブーツが空薬莢を蹴り飛ばし小さな金属音を立てる。

 

 不良の一人が怯えた目で小隊長を見上げ、震える声で言った。

 

 

「お、お前ら……誰なんだよ……ヴァルキューレじゃねえだろ……」

 

 

 小隊長は自動小銃を下げたまま、低い声で問いかけた。

 

 

「ここで何をしていた?誰に指示された?」

 

 

 不良たちは互いに顔を見合わせ、口を噤んだ。

 

 不良の一人が、怯えを隠すように唇を歪めて吐き捨てた。

 

 

「……知らねえよ。てめえらみたいなヴァルキューレもどきに答える義理はねえ」

 

 

 それを見た別の不良が嘲るように笑った。

 

 

「ヴァルキューレの犬か? それとも連邦生徒会のクソどもかよ。どうせすぐに逃げ出すくせに、偉そうに聞きやがって」

 

 

 反骨精神をむき出しにした態度だった。拘束されていても、まだ不良としての意地を張っている様子がうかがえる。

 

 小隊長の表情は変わらなかった。冷たい視線を不良たちに這わせ、低い声で繰り返した。

 

 

「もう一度聞く。ここで何をしていた? 誰に指示された?」

 

「はっ! 知るかよ。そんなこと喋ったって何の特にもならねぇ!」

 

 

 一番口の悪い不良が吐き捨てるように言い、他の三人もうなずいて同調する。路地の空気が、重く張りつめる。

 

 小隊長は静かに息を吐き、自動小銃を背中に回した。ゆっくりと拳銃をホルスターから抜き、油断なく不良の一人に近づいていく。

 

 

「……時間がないんだ」

 

 

 次の瞬間、小隊長は不良の胸倉を強く掴み上げ、地面から半ば引きずり起こした。相手の顔が自分の目の高さまで来ると、拳銃の銃口を不良の腹部に強く押しつけた。

 

 不良の目が見開かれる。

 

 

「ちょ、ちょっと待——」

 

 

 乾いた銃声が3発、路地に響き渡った。

 

 不良の腹部に拳銃弾が叩き込まれ、激しく体をのけぞらせて悶絶した。強烈な衝撃と痛みに顔を歪め、口から苦痛の呻きが漏れる。

 

 

「ぐあっ……! あ……ぐっ……!」

 

 

 小隊長は胸倉を掴んだ手を離した。

 

 不良は地面に崩れ落ち、縛られている為に腹を抱える事も出来ず蹲り、激しく呻きながら身をよじる。

 

 ボディアーマーがない腹部への至近距離射撃は、キヴォトスの生徒といえども相当な苦痛を与えるものだ。

 

 残りの3人の不良は、目の前で起きた過激な“お話”に完全に凍りつく。

 

 先ほどまで反抗的だった態度が一瞬で崩れ去り、我先にと口を開き始めた。

 

 

「わ、わかった! 喋るよ! 喋るから撃たないでくれ!」

 

「狐の面を付けた女だ! あいつが『連邦生徒会を叩くなら今』って煽ってきたんだよ!」

 

「そう! その女だ! そいつにボコボコにされて私たちも仕方なく従ってたんだよ!」

 

 

 小隊長は拳銃をゆっくりとホルスターに戻しながら、冷徹な視線を不良たちに注いだ。

 

 

「狐面……か。詳しく話せ。その女は今どこにいる?」

 

 

 不良たちは震える声で次々と情報を吐き出した。

 

 

「この路地の向こう……連邦捜査部?とか言うビルに向かったはずだ。仲間を何十人も集めてるって……」

 

「脱獄した囚人の一人だって話だ。とにかくヤバい女だぞ……」

 

 

 小隊長は短く頷き、隊員の一人に目をやった。

 

 

「詳細は記録しておけ、後でCPに報告する」

 

 

 その時、後方で端末のビープ音が小さく鳴った。

 

 

「隊長! 信号を捉えました!」

 

 

 02分隊の通信担当が、腕に付けたデバイスを操作しながら声を出した。

 

 小隊長は即座に近づき、通信担当のデバイスを確認した。弱い信号だが確かに発している。

 

 

「これは……間違いない。エージェントのものだ。逆探知の範囲内に入ったか」

 

 

 通信担当の隊員が素早くデバイスを操作をして、エージェントの携帯端末と接続し、CPへデータを送信しながら報告した。

 

 

「最後の位置情報と誤差が生じますが、問題ありません。追跡できます。

 

エージェントはさらにこの路地の先を進んだ、連邦捜査部裏手の廃ビル群……グリッドK-5にいる可能性が高いです。

 

ただ、信号がかなり弱い……電池がほとんど切れかけています」

 

 

 小隊長は短く息を吐き、戦術タブレットでマップを開く。

 

 

「戻るよりは進んだ方が近いな」

 

 

 彼女は短距離無線機で03分隊に連絡を取った。

 

 

「03、こちらヴェールリーダー。目標座標を入手、グリッドK-5。K-5付近で合流する。移動して脱出経路を確保せよ」

 

『03、了解。グリッドK-5にて脱出経路の確保、合流まで待機する。以上』

 

 

 小隊長は回収時、迅速に移動出来るように車両を廃ビル付近に回させた。短距離無線機から手を離した彼女は、周囲を見回し、行動不能から復帰した隊員の様子をちらりと確認した。

 

 彼女の足取りに異常もなく、しっかりと自動小銃を構え直している。

 

 

「……」

 

「行けます! 隊長!」

 

 

 復帰したポイントマンは小隊長の視線に気付き、少し強がったように答えたが、その声には確かな意志が込められていた。小隊長はそれ以上何も言わず、ポイントマンを信じる事にした。

 

 01分隊の通信担当を呼び小隊長は、無線機のスイッチを入れた。

 

 

「CP、こちらヴェール711。裏路地で不良集団20名以上と交戦、制圧した。尋問により暴動の扇動者は災厄の狐、孤坂ワカモであると判明した。

 

また災厄の狐は連邦捜査部に戦力を集結中、真偽は不明だ。

 

並びにエージェントの端末信号を捕捉、グリッドK-5だ。我々はこれよりK-5に向かう、GOATの到着状況を教えてくれ」

 

 

 CPのオペレーターの声が少し遅れて返ってきた。

 

 

『こちらCP、了解。ヴェール711、よくやった。

 

こちらでエージェントの詳細な位置を把握した。グリッドK-5、南南東方面にある6階建ての廃ビルだ。

 

GOATは既に作戦空域を旋回中だ。貴官らが廃ビルに突入次第、屋上からラペリングで突入する。エージェントを確保したら車両で護送せよ、上空からGOATが援護する』

 

「ヴェール711、了解」

 

 

 小隊長は無線を切り、全隊に指示を出した。

 

 

「聞こえたな、お前たち。目標はグリットK-5南南東の6階建ての廃ビルだ。行くぞ!」

 

 

 隊員たちは短く「了解」と答え、再び狭い路地の奥へと前進を始めた。

 

 拘束された不良の一人が、去りゆくヴェール711の背中に小さく呟いた。

 

 

「……あいつら、マジでヤバい……」

 

 

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