Black Archive   作:アストラ連合学園中央生徒会

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責任を負う人


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社畜くん(AI生成の姿)


2話

 

 

 机の防壁越しに、不良たちの銃声が響く。

 

 硝煙の匂いが鼻について、発砲音と銃弾が壁を叩く音で耳が痛い。

 

 私は愛銃━スチェッキンを握りしめ、防壁の隙間から身を乗り出して反撃する。

 

 銃弾が私の髪をかすめ、頬に熱を感じた瞬間、心臓がバクバクと跳ねる。

 

 

「会長、右から来ます!」

 

 

 リナの凛とした声が聞こえる。

 

 机の隙間からショットガンを構え、不良の動きを牽制してる。

 

 彼女の射撃はあんまり正確じゃない、だから当たりやすいショットガンを使っていた。

 

 でも、今日のリナはとても冴えている。柱の影から突っ込んできた不良の膝を撃ち抜き転倒させた。

 

 

「リナ、ナイス!」

 

 

 私は叫びながら、左の壁沿いからチラチラと見える不良の動きを追う。

 

 被弾を恐れたのか、壁から腕だけを出して投げた手榴弾はここまで届かない。

 

 けれど防壁の近くまで爆風が届き、机がガタガタと揺れる。

 

 

「くっそ〜、しつこーい!」

 

 

 ミオが、慌ててサブマシンガンを乱射。普段はおっとりしたミオだけど、戦闘になると意外と大胆だ。

 

「会長、援護しますよー!」って、声も張って弾幕で不良を押し返す姿は頼もしい。

 

 

「ミオ、落ち着いて!リズム取って撃って!」

 

 

 私は声を出しながら、別の不良が防壁に近づくのを見てスチェッキンを連射。

 

 弾が命中し、そいつは肩を押さえて後退する。

 

 ユーリは、アサルトライフルを手に、がむしゃらに突っ込んでくる不良に連射を浴びせ、倒している。

 

 

「その調子だよ!ユーリ!」

 

 

 でも、正直、キツい。

 

 ロストレストノット社の攻勢が不良たちを押し込んでいく事で、私たちの防衛線は今までに無いほど苛烈で、手の震えが治らない。

 

 不良たちの逃げ道を塞いでるのもあってか攻撃の厚みが増し、机の防壁は穴だらけ。

 

 私も腕や肩を撃たれて、じんじんと痛む。みんなボロボロだ。

 

 それでも、誰も逃げない。リナ、ミオ、ユーリ、そして私――私たちの想いが、この場所を死守してる。

 

 数時間と錯覚する様な濃い時間だったけど、実時間は数分くらいだったと思う。

 

 ついにロストレストノット社のロボットたちが不良たちを一掃。

 

 銃声が止み、辺りがしん、と静まりかえった。

 

 私たちはへたり込んで、汗と硝煙にまみれながら、互いの無事を確認し合う。

 

 

「…みんな、大丈夫?」

 

「は、い……なんとか」

 

「つ、疲れたぁー!」

 

「……うん」

 

 声は掠れてるけど、みんな無事だ。

 

 互いの顔を見合って安堵の息を吐く、いつもの私たちだ。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 みんなで一息ついたすぐ後に、防壁の穴からロストレストノット社のロボットたちが近づいてくるのが見えた。

 

 盾持ちのロボットの後ろに居るのは、遠目で分かりにくかった異質な大人だ。

 

 その姿は山羊の骨で出来た頭で、首から不気味なモヤが出ていて、戦闘服を着た異質な大人。

 

 彼の目に瞳はなく青い炎のような物が、揺らめいている。

 

 今まで私が見てきた大人とは、見た目が大きく違う。

 

 青い炎の瞳は鋭く、品定めされているようで、体がぶるりと震える。

 

 

「校内の武装集団は無力化した。

お前達は、あの部屋に居た奴らで間違いないな?」

 

 

 彼の声は低く、まるで機械のような抑揚だ。

 

 私は息を整え、立ち上がる。

 

 リナが私の横で身構え、ミオとユーリも緊張した様子で彼を見つめた。

 

 

「私はこの学園の生徒会長、利根トトネ。

他の子は生徒会役員たち。あいつらは校舎を不法占拠した不良グループで、私たちとは敵対してる」

 

 

 自分の声が震えないように、語尾を強めて必死で抑える。手の震えを誤魔化すように握り締めた手にリナの手が添えられた。

 

 軽く息をすって、はく。握り締めた手を解いて、リナの手を握った。

 

 彼の炎の瞳が、私たちを見回す。

 

 

「なるほど……。

つまり、子供に騙されたのか……。ふーむ、強かと言うべきか?それとも、そんな子供が居なかったことを喜ぶべきか?」

 

「えっと、あの?」

 

 

 彼は何やら納得した声色で、側頭部を指で叩きながら呟いている。

 

 

「こっちの話し、と言うわけにもいかんか。

この学園の生徒会を名乗る集団から、嘆願書紛いの封書が届いてな」

 

 

 嘆願書?封書?私はリナたちを見回すが、みんな首を振る。

 

 私も当然、知らない。一体何のことだろう?

 

 

「すみません、私たちはなにも……」

 

「だろうな」

 

 

 一体何を、と聞こうとする前に彼は教えてくれた。

 

 

「不良共は、お前達生徒会に成りすまし、俺の所に嘆願書を送ってきた。

内容を纏めると、自治区の行政権を譲渡する代わりに物資をくれ、という話だ」

 

 

 私は事の重大性を理解し、途端に頭を抱えて蹲りたい気持ちだった。

 

 

「行政権を、ですか?」

 

「え、なになに?ドユコト?」

 

 

 何とか絞り出した声で聞き返す。

 

 リナが眉をひそめ、ミオはワタワタとして、ユーリはイマイチ理解していないハテナ顔だ。

 

 

「実際、この自治区は無法地帯だ。

不良共がのさばって、安全に暮らしたい奴らはみんな出て行った。

お陰で重宝はされたが、客は減り続ける一方。だから今回の話は渡りに船だった。

物資の量はかなり多かったが、それで行政権が手に入るなら安いものだったからな」

 

 

 彼の言葉は、まるで私たちの無力を突きつけるようだ。

 

 確かに、学園はボロボロ。連邦生徒会は遠く、ロクな支援もくれないし、私たちは何もできてない。

 

 

「なぜ、その話に乗ったのですか?

あなたたちの仕事は輸送警護じゃないんですか?なんで行政権を手に入れる必要があるんです?」

 

「よく知ってるな。ならよく聞け、まず俺達は単なる企業傭兵じゃない。

この自治区は、北方への物流の要衝になり得る、戦略的に重要な場所だ。

 

それにこの自治区はまだ死んではいない、治安を回復させインフラを治せば人は戻ってくる。しかし、そのためには武力による秩序が必要だ。

 

お前達にはそのための力が無い。

だから俺達が、大人がやる。お前達は行政権を渡してくれればいい」

 

 

 私の背後に控えていたリナが、眉をひそめたまま一歩前に出る。

 

 

「ちょっと待ってください!行政権を渡すって、私たちの学園を明け渡すようなものじゃないですか!?そんなの、簡単に決められません!」

 

 

「そ、そうですよ!私たち、校舎を取り戻したばっかりなのに……!」

 

 

「……私たちの学園」

 

 

 ユーリは言葉少なげだが、ライフルを握る手に力がこもってるのが分かる。私は彼を見つめ返す。

 

 

「確かに、私たちは弱い。でも、この学園は私たちの全てなんです。

先輩たちが守ってきたもの、思い出が詰まってる! もし行政権を渡すなら、私たちの学園はどうなるんですか!」

 

 

 私たちの言葉を聞いてか彼は少し沈黙し、冷静に答えた。

 

 

「学園を潰す、とは言っていないだろう。

お前達が望むのであれば、生徒会としての役割も一部残せる。だが、治安と行政は俺達が担う。

それが、最も速く自治区を再生する方法だ」

 

 心が揺れる。彼の言うことは正しいかもしれない。この自治区は崩壊してる。

 

 私たちにはどうにもできない。でも、彼らに全てを委ねるのは……本当に正しいのか?

 

 

「少し……時間をください……仲間と相談したい」

 

「良いだろう。自治区にとって何が最善か、お前達にとって何が最良か、よく考えろ。その間、校庭の一部を借りるぞ。

 

それともう一つ、物資を積み込んだ輸送機だ。元々渡す予定で持ってきたんだ、中の物は好きに使うといい。

物資に手を付けたからといって何かを要求する気はない、寄付だと思え」

 

 

 輸送機は校庭に着陸させる、と言いながら彼は背を向け、ロボットたちと共に去っていく。

 

 私は3人と顔を見合わせる。みんな、疲れ切ってる。今は少し休もう。

 

 校庭にみんなで出ると、機関砲やロケットによってボコボコにされた校庭の一部が既に戻され、簡易的なヘリポートになっていた。

 

 ロストレストノット社のロボットが、縛り上げた不良たちを整然と並べていく中、巨大な輸送機が轟音を立てて着陸する。

 

 後部の扉が左右に開き、中から出てきたのは、物資の入ったコンテナ。

 

 食料、医薬品、銃器のメンテナンスキット……まるで私たちの窮状をすべて見透かしたような内容だ。

 

 輸送機にはコンテナ以外にも、ロストレストノット社のロボットが何体も並んでいた。

 

 さっきのロボット兵士と違って、ずいぶんとスリムで武器は持っていないように見えた。

 

 ロボットたちはコンテナのを開け、中身を校舎へと運び出して行く。

 

 

「これ、ほんとに……くれるの?」

 

 

 目を丸くして呟くミオ。コンテナから取り出した缶詰や包帯を手渡されるが、彼女の声には疑いと期待が混じる。

 

 

「彼が言った通り寄付、なんでしょう?なら、遠慮なく使わせてもらいましょう」

 

 

 肩をすくめながらもリナは、医薬品の箱を持ち上げて校舎に入って行く。

 

 彼女の腕にも擦り傷がいくつもあるけど、いつものクールな笑顔が戻ってる。

 

 ユーリはコンテナから銃器のメンテナンスキットの入った箱を取り出し、足速に校舎へと入る。

 

 彼女はいつも通り静かだけど、どこか安心したような感じがある。

 

 私は、扉の開いたコンテナの前に立った。

 

 医療品、食料、メンテナンスキット……こんなにたくさんの物資、連邦生徒会からも、もらったこと一度もない。

 

 彼の言葉が頭をよぎる。

 

 “寄付”というのは本当なのか?それとも、彼の目的、行政権を手に入れるための策略なのか?

 

 

「会長、ちょっと手伝ってくださいよー!」

 

 

 缶詰が入った箱を運びながらミオが笑う。彼女の笑顔を見ると、胸の奥が温かくなる。

 

 ひとまず、私も缶詰の箱を生徒会室まで運ぶ事にした。

 

 

「これ、ちゃんとした薬ですね。ブラックマーケットの粗悪品じゃないですよ」

 

「……これで、次はもっと戦える」

 

 

 ミオと一緒に生徒会室に戻ると、リナは箱から医療品を取り出し、傷の手当てをしながら医療品の品質を確かめていた。

 

 

「こら、ユーリ」

 

 

 ユーリは手当てもせず、メンテナンスキットで銃のクリーニングを始めていた。そんなユーリを見かねたリナが彼女の手当てしている。

 

 そんな光景に苦笑いしながら、箱から医療品を取り出し、傷の手当てをした。

 

 傷口に染みる消毒液の痛みが、これが夢じゃないことを教えてくれる。

 

 缶詰のスープを温め、みんなで一緒に食べる。

 

 しょっぱいけど、温かくて、久しぶりに感じる「普通の食事」の味に、涙が出そうになる。

 

 

「……こんな風に笑い合えたの、いつぶりかな?」

 

「会長……」

 

「これ、とっても美味しいですよ!ユーリちゃん、あーん!」

 

 

 私の呟きが聞こえたのか、隣に居たリナが心配そうに私を見つめた。

 

 ミオは別の缶詰を開けて、食べさせようとし、ユーリも素直に受け入れ口を開けて食べている。

 

 その光景を眺めているだけで、私の口元も緩む。

 

 校庭のいたる所でロストレストノット社のロボットが警戒を続け、彼がロボットたちに指示を出してる。

 

 怪我の治療とご飯を食べた私たちは、防衛線の後片付けや、落ちた薬莢の片付けをする。

 

 みんなで黙々と片付けをしていると、すっかり日が落ちてきたので生徒会室に戻ることにした。

 

 机もボロボロで、だけどここは私たちの居場所。リナが地図を広げ、自治区の現状を整理し始める。

 

 

「道路はガタガタ、電力は不安定、治安は……ええ、ずっと分かってましたね」

 

 

 がっくりと肩を落とし、ため息をつく。

 

 

「連邦生徒会は当てにならない。自分たちでどうにかしたいけど、校舎を守ることすら難しい」

 

「で、でもでもっ、今日のは、なんとかできたじゃないですか!」

 

「……次はもっと、うまくやる」

 

 

 私の言葉に後輩たちが励ましてくれるが、どれだけ頑張っても、次はきっとないと思う。

 

 彼らが居なくなればすぐに不良が集まり、今度こそ校舎も奪われる。そう確信してしまう。

 

 彼の提案が頭をよぎる。行政権を渡せば、彼らがこの自治区を整備してくれる。

 

 道路、インフラ、治安……私たちができなかったこと、全部。

 

 でも、学園を渡すようなものじゃないかな?先輩たちの思い出、この校舎、私たちの思い出の学園はどうなるの?

 

 

「会長、あの人って……悪い人じゃ、ない……ですよね?」

 

「こんな物資、連邦生徒会はくれませんでした。ブラックマーケットでもこんなまともな物、高くて買えませんよ」

 

「……確かに、あの物資。ただのご機嫌取りなら、もっとケチな内容でもいいはず。医薬品も、銃のメンテキットも、ちゃんとしたやつだった。

なんか、腹立つけど、助かった」

 

 

 ひとまず、彼は根っからの悪党じゃないと思う。

 

 なんなら誠実な方だろう、学園の維持が出来なくなった私たちに交渉を持ち掛けているのだから。

 

 そもそもあれ程の武力があるなら、私たちを制圧して、有無を言わせず全て奪えば良いはず。

 

 連邦生徒会もこんな遠くまで確認しに来ないし、発覚しても知らんぷりで派兵もしないだろう。

 

 だから私は立ち上がって、みんなに声を掛ける。

 

 

「彼に会いに行く。話、ちゃんと聞こう」

 

「話……ですか?」

 

「そう。彼は私たちを問答無用で叩き出したりはしない、と思う。だからしっかりと話し合う必要がある」

 

 

 結局の所、私たちは学園がなくなるんじゃないかと思い感情的に反発した。

 

 自治区の行政権のない学園は聞いた事ないけど、それも含めて話をしなくちゃいけない。

 

 校庭に建てられた簡易的なテント張りの指揮場、そこに居る彼の元へ向かう。彼の青い炎の目は、夜の闇で一層不気味だ。

 

 でも、なぜかさっきほど怖くない。「話がしたい」と私が言うと、彼は静かに頷く。

 

 

「話し合いは終わったか?」

 

「まだ……でも、物資、ありがとう。とっても助かりました」

 

 

 私は素直に礼を言う、これは必要な事だったから。すると彼の炎の瞳が一瞬、柔らかく揺れた気がした。

 

 

「言ったはずだ、あれは寄付だ。だが、感謝は受け取っておく。それで態々来たのはそれだけじゃないだろう?」

 

「教えて、行政権を渡すって、どういうこと?私たちの学園、生徒会はどうなるの?」

 

「さっきも言ったが、学園を潰す訳じゃない。生徒会も残る。

 だが、治安維持、インフラ等の自治区の再建は俺達が行う。お前達には、その力がないからだ」

 

 

 その言葉は刺さるけど、否定できない。私たちの無力さは嫌というほど知っている。

 

 

「でも、なぜこの自治区?あなたたちの本当の目的は?」

 

「俺にはやらなければならない事がある、それはこの自治区の再生も含まれる。

それに自治区を整える事が出来れば、人が戻る。人が戻れば金も動く、そうすれば我が社も拡大する。

我が社が拡大すれば、この自治区に投資出来る事も増える。お前達もこの自治区、引いては学園を再生したいはずだ」

 

 

 彼の言うやらなければならない事、気にはなるけど彼の言葉は、嘘じゃない。

 

 物資や彼の態度から感じる、彼らは本気だ。私たちの学園を、自治区を、再生しようとしてる。

 

 

「会長、信じてみますか?私は……信じてみたい、と思いました」

 

「うん。私も信じてみたい、です」

 

「……信じる。少なくとも、連邦生徒会よりはマシ」

 

 

 3人が私の目を見て言う。

 

 私は、生徒会長だ。

 

 だから学園の最終決定権は私にある、これは私が背負うべき責任。

 

 振り返り私は彼を見つめる。

 

 

「行政権、渡すよ。でも、条件があるの。

学園は私たちのもの。生徒会も残す。あなたたちが助けてくれるなら、協力もする。だから、私たちの居場所を奪わないで」

 

 

 彼は一瞬沈黙し、指で側頭部を叩きながら頷く。

 

 

「良いだろう。そもそも最初から学園は潰さない、そう言ってるだろう」

 

 

 彼の青い炎の目が、初めて温かく見えた。私はリナ、ミオ、ユーリと顔を見合わせ、頷き合う。

 

 私たちの学園は、私たちで守る。自治区は彼らが守る、そのために力を貸し合う。

 

 

「よし、決めた。協力しよう。……これから、よろしくね。

それと……やらなければいけない事はその内教えてね。私も協力、出来るならしたいから」

 

 

 私は手を差し出す。彼は一瞬驚いたように見えたが、戦闘服の袖から伸びた手が、しっかりと私の手を握った。

 

 

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