Black Archive   作:アストラ連合学園中央生徒会

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子供の特権


3話

 

 

 

 校庭に朝日が差し込む。

 

 ロストレストノット社の輸送機に、乗っていたロボットたちが、ボロボロの校庭や校舎を整備し始めた。

 

 機関砲やロケットで、抉られた壁や地面を元に戻し、壊れたフェンスを修理する。

 

 ロボットたちが土や鋼材を運び、舗装用の資材を並べる姿は、まるで学園が生き返る第一歩のようだ。

 

 私は、校庭の端からその光景を見つめる。リナ、ミオ、ユーリも私の横に並ぶ。

 

 

「……行動速いね、あの人たち」

 

 

 ポカンとした顔でミオが呟く。まさか昨日の今日で作業が始まるとは思っても見なかった。

 

 

「道路から始めるみたいですね。

確かに、ガタガタの道じゃ物資も運べませんし、いつまでも空輸ですとコストもかかりますからね」

 

 

 地図を手に、冷静に分析するリナ。

 

 ユーリは、ロボットの動きをじっと見つめる。彼女の目は、いつもより少し柔らかい。

 

 ロストレストノット社のリーダー、ゴートマン。名前を聞いた時は、思わず吹き出してしまった。

 

 それほどまでに直球すぎる名前だった、彼も「名は体を表す、と言うからな」なんて言うものだから、声を上げるほど笑ってしまった。

 

 そんなゴートマンがロボットの兵士を引き連れ、近づいてくる。青い炎の目が、朝日の中で揺らめいている。

 

 

「よく眠れたか?早速だが計画を共有するぞ。

俺達は道路の舗装を最優先で行いつつ、電力網の修復を開始する。

差し当たり予備校舎及び校庭、これらを臨時の資材置き場にさせてもらった。

物資の防衛と治安維持のため、複数の部隊を学園周辺に配置した」

 

 

 腕につけたデバイスで、ホログラムを呼び出して視覚的に計画を教えてくれるゴートマン。

 

 

「ありがとう……でも、校舎周辺に部隊って、ちょっと物々しいね」

 

「換金性の高い物資もある、襲撃して来る可能性は高い。それにお前達の安全のためだ」

 

「安全って……私たちは、戦えますよ?昨日だって、何とかできましたし」

 

 

 不思議そうにリナが問う、私も同意見だった。

 

 

「それが、行政権を預かる責任と大人の義務だ。

つまり、お前達が安全に暮らせるようにするのも俺の仕事、ということだ」

 

 

 リナは反論しそうになったけど、ゴートマンが言う「責任と義務」という言葉に、なんだか言葉を詰まらせてしまった。

 

 

「気負わずに勉学に励むといい。また進展があれば共有する」

 

 

 そう言って歩き去っていく、ゴートマンの背中は、何故だが大きく見えた。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 復旧作業が進むある日、ロボットの兵士が不良たちを一列に並べながら校庭に連れてくる。

 

 彼女たちはうつむき、何もかもを諦めたような目だった。

 

 

「校舎を乗っ取ってた子たち?」

 

「一体どうするつもりでしょう……」

 

 

 ミオとリナは困惑した顔で彼を見ている。

 

 ユーリは言葉こそ発さないけど、手にしたライフルを握りしめている。私も胸がざわつく。彼女たちを連れてきた彼に尋ねた。

 

 

「あの……この子たち、どうするつもり?」

 

「こいつらは、お前達の学園を占領していた不良共だ。知ってると思うが。

学園の不法占領は犯罪だ、こいつらは犯した罪に対する罰を受けなければならない」

 

『えっ!?』

 

 

 不良たちの何人かが、その言葉を受けて顔を上げた。その顔は真っ青になっている。

 

 

「ま、まさかこの子たちを……?」

 

「あぁ、当然だろう?信賞必罰だ。聞いたことはあるか?」

 

「それは、あるけど……」

 

 

 彼は、ゴートマンは彼女たちのヘイローを壊すつもり!?

 

 

「待って!待って!確かにこの子たちは、悪いことをしたけど!」

 

「そう、罪を犯した。だから罰を与える必要がある。

法とは目に見えないものだ、だからこそ罰は目に見える形で執行してやるんだ。でなければ、しでかした事の重大性を理解できないだろう」

 

 

 正直、私も罪に罰という考えは賛成だ。

 

 この不良たちが校舎を奪い、私たちを追い詰めた。その日々を忘れられるわけがない。

 

 傷ついた仲間、壊された教室、先輩たちの思い出……全部、こいつらのせい。

 

 ちらりと不良たちを見る、青い顔をした彼女たちは恐怖で手脚を振るわせている。

 

 今の会話で自分たちがどうなるのか、なんとなく分かってしまったのかも知れない。

 

 

「罪に罰なのは分かるよ、私だって……!でも、だからって!彼女たちへの罰が重過ぎるんじゃない!?」

 

 

 彼の青い炎の瞳が真っ直ぐ私を見ている。

 

 

「ふーむ……そうなのか?」

 

 

 癖なのか側頭部を指で叩きながら、小さく呟いている。

 

 

「ちょっと待ってて、みんなと相談するから!」

 

 

 振り返って3人に目配せをして、その場から離れる。声が聞こえないくらいに離れてから深呼吸をし、心を落ち着ける。

 

 確かに、こいつらを許したくない、そんな気持ちもある。でも、罰が重過ぎる気もする。

 

 

「みんなはどう思う?」

 

「ゴートマンさんは、彼女たちのヘイローを壊すつもり、でしょうか……?」

 

「さ、さすがに重いんじゃないかな〜って思います……」

 

「何か、別の罰を」

 

「そうだよね」

 

 

ちらりと不良たちを見た、バラバラの制服を着ているかと思えば、数人から数十人単位で同じ制服を着ているのに気付いた。

 

 

「あの子たち……まさか廃校になった子たちなの?」

 

「恐らく……。あそこの8人の肩にある校章に見覚えがあります。

ここよりもっと北の方にあった学園の校章です、数ヶ月前にクロノスのニュースで、連邦生徒会から廃校通知が出されていたのを覚えています」

 

「じゃあ、あの子たちも連邦生徒会に……」

 

 

 連邦生徒会はあの子たちの学園も見捨てたんだ、私たちにしたように、支援も救援も断って。

 

 彼女たちに学園を奪われかけたのは、本当に辛い事だった。でも私たちが彼女たちを見て見ぬふりをすれば、それは連邦生徒会と同じだ。

 

 あんな辛い思いをするのも、させるのも、もう沢山だ。だからやり直すチャンスをあげる。

 

 ただ、もしも、やり直す気がないなら、それは出ていってもらうしかない。最後の手を差し伸べる、それを蹴るのなら、もう手は伸ばせない。

 

 

「━━だから、彼女たちを分校として受け入れようと思ってる」

 

「……私は賛成します。連邦生徒会の思い通りにさせてやるもんですか」

 

「私も、賛成、です。辛いことを押し付けあっても悲しいだけだもん」

 

「賛成」

 

「ありがとう……みんな」

 

 

 みんなの賛成を貰い、罰についても話し合った。あれだけの事をしたのにお咎めなし、というのは私たちとしても許しにくい。

 

 だから、壊したものを直してもらう事にした。これが一番いい、校舎や自治区の修理をさせて罰とする。

 

 ゴートマンやロストレストノット社の人たちに協力してもらって、私たちも監視すればいい、それでも悪さをするなら自治区から追放する。

 

 

「それで、話し合いは終わったか?」

 

「うん」

 

 

 罰の意見をまとめた私たちが戻ると、後ろで手を組んだ彼の顔がこちらを向いた。

 

 

「彼女たちは分校生徒として、この学園で受け入れる。

でも貴方が言ったように罰は必要、だから校舎と自治区の修理の手伝いをさせる。私たちも監視するけど、貴方たちにも手伝ってほしい。

もしまだ悪さをするなら、自治区から追放するし、今後一切の手助けもしない。これでどう?」

 

 

 言い切って乱れた呼吸を整えながら、彼の様子を見てみると、後ろで組んだ手を前に組み直して考える仕草をしていた。

 

 

「ふーむ……」

 

 

 そこから彼は側頭部を指で叩きながら思案した、それは長くても10秒もかかっていなかったはずの時間は、とても長く感じた。

 

 

「被害者であるお前達がそれで良い、というなら俺から言う事はない。

……まぁ、そもそも俺もそれぐらいを想定していたからな」

 

『えっ!?』

 

 

 思わず出た声は、不良たちやリナたちも同様だった。それもそうだ、あれだけ凄まれて手伝いで良い、なんて。

 

 

「えっ、とはなんだ。意外でもないだろう」

 

「い、いやー……。だって、ねぇ?」

 

 

 彼が心外そうに言った言葉に、私は応えられずに不良たちへ視線を送った。不良たちも驚いた顔のまま頷く。

 

 おいおいおい、と軽い調子で彼は続けた。

 

 

「参考までに聞きたいんだが、お前達の考える俺は、どんな罰を与える想定なんだ?」

 

 

 もっと物理的な体罰か?と握った拳を前に突き出すジェスチャーをする。そんな彼に対して私は、必死に考えを巡らせていた。

 

 ヘイローを壊そうとしてると思いました。なんて言える訳がない、チラリとリナたちを見ると、スッと目を逸らされた。

 

 ひ、卑怯者!

 

 不良たちへ視線を向けると一様に口に手を当て、懸命に首を振っている。とにかく言うな、という事は伝わってきた。

 

 

「エ、エット……う、うん、そんな感じ、デス。ハイ……」

 

 

 うっすらと背中を伝う汗を感じながら、なんとかなれ〜と言わんばかりに同じジェスチャーを繰り出す。

 

 

「フ、まぁ、そうならない様に、お前達もしっかりと罪を償え」

 

『ハ、ハイツ!」

 

 

 振り返る彼に反射で気を付けになった不良たちは、まるで敬礼するように返事をする。そのまま不良たちをグループに分け作業場所へ連れて行ってしまった。

 

 私はジトっとした目で横を見た。

 

 

「す、すみません……」

 

「……えへへ」

 

 

 未だにそっぽを向く1人がいるけど、ため息を吐いて3人を許す事にした。

 

 

「ほら、行くよ。私たちも見張らないと」

 

『はい!』

 

 

 さっきの真似なのか、元気のいい返事をする3人。それを見て自然と頬が上がる、やることは沢山ある、でもこれから自治区はきっと良くなっていく。そんな気がする。

 

 

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