ほぼほぼ一発ネタです。
勇者ヒンメルの死から28年後。
北側諸国グラナト伯爵領。
私は七崩賢の1人、『断頭台のアウラ』。
『勇者ヒンメル』の死後から暫くしてから以前断念をしたグラナド領侵攻を再度開始した。
グラナド領への侵攻は調略をメインで進めるため部下に一任した。
順調に作戦が進んでいたが、途中で予定外の人物がグラナド領に入り、そして私はあるエルフと対峙していた。
そのエルフは歴史上で最も多くの魔族を葬り去った魔法使い『葬送のフリーレン』。
フリーレンは魔王を倒した伝説のパーティーの内の1人、人類側の言葉を借りればまさに実在した伝説と呼ばれるようなエルフだろう。
しかし、そんな伝説の人物だろうと私の魔法の前には関係がない。
私の魔法は
『服従の天秤』に自身と対象の魂を乗せて互いの現在の魔力を測り、魔力が大きい方が相手を半永久的に操れるようにする魔法だ。
80年前にも私とフリーレンは戦い、私の敗走という結果に終わったが今回は違う。
守ってくれる前衛のいない格下の魔法使いなんて、私の敵ではない。
魔力感知からフリーレンの魔力は到底私には及ばないが、念には念を入れフリーレンの魔力を消耗させてから
しかし、フリーレンは人生のほとんどを魔力制限をして生きてきたと語る。
私はその言葉を信じられず、フリーレンに右腕に持っていた剣を向ける。
「……ふざけるな。私は500年以上生きた大魔族だ」
「アウラ、お前の前にいるのは……」
フリーレンは魔力制限を止め、本来の魔力が解放される。
「千年以上生きた魔法使いだ」
フリーレンの魔力を目の当たりにし、服従の天秤の効果が出る前に、魔族として認めてしまう。
こいつには魔力では勝てないと、無意識のうちにフリーレンに向けていた剣を下した。
「『アウラ、自害しろ』」
フリーレンに『命令』された私はその命令に従い、剣を自分の首にあてがう。
「ありえない……」
少しずつ、少しずつ剣に込める力が大きくなるのを感じる。
(こんな……こんな屈辱的な事があるのか?私が……私の魔法で殺されるだなんて――)
首と剣の間にあった髪が切れ、皮膚も少しずつ切れ始める。
「この私が……」
死ぬなんて――
これまで、自分が人間にしてきてことと同じ様な事をされて、しかも首を切って死ぬ。
何という皮肉だろうか、屈辱だろうか。
私はこの屈辱を抱いたまま死ぬしかない。
それが、私の魔法――いや、一つだけ希望がある。
私の
服従状態でも、意思の強さ次第で一時的に抵抗をし、服従後に歯向かってきた人間が何人もいる。
(ただの人間にもできるのだから、大魔族である私にできなはずがない!!)
意識を集中させる。
フリーレンを殺したいや、
そして、奇跡は叶った。
私は
(やった!)
自害の命令を下したフリーレンは、自身の勝利を確信しているかのように私に背を見せて歩き去ろうとしている姿を見る。
(さあ、この状況でどうする?)
逃げるという選択肢はあり得ない。
今、逃げて身を隠したとしても『自害しろ』の命令にはいつか抵抗ができずに実行されるだろう。
自身の生存させるという目的で、
逃げるという選択肢と同様に、『自害しろ』の命令にいつまで抵抗が出来るのか不明であること。
仮に解除を試みる場合、私自身で開発をした魔法であるが自分が服従する側になるとは想定をしていなかったので解除にはそれ相応に時間が掛かる。
また、実際にこの場で魔法の解除を試みれば、フリーレンは違和感に気付き私の『自害』を待たずに殺しに来るだろう。
そのため、今
この選択肢が、現状行うべき内容だろう。
しかし、このままフリーレンを殺して
(だけど、このまま自害で死ぬよりはチャンスはある……最悪、フリーレンを道連れにできればいい!!)
ゆっくり、ゆっくりとフリーレンに近づく。
魔族としては業腹だが、一時的な死亡偽装の為の魔力制限も並行して行う。
これで、フリーレンの魔力感知には死んで少しづつ魔力を散らす果てる魔族に映るだろ。
フリーレンに近づきながら攻撃方法について考える。
魔法で攻撃するか、この手に持っている剣で攻撃するかについてだが――当然、剣での攻撃一択だ。
なぜなら、フリーレンは1000年以上を生きた魔法使いだから、攻撃魔法を放つ魔力の気配で気付かれる可能性が高い。
魔族として、魔法使いとしての屈辱が続くが、全てはフリーレンを殺さないと始まらない。
そして、十分にフリーレントの距離が縮まったので、魔族側の戦士たちと同じく魔力で肉体を強化して剣を振りかぶり――突如フリーレンは立ち止まる。
(流石に気付いたかッ!だけど、もう遅いわ!!)
吸い込まれるようにフリーレンの細い首目掛けて剣が迫る光景を見て、私はフリーレンを殺すことが出来ると確信する。
(死になさい、フリーレン!!)
ガギィン
「……はぁ?」
私の剣がフリーレンに当たる直前に、フリーレンはいつの間にか両刃の曲剣をどこからか取り出して、私の剣を弾いたのだ。
「……驚いた、まさかお前が
そして、流れるように剣を握っている方の私の腕を斬り飛ばす。
「……?何で私はそう思い込んでいたのだろう?」
「な…で……」
「ん?」
「なんでお前は魔法使いなのに、そんな剣を持っているの……?」
私は腕を切り落とされたことも忘れるような光景に動揺し、疑問をそのまま口にする。
「なんでそんな……フリーレン……あなたは、また私を……私たち魔族を欺いていたのね!?」
そして、ある真実に辿り着く。
その真実に気付いた私は抱いた憤りを隠さずにフリーレンにぶつける。
「魔力制限による実力を誤認させる以外にも、魔法以外の戦いができることを隠して今まで戦っていたっていうの!?」
「そうだよ、アウラ……」
曲剣といつのまにか背中に背負っていた棒のような物が、合体して大鎌となる。
私に見せつけるかのように鎌の刃を撫でながら語り始める。
「これが私、フリーレンの『狩り』だよ」
『狩り』という言葉を発した途端に、フリーレンの雰囲気が今まで感じていたものとは違って見えた。
私には今のフリーレンが、とても不吉な存在であるかのように見えた。
「アウラ、この大鎌はね『葬送の刃』といって、ゲールマンという古い狩人が獣狩りに使っていたといわれるもの
「人類に知られていない大魔族がいる様に、私が『
「何故なら、これを見られた後に生き残った魔族は1人もいないからだ……まあ、マハトにはギリギリ見られていないからアレは無しでいいよね?」
マハト……?
私と同じ七崩賢『黄金郷のマハト』の事か!?
『アレ』と戦って生存している事実に驚く。
「それにしても、私はお前に『自害しろ』と命令をしたはずなんだけど……何で自害をしていないの?」
そうフリーレンに言われて、私は気付く。
いつの間にかに
「いったい、どうしてなの……?」
「そうか……私にその意図は無かったとはいえ、服従対象の私が剣を持っていた腕を切った事で自害を止めた形になったから、『自害しろ』といいう命令も止まったのか」
結構、興味深い魔法だったんだねとフリーレンは呟く。
「また『自害しろ』って、命令をしてもその腕じゃあ時間がかかりそうだね……流石に、そんな状態の相手に同じ命令を出すのは、いくら魔族でも可哀そうだと私も思うよ」
私の目の前で大鎌を構えるフリーレン。
「『慈悲』を持って魔族を殺すのは、これが初めてになるかな?だから、アウラ。お前は私の手で直接殺すよ」
「『アウラ、死ね』」
そう、『命令』をされた瞬間に、目の前が青白く光り、一瞬何も見えなくなったかと思うと――
「あ……」
いつの間にか目の前で
「『
その言葉と共にフリーレンのものと思われる足が視界に移り遠ざかっていく光景を目にし、やっと私は首を斬られたことを理解をして意識が――
【葬送の刃】
最初の狩人、ゲールマンが用いた『仕掛け武器』
両刃の曲剣と大鎌に使い分けが可能
すべての工房武器の原点となるマスターピースであり
その刃には、星に由来する希少な隕鉄が用いられている
ゲールマンは狩りを、弔いになぞらえ、夢の中の彼女もそれに共感した
安らかに眠りを、二度と辛い悪夢に目覚めぬことを祈って
フリーレンにとって、この武器は思い出深い品であったはずだが、今の彼女にその記憶と実感はないようだ
【仕掛け武器】
『狩人』が使用する武器の総称
主に右手に装備する
それぞれの武器に変形機構を備えており、武器を変形させることでリーチや武器の特性を変えることができる
実用性以上に狩人たちの美学を優先した作りとなっている