長らくの間更新せず申し訳ございません!
また、前回オリキャラに「ファルシュ」という名前を付けてましたが、原作に同名のキャラがいる事を認識しました。
私の書く話でファルシュ1級魔法使いとソリテールは何の関係はない事をお伝えいたします。
勇者ヒンメルの死から28年後。
中央諸国ブラット地方。
私とフリーレン様はある場所を目指して森の中を歩いていた。
「……ムー」
ここ数日、私はもやもやとして気持ちを抱えたままフリーレン様の後ろについていく。
フリーレン様は私の気持ちなど知らずに、この先にアイゼン様の家の場所に向かって歩いている。
「………ムー」
「フェルン、どうしたの?お腹でも減った?」
「……なんでもありません」
「そう?それならよかった」
別に何日も森の中を歩いていることに不満はない。
旅とはそういうものですし、魔力は何かあった時の為に温存を心掛けるのが魔法使いの鉄則でもあるので、私にはこの事について不満はない。
私が不満に感じているのは、フリーレン様が私に悩みを打ち明けてくれない事に悩んでいる。
恐らくですが、フリーレン様は『悪夢』の時の記憶を思い返して悩んでいるんだと思う――いや、自分が生きていていいのかと思い悩んでいる。
『そんな偽物の私が存在していいのかな……』
少し前にフリーレン様はこのようなことを零していた。
そう、フリーレン様は『以前の自分』が文字通り死に物狂いで駆け抜けて、そして帰れなかった現実に『今の自分』がいる事に負い目を感じている。
実際、最近のフリーレン様は何かを考えたり、思い悩むことが増えたように感じる。
(……それではまるでフリーレン様ご自身が、自分の存在を認めていないようではありませんか)
自分の一番身近な人が虚無的な思考に囚われているのは大変悲しいです。
そして、それを相談されないことが悔しい……
(……私では役不足なのでしょうか)
そんな事を考えながら歩いていると、いつの間にか目的地に着いたようです。
木々を抜けるとそこには石でできた墓の前で祈るドワーフの姿が見えた。
「アイゼン、遊びに来たよ」
「30年振りとは思えん態度だな」
「たった30年でしょ」
「そうだな……フリーレン、いつもよりもどこか暗そうな顔をしているな」
「……うっさい」
アイゼン様はそう言いながらゆっくりと立ち上がる。
「それにしても、まだお迎えには早いぞ?」
「フェルンの前で、余計なこと言うなよ」
(死神エルフとかの良い印象ではない異名の件でしょうか?)
おふたりは軽口を叩きながら家の中に入っていくので私も後に続いた。
アイゼン様のお家は土の中に作られており、洞窟に入っているような気分です。
(ドワーフという種族柄でしょうか?初めて入りましたが、外気の影響が少なくて住みやすそうです)
アイゼン様は私たちにお茶を淹れて、少しした後に話し始めました。
特に何か特別な話ではなく、本当に雑談といった内容でした。
しかし、勇者一行と久しぶりにお話をされているためか、いつもよりフリーレン様は楽しそうでした。
「まさかお前が弟子を取るとはな」
「そうだね……そうだ、アイゼン。何か手伝ってほしいこととかってある?」
少しの間アイゼン様はフリーレン様の顔をジッと見られた。
「フリーレン、ハイターにも同じようなことを聞いたらしいな。やはりお迎えには早いぞ」
「……なんで、知っているの?」
「文通をしていたからな」
そういえばハイター様はよくお手紙を出されていたことを思い出した。
そうでしたか、お手紙の相手はアイゼン様だったのですね。
「顔に似合わずに律儀だね」
「お前が素っ気なさすぎるんだ」
(その通りです)
アイゼン様の言葉に特に気にした様子はなく(少しは気にして欲しい)フリーレン様は自分の話を続けた。
「それで、あるの?手伝ってほしいこと」
「ある。少し遠いが付き合ってもらうぞ」
私とフェルンはアイゼンが手配した馬車に揺られながら移動をした。
移動中もアイゼンやフェルンと話をした……最近、気分が落ち込むことが多かったので、久しぶりにアイゼンと話せて楽しかったな。
そして、目的の場所に着いたと言われ私たちは馬車から降りたけど、ここは――
「フォル盆地か。懐かしいね」
「来たことあるのか?」
「……昔ね」
私がそういうと、ふたりはひそひそと話を始めた。
「昔って言ったぞ……どれだけ前なんだ……」
「原始時代でしょうか……」
「流石にそこまで長生きじゃないよ」
失礼だな、ふたりして……流石に私は文明がある時には生まれたよ。
私は気を取り直してアイゼンに確認をする。
「それで探し物って?」
「大魔法使いフランメの手記だ」
「うーん……?」
なんで戦士であるアイゼンがそんなものを欲しがるのか疑問に思ったけど、フランメの著書に関して残念な情報を伝える。
「まあ、いいけど。フランメの著書はほとんどが偽物だよ」
「ハイターが聖都に残されたフランメの記録をまとめ上げて割り出した場所だ。本物の手記はフォル盆地のどこかにある……フリーレン、お前なら知っているはずだ」
「……うん、『知ってはいるよ』。生臭坊主め……そこまで調べていたのか」
本当は『今の私』ではなく『前の私』が過去に体験し記憶した事だけど、私にも場所は分かる。
「わかった。まずは大きな木を探そうか」
「大きな木か……途方もないな。たくさんあるぞ。まあ、時間なんていくらでもあるのか」
「まあね」
「………ムー」
長命種族の価値観で話を進めてしまいフェルンから不満げな視線を私に向けた。
私はそれに気づき慌てて訂正を入れる。
「でもフェルンが嫌がるから早めに終わらせようか」
「なるべく効率的に探しましょう」
そう言ってフェルンは私達よりも先に森の中を歩いていく。
私とアイゼンはそれに続いた。
「変わったな。お前は人の時間を気にするような奴じゃなかった」
「……知らないのアイゼン?」
アイゼンからすると私と合っていなかった30年での変化に驚きを隠せないようだった。
だから、私はアイゼンにドヤ顔をしながら言ってやった。
「10年は長い時間なんだよ。それを蔑ろにすると怒られるんだよ?」
「そう、だな……気を付けよう。お互いにな」
「……そうだね」
目的の場所を探すため数日の間アイゼンと一緒に旅をした。
アイゼンはもう斧を振れる歳じゃないと言いつつ大岩を持ち上げたり水面を走ったりと、そこらの戦士よりも凄い事をしているのには呆れたり、野営中に甘いぶどうを酸っぱいぶどうにして食べたり、アイゼンが寝相の寝相の悪さに苦笑しながら探索を続けた。
「塩漬けにした獣肉か……懐かしいな」
「フリーレン様は以前からこういったものを作られていたのですか?」
「かれこれ500年は狩った獣や動物の処理の一環で塩漬けや毛皮を作ったりしてるね」
「初めて大熊を狩ってきた時は、本当に魔法使いかと疑問に思ったぞ」
「ああ、魔法を使わずに狩ったのですね。私も常々魔法使いなのか疑問に思います」
「だから、魔法使いで『狩人』なんだってば」
「ヒンメルは返り血で、血塗れのお前を見て気絶したぞ」
「懐かしいね」
こんな会話を野営中や探索中にしながら、何日も歩き回り、飛び回って――
「フリーレン様。西の方に遺跡を飲み込んだ大樹がありました」
そして、フェルンがこの旅の目的地を見つけたようだ。
「わかった」
「他に何か見当たらないのかや周辺の警戒などで、もう少し飛んできます」
「うん、魔力残量には気を付けてね」
「……もう、子供扱いはよして下さい。おふたりには積もるお話があるでしょうから、お話をする時間を作ってるんですよ」
そう言って、フェルンは飛んで行ってしまった。
「お前の弟子にしてはよく気が利く。いや、お前の弟子だからこそか」
「そうだね。私にはもったいない位の弟子だよ……ねぇ、なんでフランメの手記なんか探すことにしたの?」
私は戦士のアイゼンが魔法使いの手記を探そうとするのがどうしても気になったので聞いてみる事にした。
「可哀相だと思ってな。お前……とヒンメルが可哀相だと思ったんだ」
私と、ヒンメルが?
「30年前のあの日、お前はヒンメルを知っていればと口にした」
「……うん」
30年前のあの日の事を――私の後悔を思い出す。
「そして『こうなるって知っていたはずなのに、なんで忘れていたんだろう』……とも」
そう……私はヒンメルの死をきっかけとして、『
私はあの魂が――『前の私』が『
あの『
本で例えると『
恐らく魔族の記憶を100年……いや、500年分読んだ方がましだろう。
(あの魂は最後に誰かの名前を呟いていたようだけど……私にはその時に誰を思い受けべていたのかは分からなかったな)
まあ、流石の私にも他の人の記憶を覗き見るのは趣味が悪いという事は分かっている。特に、その
「大魔法使いフランメの手記には死者と対話したという記録が残っているとされている」
「おとぎ話だよ。今更、
それに
……
「もう1人の自分が大切にするべき思い出だから、自分には不要……とでも考えているのか?」
「――ッ。私、アイゼンにその話したっけ?いや、私のいないところでフェルンから聞いたの?」
「やっぱりな……」
「……やっぱり?」
どういうことだ?やっぱり?確信はなかったけど、推測はできていたって事?
私はアイゼンやヒンメル、ハイターには『
なのに何故『もう1人の
「アイゼン、いったい何を……いや、以前ハイターもおかしな事を言っていたけど、それと関係があるのか?」
「ハイターが何を言ったのかは俺は知らんぞ。だが、何を気にしていたのかは分かる」
「アイゼン、ハイター、お前たち2人は一体何を知って……いや、ヒンメルもその事を知っていたのか?」
「俺たち3人は今からだいたい70年前……魔王討伐した10年後にある人物と会った」
……その話は初めて聞いたな。
「顔を隠していて初めは誰かは分からなかった。急に俺達を襲って来たんだ……魔王を討伐した勇者一行の俺達を、だ」
「え、流石に冗談だよね?」
魔王討伐後50年後のヒンメル達でなくて、10年後のヒンメル達を襲うという愚行に私は凄く驚いた。
あのパーティー内は化け物揃いで、まだ年齢的な衰えがないであろうヒンメルやハイター、そしてアイゼンを一度に相手すると考えるのはありえない事だった。
驚きのあまり『もう1人のフリーレン』の推察がなぜできたのかという疑問が吹っ飛んだくらいだ。
「人類の政争絡みの問題や魔王軍残党でもない事はすぐに分かった。どちらの勢力にせよ暗殺や襲撃は1人ずつ襲えばいい事だからな」
確かにその通りだ。魔王を討伐した勇者一行を殺すのに人類にはよほどの大義名分が必要になるので、基本的に人類から襲撃をされるというのはありえない。
魔王軍残党は当たり前だが魔族で構成されていて、魔族の寿命は普通の人間であるヒンメル(?)やドワーフであるアイゼンよりも遥かに長生きだ。英雄であるヒンメルやアイゼンが寿命で死ぬか衰えてから活動を再開するのだろう。
実際に中央諸国よりも北側では最近になって魔族による被害の話も聞くし、
「話しておいてなんだが……すまん、ここまでしか伝えられない」
「……私達、魔王を一緒に討伐した仲間だよね?」
「仲間であっても……仲間だからこそ伝えられない事がある」
アイゼンがこう言う場合、絶対に口を割らないだろう。
「俺が言いたいのはだな……もう1人の自分の事を――他人の事をそこまで考えられるようになったのは良い変化だ。しかし、お前の気持ちはどうなる?」
「………」
「ヒンメルの事を知りたいんだろう。だからハイターと相談をした……お前はきっと深く後悔をしている。とても悲しんだろうから手助けをしたかったんだ」
アイゼンと話しをしながら歩いていると、いつの間にか目的地に着いた。
古代の遺跡と思われる建物は大樹に飲み込まれており、大樹を中心とした強力な結界により遺跡の中に入れなくなっている。
「フリーレン様、大樹も遺跡も強力な結界で守られていて……」
私はフェルンの言葉を聞きつつ、結界の要になっている大樹に手を伸ばす。
「1000年も前の結界だというのにね。本当に凄いな、
1000年前、遺跡――
「それが結界の要?」
「そうだ」
「……頼りないね」
「そうでもねぇさ。こいつが成長すれば1000年だろうがこの場所を守り続ける」
そんな会話をしながら『前の私』は一瞬、とても悲しそうな表情をした後すぐに無表情を装った。
「………」
「ん、どうしたフリーレン?」
「……その頃には
「そうだな。だが、お前は違うだろ?」
そう言って
「他人の事を気にしてない振りを一生懸命して自分の心を守るのは結構だが、優しいお前にはいつか限界が来る」
「……そんなことはしていないよ」
「そうかな?まあ、何が言いたいかっていうと――」
「大切な人との時間を大切にするべきだったと心の底から悔いた時はここに帰ってこい。手助けしてやる」
「この大魔法使い、フランメ様が」
私は
どんなに強力な結界だったとしても、術式の構造が分かっていれば結界を解体するのは簡単だった。
結界を解除したら大樹の一部が動き出して遺跡の扉が見えたので私は扉を開ける。
扉を開けて中に入ると、そこには一冊の本が浮かんであった。
「これが……フランメの手記……本物なのでしょうか?」
「本物だよ」
「何故分かるのですか?」
「フリーレンはフランメの一番弟子だ」
そういえばフェルンにはその話していなかったっけ?
まあ、話をしてもフェルンのような普通の人間には1000年という時間のスケールを実感できず、話だけだったり聖杖の証だと信じてもらえないだろうしなぁ……
「大魔法使いフランメって、魔法史に出てくる大昔の英雄ですよね?本当に原始時代から生きているんじゃ……」
「死者との対話についての記述はあるか?」
「……ご丁寧にそのページが開かれている」
(1000年も前から私が……『前の私』がここに来ると思っていたのか?……確かに『
そんなことを思いつつ、手記を読み進める。
そこには以下の事が書いてあった。
『大陸の遥か北の果て』
『この世界の人々が天国と呼ぶ場所、
『そこには多くの魂が集まる場所で、私はかつての戦友達と対話した』
『この世紀の発見は魂の研究を飛躍的に進歩させるだろう』
その記述を読み終わり、私はポツリと呟いた。
「『
……私のこの『知識』はいったどこから?
身に覚えがない『知識』……『前の私』が残したものか?
「真実なのでしょうか」
フェルンの言葉で思考の海から現実に行き戻された。
「フリーレン様?どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。真実かどうかは分からない、いい加減な人だったし」
「天国はある」
アイゼンが少し食い気味に天国はあると断言した。
「その方が都合がいいだろう」
その一言で、以前アイゼンの家に勇者ヒンメル一行で立ち寄った際の会話を思い出した。
『死んだら天国に行くんですよ』
『私も天国が実在するのかどうかは、どっちでもいいです』
『天国はあった方が都合がいいからです』
『必死に生きて来た人の行きつく先が無であっていいはずがありません』
『だったら、天国で贅沢三昧していると思った方がいいじゃないですか』
そう、ハイターは言っていた事を思い出した。
あの出来事が、ハイターの言葉がアイゼンの死んだら無に還るという考えを変えた。
「……そうだね。私もたまには信じてみるか」
あの生臭坊主の言っている事をね。
「それで
「ちょっと待ってね……大陸北部エンデ」
うん、まあ、私も信じたくないけどさ。
「エンデって……」
「そうだね、今は魔王城がある場所だ」
「なんでそんな所に……」
私たちが
「フリーレン。
私はその言葉を聞いて、少し頬が緩んだ。
もういない誰かさんの面影が見えた気がしたからだ。
「悪知恵を付けたね、アイゼン」
「ハイターのおかげだな」
「あの生臭坊主め……わかったよ、どうせ当てのない旅だ」
そこに行けば、ヒンメルやハイター……そして、『前の私』にも会えるのかな。
「……でも、魔王城のあたりってめちゃくちゃ寒いんだよね……行きたくないなー……寒いところには良い思い出がないんだよなー……」
(もうめげ始めている……)
補足説明
フリーレンは『ヤーナム』で体験した出来事を完全に把握しているわけではない。
ヒンメルが葬儀より前のフリーレンは、ヤーナムで手に入れた武器や道具を使用でき、思考の一部に『狩人を経験したフリーレン』が混じっていたため『獣≒魔族は殺す』と認識していたり、肉を切らせて骨を断つ戦法などを行ってきたが、ヒンメルの死により『ヤーナムで経験をしていた記憶』が解放された。
記憶が解放された時に、『前の自分』が『今の自分が見た記憶の一部』を未来視で見たという記憶が見れた。
(だいたい『進撃の巨人』の『未来の記憶を覗き見る』のと同じ。詳しくは『進撃の巨人』見てね、面白いから)
そして、『今のフリーレン』は『前の自分』の記憶の細かいところとかは読み飛ばしている。あくまで自分とは異なる他人の記憶という認識だったので、魔法や人物とのやり取りなどの大事な部分しか見ていない。そのため7話で『前の自分』が話していた未来を知っている故の発言や思考には気づいていない。
未来視も『前のフリーレンが見た内容』すべてが見れた訳ではない。『今のフリーレン』が認識している範囲では、クヴァール戦とヒンメルの葬儀時の記憶のみで、ヒンメル達やフェルン達と旅をしている記憶は見えなかった。
『今のフリーレン』には憑依転生されたという認識はなく、原作漫画やアニメ映像の『知識』や『記憶』もないが、『前の自分』の記憶の一部が不完全に混じっているような状態。
そのため、本来のフリーレンが知らないことを口にしたりする。
1話目のアウラ戦で