『葬送』のフリーレン   作:チャイナドレス先輩

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腐敗の賢老

勇者ヒンメルの死から27年後。

 

中央諸国グレーゼ森林。

 

 

私とフリーレン様は今『腐敗の賢老クヴァール』と戦っている。

 

私は魔法史について不勉強だったが、戦闘が始まりクヴァールが開発した史上初の貫通魔法『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』が人類の魔法体系に組み込まれて、現代の防御魔法が作られたらしい。

 

つまり、目の前の相手は人類の魔法史に魔族(自分)の魔法を残した異例の魔族という事だ。

 

魔法史に自身の魔法を刻んだクヴァールの実力は伊達ではなく凄まじいの一言だった。

私たちは戦闘時の作業を分担することで戦いは順調に進行していました。

私が防御を担当、フリーレン様が攻撃を担当をした。

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク)』の飽和攻撃で私の防御魔法の一部が崩壊する。

クヴァールは壊れた防御魔法を見て、笑みを浮かべた後に巨大な『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』を放ってきた。

 

私は『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』の奔流を二重に展開した防御魔法で精一杯防いだ。

私への攻撃に意識を集中したクヴァールの隙を突くためにフリーレン様は空中に移動し杖を構えた。

 

しかし、『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』を放つ寸前に、私でも分かるほどにフリーレン様が躊躇したかのように僅かに手を止めたのだ。

その僅かな時間でクヴァールは防御魔法の展開が間に合った。

 

(防御魔法を見て、一瞬で解析して、しかも実用した!?)

 

私はその事実に驚き、フリーレン様も驚き致命的な隙を晒した。

そのフリーレン様の隙をついたクヴァールはお返しとばかりに人を殺す魔法(ゾルトラーク)で攻撃をしフリーレン様に傷を負わせた。

 

「フリーレン様!!」

 

何とか防御魔法の展開は間にあったようだが、ギリギリの展開となり人を殺す魔法(ゾルトラーク)の一部がフリーレン様の体を傷つけた。

フリーレン様は体全身から血を流しながら、地面に降り膝をつく。

クヴァールはそんなフリーレン様に向けていつでも攻撃できるように手掌を向けている。

フリーレン様が殺されると思い私はクヴァールに杖を構えたが、クヴァールは私に一瞥することもなくフリーレン様に語り掛ける。

 

「何故だ、フリーレン」

「………」

「なぜ儂に止めを刺すことを躊躇した?」

「…………」

 

フリーレン様は長い沈黙の後に、絞り出すように言葉を紡いだ。

 

「殺す前に感謝を告げた方が良いのかなって思ったんだよ」

「感謝?フリーレン(お前)が?魔族()に?」

「そうだね。私がクヴァール(魔族)に感謝するなんて、おかしいよね……ゾルトラークで随分前に助かったことがあったからね。まさに人生の分岐点と言っても過言ではなかったよ」

「ほう、ここ80年でお前ほどの魔法使いが窮地に立たされようとは」

「いや、ここ80年での出来事じゃないよ」

「……分からんな、フリーレン。それは『いつ』、『どこ』での話だ?」

「『1000年前』の『夢』の中の話だよ」

 

フリーレン様はここではないどこか遠くを見るように話をしていた。

 

(フリーレン様が『夢』?)

 

私は日ごろの生活で感じていたフリーレン様の『特異性』から、フリーレン様が仰っている内容についてありえないと思って聞いていた。

しかしフリーレン様は静かに話の続きを騙りだす。

 

「私は昔に『悪夢』に囚われた事があってね。その時に予知夢の様なものでゾルトラークを見たんだ……色々あってそのことを忘れていたけど」

「忘れていた?」

「そう。ここ最近、忘れていた記憶を思い出す事が完了してね。ようやく記憶の整理ができたんだ」

「「………」」

(とても壮大な話をされているようですが……フリーレン様の、『昔』や『最近』って……)

 

私と、そして同じことを考えたと思われるクヴァールはフリーレン様に何か言いたげな視線を送った。

私たちの視線を感じたフリーレン様は顔をしなしなにさせる。

 

「……2人して、どうしたのさ?」

「いや……のう……フリーレン……」

「ええっと……その、フリーレン様……」

「もったいぶってないで、早く言いなよ……」

「いや、なあ、フリーレン?魔族はエルフと同じく長生きをするのでお主の時間感覚には理解できる部分があるのだが、それでも若い魔族が組織に入るのでな……『いつ』何をするのか、『いつ』何をしたのかの命令や報告などの最低限の伝達はしておってな……」

「はい、魔族と同じことを思うなどということは大変不本意ですが、言いたいことがわかります。悠久の時を生きれるエルフという種族の特徴で時間感覚に乏しいということは理解しておりますが……」

「……………2人は何が言いたいのかな」

「「その『最近』って具体的に、いつの話なんですか(なんだ)?」」

 

私たちがそう聞くと、フリーレンはしばらく黙った後に口を開いた。

 

「ここ10年って、感じだよ」

 

すっごいショボショボした顔で口を開いた。

 

「フリーレン様、10年は人間の子供が大人になるまで必要な時間と同じになります。10年は長い時間になります」

「儂らにとってほんの10年であるが、他者と関わる社会で生きているのだからのう……具体的に言わないとな」

「うおーん」

 

精神的に耐えきれなかったのか、フリーレン様はショボショボした顔のまま鳴き声の様なものを出し始めた。

 

「まあ、いいか……」

「よくありません」

「そんな怖い顔しないでよ、フェルン……仕切り直しといこうか、クヴァール」

「儂がそんなことを許すとでも?」

「いや、無理やり作る」

 

そう言うといつの間にか、フリーレン様の手の中には何か筒の様な物が複数あった。

そして、その筒はチッチッチっと音を鳴らしていた。

 

「フリーレン……それはなんだ?」

「これはね……とっても痛いもアッー!!

「「ッ!?」」

 

フリーレン様が話している途中で手に持っていた筒は爆発してフリーレン様を爆炎が包んだ。

 

(自爆だと、バカな!?)

「何を馬鹿なことをやってるんですか、フリーレン様!?」

 

爆炎での目くらましと軽く飛行魔法を使い、フリーレン様はクヴァールから距離を空けた。

しかし、その代償としてフリーレン様は酷いやけどを負った……と、思ったらまた懐から何かを取り出そうとしていた。

 

「これで仕切り直しだよ、クヴァール」

(なんだ、アレは?)

 

フリーレン様は赤い液体が入った針付きの瓶を取り出し、それを自身の太ももに突き刺した。

突き刺した瓶の中身がフリーレン様の体の中に注入されていく。

 

すると、瓶の中身が減るにつれフリーレン様の傷が塞がっていく。

 

「な、なんなのだ……それは?」

「『輸血瓶』――『夢』の中の産物さ。特に覚えておく必要はないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クヴァール、お前はここで『死ぬ』のだから」

 

今まで感じたことがない殺意がクヴァールにぶつけられる。

まるで、殺意そのものを攻撃として放たれたかのような感覚。

私に向けられた殺意(もの)ではないのに、腰が抜けそうなほどの恐怖を感じる。

そして、その殺意を具現化したかのような大鎌を手元に出現させたフリーレンは静かに告げる。

 

「見ただけで防御魔法を模倣して実用したお前の実力は高く評価するよ。故に生かしておけない」

 

フリーレン様は、静かに目の前の言葉の通じる魔族(クヴァール)を狩るべき獣として見据える。

 

「お前は『敬意』を持って『狩る』。フリーレンの『狩り』を知るがいい」

「ククク……カハハ……なるほど」

 

未だにフリーレン様の殺意を注がれているクヴァールは何が楽しいのか笑い始めた。

 

「なるほどのう……フリーレン、お主は即死させなくてはいけないらしいな。次は、頭か心臓……あるいは身体全身を消し飛ばそうかのう」

「そうか、やれるものならやってみなよ」

「では、やってみようかのう……」

 

クヴァールは右手を、フリーレン様は左手に持ち替えた杖を相手に向けて――

 

「「『人/魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』」」

 

お互いにお互いのゾルトラークを撃ち合う。

お互いの存在自体を消し去ろうとする極大の殺意を乗せて。

 

 

 

 

 

 

「……あ、フェルンも手伝ってね」

「え?この二人でバチバチにやり合う雰囲気で、それいいますか?」

「ああ、あのフリーレンの弟子なのだから、あんなものではないだろう?期待してるぞ」

「え?……え?………なんで魔族からも期待されているの私?」




【輸血瓶】
血の医療で使用される特別な血液

瓶には針がついており
身体の一部に指すことで内部の血液が体内に取り込まれる仕組み

ヤーナム独特の血の医療を受けたものは
以後、同様の輸血により生きる力は回復し傷を癒す

血の医療を受けたヤーナムの民の多くは血の常習者となる


【時限爆発瓶】
時限式で爆発する仕掛け火炎瓶
特殊な狩道具でヤーナムでも珍しい道具に分類される

本来は投げて地面に設置して使用をする道具で、どこかのエルフの様に自らの懐に抱え込んで自爆をするための道具ではない

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