『葬送』のフリーレン   作:チャイナドレス先輩

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すみません!
4話でクヴァールが楽しませろ!と言っていたあたりに本来入れるべき文章がなかったことを確認しました!
本当にすみません!

謝罪ついでに連日投稿しますので、どうかお許しを!


■■■を殺す魔法(ゾルトラーク)

『腐敗の賢老クヴァール』と『葬送のフリーレン』との戦いは決着した。人を殺す魔法(ゾルトラーク)による身体全身の負傷と右腕の欠損、そして右脚骨折という重傷を負いながらもクヴァールの心臓部を大鎌で切り裂き勝利を納めたフリーレン。

 

全身に負った負傷によりバランスが保てずに崩れ落ちるフリーレンと片膝をつくクヴァールではまるで勝者が逆であるかのようであった。

一見、クヴァールの全体的なダメージは少ないが、心臓部からの魔力の流失が止まらず、徐々にクヴァールの身体を黒く染め上げていくが、しかしクヴァールにはそんなことを考えている余裕は無かった。

 

(儂の……儂の人を殺す魔法(ゾルトラーク)が直撃したのだぞ!?)

 

クヴァールは目の前で起きた理不尽に困惑していた。

何故、自分の攻撃で、自分の作り上げた魔法でフリーレンを殺せなかったのかと。

 

(咄嗟に放ったのが圧縮した人を殺す魔法(ゾルトラーク)ではなかったが、それでも魔法使いの身体を貫けないはずがない!装備による魔法耐性も向上したという話だが、それだけでは説明がつかない!)

 

何故だ、何故!?と何度も考えたが、ふと制限を解除したフリーレンの魔力を改めて目の当たりにし、やっとクヴァールは気が付いた。

 

(そうか……解放された膨大な魔力に阻まれたのか)

 

魔法の種類によっては強大な魔力で攻撃を防ぐことができることは、長年の経験によりクヴァールは理解をしていた。

通常の人を殺す魔法(ゾルトラーク)ならば魔力制限をしていた時の熟練の老魔法使い程度の魔力なら殺せていたが、1000年は鍛えた魔力を持つ相手は殺すことは出来なかった。

 

「……儂の敗因はフリーレンは一手遅れると思い込んだことと、咄嗟に高圧縮人を殺す魔法(ゾルトラーク)を使えなかったことか」

 

そう静かに自嘲しているクヴァールの前で、フェルンは倒れているフリーレンに駆け寄り抱き起す。

 

「大丈夫ですか、フリーレン様!?」

「痛いよぉ……防御魔法蹴った脚折れちゃった……アイゼンやヒンメルならこんな事ならないのにね……」

「いや、足よりも消し飛んでる腕の方を気にしてくださいよ!?」

「逆にない方が痛みを感じなくて……そういえば、私は腕が重くなることは経験したけど、軽くなるのは初めてだね」

「言っている場合ですか!?さっきの瓶を早く出して下さい!!」

 

渋々と言った様子でフリーレンは懐から輸血瓶を二つ取り出し使用する。

すると、身体全身の怪我がみるみる塞がり、右腕の再生も始まった。

流石に欠損した部位の再生には時間がかかる様子だが、フリーレンは慣れているのか特に反応をしていなかった。

しかし、フェルンはそのトカゲの切れた尻尾が生えてくるかのように再生するフリーレンの右腕を見てドン引きをしていた。

 

「うわぁ」

「うわぁ、って……酷いなぁ」

「いや、これは、誰が見ても同じような反応しますよ……」

「そうかなぁ……この程度普通だよ。ハイターをはじめアイゼンやヒンメルもドン引きしていたけど」

「どうして勇者一行の皆さんがドン引きしてるのに、普通って言い張れるのですか!?」

「……フリーレン……お主、本当に魔法使いか?」

 

フリーレンとフェルンのやり取りを見守っていたクヴァールだが、フリーレンの言動に我慢が出来なくなったのか口を開く。

身体の大部分が黒く染まったクヴァールを見据えながら、フリーレンは当然のように口を開く。

 

「私は『魔法使い』で、そして『狩人』だよ」

「そうか……お主の言う『狩人』とは、大鎌を振るい、自爆する道具を使い、血液で傷を治し、そして欠損部位が再生するのだな……」

「フリーレン様のような『狩人』はフリーレン様以外に絶対にいませんって……」

 

軽口を言っているクヴァールは致命傷を受けて死を待つだけだが、他の魔族たちとは異なり敗北をしたことを受け入れ命乞いや道連れにする事などは考えていない様子だ。

そんなクヴァールに対してフリーレンは他の魔族たちには見せない『敬意』を持って最後を見送ろうとしていた。

 

「クヴァール、最後に言い残すことはある?」

「クックック……それでは、他の魔族達と同様に命乞いでもしようかの?」

「……クヴァール、一つ言っておく。お前の冗談は面白くない」

「そうか……それは、すまんな」

 

クヴァールからの謝罪の言葉を受けて気を良くしたフリーレンは余計なことを言う。

 

「まったく、これだから魔族は……やっぱり人間に対しての理解が足りないね」

「「………」」

「………?どうしたの?」

 

何を言ってるんだこの変な狩人を自称する変なエルフはという視線を2人は向けるが、フリーレンには通じなかった。

 

「そうだな……言い残す言葉を思いついたから、聞いてもらえんか?」

 

クヴァールはそう前置きを言いつつ、どんな言葉のナイフをフリーレンに伝えようか同族の魔族達から天才と称される頭脳を使い考える。

 

「うん、わかった……それで、最後の言葉はーー」

「もっと、フェルンと話し合ったらどうだ?

「……………うぉお?……おぉ……うぅ?」

 

どうやって発声したのかわからない声を身体から絞り出しながらフリーレンは首を……いや、身体全身を傾げた。

 

(フリーレン様、凄い声出したなぁ)

「先ほど、フェルンは言っておったろう?儂の方が話が通じるとな」

「えっと、それは……そのう……」

「フリーレン、しっかりフェルンのことを分かってやれているのかのう?」

「どうして魔族がそんなこと気に出来るんだよぉ………」

「お主は確かに人の事を魔族並みに理解が出来ていないが……」

「お前本当に魔族なのかよぉ………」

「どうして、弟子を大切にしている気持ちはあるのに、もっと弟子と話さないのだ。理解してやらないのだ、フリーレン?」

「………………」

「しかし先ほどは弟子を取られるのではないかという心配をしている様にも見えたが、これは……」

「お、おい……もういいから……人間に対して理解が足りてないとか言ったこと謝るから……」

 

事実上の敗北宣言をフリーレンはするが、クヴァールの口は止まらなかった。

静かに考えるクヴァールの肩や膝に複数の小鳥がやってきた。

クヴァールはボロボロの腕を動かし指を伸ばすと、小鳥達はクヴァールの指に移動する。

小鳥達の様子を眺めながら、クヴァールはフリーレンの核心に迫る一言を言葉にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、そうか……お主、フェルンに嫌われるのを恐れたのだな」

「……え?……フリーレン様?」

「フェルンの顔立ちは北側の人間たちとも、今いる中央諸国とも違う。儂があまり見た事がないことからおそらくは、南側諸国の生まれだろう。魔族の勢力圏である北側とかなり離れているな」

「………」

「魔王様の脅威がなくなり、人類が団結する理由を失い、魔族の脅威が無い地域では人間同士で戦争が起きているのだろう……そしてその際に一般攻撃魔法とまで呼ばれるようになったゾルトラークをーー」

「………………なんでお前は魔族なのに、私よりも人間理解してるのさ」

「ククク……なるほど、当たりか……最後に面白いものが見れて楽しかったぞ」

「………さっさと死ね」

 

 

そんな話をしている間にクヴァールの身体全身が黒く染まり、あとは首を残すのみとなった。

 

「言われずとも、そろそろだな……先に逝く……またな、フリーレン。気長に地獄で待っているぞ」

「じゃあね、最も人間を理解した魔族。『腐敗の賢老』クヴァール」

 

そして、クヴァールの顔まで黒く染まりきった。

賢老の亡骸は黒い粒子となり崩れ、散り始める。

何も分からない鳥達はチチチと鳴きながら、どこかに飛んでいってしまった。

その様子を、フリーレンとフェルンは静かに眺めていた。

 

「本当に、面白くない冗談だよ……ハイターは死後は天国で贅沢三昧なんて冗談を言ってたけど、少なくとも魔王を倒した私達勇者一行が地獄になんて行く訳がないよ」

「………」

「フェルン?どうしたの?傷も回復したし、村に戻ろう?」

 

フリーレンは再生が完了した右腕の調子を確かめつつフェルンに話しかけるが、フェルンは動こうとしない。

その代わりにフェルンは口を開き、言葉を出す。

 

「フリーレン様の魔力感知の件やゾルトラークへの反応が遅れる件、あとあの不思議な道具などについて話が……」

「………村に戻りながら話そうか」

 

フリーレンは諦めたかのように顔をしょぼしょぼとさせながら街に戻るため歩きはじめた。

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

クヴァールが封印をされていた崖から町へ戻るまでの帰り道の途中で、フリーレン様はとても言いづらそうに口を開いた。

 

「フェルン……ごめんね」

「……?何についての謝罪でしょうか?」

 

珍しい様子のフリーレン様に様子を伺う。

おそらくは、先ほどクヴァールと話していたことに関連するんだと私は直感した。

最後のクヴァールとフリーレン様の話は2人だけで言いたい事が分かっているようなやり取りだったけど、私には少し理解するのが難しかった。

 

「ゾルトラークに感謝をしたことと……実はずっと謝りたいと思っていた事があったんだ」

「………」

「フェルンは私が研究協力したゾルトラークで、戦争で家族を……故郷を……」

「何だ、そんなことでしたか」

「……え?」

「良いんですよ……ゾルトラークの解析にフリーレン様が協力をしていたとしても、悪かったり責任があるのは実際に使う人です」

 

私はフリーレン様の目をしっかり見つめながら言葉にするり

 

「フリーレン様は人類にとって必要なことをされた偉大な方ではないですか」

「……驚いた。フェルンは思ったより強いんだね」

「もう、思ったよりって何なんですか?」

 

どうやら、私はフリーレン様に魔法使いとしてだけではなく、人としての強さでもすごく下に見られていたようだ。

 

「それにしても、フリーレン様もそう言ったこと気になされるんですね……もしかして、魔法史だけは自習に任せていたのは……」

「うん……どうしても気にしちゃってね」

 

フリーレンの言葉を受けたフェルンは苦笑する。

本当に、もう……

 

「仕方がないフリーレン様……」

「……うん、ごめんね」

 

だけど、私は……

 

「ですけど、私は今日またフリーレン様のことを知れて良かったです」

「私もだよ、フェルン。フェルンのことを知れて良かった」

 

フリーレン様が私のことを気にかけてくれていたと改めて実感が出来て幸せです。

 

 

 

 

 

「……ああ、そうだ。フェルンにはこれを渡しておくよ」

 

フリーレン様は、そう言いながら一つの魔道書を取り出して手渡してきた。

私は何でこのタイミングで渡すのだろうと首を傾げながら、魔道書を受け取り軽く目を通す。

 

「どうやら、ゾルトラークのようですが……以前教えていただいた魔族用に改良したものではないですね」

「『夢』で使った物でね……私だけ知っていてもアレだからって理由で渡したんだ。だから、変に気にしないでね?」

「……?」

 

いつもと違うフリーレン様の様子に更に疑問が深まるが、渡された魔導書の内容について質問をする。

 

「それにしても、これはいったいどのようなゾルトラークなのですか?」

「詳細を説明すると話が長なるからね……分かりやすく言うと、フリーレンに対して有効な効果があるよ」

「そうですか、フリーレン様に有効な……え?」

 

できるだけ、軽く話そうとしているような。

まるで冗談の様な笑い話にしようとしているような。

フリーレン様の精一杯の努力を感じられる。

 

「つまり、フリーレン(わたし)を殺す魔法だよ」

 

 

「………」

 

「フリーレン様……まだ、クヴァールの冗談の方が笑えますよ」

 

冗談であったらどれだけ良かったのだろう。

だけど、私は知っている。

フリーレン様は冗談を言わない。

 

「こんなの、本当に笑えませんよ」

 

お願いです、何かの冗談であって欲しい。

私はそう心の底から願った。




■■■を殺す魔法(ゾルトラーク)の魔導書】
ある特定の対象に有効なゾルトラークについて記された魔導書
特に深い考えのないエルフから、その弟子に渡された代物

特定対象への攻撃に特化をさせたのか、対象以外にこの魔法を使っても無傷と言って良いほどの効果がなくなる
必ずその対象を滅ぼすという殺意の現れなのか、それともその対象に他すべての攻撃リソースを割かなくてはいけなかったのかは不明

現在はフリーレンにしか有効ではない『夢』の産物の内の一つ

この魔導書を読むと新たな思考と視点を得るが、見えてはいけない物が見えるようになるという
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