『葬送』のフリーレン   作:チャイナドレス先輩

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『不眠』のフリーレン/『悪夢』の始まり

 

勇者ヒンメルの死から28年後。

 

中央諸国グランツ海峡。

 

 

私の名前はフリーレン。

魔王を倒した勇者一行の魔法使い。

まあ、魔王を倒したのは80年近く前の話になる。

人類社会の中では、もう私はおとぎ話のような存在だ。

 

愛弟子のフェルンと一緒に特に理由もない旅の途中で、今は街の宿屋で私たちは夜を過ごしている。

 

そして、今日も私は眠らない独りの夜を過ごす。

愛弟子(フェルン)が起きるまでの間、いつも通り窓から差し込む月明りに照らされた魔導書を読む。

朝になったらこの街ともお別れだ。

この4ヵ月ちょっと海を綺麗にする作業が続いたし、今日なんて新年祭のためフェルンは早起きをした。

頑張ったフェルンにはしっかりと休息をしてもらいたい。

 

「………」

 

前回ヒンメル達と来た時の新年祭は不参加だったが、今回はフェルンと一緒に参加した。

確かに海は綺麗だったけど朝早くに出て見に行く価値があるのかは、今でも疑問に思う。

だけど、フェルンと一緒に見れて楽しかった。

 

……ヒンメル達には悪い事をしたな。

前回は特に何も考えずに人目のないところで朝まで訓練をしてたよ。

……本当にヒンメル達と一緒に見にいけば良かったよ。

 

(私は……本当に、私は愚かだ)

 

ヤーナムの出来事を経験したからなのか、元々なのか分からないけど、私はあまり他者と関わろうとしない。

ヤーナムの記憶を読み取った限り、他者との関わりを持つのを控えたくなるのは分かるけどさ……

 

それでも、ある周回(ルート)では()()ミコラーシュを先生と慕ってメンシスの檻を被ったり、マリアにお前に勝てないって泣きついたりするくらいの人間味?があったはずだけど……後は『人形』と一緒に花の冠を作ったりして、ゲールマンに――

 


葬送の刃を構えた老人の腹に、ズブリと右腕をねじ込み……引き抜く。

この一撃により致命傷を負った老人は天を仰ぐようにして地面に倒れるが、どこか晴れやかな表情を浮かべている。

 

『すべて、長い夜の夢だったよ……』

 

その老人を手に掛けたのは銀髪で小柄な『狩人』――フリーレン。

 

(こうやってゲールマンを殺すのは何度目だ?何度同じことを繰り返せばいいんだ、()()


 

一瞬、()()()()()()()記憶が流れ出した。

 

(……また、これだ)

 

私には私以外の者の記憶が宿っている。

……記憶を整理できた今だからこそ分かった事だけど、約1000年前、私の身体で私以外の者の魂がヤーナムという『悪夢』に囚われていた過去がある。

今の私の魂や記憶上では身に覚えがないというおかしな状態だけど、その魂が経験した内容と『葬送の刃』や『輸血瓶』などの道具は今の私の物で変わりはないのでありがたく使わせてもらっている。

 

しかしヤーナムを経験した後の生活でこれだけ受け入れ難い。

 

()()()()()()

不眠症などの病気ではない。

これは、まるで呪いのようなものだ。

原因不明な不眠の状態で1000年ほど時間が経過した。

 

以前ゼーリエのところに行って一緒に調べたけど、ただの病気や呪いではない事だけが判明しただけだった。

眠れない原因は不明だったけど、眠らなくても肉体的、精神的にも問題がない状態になっている事が判明した。

それならばと私は眠らない時間を有意義に過ごすため、夜明けまでの間は集めた魔導書を読む時間や《狩人》としての修行時間に充てるようにしている。

 

……眠らない身体を有意義に使ってはいるけど、みんなと同じ時間を過ごせないことだけが不満だ。

ただでさえも、他の種族よりも長く生きれるわたしたち(エルフ)

外的要因以外で死ぬことはない、最も不老不死に近い存在のわたしたち(エルフ)

わたしたち(エルフ)は1000年や2000年を平然と生きれるため、他の種族たちと時間の共有が難しい。

私は更に眠らないという特性のおかげで、他の同族(エルフ)たちとも時間共有が難しい存在となった。

 

……1000年以上生きてて、何度も思った私の時間的な孤独については置いておこうか。

話を戻すが、その『悪夢』を経験した人物の魂がどうなったのかは分からない。

ある記憶の内容を見る限りは、たぶん消滅したのだろうとは思うけど――

 

「……消滅した魂は、果たしてオレオールに行くのだろうか?……オレオールってなんだろう?」

「ンッ……」

「あっ」

 

つい疑問に思った内容を声に出していたようだ。

そこまで大きな声を出したつもりではなかったが、寝ているはずのフェルンが反応した姿を見て慌てて口元を抑える。

 

前の私(?)は何を思って生きていたんだろうか?

そんなことを考えながら今夜も誰とも共有できない時間を過ごす。

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

勇者ヒンメルの死よりも1000年以上前。

 

中央諸国のどこかの森。

 

 

美しく長い銀髪をしたエルフの少女が楽しそうに回りながら歌を歌っている。

 

「And you alright♪Can you hear me♪誰もいない線路沿いをなぞってく♪」

 

この歌は、この世界には存在をしない。

全く違う世界の歌だ。

一通り歌い終わって満足をしたエルフは独り言を呟き始める。

 

師匠(せんせい)からの遺言状はゼーリエに届けたから将来の大陸魔法教会のフラグはばっちりだな……後はテキトーに各地方フラフラしようかな?」

 

『俺』はフリーレン。

いわゆる憑依転生というもので、『葬送のフリーレン』のフリーレンに憑依した魂だ。

 

俺の前世は主に漫画やアニメなどを見るのが趣味でフリーターだった。

ゲームはボタン操作などが苦手だったり、ゲーム機本体の値段が高くこれ買うより漫画や動画サイトのサブスクに使った方が有意義と考えてゲームを全くしない人生だった。

 

『葬送のフリーレン』は生前好きだった作品で、漫画、アニメ(※一期)全ての内容を把握している。

 

長かった……ここまで来るのも本当に長かった……

原作開始前である今の時点で数百年は人生を過ごしている……ここから魔王を倒して原作の『後日譚』が始まるまで1000年以上と考えると億劫になる……

 

「マハトとは出来れば戦いたくないけど、1000年後の戦いの為に『黄金化』は受けておいた方がいいよな……」

 

『未来』のため、『原作展開』にするため、『後日譚』までにできる事は全部やろうと頑張っている。

本当はフリーレンロールプレイなんてして、他の人との関わりを減らすのは普通の人間としてどうかと思ったこともあったけど、実際に長生きしてみると原作フリーレンのあの鈍感さは意外と自己防衛の一種だったのではと思わなくも――

 

(それにしてもなんで、普通の俺が人類の存亡という激重な……おっと、楽しいことだけ考えよう)

 

今の俺の人生の目標は遠い『未来』での百合ハーレムを目指すことだ。

まあ、フェルンやユーベルなどのキャラが誕生するのは少なく見積もっても1000年以上先の話だ。

これでも長い時間生きたけど、エルフの時間間隔でも1000年は長いと感じるが、気長に待とう。

『未来』の事に夢を馳せながら俺は毛布に包まり眠りに入る、スヤー。

さあ、『未来』のために明日も頑張るぞ。

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

???

 

むにゃむにゃ……ここはどこ?

 

「ほぉ……『青ざめた血』ね……」

 

はぁ?

 

「ヘヘッ」

 

なにわろてんねん。

 

「確かに、君は正しく、そして幸運だ」

 

なにが?

 

「まさにヤーナムの血の医療、その秘密だけが……君を導くだろう」

 

ヤーナムって何ですか?

血の医療って何ですか?

俺どこも悪くないはずなんですが?

運は悪いけどさ……

 

「だが、よそ者に語るべき法もない」

 

治療するなら治療内容を患者に告知しろ。

 

「たから君、まずは我ら、ヤーナムの血を受け入れたまえよ……」

 

……血を受け入れる?

 

「さあ、誓約書を……」

 

なんでそんな胡散臭い誓約書を俺が記入するとでも……

 

「よろしい。これで誓約は完了だ」

 

待って、お願い。(迫真)

俺、何も書いてないんだけど。

 

「それでは、輸血をはじめようか……なあに、なにも心配することはない」

 

え、本当?(純粋)

 

「何があっても……悪い夢のようなものさね……」

 

悪い夢ならダメなのでは?

あー、腕にブスッて何かが刺された……うぅ、意識が……

 

 

ここから、俺の『悪夢』は始まった。




【メンシスの檻】
檻の形をした被り物、あるいは被れる檻
檻を被るという行為は常人には理解がし難いが、上位者と交信するために作られたもの
実際に効果があるのかは不明
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